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街みちネット 第17回見学・交流会「関原一丁目地区におけるまちづくりとその歩み」

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活動議事録

講演2「関原一丁目地区におけるまちづくりとその歩み」

宇田川 実 氏(足立区都市建設部都市計画課係長)
宇田川氏
事業導入当時の状況
  • 現地を見学していただきましたが、事業当時、密集事業の導入前の状況は、バラックのような建物が狭い道路に密集して建っておりまして、非常に薄暗く、怖いような雰囲気のまちでした。
  • それを、まずは防災の観点からまちづくりに取り組もうということで、買収除却やコミュニティ住宅の建設を行い、まちを一気に改造した時期がございまして、大きくまちが変わった状況を本日見ていただきました。
足立区の密集市街地の問題
  • 足立区の密集市街地の特徴といたしましては、道路が狭い、公共施設が未整備、狭小敷地、木造の老朽住宅、複雑な権利関係、接道がないということで、建替えができないところもかなりあります。また、建替えたとしても、木造住宅の再生産がなされ、建物の老朽化が一層進むという状況があります。
  • また、若い世代の地区外への転出や、複雑な権利関係で建替えできない状況、また、狭い敷地、建物で、子どもさんたちが一緒に住むことができず外へ出てしまうということで、人口の減少も起きていました。超高齢化、人口減少社会と言われていますが、密集地域では当時からこうした問題がありました。
  • 最近では、これらの問題に加えて空き家の問題があります。特に密集市街地は老朽住宅が多く、改良できる空き家がなかなかないのが現状で、老朽空き家が問題となっております。子どもさんたちが出ていった後、相続をするのはいいのですけれども、建替えられない住宅を相続してしまうと売ることもできない。壊すとお金もかかりますし、壊した後、更地にすると、税金が6倍ぐらいにはね上がってしまうため、空き家が放置されているのが現状だと思います。今、私は密集市街地の空き家に対して非常に興味を持っていまして、逆に、空き家の問題が密集地区のまちづくりのきっかけにならないかなと考えているところです。
  • そうした中で、改善意欲の低下、まちに活気がなくなる、衰退していく、ますます人口減少に拍車がかかるというような悪循環が起き、これを密集スパイラルと呼んでいますが、これをどこか断ち切りたいと常々考えているところです。
密集市街地整備の考え方
  • 密集市街地の整備ということで、防災性の向上と住環境の整備を総合的に図るために密集事業がなされてきています。修復型のまちづくりとしてコミュニティを重要視したまちづくりが進められてきていますが、これは、大規模地震時に備えて、地域の震災復興にも協議会の経験を生かすことを見据えて進めていくのが重要ではないかと思っております。
  • それから、この密集事業に加えて、密集スパイラルを断ち切る連携施策も必要ではないのかと考えております。
  • 連携施策の1つとして、道路を道路事業で確実かつ迅速な整備をするということがあります。建替えとともに進めていくと言っていますが、最近では道路事業により密集事業がスピードアップすると言われているところもあります。道路整備は、道路事業として進めるか、整備の委託、URさんがこうした事業に取り組んでおられますが、そうした手法なども考えていかなければいけないと思っております。
  • また、空き家や無接道敷地の老朽建築物の除却・建替えの促進。そのためには建築の施策や税制、先ほど申し上げた老朽住宅を除却した後に税金がはね上がらないような施策が必要ではないのか。
  • それから、超高齢化社会の中、高齢者が安心して生き生き暮らせるようにできなければ、まちづくりが進んでいかないのではないかということで、福祉・住宅・交通の施策とも連携していかなければならないのではないかと思います。
  • 千住仲町地区は、事業当初、高齢化率が20%を超えており、密集事業を進めるだけでは地域の方が納得していただけないというような状況の中で、高齢者が生き生きと暮らせる、また、再建意欲を持っていただくようにということで、高齢者のためにいきいき部会を設置して、一緒に事業を進めてきたという経緯がございます。
  • また、人口減少が進む中、建替えにより若い世代を呼び戻すということで、規制緩和・共同化とありますが、やはり狭い敷地で小さな住宅で、三世代が住めない、二世帯が住めないというようなところを建替えようとすると、セットバックでますます住宅が小さくなってしまう。これを規制緩和して、先ほどの防災街区整備事業の説明にあった通り、建ぺい率や容積率の緩和なども考えて、建替えられるような希望を持っていただくことも必要ではないのかと思っております。
  • そのほか、延焼遮断帯の形成のための都市計画道路の整備促進、木造建築の再生産を断ち切る不燃化促進のために、準耐火建築以上の規制を入れることなども必要であろうと考えています。
  • 道路を広げて不燃化を図りますというだけでは、なかなか地元の方々に理解が得られないということもありますので、足立区ではこうした連携施策も考えて進めていくことを考えております。
  • 密集市街地整備事業は、先ほどご紹介がありましたが、区内4地区で進めてきています。
関原一丁目地区の取組み
  • 関原一丁目地区は、事業導入当時は非常にバラックが多い、道路が狭い地域で、住・工・商混在であることが特徴でした。
  • 事業区域は13ha、事業期間は昭和62年から平成25年度まで、事業概要としては、道路拡幅等整備は12路線、公園・広場・プチテラス整備11カ所、老朽住宅の買収除却は87戸、コミュニティ住宅は7棟68戸、住・工・商混在ということで、工房館という施設に従前居住者の作業場を併設したという特徴があります。
  • 平成元年から14年まではコミュニティ住宅の建設を行いました。バラックのようなところを一気に10棟、20棟、買収除却しまして、道路の拡幅や不燃化されたコミュニティ住宅の建設を行い、まちが大きく変わった時期です。
  • 私は平成14年から担当になりました。コミュニティ住宅の建設が一段落した段階でしたが、道路や公園の整備がいま一つ進んでいなかったので、コミュニティ住宅で活用した買収除却のノウハウを道路拡幅に活用して、一軒ずつ改めて戸別訪問をして協力をお願いして、道路拡幅を重点化していきました。
  • その後、平成15年に密集法の改正がありまして、防災街区整備事業の創設や、防災街区整備地区計画も準耐火建築物で規制できるようになりました。それを受けて、足立区でも平成17年度に防災街区整備地区計画を、密集事業に取り組む3地区に一気にかけました。
  • それから、防災街区整備事業にも取り組みまして、平成25年、防災街区整備事業完了とともに密集事業を終了しました。
  • 現在、私ども都市計画課では、さらに広い地域を見ており、不燃化特区制度を全ての危険地域に導入、規制の緩和等も行い、建替えの促進をしていくと、全ての地域に準耐火建築物以上の規制をかけて、安全なまちになっていくというような施策を展開していこうと考えています。
  • 関原一丁目地区ではまちづくり協議会を137回開催しました。このうち、私は平成14年から47回ほど参加しております。協議会の活動は、まちづくりの調査・検討、施設計画の検討などで、本日見ていただいた公園の計画も、全て協議会、周辺の人と一緒に検討しながらつくってきました。こうした成果を評価していただき、東京都、国土交通省からまちづくり功労賞をいただきました。
  • こちらは、コミュニティ住宅です。
  • また、こちらは工房館、関原の森で、足立区での「まちづくりの発祥の地」と言っております。こちらは昭和の初めごろ、アメリカから宣教師の若い女性がいらっしゃって、東京の中でも劣悪な関原の地域を何とか改善したいと慈善事業、社会福祉事業を行ってきた場所でした。平成2年にその役割を終えて、足立区がこの事業の中で整備をしてきました。
  • 生活道路の整備については、道路整備を行うときに買収除却をしますが、足立区ではその時にL型側溝も一緒にセットバックをして、順次、道路整備を進めております。見える形で整備をしていくことで、整備の進捗がわかりやすくなります。
  • また、買収除却をしますと、権利者の方に家の建替えができるくらいのお金を渡すことができるので、やったほうがいいという地域の方の口コミが広まりまして、見て、聞いて、協力していただけるといういい循環ができて進んだという経緯があります。  また、行き止まり道路の解消ということで、2本の狭い行き止まりの二項道路を、現道のないところを抜いて、ループ状につないだ事例もあります。
防災街区整備地区計画について
  • 次に防災街区整備地区計画で、こちらは計画を立てる段階で方針を立てたものです。
  • ・密集事業終了後のまちづくりの継続を視野に入れて計画をする
    ・防火上の構造規制を行って、準耐火建築物以上の建物に建替えていく
    ・道路拡幅と沿道の建物を一体的に整備を行い、防火帯を形成し、避難路を確保していく
    ・生活再建のため、建ぺい率、容積率を緩和して再築できるようにして、三世代が住めるまちにしていく
  • このような方針を立てて、規制等を考えていきました。
  • まちの将来像は、まち全体を火に強いまちとして「健全な密集市街地」としていくことです。私どもは密集市街地が悪いのではなく、木造の老朽家屋が密集した状態が問題であると常々言っており、そこを解消していきたいということで進めてきています。
  • 防災街区整備地区計画は、道路と建築物が一体となって地区の延焼防止、避難路を確保するなどして地区の防災性の向上を図るものです。
  • 関原は、地区計画が二転三転し、最終的には道路は幅員5.5mに拡幅する計画になっております。6mを何とか確保したいということで、壁面後退をして、その壁面間で6mを確保するという考え方を取り入れています。6mという幅員は、不燃領域率などを考慮していますが、道路拡幅をするより壁面後退をした方が早いということもあり、こういった施策を導入しております。国、東京都さんに対しては、こうしたまちづくりの成果を考慮した指標の要望を常々しています。
  • 東京都の防災街区整備地区計画の導入状況を見ると、関原地区が平成17年で、当初は他には中野区、世田谷区さんだけでした。また、平成15年の法改正後の地区計画では第1番目ということです。
  • 足立区の導入地区が4地区で、特徴的なのは特例的な地区計画があることです。それぞれの地区で状況が違うので、それらに応じた地区計画を導入したことが特徴です。
  • その地区計画を導入したのは関原、西新井、足立、仲町の4地区です。
  • 防災街区整備地区計画の特徴は、2つの整備計画があることで、足立区では2つの整備計画をフルに活用して効果を発揮していきたいと考えて計画をしました。
  • 防災街区整備地区整備計画は面的にかけるもので、一般の地区計画との違いは、防火上の規制で準耐火建築物以上にできることです。特定建築物地区整備計画は、路線的にかけて、道路と建物を一体に整備して、延焼遮断帯、ミニ延焼遮断帯をつくっていく計画です。
  • 防災街区整備地区整備計画では、準耐火建築物以上の規制をかけ、特定建築物地区整備計画では、間口率、高さの制限を加えて計画をしております。
  • また、建替えをしやすくするために、建ぺい率、容積率を緩和しています。建ぺい率は60%から80%に、容積は200%から240%に緩和して、3階建てを建てやすくしています。用途別容積は1.5倍まで上げられるのですが、この地区に合った1.2倍で計画しております。
  • 現地見学でも見ていただきましたが、防災街区整備地区計画に沿って道路と建物を一体整備した事例もあります。
防災街区整備事業
  • 次に、防災街区整備事業です。防災環境軸の形成ということで、再開発事業の権利変換とともに、土地への権利変換ができるという特徴がある柔軟な事業手法で、高度利用となることを求めない、身の丈に合った事業をすることができます。
  • 先ほど説明があった通り、足立区のまちづくり用地を種地に計画を行いました。
  • きっかけとして、建替相談会などを行った際に、建替えをしたいができないという相談があり、何とかできないだろうかということで、138号線沿道で道路整備とともに防災のプロジェクトを検討できる場所であること、また、種地があるということでこの地区を選定しました。
  • 60戸8階建ての計画で、個別利用区として、10区画整備しています。
  • 権利関係は、土地所有者18名、借地権者10名、借家権者1名となっています。
  • 従前は住宅14棟7世帯の方がお住まいでしたが、そのうち6棟が接道しておらず建替えができない状況でした。7世帯のうち1世帯は床を取得、2世帯は個別利用区、2世帯がコミュニティ住宅、2世帯が転出となっています。
  • 従後は、住宅が7世帯から70世帯に増えており、人口減少の中、少し呼び戻すことができたのかなと思っております。
  • 事業の経過は、平成15年の法改正からすぐに取り組みを始めて、協議会設立、個別の相談を重ねていって合意形成を進め、事業が平成25年に完成しました。
新たな防災まちづくりの推進
  • 防災街区整備事業の完成とともに密集事業も終了したわけですが、まだまだ危険な地域が周辺にあり、これを何とかしなければならないということで、まちづくりを進めております。これまではガワの整備を行ってきましたが、アンコの部分の整備も進めていくということです。
  • 新たな防災まちづくりの区域は東京都の整備地域のほぼ全域を対象として、各関係所管が連携して、危険度が高い地域の建替えを促進して防災まちづくりを促進していきます。全域に不燃化特区の指定、新たな防火規制を導入しております。また、全域に対して建ぺい率の緩和8割、容積率の算定係数を0.6、道路斜線の勾配を1.5と、建替えをしやすいように、先ほどの地区計画の考え方を持ち込んでいます。
  • そのほか、無接道の敷地についても、建替えができませんで終わりではなく、チャンスを広げていくために、制度の構築を進めています。
  • これらをあわせて早く建替えができるように、また、それによって火に強い建物を増やすことで、安全なまちへとしていきたいと考えています。
  • 経過としては、12月17日にルールの導入が完了しており、今、施行されています。区ではこうした限定した施策を用いまして、防災性の向上を図って安全なまちにしていきたいと考えています。

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