街に、ルネッサンス UR都市機構

審査講評

今回で2回目を迎える「東日本大震災 復興フォト&スケッチ展2015」には、多くの作品が寄せられました。一つひとつの作品に、復興へ向けての強い思い、明日への希望が込められています。そのような作品に触れ、審査員の皆さんはどのような思いを抱いたのでしょうか。各賞の受賞作品を紹介するとともに、審査の風景をお届けします。

総評

大西 みつぐ氏(写真家)

写真、スケッチともにたいへん見ごたえがありました。今までの復興の年月を通してみると、穏やかな写真が連なっていることが今年の特徴ではないかと思います。このような作品の中に現地の皆さんの気持ちを表す笑顔の作品もあり、ほっといたしました。復興の歩みにおいて、写真を撮り、記録として残していくことは、後に地域の記録として生かされると思います。

千葉 学氏(建築家)

写真やスケッチ全体を通して、この1年の間に着実に復興が進んでいることが感じられました。日常生活に前向きに取り組んでいる姿を切り取った作品の数々を見るにつれ、皆さんの気持ちの変化も伝わってくるような思いがします。地域によって状況は様々ですが、そうした中でも確かな希望というものを感じることができました。復興のドキュメントとして今後もこの作品展が継続され、すばらしい作品に出会えることを期待しています。

なかだ えり氏(イラストレーター)

復興への歩みは、この1年で作品のテーマや切り取り方が大きく変わったように思いました。震災後に被災地の皆さんの心を支えてきたものから卒業して、次に進むための一歩を踏み出すことができているのではないでしょうか。5年という一つの区切りを迎え、写真やスケッチに表現された風景の変化を通して、現実的な進歩を感じることができました。

池邊 このみ氏(ランドスケーププランナー)

鎮魂の意味が込められた重い作品が多くみられた昨年に比べ、今回はさまざまな要素を含む作品が多かったように思います。なかでも、東北の豊かな自然に目を向けて描写をした生き生きとした作品が印象に残りました。被災地の皆さんの復興に対する様々な気持ちが、少しでも日本中の人に伝わることを願っています。

復興の歩み大賞 フォト 「復興への戦い」

大西 みつぐ
今回応募された作品には、工事現場の役割がそろそろ終わるとか、元気が出てきましたというようなメッセージもいただいているようですね。復興現場の雰囲気そのものが表れていなくてもいいのかもしれません。写真だからこそ、そうしたとらえ方ができるのではないでしょうか。
千葉 学
昨年からすれば1年というわずかな時間ですが、その間に着実に復興は進んで、皆さんの気持ちもそれぞれ変わってきていると感じられました。住まれている方々、被災地の方々だけではなく、写真を撮る方々の気持ちも変わってきているということが写真を通じてわかり、大変よかったと思っています。

復興の歩み大賞 スケッチ 「静かな夕暮れとそこにある生活」

なかだ えり
新居に引越されるので、今回の作品を描かれたということですが、仮設住宅は悪い面もあったと思いますが、4年間で次第に馴染んできて、次に進むステップを踏み出す今、これまでの生活に感謝する気持ちが伝わってきます。
震災から4年、5年たち、一つの区切りを迎えつつあることを強く感じました。
風景の変化についても区切りかな、と感じます。忘れがちとはいわれますが、やはり復興は着実に進んでいるということもわかりました。

復興の歩み賞(大西 みつぐ 選) 「朝活の田んぼに映る空」

なかだ えり
素敵な写真だと思います。
大西 みつぐ
あたりまえの風景をこれから大事にしていこうという気持ちが今続いていることが大事なんだと思います。米が実ったり、空を見上げたり、田んぼを常に見ていくことなどが大事なのではないでしょうか。メッセージには、朝4時半からのウォーキングを始めて20日間ということで、人気のない朝に一人でウォーキングをしていると、こうした朝を迎えることが特別なご褒美になると書いてありました。そこに、個人のたしかな目線があるということなんだと思います。

復興の歩み賞(千葉 学 選) 「私たち元気です」

千葉 学
流されずに残った基礎だけがあるような風景に腰かけてはいるものの、手に持っているものは草を刈る道具なんですね。
非常に前向きにさまざまな生活に取り組んでいることがよく伝わってきて、大変うれしく思いました。
ただ、その一方で、震災から間もなく5年になろうとしている今、復興の状況については、地域によってばらつきが出てきているのかなと感じられる写真も何枚かあり、複雑な思いで見ました。
大西 みつぐ
ご夫婦の笑顔を見て、ちょっとほっとしました。カメラを持って皆さんの輪の中に飛び込んで行くことは、現地にいる皆さんができる一つの復興の証だと思います。
カメラをコミュニケーションの道具として役立てていく努力も必要なのではないかなという気がします。
また、そうして撮った写真はいずれ、地域のアーカイブとして生きてくるのではないでしょうか。

復興の歩み賞(なかだ えり 選) 「さよならマリンピア」

なかだ えり
若い男性の作品なんですね。さよなら感と夕暮れが合っていて、絵がとてもお上手だなと思いました。閉館したとのことで少し悲しい気持ちも感じられます。
大西 みつぐ
メッセージに、「おつかれ様という気持ちと移転先の新水族館への期待をこめて」と書いてありますね。
なかだ えり
たしかに、おつかれさまの感謝や温かさ、前向きな激励までが伝わってきます。

復興の歩み賞(池邊 このみ 選) 「浦の浜防潮林」

池邊 このみ
海の色がきれいですね。今回は被災地においても自然がきちんと出てきている作品が多いように感じられますね。
写真では田んぼや防潮林を写していたり、スケッチでは仮設の後ろに夕映えと樹木が山の端と一緒に描かれていたり…。
東北の多様な自然のなかで生活していらした方々が人工的な空間の中に押し込められて非常に苦しい思いをなさっていたのが、解き放たれるように、自然や空気、空、水などに目を向けるようになってきたのではないかと思います。

復興の歩み賞(UR都市機構 選) 「孫だくさん」

池邊 このみ
高齢者の方に対してみんなが暖かく笑顔で、しゃべりかけていて、それを受け答えられる高齢者の方も笑顔でいるという1コマがとても印象的です。
また仮設住宅が、血の通ったコミュニティの場所として根づいてきている、そういう空間の暖かさみたいなものがより伝わってくるような感じがします。

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