住まいのリスタイル1
MUJIとURが提案する新しい団地生活スタイル
from 大阪
シンプルで機能的なものづくりで知られるMUJI(無印良品)。
UR都市機構では、団地のよさにMUJIが積み重ねてきた知恵や工夫を掛け合わせ、新しい賃貸住宅として蘇らせるMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトを展開している。「生かす」「変える」「自由にできる」というそのコンセプトは、どのような住まいとして結実しているのだろうか。
歴史ある団地とMUJIには通じるものがある
白い空間に、ディスプレイされた小物や棚に並ぶ器の彩りがアクセントを添える。3Kのふすまを取り払ってリノベーションした室内は明るく、広々とした印象だ。
関さん夫妻が結婚するにあたって、大阪・新千里西町団地に作られたMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトの住まいを選んだのは、「極力ものを持たずにシンプルに暮らしたいという思いにかなっていたから」だという。
駅から近く、緑も豊かで家賃も安い団地ならではの条件の良さはもちろん、日当たりがよく、風通しもいい住宅も魅力だった。住み始めて1年以上経つ今も、とても満足していると口を揃える。プロジェクトがスタートしたのは、平成24年の6月。UR都市機構の設計担当者、長谷川晋一は、「60年の歴史をもつUR団地と、『シンプルでいいものを長く使おう』というMUJIは、親和性が非常に高いのではないか、一緒に組めば何かおもしろい提案ができるのではないか……。そんなところからMUJI×URのコラボは始まりました」と語る。
こわしすぎずつくりすぎない
東日本大震災以降、これまでの社会のあり方や暮らし方を見直そうという気運の高まりを受け、プロジェクトチームは「消費社会に一石を投じるものを作りたい」と議論を重ねた。そこから出てきたのが、「こわしすぎず、つくりすぎず、残せるものは残す」という方針だ。
リノベーションにあたって、本来なら撤去するものでもあえて残し、そこに新しい価値を見つけて生かしていく。現代の生活に合わせて新しくしたり変える部分も、住む人が自分なりの使い方ができるよう、作りすぎずに自由度の高い住まいを考えていった。
空間を小さく区切っていたふすまは取り外すが、柱や鴨居は残す。鴨居にカーテンを取り付けて、必要な時だけ仕切ったり、小物をディスプレイする入居者もいるという。洋風の麻畳や麦わらを圧縮した床パネル、段ボールのふすまなど、新しい素材も共同開発した。変える部分にはメリハリをつけ、特にキッチンは思い切って手を入れている。
「コミュニケーションがとりやすい対面キッチンを導入し、カウンターに同じ高さのテーブルを組み合わせ、自由にレイアウトできるようにしました」と長谷川。
関さん宅ではテーブルは調理台として使い、麻畳のスペースで食事をしている。食器棚はボックスに板を渡したお手製だ。数少ない家具類やさまざまな小物も、買う時には本当に必要かをじっくり考えて選んできたという。
「ベースだけある空間に、二人で住まいを作ってきた感覚ですね。この空間に合うものをいかに選んでどう配するか、考えるのはたいへんでしたが、おもしろかった」
夫妻は共に28歳。MUJI×URの住まいの申し込み者は、20代~30代が7割。「この部屋に入りたい」と指定する人が多く、募集倍率は常に高い。リノベーションの担い手の思いや意図は、若い世代の心に見事に響いているのだ。
現在、MUJI×UR住宅は全国に90戸で、6団地に9プラン。 今後も徐々に増やしていく。半世紀前にダイニングキッチンを団地に取り入れ、日本の暮らしを変えたUR。今再び、若い世代を団地に呼び戻し、新しい時代に先駆けた住まいと生活のあり方を提示している。
【西上原三千代=文、平野光良=撮影】
動画
MUJIとURが提案する 新しい団地生活スタイル
新千里西町団地(大阪府豊中市)
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