平成28年熊本地震 復旧支援レポート
2度にわたり震度7の激しい揺れに襲われ、その後も余震が続く熊本地方。
UR都市機構は、4月14日の地震発生直後に災害対策本部を設置し、職員をいち早く現地に派遣。
長年培ってきたノウハウを発揮し、復旧活動を支援している。
熊本市内のUR賃貸住宅の復旧
UR都市機構のUR賃貸住宅で「平成28年熊本地震」の被害があったのは、熊本市内にある健軍団地と世安町(よやすまち)団地の2カ所。その2つの団地の現地管理を担当している明和不動産管理の森田健一さんが、UR都市機構の担当者から状況確認の電話を受けたのは、4月14日の夜。最初の地震発生から7分後、帰宅途中の車の中で、まだ地震の興奮覚めやらぬ時だった。「すぐに世安町団地へ向かい、全室を回って逃げ遅れている方、玄関から出られない方がいないかを確認。高齢の方を近くの避難所まで車でピストン輸送しました」
一方、健軍団地では屋上にあった高置水槽が破損して断水が起きていることが、団地にお住まいの管理連絡員、島津眞由美さんと連絡がついて判明。それらの報告を受けてUR都市機構九州支社では、水道工事に対応する業者、飲料水、そして簡易トイレなどをすぐに手配。翌15日の朝には、第1陣の派遣職員4名が現地へ向けて出発した。土木や機械工事、構造を専門とし、中越地震や東日本大震災の復興支援にもかかわった機動力のある精鋭メンバーだ。
福岡から通常の倍以上の5時間かけて現地に到着した職員は、2つの団地を点検して状況を確認。健軍団地では給水配管を工夫して、全戸に直接給水する方法に切り替えることを決めて工事をスタート。また、受水槽に貯まっていた約100トンの水を生活用水として使えるように、集会所近くに共用水栓を設置した。作業が終わったのは夜中の1時だった。「余震が続くなかでの作業や打ち合わせは大変でしたが、団地にお住まいの方のためにできる限りのことをしました。団地を守るのに必死でした」と、第1陣派遣職員の九州支社住宅経営部ストック技術チーム主幹 楠戸淳平と、同じく設備技術チーム主幹 添田英彦は振り返る。
そして、ほっとする間もなく未明に再び震度7の激しい揺れ。
「揺れ始めてすぐに停電になりました。ベッドの上にいたのでトランポリン状態。真っ暗な部屋で、バラバラと家具が倒れるのをサラウンドで感じました」と振り返るのは世安町団地の自治会長の山本さん。横揺れは10分近く続き、ある家では電子レンジが玄関まで吹っ飛び、ある家では冷蔵庫をはじめあらゆる家電・家具が倒れた。その後、自治会役員や居住者が協力して1軒ずつ居住者の安否を確認。棚やタンスが倒れて動けない人、玄関ドアが開かず閉じ込められている人を救出して回った。UR都市機構は、集会所や空き室を避難所として開放した。「飲料水や支援物資の配布、簡易トイレの設置、エレベーターの復旧、いずれもURさんは対応が早くて本当に助かりました」と話すのは、世安町団地自治会副会長の坂本朝子さん。健軍団地の島津さんも、UR都市機構のきめ細やかな対応に驚いたと言う。「ここに住んでいて本当によかったと思いました。URさんが、何か困っていることはないですか、と聞いてくださるので安心でした」と島津さん。
4月16日以降、両団地に幾度も足を運んでいるUR都市機構九州支社の団地マネージャー中村直寿は、その後もUR都市機構側の窓口として現地の方々と連絡を取り続け、必要な手配を行っている。
被災者への住戸の提供
UR都市機構では、被災した方へ福岡県内の2つの団地(下大利、春日公園)の住宅提供も行っている。4月21日にUR福岡営業センターに専用窓口(コールセンター)を開設。入居可能時期や家族構成などを具体的にお聞きして、被災された方に少しでも条件の合う住宅の紹介に尽力している。「被災された方の気持ちに寄り添うことを心がけ、言葉遣いに気を配りながら、お相手の状況や希望を確認しています」とコールセンター担当の村岡雪子さん。同じく担当の岩永知恵子さんは、「何度も来ていただくのは難しいので、罹災証明書や住民票などの必要書類の提出時期についても柔軟に対応。事務処理もスタッフが連携して迅速に行いました」と振り返る。
その結果、問い合わせから最短、中1日で鍵を渡すスピード契約が可能に。半年間家賃が無料であることに加え、寝具などの無償提供も被災された方に喜ばれている。
また、応急仮設住宅としてお住まいいただけるUR賃貸住宅の提供を健軍団地で行っている。
技術支援メンバーの派遣
国土交通省からの要請に基づいた被災宅地危険度判定士、被災建築物応急危険度判定士などの専門スタッフの被災地への派遣もUR都市機構はいち早く実施。これまでに約80名を派遣した。宅地や建物の実際の危険度を判定する役目だけでなく、各自治体から派遣された判定士の派遣先の決定や、現場の情報を収集する取りまとめ役もUR都市機構の職員が担当。東日本大震災の復興支援をはじめ、現場で培った多様なノウハウ、専門知識を熊本でも発揮している。早期復旧を目指して、迅速に、柔軟に対応するUR都市機構の職員の姿は使命感にあふれている。
【妹尾和子=文、佐藤慎吾=撮影】
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