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街みちネット 第20回見学・交流会 「戸越一・二丁目地区の密集市街地整備」

これまでの活動の紹介

活動議事録

講演1「戸越一・二丁目地区の密集市街地整備」

金子 良彦 氏(品川区 都市環境部 木密整備推進課 不燃化促進担当主査)
峰金 弘昌 氏(品川区 都市環境部 木密整備推進課 不燃化促進担当)
密集市街地整備促進事業の経緯
  • 戸越一・二丁目地区は、山手通り・山手線から近く南には戸越銀座商店街がある魅力のあるまちであすが、老朽住宅戸数密度や木造共同住宅率が高く、また細街路や行き止まり道路が多く、接道不良住宅も多く存在する密集市街地でした。平成5年度の東京都の地震に関する地域危険度測定調査では一番危険であるランク5であり、防災性能が低く消防活動が困難な地区で、公園等のオープンスペースが不足していることも課題でした。
  • こうした課題の改善のため、品川区では昭和58年から平成3年度頃まで調査を行い、平成4年にまちづくり懇談会を立ち上げて本格的に動き始め、平成5年から密集事業を開始しました。まちづくり懇談会は初めのうちは年に3~4回のペース(5年で18回)で開催し、後期は毎月開催する形で進めていました。相談会も最初のうちは年に1回だったものが毎月になり、毎週になり、まちづくりの速度を加速して進めておりました。途中、平成10年度の法改正を機に、独立行政法人都市再生機構と事業協力ができたことが大きかったのではないかと思います。
  • まちづくり懇談会では、地区内を皆さんで歩いて勉強したり、まちづくりの先進事例として東池袋地区の見学に行かれたようです。また、木造賃貸住宅の建替え紹介ビデオを作り、貸し出ししているようです。内容は2本立てのドラマ仕立てになっており、一つは木造賃貸住宅の建替え、もう一つは共同住宅と居酒屋の経営者の方が隣の美容院と共同で建て替えるというものです。また、まちづくりニュースを、年2~3回のペースで発行していました。
密集市街地整備促進事業の実績
  • 戸越一・二丁目の北側を東西に走る百反通りは、幅員11mに整備されていましたが、大崎4-13街区の前面のみ幅員6mで歩道もなく、度々交通事故も起きていました。また、交通量が多いためボトルネックとなっており、品川区では前々から大きな課題のひとつでした。平成5年度からの密集事業は、当初戸越一・二丁目のみを予定していましたが、この百反通りの拡幅整備工事を密集事業で解決できるのではないかということで、大崎4-13街区まで含めた区域が計画されました。
  • 密集事業はまず事業用地として土地を購入することから始まりました。「戸越ひだまり広場」の用地は南半分を公園、北半分を従前居住者用住宅に整備しました。現在は10戸全てが空きなく利用されており、1戸は東日本大震災の被災者用住宅として確保していました。事業の途中段階でまちづくり事務所として使用していた場所は、後に「宮前坂広場」として整備しました。「戸越二丁目広場」は、戸越二丁目公園の隣のアパートを買い、合わせて公園として整備することにより、前面の区道と私道を結び行き止まりを解消しています。
  • 当初、事業は平成5年からの10年計画でしたが、大崎4-13街区と百反通りの拡幅整備の進捗に合わせて3年延長し、平成17年度まで行いました。その間、密集事業は行政側で整備するもの、助成金により建替えを促進するもので進めていましたが、途中ある程度の目途がついた段階で地区計画の検討を行いました。後程ご紹介します街並み誘導型地区計画は、平成11年度から検討が始まり、平成14年度に都市計画決定を受け、その後平成15年度、17年度と2度に亘って地区整備計画区域拡大の都市計画決定を受けています。整備内容は右上の表通りで、A建替助成が11棟、B従前居住者用住宅が「ソレイユ戸越」で1棟10戸、C公園広場の整備が前述の3か所、D行き止まり道路の解消が2か所、E百反通りの拡幅整備と共同化事業、F地区計画の策定は戸越一丁目地区のみ15haを整備しています。
まちづくり懇談会
  • 平成11年度から始まった地区計画の検討では、戸越一・二丁目地区の皆さんで見学会や勉強会等々を行ったそうです。ここで特徴的だったのが、早稲田大学のご協力を得ることができ、学生さんが模型をつくり小型カメラを使用して、ビジュアル的に非常にわかりやすい手法で検討会を行ったことでしょう。参加者も大変多く、まちのいろいろな話ができたことは、今回の活動の中での一番の特徴であったと考えています。
街並み誘導型地区計画による建替誘導
  • 非常に狭い細街路が多い当地区では、従来のままでは2世帯住宅を建てるのは難しく、賃貸住宅も事業として建てられず、そもそもの土地が狭いためセットバックするとまともに建物が建てられません。こういった建替え阻害要因の解消が地区計画検討のきっかけだったと聞いています。
  • 地区計画の範囲は図の外側の点線部分で、内側の点線は実際に地区整備計画がかけられている範囲です。先程説明をしました2度の区域拡大後の、現在の範囲です。内容は大きく3つあり、①壁面後退:建築基準法で定められている道路の境界から50cm建物を後退し、工作物の制限をかけ道路状空間を確保 ②最低限敷地面積:敷地の細分化を防ぐために60㎡以下にすることを禁止 ③街並み保存:中低層の街並みを形成するため、近隣商業地域は12m、住居地域は10mに高度地区を変更しています。
  • 街並み誘導型地区計画を導入していることは当地区の特徴でもありますが、実際に導入しているところは非常に少ないと聞いています。制限をかける代わりに緩和をしますという内容で、道路斜線や高度地区の北側斜線を撤廃して10mまで建てられます、その代わりきちんと50cm後退して下さい、というものです。前面道路の幅員が狭い敷地に従来の建築基準法によって建替える場合、従前面積の確保もできず、斜線制限により3階部分が斜めに削られてしまいます。街並み誘導型地区計画のルールに基づいて建替えた場合、容積率制限の緩和と斜線制限の撤廃により総3階建てでの建替えが可能となり、狭い敷地でも広い床面積を確保した家が建てられることになります。
現在の街並みの様子
  • こちらの図は平成25年時点のものですが、地区計画のルールにより建替えた建物を赤く示しています。この内、認定を受けたもの、受けていないものがあるのですが、現場に行っていただくとそれが明確に建物の形に現れているのが分かると思います。
  • 写真の一角は並びの家が全て建替わっていますが、認定を受けたものは中程の1軒のみで、それ以外は認定を受けずに建替えています。
  • 次の写真は二項道路のセットバックに加えて50cm後退した壁面の制限と工作物の設置制限の様子が見てわかると思います。後退した空地は道路と同じ高さに仕上げることとなっています。実際に現地を見ていただくと、道の左右が建替わっている場所などは狭い所から急に広くなっているのが分かります。この差は歴然としていて、実感いただけると思います。

質疑応答

質問1
  • 街並み誘導型地区計画で斜線等が緩和されるという事ですが、認定申請をする建物、しない建物がなぜ異なってくるのでしょう。
  • また、地区整備計画区域が地区計画区域よりかなり絞られていますが、整備区域外の地区に関しても、建替えの際に緩和して欲しいという要望は多くあるのではないかと思うのですが、どの様なタイミングで広げて行かれるのかお伺いしたいです。
峰金氏
  • 申請者(建築主)に地区計画の届出を提出していただく際、区は認定の内容をご案内しますが、認定を受けるか受けないかは。申請者あるいは設計会社の判断に寄ります。用途やプラン、敷地面積などによって、認定は必要ないという方もいらっしゃるという事です。
  • また、地区整備計画区域をこれ以上広げるかについて、地元の総意があれば広げたいとは考えていますが、今のところ広げて欲しいという要望はないので、現時点では予定はありません。今後要望が多々上がってきたら、今の地区整備計画区域と同じような内容で進めるか、また別の形にするかなど、地元の方たちと相談をしながら進めて行きたいと考えています。
質問2
  • 認定申請するかどうかは建替える方、もしくは建築会社の建築計画によるということですが、認定基準の内容はどのような項目が定められているのか、可能な範囲で教えていただきたいです。恐らく防火規制や内装制限など、いろいろかけられていると思うのですが。
峰金氏
  • 認定許可は建築課が所掌しているため、詳細についてはお答えできず申し訳ございません。配布資料の「地区計画ニュース 保存版」の1ページ目の下の図で、緩和を受ける方は認定基準に適合するものであることの申請をするとあります。
  • (戸越一丁目地区では認定基準の中に、駐車・駐輪場を設ける場合は、区域内における避難、消防活動や周辺道路の交通に支障のない配置及び規模とすること、荷物の積み下ろし作業等のある建築計画の場合は荷捌き駐車場を設けることを定めている。)
質問3
  • 認定基準を受ければ、建築制限の緩和と言う「アメ」が受けられるということだと思います。地区計画のルール自体は守った上で、建築制限の緩和を受けない方は認定申請は必要ないという解釈でよろしいでしょうか。
  • もう1点、街並み誘導型地区計画をかけた後に不燃化建替えのペースは上がったのでしょうか。
峰金氏
  • はい。あくまで地区計画のルールは守っていただかなければなりません。それが「ムチ」の部分であり、更に認定申請をすることで緩和という「アメ」がありますよと言う話ですね。
  • 不燃化建替えの詳細な件数は調査しておらずお答えできませんが、建替が非常に難しかった場所で建替が行われている、進んできているという事は言えると思います。
質問4
  • 最低敷地の規模が60㎡というお話がありましたが、もともとの街並みの平均的な敷地の大きさがわかりましたら教えて下さい。
峰金氏
  • その様な調査資料がないので正確にはお伝えできませんが、現在品川区全体で地区計画の検討を行っている中で、60㎡くらいが妥当な数字かと思います。最低が70㎡では全く分筆が出来ず、60㎡未満だと密集の細分化が一層進んでしまう可能性があることから、品川区では60㎡と言う数字が平均的に使われている数字だと聞いています。

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