三鷹市民センター周辺地区プロジェクト
三鷹市は、東京都のほぼ中央に位置し、緑豊かな住宅都市として発展してきました。新川防災公園・多機能複合施設(仮称)は、平成21年度に基本プランが作成され、平成25年度から施設整備に着工し、平成28年度完成しました。UR都市機構の防災公園街区整備事業を活用した当地区の特徴やスキームは、どのようなものなのでしょうか。事業に携わっている皆さんにお話を伺いました。(このインタビューは事業実施中の平成24年度に行ったものです。)
UR都市機構
菅原 恒一(すがわら・こういち)
東日本都市再生本部 第6エリアマネージャー市街地整備第2チーム主幹
平成23年7月から、主に事業総括、権利者調整等に携わる。
UR都市機構
山本 岳(やまもと・たかし)
東日本都市再生本部 第6エリアマネージャー市街地整備第2チーム主査
平成23年7月から、主に事業計画、予算管理等に携わる。
三鷹市
山中 俊介(やまなか・しゅんすけ)氏
三鷹市 企画部 都市再生推進本部事務局主査
平成21年4月から、主に事業計画、都市計画等に携わる。
三鷹市
堀部 忠佑(ほりべ・ただすけ)氏
三鷹市 企画部 都市再生推進本部事務局主事
平成23年7月から、主に事業計画、広報等に携わる。
Period01 三鷹市とUR都市機構とのパートナーシップの構築
市の財政負担を抑制しながら
効果的に事業を進める計画を採用
山中氏
三鷹市では、防災拠点の強化と老朽化した体育館や福祉会館など公共施設の機能更新・再編が喫緊の課題になっていました。公共施設のなかには、築年数が40年を超える建物もあり、老朽化に加えて耐震性の問題も抱えていました。そのような状況下、市役所の東側に隣接する東京多摩青果(株)三鷹市場が移転することになりました。市としてはその土地が災害時の一時避難場所となっていることもあり、まちづくりに活用したいという意向を持っていましたが、土地を一括して取得することは、市の財政上難しい状況でした。そこへ、市の財政的な負担を平準化しつつ、防災拠点となる公園と老朽化した公共施設の集約化を一体的に実現できる防災公園街区整備事業による整備スキームの提案をUR都市機構さんから受けました。三鷹市が抱える公共公益施設の再編整理と防災拠点の整備、スポーツ施設等による交流拠点等の整備といった課題を一気に解決できるスキームということで、UR都市機構さんと協働したまちづくりを進めていくこととしました。


UR菅原
防災公園街区整備事業では、UR都市機構が事業用地を取得し、防災公園として整備した後に地方公共団体に譲渡する仕組みになっており、まちづくりのための用地を機動的に取得することが可能です。また、一般財源部分の割賦制度の活用、機構の補助金枠の活用等により、地方公共団体の財政負担を平準化しながら効果的に事業を進められるといったメリットがあります。

UR山本
本事業の特徴的な点は、UR都市機構と三鷹市さんが互いに連携・協働しながら実施しているところです。防災公園は本来、地方公共団体が整備するものですが、本事業では三鷹市さんの要請に基づき、UR都市機構が三鷹市さんに成り代わって事業用地を取得し、公園や施設の設計から施工まで、通貫で事業を実施します。これがUR都市機構の大きな役割です。一方、三鷹市さんは施設の用途等について市民の皆様のニーズをくみ上げて計画に反映したり、積極的な情報発信や認知度向上の取組みを行っています。UR都市機構も事業のPRに協働で取り組んでいます。公園と施設が完成したら三鷹市さんに引き継いでオープンとなりますが、プロジェクトの実現には最後まで両者の連携・協働が不可欠です。良好な関係のもと意思疎通をしっかり図りながら、事業を進めています。
堀部氏
情報発信や認知度向上についてですが、市のホームページで紹介しているほか、毎月発行される市の広報誌で連載の特集という形で事業の詳細を掲載しています。本事業の基本的な方針である基本プランを平成21年度に作成した際にはパブリックコメントを実施し、また、基本設計の検討にあたっては、無作為抽出や公募で選ばれた一般の市民の方や関係団体の代表者などから組織される検討委員会をつくり、皆さんの意見を反映しました。検討委員会では、「複合施設のメリットを最大限生かすべき」といった要望からプールのレーン数といった細かな点に至るまで、さまざまな要望やご意見が寄せられました。

Period02 公共施設の再編整理
地下空間を活用した
新しい発想の公共施設

UR菅原
事業区域の中央部には災害時の一時避難広場を設置し、その西側と東側にも小規模な広場が整備されます。この東側の広場には、災害用のトイレや水を確保するための井戸、炊き出しスペースが設けられます。また、防災公園として、備蓄倉庫のほか、周囲が火事になったときに延焼を防ぐ防火樹林帯も備えられています。こうした防災機能の整備に加え、周辺に位置していた老朽化が進む体育館、福祉会館、社会教育会館、総合保健センターなどを、当地区に移転・集約させ、公益施設の機能更新を図る計画になっています。
UR山本
UR都市機構が提案した計画は、地下空間を活用していることが特徴の一つでもあります。既成市街地の貴重な土地をうまく活用しながら、周辺の老朽化した公共施設の機能をどこまで盛り込めるかが重要でした。そこで、防災公園の地下部分にスポーツ施設を設けるといった合理的な土地の利用方法を提案しました。防災公園街区整備事業で、こういった事例はなかなかありません。
堀部氏
本事業の設計は、市民参加により市民の皆様の意向を反映して進められてきました。平成24年度には、新川防災公園・多機能複合施設(仮称)の模型や事業概要のパネルを、市民ホールで展示しました。1,500名を超える市民の皆様に来庁していただき、皆さんから「早くできて欲しい」、「今までにない施設なので完成が楽しみ」といった期待の声が寄せられています。完成後、公園内のスポーツ施設や多機能複合施設はあらゆる年代の方々が利用する予定です。健康づくり・スポーツ活動の拠点としてはもちろん、地域コミュニティや交流の場として親しまれる空間を目指しています。

多機能複合施設という形で
公共施設を集約し市民へ提供
山中氏
市街地部分に整備される多機能複合施設には、総合保健センターなどのほか、市の防災課も移転し、地震等の災害発生時には防災拠点として機能します。新施設が単なる複合施設にならないよう、どのようにして各施設が連携するかが運用面で重要だと考えています。
堀部氏
これまで個別に建っていた複数の公共施設を新施設に集約するため、効率的・効果的な管理運営の実現には、それぞれに設けられていた開館時間などを、できるだけ均一化する必要があります。施設が出来上がったのちの運営方法についてとりまとめるのが難しい点ではありますが、ぜひ実現させて市民サービスの向上に貢献したいと思います。

山中氏
これからの時代は、公共施設を減らしていく考えの自治体が出てくるかもしれません。ただ、現に市民サービスを提供している施設をなくしてしまうことは、行政としては難しい判断なのではないでしょうか。本事業では、公共施設の再編整理という大きなテーマを防災公園及び多機能複合施設への移転・集約という形で達成でき、併せて効率的な管理運営により、ランニングコストの低減を図ることを目指しています。
Period03 プロジェクトの成功に向けて
実績やノウハウを活かしながら
平成28年度の完成を目指す
堀部氏
UR都市機構さんと三鷹市は、日本住宅公団時代から半世紀にわたるお付き合いです。これまで密接な協力関係を構築し、協働でまちづくりを推進してきました。UR都市機構さんが全国の都市再生で培った豊富な実績やノウハウ、マンパワーは大きな魅力ですし、本事業を推進するうえで非常に重要なものだと考えています。

UR菅原
UR都市機構としては、今後、市民の皆様に当事業へのご理解を深めていただくため、三鷹市さんと連携してさまざまな情報発信を行っていきたいと思っています。
UR山本
三鷹市さんの一大プロジェクトであり、期待の大きさを実感しています。その期待に応えられるようUR都市機構として、部門横断的に鋭意取り組んでいるところです。実施設計を終え、都市計画や事業着手の法手続きも完了し、これから工事着工の段階ですが、スケジュールを着実に遵守し、施設の引渡しや公園のオープンにつなげられるよう全体制で取り組んでまいりたいと思います。
堀部氏
私は、三鷹市の一大プロジェクトに参加して、さまざまな場面でこの事業が取り上げられることもあり、日々、責任の重さを感じています。その反面、これまでにない公共施設ができあがるのではないかという期待感がありますし、完成したときには大きな達成感が得られると思っています。
山中氏
本事業は、三鷹市としては、これまで経験したことのない大きな事業です。これだけのプロジェクトは三鷹市としても最初で最後かも知れないと思えるほどです。UR都市機構さんは様々な事業に対する経験が豊富ですし、補助金の活用等にもノウハウがあります。まだ進行中の事業ではありますが、UR都市機構さんとのパートナーシップを心強く思いますし、人に恵まれた事業だと感じています。

三鷹市民センター周辺地区プロジェクト プロジェクト概要
プロジェクト名
三鷹市民センター周辺地区プロジェクト
事業の目的
防災公園街区整備事業を活用して防災公園の整備と公共施設の機能更新・再編を一体的に実現します

- 所在地東京都三鷹市
- 事業手法防災公園街区整備事業
- 区域面積約2.0ha
- 施行者UR都市機構
- 用途地域等準工業地域、第一種住居地域
建ぺい率60%、容積率200%