街に、ルネッサンス UR都市機構

押上・業平橋駅周辺地区プロジェクト

東京都墨田区 押上・業平橋駅周辺地区プロジェクト

押上・業平橋駅周辺地区は、平成17年度に土地区画整理組合が設立され事業がスタートしました。その後、東武鉄道の貨物ヤード跡地が新タワー建設地に決定し、当事業は日本中が注目するプロジェクトとなりました。河川と鉄道に囲まれた場所であり複合的な要素による課題が数多くありましたが、平成24年度に無事まちびらきを果たしています。事業に携わったお二人にお話を伺いました。

UR都市機構 櫻井邦夫×東武鉄道株式会社 津金正哲氏

  • UR都市機構
    櫻井 邦夫(さくらい・くにお)
    平成22年7月~平成25年3月、東日本都市再生本部第4エリアマネージャー 市街地整備第1チーム主幹。主に事業計画・事業調整に携わる。

  • 東武鉄道株式会社
    津金 正哲(つがね・まさのり)氏
    東武鉄道(株) 生活サービス創造本部 SC事業部 課長。平成23年4月~平成25年3月 まで、押上・業平橋駅周辺地区の区画整理事業等に携わる。

Period01 施行前の状況(~平成19年8月頃まで)

複数の主体による工事工程が交錯
高い調整力がポイントに

津金氏
津金氏事業区域には、2つの生コン工場のほか、平成5年に機能を停止していた当社の貨物ヤードがありました。そのため、都心における大規模な低未利用地として再開発が待たれていました。当事業は組合施行の土地区画整理事業で、法人4名・個人12名の合計16名の地権者がおり、当社は組合員最大の土地所有者であり理事長を仰せつかりました。UR都市機構に土地区画整理事業組合の組合業務を委託したのは、施行経験の豊富さはもちろんですが、公的機関として監督官庁である東京都から的確に補助金を導入し、確実に執行できるのではという期待からです。

UR櫻井
UR都市機構の役割は、調査設計、換地設計、地権者との交渉を含む移転補償関係業務のほか、工事発注・施工管理、事業の運営、そして事業収支の管理までをパッケージとして、事業全体を包括的に遂行することでした。土地区画整理事業のノウハウを提供し、補助金を適切に導入するという役割を担いながら、事業の実行部隊として動きました。平成18年3月には東京スカイツリーの建設地に決定し、商業施設等を含む東京スカイツリータウンの建設事業と土地区画整理事業を一緒に行うことになりました。名称としては土地区画整理事業ですが、実質的には市街地再開発事業に近いかたちでした。

津金氏
新たな街の計画の事業区域は、3つの街区で構成し、最も大きな街区でスカイツリーを中心施設とするプロジェクトを進め、新たな国際観光拠点の形成を目指すものでした。事業を施行するにあたって、監督官庁や権利者との調整力も非常に高いことがUR都市機構に委託した理由の一つです。

UR櫻井
東京スカイツリータウンの建設事業と土地区画整理事業、また、事業地区に隣接して東京都が行う河川・道路・下水道工事、隣接河川の修景整備や周辺道路の整備を墨田区が行っており、複数の主体による工事工程が交錯しました。複数の事業主体の作業動線が重なるため、各事業の工程を調整するため定期的に調整会議を行うことで、課題の解決を図りました。

インタビューの様子

Period02 一大プロジェクトに向けて(平成19年9月頃~平成24年4月頃まで)

生コン工場の移転先探しと
事業費増額への対応に苦心

津金氏
事業の序盤では、生コン工場の移転先を決定するまでに苦労しました。生コン工場の移転が遅れると補助金の執行のみならず、事業全体のスケジュールにも影響が出てしまいます。我々も、生コン工場の移転先を探すため、地図を片手に歩き回ったことが印象に残っています。それが一つのきっかけとなり、移転の話が加速しました。こうしたことから権利者のご理解を得られるようになり、結果として補助金執行や工程に影響なく事業を進めることができました。

UR櫻井
無事に生コン工場の移転先が決まり、平成19年度と20年度に生コン工場が移転され、21年度には東武鉄道の本社屋が移転しました。この3年間は毎年大きな移転があり、UR都市機構も東武鉄道も大変な思いをしました。ただ、お互いにこの一大プロジェクトを責任をもってやり抜こうという気持ちが強く、その熱意が乗り越える力になったのだと思います。

津金氏
事業費増額に係わる対応にも悩まされました。地中障害物撤去など想定外の工事に費用がかさみ、1円単位での工事費のコストダウンを図りました。また、収入を確保すべく監督官庁と協議を重ねて、補助金増額を得ることができ、資金計画の見通しが立ちました。

UR櫻井
土地区画整理事業を施行するにあたっては、事業費を執行管理しながら、補助金を適切に活用することが重要です。基本的に補助金は年度を繰り越すことはできません。また、リスクは組合が負う仕組みのため、事業費が増えた場合、組合員が負担することとなります。つまり組合員の財産を大きく損ねてしまうので、当事業では事業費の管理という点において今まで以上に緊張しました。受託という形で事業に参加したことで、UR都市機構としても新しいノウハウを獲得することができたと思います。

東武鉄道の社運をかけた事業を、UR都市機構と二人三脚で推進

津金氏
UR都市機構には公的機関としての中立性公平性があります。移転補償の交渉など、個人地権者との協議・調整は、UR都市機構にお任せしました。

UR櫻井
個人地権者の方々は、戦災復興に伴う区画整理に続いて2度目の区画整理でした。なかには、当事業に巻き込まれたような感覚をお持ちの方もいらしたと思います。そこで、新たなまちづくりが必要である理由をきちんとお話しし、ご理解いただけるまで根気強く説明しました。何度も足を運び話し合いをすることで、信頼関係を築けたのだと思います。

インタビューの様子
事業完了後の様子

津金氏
理事会や総会ではUR都市機構が作成した資料を配布しましたが、いつも懇切丁寧な内容で、専門的な知識のない組合員が見てもわかりやすいものでした。そういった点も個人地権者に評価されて合意形成がスムーズに進んだのだと思います。また、組合事務所に常駐していたUR都市機構の皆さんは、単なる業務受託者という立場を超え、当事者意識を持って組合と二人三脚で事業を進めていただきました。事業に対する知識や経験が豊富で勉強になりましたし、壁にぶつかるような局面では、打開に向けて知恵を貸していただきました。国をはじめさまざまな主体ともパイプを有しており、これはUR都市機構ならではの強みだと思います。

UR櫻井
当事業では、もっとも大きな権利をもつ東武鉄道がリーダーシップをしっかりとれるかが大きなカギでした。東武鉄道さんにとってはまさに社運をかけた事業だったと思います。組織としてこの事業を進めようという意思の強さを感じましたし、熱意が伝わってきました。

Period03 事業を完了して(平成24年5月以降)

駅拠点をリニューアルし、
東京東部地区のにぎわいを創出。

津金氏
東京スカイツリータウンの建設だけでなく、道路や駅前広場、水道や電気などの基盤整備も予定どおり進み、まちびらきができてほっとしました。また、安全・安心を事業の根幹とする鉄道会社としては、無事故で全ての工事が進められたことも大きな喜びです。低未利用地だった土地を見事に再生し、スカイツリータウンを訪れるお客さまの数を見ても、UR都市機構と取り組むことができて、本当によかったと感じています。

UR櫻井
スカイツリー完成後は、個人地権者の皆さんを展望台へご招待しました。また、区画整理組合の解散が2013年3月ということもあり、まちびらきの後も何かとお会いする機会があります。今では、「自分は事業の関係者だった」という一種の誇りのようなものが個人地権者の皆さんから感じられます。東京スカイツリータウン建設事業と土地区画整理事業を一緒に行った当事業は、これまでにはなかった特殊な事例でした。ただ、都心回帰が起こり始めている今、駅拠点の時代に突入することが考えられますし、この押上・業平橋駅周辺地区がプロトタイプになっていくのではないか、と感じています。

事業完了後の様子

津金氏
当社としても、駅拠点の再生は今後も必要になると思いますし、引き続き東京東部地区や沿線のにぎわい創出に寄与できればと考えています。ほかのエリアにおいても、UR都市機構であれば地方公共団体などとの連携により、円滑に事業を推進できると信じています。UR都市機構の活力ある街づくりを通じて、日本全体が元気になることを願っています。

東京都墨田区 押上・業平橋駅周辺地区プロジェクト プロジェクト概要

プロジェクト名

押上・業平橋駅周辺地区プロジェクト
事業の目的

道路・駅前広場等の基盤整備と、東京スカイツリーを中心とした商業・業務・文化等の機能を導入した広域拠点の形成。

押上・業平橋駅周辺地区プロジェクト
  • 所在地東京都墨田区
  • 事業手法土地区画整理事業
  • 区域面積約6.4ha
  • 施行者押上・業平橋周辺土地区画整理組合
  • 用途地域等商業地域、建ぺい率80%、容積率500%
  • 権利者数16名
  • 全体事業費約100億円

プロジェクトインタビュー

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