住まいのリスタイル4
古さを今に活かした団地再生名づけて
「暮粋(くら・しっく)」 from 大阪・京都
レトロな雰囲気を生かしながら、今の暮らしに合うかたちにリノベーションした住戸が関西で人気だ。
その住まい「暮粋(くら・しっく)」を訪ねてみた。
年代に合った色、洗濯機はキッチンに
1~2階は幅広い年齢層が住むことを想定して落ち着いた小豆色を基調にインテリアをまとめ、3~5階は若年層に好まれる白に藍色を配した爽やかなイメージに。京阪地区の7つの団地でUR都市機構が展開しているリノベーション住戸「暮粋(くら・しっく)」では、懐かしさを感じさせる昔の団地の仕様も生かしながら、床や建具、台所や洗面設備などを刷新して新たに生まれ変わらせている。
きっかけは京都市伏見区にある1962年完成の観月橋団地。老朽化が進んだ団地を建て替えるのではなく、再生させる取り組みが、その始まりだ。
驚かされるのは、キッチンに洗濯機置き場が設けられていること。初期に建てられた団地には洗濯機置き場はなく、洗面所や廊下に置いて排水をホースで浴室に流していた。これが古い団地生活のネックのひとつになっていた。
改善しようにも、洗面所に洗濯機パンを設置するスペースがない住戸もある。そこで出てきたのが、キッチンに設置するというアイデアだ。洗濯機は洗面所という固定観念があるが、キッチンに置けば水回りの家事が一カ所に集中して効率もよく、むしろ便利な面も多い。まさに逆転の発想といえるだろう。
「暮粋」は基本的な間取りや古い部分を生かしているため、工事量やコストをある程度抑えることができる。だから家賃を大幅に上げることなく、多くの戸数を供給することも可能だ。緑豊かな環境にゆったり建ち、日当たりや風通しの良さを誇る古い団地ならではの長所に、あえて古さを生かしたレトロな魅力や、現代の暮らしに合う設備、インテリアを加えた「暮粋」。幅広い年齢層に支持され、募集すれば瞬く間に埋まってしまう人気ぶりで、UR都市機構のリノベーションの明日を担う存在として、注目を集めている。
【西上原三千代=文、平野光良=撮影】
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