街に、ルネッサンス UR都市機構

街みちネット 第11回見学・交流会「黄金町エリアマネジメントセンターの取り組み」

これまでの活動の紹介

活動議事録

黄金町エリアマネジメントセンターの取り組み

山野 真悟 氏
NPOの概要
  • 私は、2007年の秋、この仕事のために福岡から来た。もともと横浜とは横浜トリエンナーレ2005のキュレーターを務めるまでは縁もゆかりもなく、最初は1年の予定だったが、5年たってしまった。今はこの職場のすぐそばに住んでいる。
  • NPOがどういうところと協力関係を結んでいるかというと、地域・大学・環境浄化推進協議会等の地域の団体、行政・アーティストや建築家などのレジデンス・アーティスト、そして、大きなものとして警察との連携、このような多様な組織との連携がこの事業の特徴と言っていいと思う。
  • 活動としては、以下の七つがある。「(1)小規模店舗の活性化」、毎年開催のアートフェスティバル「(5)黄金町バザール」、クリエイターがこの地域に滞在して作品制作を行なう「(6)アーティスト・イン・レジデンス」は今後力を入れていこうと考えている事業である。「(7)黄金町芸術センター構想」はこれから取り組みたいと考えている。

     (1)小規模店舗の活用(管理運営):違法風俗店をリノベーションして貸出し
     (2)空き店舗の活用:違法風俗店ではないが、使われていない店舗の活用
     (3)京急線高架下施設の活用(管理運営)
     (4)まちづくり活動
     (5)黄金町バザールの開催
     (6)アーティスト・イン・レジデンス(AIR)事業
     (7)黄金町芸術センター構想
小規模店舗の活用
  • 小規模店舗の改装例として、フランスのアーティストが制作した星空のような部屋がある「Café ★」(カフェスター)がある。
  • 違法風俗店の特徴として、2階建てで1階にカウンターがある。平屋の場合は、奥にも部屋があったり、2階建ての場合は2階に小部屋が二つあるので、一軒の店に常時二人女性がいたという感じだと思う。
Café ★(カフェスター)
  • ハツネテラスは、小さな店舗が並んでいた長屋形式の違法風俗店を、建築家の皆さんにお願いして、一人一部屋ずつ担当していただいて改装した。その後貸出しを行ない、例えばその中の「レッドライト・ヨコハマ」という吉村靖孝さんの作品の部屋は設計事務所の方が借りて利用している。別の部屋は絵を描くアーティストがアトリエとして借りている。
レッドライト・ヨコハマ
  • コンバージョンは作品展示に利用しやすいように、カウンターを撤去して、白く塗るパターンが多いが、「1の1スタジオ」は日大の佐藤慎也先生が手がけて元の壁を残す改装をした。
1の1スタジオ
空き店舗の活用
  • 違法風俗店以外の空き店舗の活用としては、例えば呉服屋さんだったところをアーティストの小物やグッズのお店にして営業している(注:2013年3月30日閉店)。2階には別のアーティストが滞在していて、上下を別の人が利用している形である。
  • 昭和20年代の前半にできた旅館の内部を改装してカフェとギャラリーにした例もある。今は建物はないが、日大の建築の学生さんたちがこの建物に惚れ込んで模型をつくってくださった。
昭和20年代の旅館
高架下施設の活用
  • 高架下には6つの建物がある。2008年に黄金スタジオ、日ノ出スタジオができた。日ノ出スタジオでは、アートブック専門の古本屋をオープンしている。
  • 2011年にできたSite-Aギャラリーにはギャラリーとショップがある。
  • 2012年にできたSite-Bカフェには、滞在しているアーティストが勉強するための施設、建築家のための学習部屋などの機能を持たせたいと思っている。
  • Site-C工房は工房で、本日のこの会場がSite-D集会場である。それぞれ全長20mくらいの建物が四つ並んでいると思っていただけると大体イメージできるかと思う。
  • 「まち普請制度」で整備された「かいだん広場」は、地域住民や協議会などを中心としたメンバーで企画をし、この地域の建築事務所に設計をしてもらった。塗裝などメンテナンスは地域で行っている。ここでは毎月第2日曜日に、「ワンデイバザール」といって、フリーマーケットや、地域の皆さんに出店していただくというイベントを行っている。
地域との関わり
  • 勘違いされることがあるが、NPOは先頭をきってまちづくりを推進する団体ではない。自主的に地域の皆さんに活動していただくことをバックアップする機能があるということを強調したい。
  • 初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会の事務局機能をNPOが担当している。
  • 昨年、地域商店の有志が集まって初黄日(はつこひ)商店会を発足させた。約60店舗が加入している。発足後でも閉店する店が出たり、運営は難しいが、まずは結束して活動していこうということで、今後は、アンテナショップやアーティストによる商品開発をしていきたいと希望されている。
  • 大岡川川の駅運営委員会というものがあり、大岡川があることがこの地域の特徴の一つなので、これを活用していきたいということで、地元の皆さんや、川を活用するために集まっている新しいグループの人たちが入ってきて、ボートやカヌーなどの活動をしている。
  • NPOはサポーター(ボランティア)の制度を持っていて、色々な場面でお手伝いいただいている。まちあるきツアーの定期的な実施や、イベントのお手伝い、情報発信などを自主的に行っていただいている。
  • 毎月第2日曜日にはワンデイバザールとして、まちあるきツアーやワンデイバザール、アーティストの仕事場を訪ねるオープンスタジオなどのイベントを行っている。
まちづくりニュース
  • 「まちづくりニュース」を毎月1回発行して、この地域の色々な取組み、NPOの取組みを毎月ご紹介している。これは地域の各家庭に届くようになっており、駅やNPOが管理している施設等にも置いてある。
  • 裏面が地図になっていて、今、NPOが管理している施設やこの地域の店が表示されている。
アーティスト・イン・レジデンス
  • NPOの施設として滞在できる場所、制作用の場所、展覧会の場所、イベント用の場所、いろいろなタイプの施設が70軒近くある。それを組み合わせて、例えば、アーティストや建築家の方に1~3ヶ月くらいの短いスパンで、制作などのための滞在をしてもらう「アーティスト・イン・レジデンス」いう事業を、今後展開していこうと考えている。
  • これまでは、アーティストを招待するケースが多かったが、最近はアーティスト側が施設を借りたいというケースが少しずつ増えてきたので、海外を含めて色々なところに情報を流して、広報を展開していきたいと考えている。
  • ここのレジデンスの特徴は「まちが一緒に支えている」ということである。ただ施設があって、そこで勝手に活動をしてくださいということではなくて、この地域全体で滞在をバックアップしましょうという構想なので、今後、地元の皆さんとも協議して、ホスピタリティをどう高めていくかということを進めていく段階である。
  • 黄金町バザールというイベントを、毎年秋に開催しているが、その2ヶ月くらい前から、アーティストが制作のためにまちに滞在して、一時的にこのエリア全体が賑やかになる時期がある。今後は、さらに日常的に賑やかにしていきたいと考えアーティスト・イン・レジデンス事業を進めている。
  • 現在、1年契約の長期滞在アーティストが30組くらい、延長して最長で4年くらいいる方もいる。それに対して1~3ヶ月の短期滞在の方もいる。
  • レジデンスのための滞在費は相場の2分の1から3分の1くらいで、アーティストにとっては非常に利用しやすい金額である。アーティストに聞くと、不動産屋さんに行って、アーティストだと言うとなかなか部屋を貸してくれないということがあるそうだ。生活が不安定で、部屋を汚すかもしれないということも見え見えなので、あまり喜ばれないということだ。
  • 海外からのレジデンスや、国際交流事業としてフィリピンやインドネシアとの交流も行った。
黄金町バザール
  • 昨年の黄金町バザールは、10月からスタートした。展示は屋外や屋内、色々なケースがある。
  • 照沼敦朗の作品は、映像、立体など部屋丸ごとつかったインスタレーションで、まちに滞在しながら制作していた。
照沼敦朗
  • フィリピン出身・アメリカ在住のロバート・グチャレスは、酒屋さんとか色々なところからびんをもらってきてクラゲの絵を描いていた。
  • 中谷ミチコさんの作品は、壁ごと制作されていて、壁の中に小さな鳥が2羽飛んでいる不思議で大変きれいな作品である。
中谷ミチコ「鳥の部屋」
  • もともと黄金町にアトリエを構えている山田裕介君は、自分が住んでいる部屋のトイレの中までコンクリートで作品をつくって、少しだけスペースを残して、そこで寝泊まりしていた。
  • スウェーデンのマイケル・ヨハンソンの作品は、リサイクルショップ、近辺のゴミ捨て場から拾ってきたものを集めてきて、それを真四角にきれいにぴたりとおさめている。実はこの周りはゴミだらけの場所だが、そのゴミがきれいにおさまっていて、そのコントラストがなかなか面白い。
マイケル・ヨハンソン「Recollecting Koganecho」
日和アートセンター
  • これも去年から始めた事業だが、2011年の地震のちょうど2ヶ月後、5月11日に石巻に入った時に、向こうでボランティア活動をしている人たちに、何かできないかという相談をされ、レジデンスの施設を一つつくって、そこをアーティストが利用できるようにしようということになった。近くに最近再開した石ノ森萬画館がある。
  • 旧北上川の近くの商店街だが、川が氾濫し、建物の1階のガラス部分まで津波が来たそうだ。
  • 私どもが借りた当初は、雨が降ると床が水没するような状態だったが、最近はそういうこともなくなった。商店街のシャッターを一つあけるだけでもいいだろうということで、施設をつくらせていただいて、現在、年間5~6組ぐらいのアーティストがレジデンスとして作品を制作して展示している。
黄金町芸術学校
  • 黄金町芸術学校とは去年から始めたスクール事業で、ちょうどこの高架下の施設がそろうので、よりこのまちに滞留してもらう仕組みということで始めた。地域の皆さんが来やすい場所として、お稽古ごとも含めて色々なクラスを用意しようということと、もう一つ、アートとまちづくりを行なう事業の後継者の養成という目的もある。私が今62歳で、副理事長が72歳、理事長が82歳、初黄日商店会や環境浄化推進協議会もほとんどが私より年上の方なので、こういう活動を継続していける人材をもっと増やさなければいけないということで、アートとまちづくりの両方を視野に入れられるような人材づくりをするため、比較的専門性が高いコースも設定している。
  • 例えばキュレーターコースでは、美術館の学芸員やフリーでアートのイベントなどをしている若い方などに授業をしていただき、実際に展覧会を開くことが目標になっている。
  • 実技コースにはご近所の年配の方なども参加している。写真と小説のクラスが特に人気があり、いつも満員である。建築系で実際に改装をしましょうというクラスもある。それが、先ほど説明した日大建築学部の佐藤先生の授業で、1の1スタジオの一部を改修した。
黄金町芸術センター構想
  • 今後は、この場所自体をアートセンターにしたいという構想があるが調整中の部分が多い。アートセンターというのは、そもそもアーティストのためでなく、アートを必要とする人のためにつくるというのが私の考えである。

質疑応答

質問1
  • 福岡からおいでになったということだが、福岡ではどのようなことに携わっておられたのか。
山野氏
  • ミュージアム・シティ・天神」という、福岡市内の公共空間や商業施設を使った展覧会の企画を立てていた。まちなかに展開していく展覧会の専門家ということで、当初は1年契約で呼ばれたが、こういうことは続けていかないと意味がないのではないかということで、開催中からNPO化しようという話が、地域の皆さん、行政からも上がって、残ってほしいと言われ、もうしばらく続けましょうということになった。
  • 私は全く外部の人間であり、どこかに利益が偏ったり、人間関係が絡んできたりということが全くなかったので、結果的に都合がよかったのかなと思う。
質問2
  • 市の大堀さんからいろいろなお金が入っているというお話があったが、運営も含めて、すべて確立した組織にするには、お金の回り方がもっと変わらないと無理があると思う。段階的な見通しがあるのか。
山野氏
  • おっしゃるとおりで、ある段階からは補助金は減っており、収益事業で補填していこうと徐々に対応しているが、そう大きなものではなく、将来的には、何らかの自主的な事業、収益事業を行う必要がある。一番いいのは、黄金町のノウハウを活用することだろう。NPO職員は10人ぐらいいるが、私と事務局次長、経理以外の方は30歳前後で、その間の世代が飛んでいるので、若い人たちが最後にはこの仕事に携われるような体制づくりをする入口まではつくりたいと考えている。
質問3
  • 今日見学させていただくところは、いつでも見られるのか、特別に見せていただけるのか。
山野氏
  • ほとんど、普段から見られる場所である。お店や休憩する場所もあるが、アーティストが仕事をしている状態というのは、あまりオープンにはしていないケースが多く、なかなか見えない。

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