街に、ルネッサンス UR都市機構

街みちネット 第20回見学・交流会 「百反通り拡幅整備における土地交換と共同建替え」

これまでの活動の紹介

活動議事録

講演2「百反通り拡幅整備における土地交換と共同建替え」

川島 康弘 氏(独立行政法人都市再生機構 東日本都市再生本 部事業推進部 業務推進課 主幹)
戸越一・二丁目地区の課題と都市再生機構のまちづくり事業への参加
  • 先程ご説明がありましたが、戸越一・二丁目地区の建替え促進・細街路整備と、地域の積年の課題であった百反通りの拡幅整備を、URは品川区よりコーディネート業務として受託していました。約15年前の当時、私がURで当地区を担当しておりましたことから、本日ご説明をさせていただきます。
百反通り拡幅整備における土地交換と共同建替え 街みちネット第20回見学・交流会
  • 都市再生機構、当時の住宅・都市整備公団と品川区は、平成11年に「戸越一・二丁目まちづくりに係わる事業協力に関する基本協定」を締結し、まちづくり協議会の運営支援や建替え促進の業務、百反通りの拡幅整備と沿道地権者の生活再建の推進業務を平成10年から平成14年まで受託していました。
百反通り拡幅整備における土地交換と共同建替え1
百反通り拡幅整備における土地交換と共同建替え2
  • こちらが品川区の土地にURが建物をリースして建てた、最初のまちづくり事務所です。こちらで写真にあるような懇談会や、百反通りの地権者の方との協議、また個別の調整事を行っていました。
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大崎4-13街区の従前状況と整備パターンの検討
  • 大崎4-13街区は西に東急池上線と国道1号線があり、南側が百反通りに面しています。当時幅員6mだった百反通りの状況がC、D、Eの写真からわかると思いますが、道路に密接して2階建て木造建物が並び、玄関を開けると目前が道路という状況でした。百反通りは対面通行であり、国道1号からの交通量が非常に多く、飛び出た電柱にさえガードレールの役割があると住民の方が言う様な、危険な状況でした。
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  • 沿道地権者の構成は、大崎4-13街区西側の図の白抜き部分は整備範囲から除外となり、赤色が土地建物所有者、水色とピンクが大地主さんの所有する土地で、ピンクは大地主さんが駐車場として自己利用されていました。水色の部分には8者の借地人さんがいて、3つの建物⑦は工場として使われており、他は木造の自己居住や、借家人がいるアパートなどでした。図の百反通りの北側に拡幅のラインが見えると思います。大崎4-13街区の側に片側拡幅でしたので、幅員6mを11mに拡幅するということは5m後退しますから、残借地がかなり小さくなることが分かると思います。道路に面した借地のうち一番小さい①と②はテラスハウスのような2戸で一つの住宅で、借地面積が35㎡くらいでしたから、残借地による単独の再建は難しいということが分かります。
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  • まちづくり基本計画の作成は平成10年に行われ、そこからURも参画しました。それまで街区全体での一体整備と、再開発のような形を検討されていたという事ですが、参画時期に整備計画を受けて法定再開発とそれ以外の手法の検討行いました。地区の特性、権利者の意向、特に大地主さんの意向はかなり大きなところがあり、結果的に街区全体の整備から状況に応じた複数の小規模共同建替事業という現実的な手法に移行しました。
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  • 整備案検討の過程では、幾つかの整備パターンの検討を行いました。表の中央のパターンが最終的に実現されたものに近い形です。
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権利変換のプロセス
  • 各権利者の道路拡幅に係る問題点と、生活再建の方法を模式的にまとめたものです。紫色が共同化に参加をしたところ、黄色が転出、水色は地区内で個別建替えをしたところです。それぞれの意向がありますが、共同化せず個別で土地を利用したいというのが大地主さんの意向であり、借地人さんたちは残借地の面積がかなり小さく単独での生活再建は難しいという実態が一様にありました。一方で、3棟あった工場の借地人さんは単独での再建が不可能ではありませんでしたが、地主さんとの借地関係を解消したいという意向があり、今回、権利分かれをしての共同化に参加しました。黄色の転出者の中でB7の方は、S造で割と高い建物を建てたばかりなのに道路にかかってしまった方でしたが、転出の意向を示されました。結果的には東側に2棟の建物を建てる形になりました。
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  • 実際には一度に行われた土地交換ですが、プロセスを分かりやすく分割してご説明します。
  • 【プロセス①】品川区による道路買収と建物補償が行われました。道路買収による補償金が共同化や個別建替えの原資となり、小さな残借地について個別に残地補償をするのではなく、残借地を有効に利用していただく意味で、残借地補償がすなわち共同化コーディネートという様に整理されていたと思います。
  • 【プロセス②】大地主さんと借地人さんとの土地交換は次のように行いました。まず、最も大きい借地人さんの工場は単独での建替えを行いますが、小さい借地人さんの土地と重なるような形で共同化の土地の西側に移転するため、工場の残借地権と、一部の残借地の底地権と土地所有権に交換します。
  • 【プロセス③】続いて工場以外の方で交換地と重ならない方々の土地交換を行います。借地契約解消のための条件の調整、合意を取りつける調整は非常に難易度の高い行程でしたが、多くが仮移転の必要がなく無駄のない計画となりました。どうしても交換地と重なってしまう2軒半については、工場が底地も含めて買っているので、工場に対して残借地権を売るという形で借地権を解消しています。こちらは1年程の期間、品川区のコミュニティ住宅「ソレイユ戸越」に仮移転していただきました。このようなケースでは、コミュニティ住宅が非常に有効となりました。
  • 建物の床の権利は要らないという方は転出をされていますが、その際工場の借地人さんが共同化住宅にも権利を持ち、借家人さんを住まわせました。大規模な借地人の方が転出者分の権利を実態として買い支えており、事業として成り立った大きなポイントであったと思います。
  • 【プロセス④】最後に残った借地人さんについては、①品川区所有の代替地の所有権と残地の借地権を便宜的に交換し、一旦品川区が借地権を持ち、②同時に大地主さんが所有していた道路用地と交換し、③残借地の借地人さんが代替地に移って、大地主さんの土地を品川区が購入する形になり、地主さんは土地を一体利用できることになりました。三者交換のような事をしており、交換に関する金額で合意をするところが一つのポイントだったと思います。その他、賃貸アパートでは着実な借家人の立ち退きや、やはり品川区が代替地を豊富に所有していた事が大きかったと思います。
  • 【プロセス⑤】街区の西側の土地建物所有者の2軒は、双方ともどうしても土地が小さくなってしまいましたが、1棟は別の代替地を購入、再建していただき、もう1棟は隣の残地を購入、再建していただきました。ここまでで、共同化の建物と再建の住宅合せて3棟の新しい建物が建ち、後に大地主さんの土地にスーパーが建ち、地区内全てが新しい建物となりました。
  • モデル図で表すとこのようになり、権利関係も土地の形も整理されました。
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借地権精算に係る権利者合意事項
  • 借地権の清算に関する地主さんと借地人さんとの間の合意事項の調整が、この事業の根幹と言っても過言ではないと思います。最終的に双方に協定を締結していただきました。ルールはいろいろとありますが、主な部分を説明します。借地権割合、借地の土地全体に対する価値の配分ですが、木造建物については相続税の路線価が70%である地区でしたので70%、堅固建物であるS造以上に関しては保証料や存続期間が長い契約になりますので80%で合意いただきました。一方、これまで払った保証料の返還はしない。これは借地人に泣いてもらっています。借地権割合はどちらかというと、勝ち得たパーセンテージではないかと思いますが、保証料に関しては地主の方に大分有利なのではないかと思います。存続期間をまだ残した状況における金利の中での借地権の清算ですので、保証料の一部を返すという考えもあると思いますが、そこは借地人さんに譲ってもらいました。この様にアメとムチのようなものがありました。
  • また、交換対象となる各借地の評価も調整が難しいものですが、本件では道路事業における各借地の個別の評価というのがあり、これを基準として同じ単価で計算をすることができたので、合意形成が図りやすくなりました。
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  • 借地権交換手順「ステップ3」では交換契約を行いますが、一部の借地権者の方に関しては引き続き借地を使用した状態で交換地での建設に着手しました。交換地で建設を進めつつ従前の借地を使い続けるという一つの手法ですが、代わりに(4)で継続使用する借地人が損料、すなわち借地の賃料相当を地主さんにお支払いする。それから工事が始まることで地主さんは駐車場の営業ができなくなるので、その分の損料も補填しました。この様に決め事を定め、ようやく合意形成にこぎつけました。
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借地権精算スケジュール
  • スケジュールを見ると、交換契約は平成13年11月頃行われ、平成13~14年に借地交換されています。Aグループが仮移転をしていただいた方で、道路買収の契約と交換契約を同時に行い、建物が建つまで仮移転をしていただきました。Bグループは従前の借地でそのまま借地使用継続し、建物が建ってから移転して解体しました。その間の地代を損料という形で継続居住のBグループが払い続け、交換地での営業損料は借地人の方皆で負担をしました。
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税務処理に係る基本方針
  • 税務処理は道路部分と残宅地の部分に分けて処理をしています。道路部分は収用特例の5,000万円控除や代替資産を取得した場合の課税の特例を適用しました。残宅地の部分はそれぞれですが、地主さんの所有権の交換に関しては固定資産の交換の特例の適用を基本とし、なるべく譲渡所得税等がかからないような形で行いました。
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全体調整業務推進体制
  • 全体調整業務推進体制の図です。行政側の推進体制は品川区とUR都市機構ですが、UR都市機構の中にはコンサルがいて、専門コンサルとして補償コンサル、鑑定士、税理士などが携わっていました。
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合意形成プロセス
  • 合意形成のプロセスは、協議会レベル、地権者個人レベル、それから共同化に参画する方のみのレベルなど、グループ分け、段階分けして合意形成を図っていきました。特に共同化に参画する方に関しては、個々の事業力、従前の資産評価、今度どこに住みたいかという希望、それらを勘案し即した共同化の建物の計画を進めていきました。
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  • そのためにこのような個別ヒアリング調書を用意し、従前の状況と共同化した後の希望を書いていただき、これをもとに権利変換計画などを作っていきました。
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まちづくり事業参加から実現までの経緯
  • 経緯のまとめです。平成7年から事業が始まり、URは平成10年から14年まで参画いたしました。共同化は平成15年1月に竣工し、その後道路工事へと進みました。
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百反通り拡幅前後
  • 後程現地をご覧いただきますが、写真からも分かりますように、道路拡幅事業があった反対側についても自主更新が行われ、今では通りの両側に新しい建物が建ち並んでいます。歩道もなく危険であった道路が、今では歩道のある11mに拡幅された立派な道路になりました。そうなると、宅地の道路付けが良くなり資産価値も高まって、このように自主更新が行われるのではないかと思うところです。
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