街に、ルネッサンス UR都市機構

街みちネット 第14回見学・交流会「タガヤセ大蔵」

これまでの活動の紹介

活動議事録

【現地見学】タガヤセ大蔵現地
タガヤセ大蔵

アンディート 安藤氏(タガヤセ大蔵オーナー)
立上げの経緯
  • ここの立地は成城学園駅から徒歩25分くらいです。グリーンベルトが見えますが、国分寺崖線といって、西は国分寺、東は二子玉川まで続くグリーンベルトで、そこにすっぽり入ったような形です。
  • 私はここのオーナーで安藤と申します。家族から引き継いで、このアパートを運営することになったのですが、ここは、例えばSUMOとかHome’sで10年以内、RC、駅10分以内…などと条件を付けて検索しても、引っかからないんですね。そこで、今いろいろな現場で起きていることは、家賃を下げてみるんですよ。でも決まらないんですよ。それで、僕らが住んでもいいかな、というくらいきれいにするんですよ。決まらないんですね。その先思考停止なんですね。
  • その先に未来がなかったので、この形を思いつきました。この形というのは、木造住宅のいいところを活かして、3部屋を全部をぶち抜いて1つの場所にしようと。玄関ドアが3つあるんですけど、40m2くらいの左右の2DKと、真ん中に25m2くらいの1K、足すとちょうど100m2を切るぐらいでした。
  • 祖父の家には、介護が必要な家族が住んでいて、暮らしていく中で、たまたま社会福祉法人、介護の仕事をする人たちと出会いまして、僕らは普段、不動産の人たちと話しているので、なんてこの人たちは真面目なんだろうと、いい仕事するんだろうと思って、何かできないかということになりました。
タガヤセ大蔵の外観
多世代交流の場へ
  • 当初は空き家をデイサービスにしようと言っていたんですが、それだけではつまらないよね、と。なんでそう思ったかというと、この辺は緑が豊かで、JKKさんの昭和30年代の大蔵団地が30棟あって高齢化率が40%超で、ある意味この里山の限界集落という構図になっています。なので、デイサービスだけではなくて多世代の交流が作れる場ができないかなというところで、プロジェクトをスタートしました。
プロジェクトチームそれぞれの役割
  • オーナーとしての私と、もう一人、石巻で再生事業をしている建築家が1人と、社会福祉法人のチームと3者で協議をしてきました。
  • 入ってみるとカフェのような空間なのは、私や設計者が、自分たちが行きたい空間を作ろうということで作りました。多世代交流と言ったって僕らが行きたくない空間になんて行きたくないよね、という話で、福祉家具も使わず、木の床を使って、なるべくナチュラルなものを使っていこう、というのが建築家と私のミッションでした。
  • 一方、社会福祉法人は地域の中でどう根ざしていくかということがミッションなんですね。地域包括ケアという言葉があって、今、社会保障費が足りなくなってみんなでやっていこうよと言いながら、地域のつながりが少なくなっているよね、という話の中で、社会福祉法人が地域に根を張りながら、地域をつないでいく役割をしてもらおうと。
現在の状況
  • 今はどういう状態かと言いますと、9月1日にタガヤセ大蔵の中のデイサービスがオープンしました。「タガヤセ大蔵デイ」と言って、まだ1ヵ月、集客をがんばっているところで、その他に地域資源を使いながら盛り込んでいこうと思っています。みどりが豊かで、でも駅から遠くて、高齢者がいる団地があって、後でご紹介したいんですが、農地があったりするんですね。そういう地域資源をどうやって結び付けていったら再生できるのかという話です。
  • これはよく空き家問題と言われますが、古い建物って残っていて、新しいものがどんどん作られていって、人が減っている中で、空き家は基本的にゼロにはならないので、社会問題と僕は言わず、空き家は地域の余白なので、それをいかに楽しめるか、という社会にして行こう、という話をよくしています。地域の高齢者もある意味、光ると書けば「光齢者」だし、地域の古い建物も、「光齢舎」と書けば、もしかするともう一回活躍の場があるんじゃないかな、という実験が始まったというのが、正直なところです。
  • 僕らもやりたいことがあって1つ1つやっている。今回みなさんのお知恵を、こういう環境の中に来ていただいて、こんなことしたらいいんじゃないの、ということが、盛り上がって彼らに伝わっていてくれたら嬉しいと思います。
建物の改修について
  • 建築的には新耐震の建物ですが、壁を抜いたので周りを構造用合板で囲いました。なので、あの壁は構造用合板にペンキを塗っただけというものです。ただ、耐震補強としては、以前の新耐震の建物より強くなったので、地域の防災拠点としても活用できます。
  • 一般的なこういう木造の賃貸住宅は23年くらいで壊されるのが平均だそうで、それは建物として使えるかどうかという前に、さっきのマーケティング的に借り手がつくかどうかということで、その期間が過ぎたらつぶして新しいものを建てるというのが今までのやり方だったと思います。じゃあこの場所で、みなさんが僕の立場だとして、もう1回この場所でピカピカの賃貸住宅を建てますか?人が減っていて、建て直したら数千万円の借入金をもう1回起こさなきゃいけない、回収できるのかな、ということは、この地域の特殊性でなく、そこら中で起きることなのかな、と思います。
デイサービスとしての特色
  • デイサービスとしての魅力は、「作る」ということです。地域の野菜を使ったり、高齢者さんたちが作るということでここでの居場所にしていこうということです。デイサービスもいろいろな特徴があって、ただ居るところもあれば、機能回復の訓練をするところもありますが、ここではキッチンが真ん中にあって業務用の大きなコンロを置いて、ちゃんと料理ができる、というのが1つの特徴です。
  • 野菜ということでは、タガヤセ大蔵の裏にも小さな無人販売所があって、よく自転車に乗ったお母さんが買い物に来るんですね。居場所がないのでそのまま帰るんですけど、僕らもここで野菜を今後売って、そこで一緒に過ごして、子どもたちとお年寄りが一緒に料理をするということができたら面白いなと思っています。
タガヤセ大蔵のキッチン
社会福祉法人大三島育徳会 丸山氏(タガヤセ大蔵デイ責任者)
  • お食事がうちのメインで、昼食を作って食べて体を動かして、ということをしています。こちらのうちの第一号のお客さんは、そちらに共感していただいて利用していただいて、今、週2回来ていただいております。ご自身がデイサービスが初めてだったので、比べるというのが難しいと思うんですけど、休まずずっと利用していただいています。直前までお仕事をされていて、この度デイサービスを利用ということになったんですけど、うまく使っていただけていると思っています。友達もたくさんできましたし、いい巡り合わせだったなと思っています。
安藤氏
  • 新しい取組みなので、デイサービスとしてもいかに魅力を伝えるかということも苦労して頑張っています。10人のデイサービスだと30人くらいの母集団を集めないといけないので、それは大変なことですが、ケアマネージャーや既存のルールだけでお客さんを集めるのでもなくて、僕らも必ず両親はいるので、そういう両親たちに日頃安心して居てほしい場として選んでもらいたいという思いがあります。なので、丸山さんは福祉業界にない苦労を一人で背負っています。
丸山氏
  • 安藤さんというキャラクターが常に大家さんとしてありますので、大変なこともあるけれども面白味もある事業かなと思っています。
安藤氏
地域での価値の生み出し方
  • 多世代交流の場として、一般の人も入れるようなデイサービスを作ろうとすると、一般の人と高齢者との間に壁を立てろという決まりがあって、それでは意味がないんです。どうしたかというと、今日ここに来てくれているみなさんは全員ボランティアということにしています。今、歌を聞いてもらったり、声を掛けてもらったり、利用者の話を聞いてくれたということは、みなさんボランティアなので、何が悪い、という話なんですね。そうやって壁を取ってしまいました。
  • デイサービスの入り口ですが階段があります。やっぱり施設ではないので、自宅での暮らしがある訳ですよね。デイサービスがバリアフリーでも家に帰ったら階段もあるので、上がってもらおうという考えです。自宅は自宅、施設は施設、じゃなくて、自宅の暮らしの延長にこういうところがあり、今介護を受けないといけない人も、これから受けるような人たちも、こういうところに来てもらうことで、関係を滑らかにしていこうと思っています。
タガヤセ大蔵の入り口
  • 今、突然介護を受ける世界が始まるということが多いと思うんです。僕らも介護の知識があまりないけど、こういうところに来ると気軽に相談が受けられて、というのが価値なんじゃないかと思います。僕の実体験として、祖父が倒れてみて初めて介護の世界を知ったので、そういうことが気軽に日常の延長にあり、リノベーションされた空間にリノベーションに興味がない人も触れてもらえるというのも価値だなと思っています。ここに来るお年寄りも実は関係ないリノベーションということに触れている、ここに来るお母さんたちも関係のない介護・福祉の世界に触れている、いざとなった時にどちらも助けられるというのが目的で、この辺の家も古くなっているので、何か困った時に知らないリフォーム屋さんに騙されるみたいな距離感ではなくて、地域の拠点をベースに相談が行われて、DIYが起きたりリノベーションが起きたりということができたらいいなとこうことが長期的なビジョンとしてはあります。
タガヤセ大蔵内部
  • このアパートを売ってしまえばこういう家がここに建ち、関係性が切れてしまう。でもこれがあればこことのつながりが生まれるというところ、例えば、向かいの車好きの方のご商売で、ここで打合せしてもいいんですね。そうすると車に困った人はこの人に相談する、そういう循環は地域にとっても自然だと思うので、そういう場にしたいなと思います。
隣接する農地について
  • ここの農地は貸すことはできませんが、さっきの介護の話と一緒で、ボランティアで関わるのはありなんです。世田谷ではこういうところで高齢な農家さんが1人で頑張っていたりするということが多いですが、ここの野菜を使ってタガヤセ大蔵で料理する、子どもたちがここで収穫をするということができれば地域の価値になるので、有効活用しようと考えています。
  • タガヤセ大蔵の「タガヤセ」は、「セ」を前にすると「世田谷」という意味合いと、単純にこの農のある暮らしという意味の「耕せ」と、地域の人間関係を耕すという意味でそうしました。みどりと古い家と高齢化した団地があるのは、ある意味、タガヤセ大蔵らしい景色の一つです。
隣接する農地

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