街に、ルネッサンス UR都市機構

第7回都市再生フォーラム 福屋粧子氏

パネリスト紹介(福屋粧子氏)

福屋 仙台の東北工業大学で建築を教えております、福屋と申します。本日はこのような機会をいただき、ありがとうございます。都市計画の専門家、土木、まちづくりのご専門という、非常に高名な方々でいらっしゃるので、このような場所で私がまちづくりについてお話しするのは、大変恐縮ですが、今日この場では、どうしてこういったことを始めたかということも含めて、お話しさせていただきます。

東北工業大学工学部講師 福屋粧子建築設計事務所代表 福屋 粧子 氏 東北工業大学工学部講師
福屋粧子建築設計事務所代表
福屋 粧子 氏

 今日お話しさせていただくのは、アーキエイド、東日本大震災における建築家による復興支援ネットワークの発祥についてです。震災時、私は東京におりまして、発災直後は、仙台の知人の安否確認をしておりました。メール等でみんなが無事であることが確認できたあと、被災地にためにいったい何ができるのかということを、東京や大阪、ロサンゼルスの人たちとみんなで考えていましたが、被災地の状況が見えてきませんでした。

Archi+Aid 東日本大震災における建築家による復興支援ネットワーク

 そういった中で、私たち建築家という一個人であっても、いつか何かにかかわれる時が来るのではないかということで、3月の16日にメールグループを立ち上げました。それから一般的な地域支援を、要請が来た6月くらいから開始しました。
 このように、アーキエイドは東日本大震災を契機として生まれた、長期的な防災まちづくりに向けたプラットフォームとして開始いたしました。現在、賛同者は、建築家を中心とした約270人となっており、かなり高名な方にも加わっていただいております。私は発起人と初代の事務局長を務めております。

Archi+Aid supporters

 アーキエイドのミッションは3つあります。1つは実践的な地域支援です。これは、実際に地域の調査、サポートに入ることです。それから教育として、そういった実践の場、大学生、大学院生に入っていただき、教育的な効果を狙います。そして、勉強会の中で知識を共有し、そういった知識をアーカイヴして、地域に根差した、次につながっていくような防災まちづくりに向けて、続けていっています。
 270人で活動していますので、かなり広域なプロジェクトですが、その中で私が担当しているのは、このモデルプロジェクトの第一弾、牡鹿半島復興支援調査隊になります。
 これは昨年夏、2011年7月に、牡鹿半島復興調査隊というかたちで組織して入りました。これは地元の私の大学等が中継者となり、より遠くからの支援を地元につなげることが目的です。それから、建築家とそのチーム、大学院生を含めて、地元の方の生活や歴史を、行政につないでいくような調査支援を行っております。

Archi+Aid mission

 牡鹿半島へは、皆さんが行かれたことがあるかどうかは分かりませんが、東京から仙台まで2時間で行って、そこから車で2時間半という、かなり遠方になります。これは震災から1年後の、漁港の被害状況を記した新聞の切り抜きです。赤い丸は、漁獲高のある漁港です。リアス式海岸の最南端で、金華山沖の、非常に豊かな漁場に囲まれています。
 釜石市長からもご説明がありましたが、この一つ一つの湾で、かなり被害状況が異なるというのは、調査に入る前から分かっていました。

Archi+Aid

 例えばこちらの突端の、寄磯浜というところは、こちら側から津波が来ましたが、下のほうがほとんど流されていて、上のほうの家屋は無事でした。それに対して、こちらの鮫浦湾を囲んだ谷川浜というところは、引き波でほとんど持って行かれて、家屋等は何もなくなってしまいました。同じ側でも、その下の新山浜というところは、崖の上にありますので、全く家屋被災はありません。こういった一つ一つの地域に、被災の差があるということが分かってきました。
 これが鮫浦湾の周りの光景です。こういった非常に被災が大きいところで、私はもともと建築をやっていますから、1人の建築家がいったい何をできるのかと、かなり悩みました。これは陸前高田の建物ですが、こういった建築物は、せっかく建てても流されてしまいます。
 その一方、この地域は、海に出て行くと非常に豊かな自然が残っていて、こういったところに住む人の暮らしを、なんとか守っていきたいという気持ちが起こってきました。

Archi+Aid area

 それで、普段自分がやっていることに立ち返って考えてみました。建築家や建築の学生は、地形を読むことができます。それから、住民の方の話を聞いて、それを記録していくことができます。そして、建築家では普段、図面を描いていますから、手で図面を描いて記録し、設計することができます。あとは大きな特徴として、スケールを横断することができます。例えば牡鹿半島で、私が担当しているのは小渕浜というところですが、こうやって上から見ると、何もなくなってしまったようなところです。ここを毎朝、集落の人と一緒に散歩をしたところ、何もなくなったところでも、以前の集落はどうであったかということを思い出していくことができます。

建築家になにができるか?

 そのような建築家の力を、なるべく地域の力になるように、ぎゅっと集約しようと、5日間の調査に、15の大学に協力していただいて、このサマーキャンプを始めました。
 横浜国立大学の小嶋先生のスタジオ、それから、中井先生のご同僚である、東京工業大学の塚本先生、東京大学の千葉先生と成瀬先生にもお世話になっています。
 非常に短い期間で調査を行うということが要請されたので、6月末にチーム募集を行い、5日間のリサーチを行っています。それをまとめて、報告会を開催しました。

Archi+Aid
Archi+Aid

 1日目はフィールドワークです。地図だけはあるものの、今どういう状態であるか、まだ記録が取れていないところに行って、各チームが回ります。
 2日目は、実際に現地に行って、模型と図面を使いながら、地域の方々に話をし、今の被害状況とこれからの希望について聞きました。
 3日目は、それを記録していく作業です。パソコンも電気もない状況ですから、全部手書きです。夜には集落の方々と、お酒を飲んだり食事をいただいたりして、さらに詳しい話や、昔の民謡などを教えていただくこともありました。
 そうやってお聞きしたことを、やはり集落にお返ししたいので、4日目には、30の各浜で、それぞれの大学でまとめたことを伝えていただいています。
 5日目には、それを30浜分持ち寄って、鮎川小学校の体育館で、まとめて発表することにより、私たちも行政の方も、住民の方ですら知らなかった、半島全体の被害状況が分かりました。これは100人ぐらいのチームで、真ん中に市長さんを囲み、行わせていただきました。

 これを行政に伝えるために、インタビューシートと、地域診断カルテという現状の被災地図、加えて今後の施設配置提案書、それによってできる実際の風景のアクティビティ提案書、さらに、それを含んだまちづくりがどうなっていくかという地域活性化提案書という5枚のシートを、各30浜について作成して、それを石巻市にお渡ししました。

地図診断カルテ
  • アクティビティ提案書

  • IN 10 DAYS

 これは、実際にうまくいくかどうか、賭けの部分がありましたが、10日間大学チームを受け入れてくださったことに対して、何がお返しできるかということで、200ページのA3資料を、とにかく地域についてヒアリングしたものをお渡しすることが、私たちのその時点でのミッションでした。

Archi+Aid

 石巻市のほうも、まだその段階では、高台移転の土地のあたりなどもついていませんでしたので、その調査結果を基にして、都市基盤復興基本計画図というものができています。これは宣伝になりますが、その活動については、3月に彰国社さんから本が出ておりますので、詳しくお知りになりたい方は、そちらをぜひお買い求めください。
 現在は、その高台での計画を、コンサルさんがより具体的に進めておりますので、現場の調査等に、学生もついて行っています。

浜からはじめる復興計画 彰国社

 左側がコンサルさんの描いた絵です。私たちとしては、どこの家からも浜が見えるようにして、ずっと浜の暮らしが続けられるような町の風景を作りたいということで、ここをこう変えられないかという提案を、しつこいながらも続けております。
 学生の活動ですので、3月になると卒業していきますから、それについては引き継ぎ合宿を設け、行政から、牡鹿総合支所の木村さんという方に1年分のレクチャーをしていただきました。その時はちょうどわかめの収穫時期でしたので、一緒にわかめの収穫を体験させていただき、それをまたみんなでやるためのマニュアルを作るという、クラブ活動的な要素も含めて、調査、記録を行いました。

Archi+Aid

 それをさらに、出版という意味合いから、冬の生活と夏の生活で、それぞれ漁師さんがいつ起きて、どういうふうに暮らしているかということを記録しました。
 この桃浦というところの図面は、筑波大学が作ってくださいました。ここが高台移転ですが、高台移転の場所だけではなく、浜全体がどうなっていったらいいかということを、地域の方にお聞きし、書き起こす作業も行いました。これが引き継ぎ合宿の様子です。ここは鮎川浜ですが、ほとんど流されてしまっています。ここが復活していくまで、みんなで頑張ろうということで、引き継ぎを行いました。

浜のライフスタイル

 このようなかたちで、3つの柱があります。どれももちろん関係していますが、それを使って、今後の復興に役立つような、人と知恵と、実際の町を作っていくのが私たちの活動です。以上です。

浜の将来図

山﨑 ありがとうございました。続きまして、明治大学の中林さん、よろしくお願いします。

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