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特集:団地の未来 アートする団地 > パブリックアートで団地を活性化

URPRESS 2018 vol.47 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

大学とコラボ パブリックアートで団地を活性化

高槻・阿武山(あぶやま)団地、富田(とんだ)団地 大阪府高槻市

関西では大阪芸術大学と協働で、「団地」に眠るパブリックアートを再発見、お住まいの方々とアートを通した交流を進める取り組みが始まっている。

団地に眠るアートを探してフィールドワーク

「住んでいる人たちは、このアートをどう思ってはるんやろ」
「叩くとよく響くから、音も含めて活用するとおもしろいかも」

ブロンズ造のオブジェを囲んで口々に語りあっているのは、大阪芸術大学芸術計画学科の学生たちだ。ここ高槻・阿武山団地には、敷地内に20以上ものパブリックアートが点在している。

この日行われたのは大阪芸術大学とUR都市機構が協働で進めているアートプロジェクトのフィールドワーク。指導する谷悟准教授や4回生の案内で初めてこの団地を訪れた1回生たちが、見て感じたことをベースに「アート作品をどう生かしていくか」に思いを巡らせた。

このアートプロジェクトは、団地に埋もれている多彩なパブリックアートにあらためて着目し、それを生かしてさまざまな活動を行ってアートを身近なものにし、団地の活性化につなげていこうというもの。2014年11月にスタートした。

谷准教授によれば、芸術計画学科の目的は、芸術文化のプロデューサー役の育成にあるという。
「芸術と社会との関係をいかに構築するかがテーマですから、このプロジェクトでもお住まいの方々とワークショップを重ね、協働して取り組むことを目指しています」

まずは関西14団地でフィールドワークを行ってアートの視点で見た団地の魅力を知り、ホームページなどで伝えていくことからスタート。長期的には新しいアートの発信拠点の創出や居住者とともに学ぶ場として、アートカレッジを作ることなども視野に入れているという。UR都市機構西日本支社技術監理部の岩田知之は、
「団地の魅力を発信すると同時に、コミュニティーの活性化につなげることが理想です」 とプロジェクトへの思いを語る。

大阪芸大とのアートプロジェクトを推進するUR都市機構西日本支社技術監理部企画チームの岩田知之(右)と小栗俊亮。
高槻・阿武山団地のバス通り沿いに置かれた川島慶樹氏の作品に、大学生たちが座ってみた。「これ、キノコみたい」「テーブルかな?」。アートってなんだか楽しいぞ。
バス通り沿いにアートが点在する高槻・阿武山団地。これは河合隆三氏の「少女と犬」シリーズのひとつ。
左/バス通り沿いにある「少女と犬」シリーズ。(2点とも高槻・阿武山団地)
右/団地全体の入り口で人々を見守るのは、竹内三雄氏の作品。下からのぞくと、青空が切り取られて面白い。

居住者パワーと若い力が創り出すアートシーン

富田団地自治会長の澁谷哲男さんは、「学生たちと作った古着の鯉のぼり。揚げてみたら、これが一番きれいだった」とうれしそう。

高槻・阿武山団地では、パブリックアートにスマートフォンをかざすと、画面に1分間のアニメが流れるというAR(拡張現実)を利用したプランを企画中だが、同じ高槻市の富田団地ではすでに居住者参加のアートワークショップが行われ、目下第二弾の準備が着々と進められている。

富田団地に学生たちがフィールドワークに赴いたのは昨年の6月。その際、自治会の方々から自治会主催の行事やイベントの活発な実施状況を聞き、一緒に参加したいと学生たちが申し出たのがきっかけだ。中心となった現在4回生の田中健太郎さんによれば、 「団地恒例の鯉のぼりイベントに合わせて、居住者のみなさんから集めた古着を使って一緒に鯉のぼりを作りたい、と提案しました」

生活からかけ離れたところにあると思われているアートに対する居住者の意識を変え、古着を使うことで、思い出を特別な日のための“かたち”にしようという試みだ。学生たちは、後日あらためて20ページにも及ぶ企画書を自治会の方々にプレゼンテーションしたが、終わった途端に自治会会長の澁谷哲男さんから返ってきたのは「やるなら、すぐに動かんといかん」という快諾と激励の言葉だった。学生たちもこれに応えて、居住者への企画の周知をはかるアートカフェやワークショップなどの取り組みを精力的に実施した。
「鯉のぼり作りの日には、親子連れはもちろん、80歳のおばあさんも参加してくださいました」
と田中さん。古着をほどいて1枚1枚うろこを作り、配色を考えて縫い合わせた美しい鯉のぼりは見事に団地の空を泳いだ。

次なる企画は、玉川牧田コミュニティーセンターの芋掘り行事に合わせた芋はん作り。創作した芋はんを押したカードに団地へのメッセージを綴り、それを団地の自治会館に展示したり、団地内の壁に投影する企画へと発展させる。
「人と人とのつながりも考えた企画で、若い人は発想もパワーも違うと驚きました。自治会としても応援していきたい」
と澁谷会長。団地の居住者と学生、そしてUR都市機構が力を合わせたアートプロジェクト。それ自身が、新しい形のパブリックアートといえるかもしれない。

富田団地の空を泳ぐ古着で作った鯉のぼり。団地の皆さんから大好評だった。
富田団地で学生たちが始めたのは、芋はんを押したカードを入れるポスト作り。竹を割き、それを編んで作るという。
富田団地の居住者たちが作った「こどもギャラリー」。夢のある絵柄が埋め込まれている。

伝説のアパートが美しくよみがえる

西長堀アパート 大阪市西区
かつて森光子など多くの著名人が住み、伝説のアパートとして名高い西長堀アパート。美しさはそのままに、現代によみがえった。

大阪市営地下鉄西長堀駅から徒歩1分。交通至便の地に〝マンモスアパート〟の愛称で親しまれた伝説的な集合住宅がある。1958年に建てられたUR都市機構の西長堀アパートだ。

都市型住宅の理想を追求したこの先進的なアパートは、地下1階地上11 階、当時関西一の高層住宅で、内部での住み替えを考えて263戸の住戸は1Kから2LDKまで8タイプ。各室に洋式トイレやタイル張りの浴室を採用し、ロビーや談話室、洗濯室や物干し場などの共用施設を備えていた。
「最初の頃は、司馬遼太郎さんをはじめ、著名人もお住まいでした」

1967年以来の居住者・大原淑子さんは往時を振り返る。

アートの観点から見ても、西長堀アパートは時代の先端を走っていた。100メートルもの幅のある鉄筋コンクリートの建物は随所に昭和モダンの香りがあふれ、前面の外壁には通風と採光のための縦長の窓が、2階から11階まで美しい縦のラインを描く。パブリックアートを設置した集合住宅としてもここは草分け的存在で、ロビーでは、大阪出身の前衛画家・吉原治良の壁画が人々を出迎えた。

築58年を経ているが、今年2月には耐震補強とリノベーションを終え、若返って再デビューを果たした。受け継がれてきた昭和モダンのデザインやディテールは残して改修し、パーテーションに遮られて長らく人目に触れなくなっていた壁画も、今は晴れやかにロビーの主の座を取り戻している。大幅なリノベーションを施した住戸の募集も行われ、抽選倍率3.6倍の人気を博した。
「改修で美しくよみがえった姿に、建設当時は斬新な存在だったんだろうなとあらためて認識しました。これで若い人たちが入居するようになればうれしいですね」
そう言って、自治会長の菅野道夫さんは相好を崩した。

「自治会の名前は『西長堀マンモス自治会』。地区の盆踊りにも『マンモス』の名前で参加します」と話す自治会長の菅野道夫さんと、会計の大原淑子さん。
目の前に長堀川が流れていた創建当初、タクシーで「マンモスアパート」と言えばここに着くほど有名な建物だった。
東西幅100mもの外壁に縦長のスリット窓が整然と並ぶ特徴的なファサード。当時は慣れない高層住宅の高さへの不安や、冬場の寒さへの配慮から生まれたもの。
美術団体から「このアパートにあるはずだ」と言われ、埋もれていた吉原治良氏の壁画を再発見した。ちぎり絵をモチーフに世界の大理石を用いて仕上げた作品。
日差しが入り明るくモダンな、1階の共用廊下。
どこか懐かしさも感じるリノベーション住戸。

地域とコラボ
「団地の暮らし」が壁面アートになった

茨城県の戸頭団地では、地域のアートプロジェクトとUR都市機構が共同で行う「アートのある団地」プロジェクトが完成。団地の壁面に現れた楽しい空間が大好評だ。

美しき
団地ギャラリー

こだわりのデザイン。心なごむあたたかな光や、地域との調和から生まれたかたち。
住む人をやさしく見守る、団地で見つけたさまざまな「美」を集めました。

大学とコラボ
パブリックアートで団地を活性化

関西では大阪芸術大学と協働で、「団地」に眠るパブリックアートを再発見、お住まいの方々とアートを通した交流を進める取り組みが始まっている。

阪本順治監督インタビュー
団地の歴史と景観を借りて人の営みを描きたかった

今年公開された映画『団地』は、阪本順治さんが脚本から監督まで務めた完全オリジナル。団地には、適度な開放感と淋しさ、そして人とのつながりによる安らぎがある、だからこそ団地を舞台に映画を撮りたかったという阪本監督。

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