古くて新しい団地の未来(1956〜)
古くて新しい団地の未来
誕生から60年。
昭和から平成へと時代は移り、団地もその姿を変化させる。
装いも新たに建て替えられた団地。
ユニークなデザインで若者をひきつける部屋。
古くて新しい団地の多彩な表情を紹介しよう。
スターハウスを忘れない メモリアル広場のある団地
日本住宅公団が設立された1955(昭和30)年当時、日本の住宅不足は深刻で、271万戸が足りないといわれていた。この住宅難を解消することを目的に、日本住宅公団は発足した。
ダイニングキッチン、ステンレス製流し台、シリンダー錠、洋式トイレ……。当時最新の住宅設備が取り入れられ、冬至の日の9時~15時の間に4時間の日照を確保するなど、住環境にも気を配った団地は憧れの的。「団地族」という言葉も生まれるほど、もてはやされた時代であった。
団地第1号は、56(昭和31)年に完成した大阪府堺市にある金岡(かなおか)団地。ここは97(平成9)~2004(16)年に建て替えられて、現在はサンヴァリエ金岡として生まれ変わっているが、この一角に「スターハウスメモリアル広場」がある。ここが団地第1号であり、当時の花形住戸であったスターハウス建設の第1号だったことを記念して、昔の住戸を再現してつくったものだ。
スターハウスというのは、1フロアが3住戸で構成される4~5階建ての住棟で、上から見るとYの形に住戸が広がるさまが星のように見えることから、こう呼ばれた。スターハウスは1住戸の3面が外接するので採光・眺望・風通しがよく、人気があった。箱型の棟が立ち並ぶ団地の中に変化をもたらすポイント住棟の役割も担っていた。
現在のサンヴァリエ金岡は総戸数694戸。1DKから4LDKがあり、単身者からファミリーまで幅広い年齢層の人々が住んでいる。
時代とともに変わる団地のあるまち
スターハウスが今も現役で残っているのが、東京都北区にある赤羽台団地。東京23区内ではじめて造られた3373戸もの大規模団地で、62(昭和37)年に入居がスタートした。JR赤羽駅から徒歩約10分の丘の上に広がる20・2ヘクタールもの広大な敷地は、陸軍被服廠(ひふくしょう)跡地だという。
ここは2000(平成12)年から全面建て替え事業がスタートしている。建て替えにあたって、土地利用計画を新たに策定。賃貸住宅用地を集約して、総戸数を約2100戸にする一方、新たに生み出された土地に東洋大学が新キャンパスを建設、都市計画公園も整備される計画だ。
建て替えられたヌーヴェル赤羽台は赤羽台団地の配置や樹木などの記憶を生かしつつ、複数の建築家が棟ごとに設計を担当。各棟の明るいエントランスの壁面には、団地の歴史を物語るモノクロ写真を飾り、居住者が集う集会所前のポーチには、ドアや表札、メーターボックスなど、昔の団地で使われていたさまざまなパーツを展示して、団地の記憶を引き継いでいる。
高度経済成長時代の人々の暮らしを支えた大型団地が、時代にフィットした新たなまちに生まれ変わる。
建て替え事業の完了は20(平成32)年の予定だ。
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