ベランダ菜園の楽しみ(6)
秋から冬はコマツナがおすすめ
たなかやすこ

秋から冬にかけて、マンションのベランダでコマツナの仲間の大和真菜(ヤマトマナ)を栽培しています。大和真菜は奈良の伝統野菜。コマツナと同様に煮物やおひたし、炒め物や浅漬けなど、さまざまな料理に重宝します。秋に種を蒔き、間引きして少しずつ食べながら育てて、元日の朝に収穫したものをお雑煮に入れるのを楽しみにしています。
コマツナは関東地方で多く栽培されていますが、大和真菜、正月菜、畑菜、かつお菜などの近縁種が全国各地で栽培されています。各地に伝わる伝統野菜の種を取り寄せて育ててみるのもベランダ菜園の楽しみの一つです。私は江戸東京野菜の伝統小松菜を栽培したこともあります。
育てた伝統小松菜はおいしくいただきましたが、スーパーで売られているコマツナに比べて茎も葉もやわらかく、外側の葉が倒れやすいため、農家が大量に栽培するには向かないということがわかりました。スーパーで売られている一般的なコマツナは、チンゲンサイなどの中国野菜と掛け合わせて、栽培の手間はできるだけ少なく、束ねて流通しやすいように改良されているのです。
コマツナの仲間は真夏を除いて通年で栽培できますが、ぐんと味がよくなるのは冬。寒さにあたって甘味が増し、葉も厚くやわらかくなります。とくに、収穫したてのものは甘い香りがしてとてもおいしいものです。 栽培もそれほど難しくありません。ぜひ、ベランダで挑戦してほしいと思います。お雑煮に使う地方の方にはとくにおすすめします。
【田中 淳=撮影】

育ててみようコマツナ
種をまいてから40 ~ 50日で収穫できます。見ても楽しい寄せ植えがおすすめ。
大和真菜、赤からしミズナ、東京べか菜、リーフレタスの寄せ植えを紹介します。
step1
プランターに鉢底石と培養土を入れ、4つに区切ってそれぞれの種をまきます。葉物野菜は種が小さいので、たくさんまきすぎてしまう人をときどき見かけますが、指で種をつまんで1粒ひねり出すようにしてまくと、まき過ぎが防げます。種同士が重ならないようにまいたら、指で土をかぶせます。 本葉が1、2枚になったら1回目の間引きを行います。
畑のようにきちんと4区画に区切ってから種をまき、発芽したところ。

step2
土が乾いたらたっぷりと水をやり、日当たりのよい場所で育てます。途中、葉が重なりあっているところを間引きます。間引いた株はおひたしやサラダでいただきます。コマツナの仲間は移植に強いので、別のプランターに移すことも可能です。
隣の株と、葉と葉が触れるか触れないかくらいの間隔にします。ちなみにこのプランターは、アメリカ製のアンティークの手洗い用の洗濯槽。足が付いて高さがあるので作業が楽。

step3
根から抜かずに、外側の葉を根本から鋏で切って収穫すると、中心からまた新芽が出てきます。 油断すると大きく育ちすぎて硬くなるので、注意しましょう。
元日の朝に収穫してお雑煮に使います。

プロフィール
たなかやすこ
イラストレーター、ガーデニングクリエイター。
1957年北海道小樽市生まれ。著書に『とれたての幸せ。はじめてのベランダ菜園』(集英社)、『おいしいベランダ菜園 シンプル&エコに育てる』(家の光協会)ほか。

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