団地には「子どもの笑顔」が一番 千里青山台団地(2)
5.千里青山台団地 大阪府
「多様性」がキーワード みんなでこれからの団地を考える
昭和40年代、憧れの団地暮らしには希望があふれていた。
そして今、50歳になった団地では、多様な人々がゆるやかにつながる、新たな団地の価値づくりが始まっている。
古い団地の価値を向上させたい
「古い団地には、新築の物件には真似することのできない良さがあります。それを生かしながら、今の時代に合ったコミュニティーをつくり、ソフト面からも団地の価値を上げていこうと、自治会の方々と話し合っているところです」と語るのは、UR都市機構西日本支社の団地マネージャー・田宮正太。
青山台団地では、これまで運動会や餅つき大会などを行ってきた。近年はさらに地域活動をブログで発信したり、お住まいの方がローカルFMに出演し、団地の良さを語るなど、地域の魅力発信にも積極的に取り組んでいる。
団地50歳を祝う今回のイベントは、この団地を含む青山台地域全体のこれからを考える第一歩と位置付けられた。ここで新しい知り合いをつくり、コミュニティーが広がるきっかけにしたいと、自治会と周辺の戸建て住宅地域の自治会が企画して開催した。
青山台公団住宅連合自治会の会長を務める柳田康人さん(49歳)は、家族でこの団地に住んで15年。9年前から自治会の活動に参加しはじめたところ、「いろいろな人が住んでいる団地の面白さに目覚めた」と言う。
「これからの団地に必要なのは、多様性ではないでしょうか。例えば外国人やシングルマザー、高齢者から子どもまで、いろいろな方が気軽に住めて、居住者同士がゆるやかにつながっている。住んでいる人々が、愛着がもてる。そういう団地に、これからの新しい希望を紡いでいけるのではないかと思っているのです」
こう話す柳田さんは、仲間とともに、もう来年のフェスティバルの企画をあれこれ考え始めている。
新しいコミュニティーをつくる「みんなの庭」を考えてみた
5月24日には千里青山台団地で「建築家・伊東豊雄とみんなの庭を考えよう」というワークショップが開催された。
当日の参加者は、就学前の子どもからシニア世代までの約20人。会場の団地集会所のテーブルには、木片やビニールテープ、フェルトや竹串などさまざまな材料が用意された。ここで大学生のサポートを受けながら、みんなが使えて集まれる、楽しい庭の模型を作り、全員が発表した。
「秘密基地」「屋上ビアガーデン」「坂を使って流しそうめん」「みんなが集まれる足湯」「ブドウを栽培して、そのブドウでワインをつくる」などなど、アイデアはどれもユニークで楽しいものばかり。
伊東豊雄さんは、「団地の皆さんは、人と出会うきっかけを求めているのではないかと思うんです。団地の中に花壇や畑や、今回提案されたような『みんなの庭』があれば、その前を通るときに、自然とあいさつを交わし、声をかけるきっかけになるのでは」と企画の意図を語る。
UR都市機構の担当者も、「ぜひ実現させたいアイデアばかり。これから何回かこういった集まりを重ねていって、新しい団地のコミュニティーづくりのきっかけにしたい」と意気込んでいる。
【武田ちよこ=文、佐藤慎吾=撮影】
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