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街みちネット 第21回見学・交流会 「神田地域のまちづくり」

これまでの活動の紹介

活動議事録

講演1「神田地域のまちづくり」

千代田区 環境まちづくり部 神田地域まちづくり課長 佐藤 武男 氏
はじめに
  • 今日は、神田地域のまちづくりについてお話をさせていただきます。神田のまちを東西に走っている幅員22mの区道、神田警察通りです。この道路整備をきっかけに、周辺の賑わい創出の取組みを、現在地域の方々と行っているところです。茶色い外壁の学士会館、その手前に共立講堂があるこの交差点手前部分では、工事に着手しています。
神田地域のまちづくり
千代田区の概要
  • 千代田区の面積は1,166ha、中央の皇居・北の丸公園を除いた面積は904haです。人口は平成29年1月時点で61,269名。平成27年のデータですが、昼間人口が85万3,000人です。千代田区を含めた都心区では、人口の減少が著しく、戦後の昭和30年代の122,000人がピークとなり、その後40年を経て平成7年が一番少なく34,780人まで激減しました。ピークから比べると72%も減ってしまったことになります。千代田区としては、人口減少に歯止めをかけるため、人口5万人回復を目指して住宅付置制度や区営住宅の建設、再開発などを積極的に推進してまいりました。またこれに社会の都心回帰の流れも加わり、平成25年に5万人を超え、現在6万人を超えて来ています。
  • 千代田区で作成している人口ビジョンでは、今後20年間ぐらいは増加を続け、およそ8万人程度までいくのではないかと推定しています。ちなみに、昭和10年の国勢調査では千代田区の人口は197,000人でした。
神田地域のまちづくり
神田地域の概要
  • 千代田区は、中央に皇居・北の丸公園、南側に霞が関等の官庁街、そして西側に番町・麹町の閑静な住宅街。そして東側に、大手町・丸の内・有楽町というところのビジネス街で構成されています。それ以外には、日本大学、明治大学といった大学の学生街があり、神保町の古書店街や秋葉原があります。
    今回お話しさせていただきます神田地域が、およそこの赤い丸で示したエリアです。実は明確に「ここからここが神田」というものはありません。秋葉原の方とお話ししても「俺は神田っ子だから」と言われたりもしますので、その辺りは非常に曖昧な部分があるなと思っています。
    緑のラインが神田警察通りで、延長が1.4kmです。南側の日本橋川を隔てて大手町、皇居、北側には神保町の古書店街があり、靖国通り沿いにはスポーツ洋品店街があります。淡路町には「やぶそば」、「まつや」、「いせ源」、「ぼたん」といった、有名な老舗店街があります。そして秋葉原と、非常に個性的な街並みに囲まれているのが神田エリアです。

  • このそれぞれの地域に大勢の来街者がいるわけですが、例えば、秋葉原に来た方は、そこから老舗店街へ行ったり、スポーツ店街へ行ったり、神田へ来たりということがなかなかありません。そこで、神田のエリアを様々なまちと繋ぐような役割が必要なのではないかと考えているところです。
    神田地域では、企業や学校の移転などによって、まちの賑わいや活気が次第に失われつつあり、来街者の減少がみられます。神田警察署の並びには東京電機大学がありましたが、北千住に移転しまして、その後、今まさに工事中ですが、そういったところで、神田警察通りの整備をきっかけとした、賑わい創出に向けた取組みを行っていくこととしました。
神田地域のまちづくり
神田地域でのまちづくり取り組み状況
  • 平成22年3月より、この沿道の町会の方、商店街の方、学識経験者、千代田区がメンバーとなり、「神田警察通り沿道まちづくり検討委員会」を組織し検討を行って参りました。そのまとめとして、「神田警察通り沿道まちづくり整備構想」を作りました。これはあくまでも構想、理念ですので、それを具現化していく次の段階として、メンバーは同じなのですが推進協議会という形に変え、構想の実現に向けて、まちづくりの取組み方を提案してまとめました。「神田警察通り賑わいガイドライン」というもので、区のホームページからダウンロードできますので、ご覧になっていただければと思います。
神田地域のまちづくり
神田地域の課題
  • 基本構想とガイドラインは、地域の課題について地域の方々と話し合い、課題解決に向けた取組みをまとめたものです。地域の課題は、非常にポテンシャルの高い地域であるにもかかわらず、賑わいに乏しいこと。多くの建物が機能更新の時期を迎えていること。千代田区は全国に先駆けて都市化が進んだため、非常に老朽化した建物が多く築40年、50年という建物がかなり多く、耐震的な問題もあります。機能更新の時期を迎えているけれど、なかなか建替えがままならないというところがあります。
    これには道路率が高いという要因が一つ考えられます。神田の駅の近くで道路率が30%を超えているところもあります。道路率が高いという中には細街路がかなり含まれており、細街路に接道している敷地では、前面道路の幅員による容積の関係や、道路斜線といった問題でなかなか建替えが進んでいきません。

  • また、公園や緑地・空地が非常に少ない地域です。江戸開府以来、町人文化の中で発祥したまちですので、もともとかなり人口密度が高く、空地があまりないのです。行政が持っている土地もあまりないことから、千代田区全域から見ても、神田地域は公園・緑地・空地が非常に少なくなっています。後ほどまち歩きされる中で、そういった視点からも見ていただければと思います。
    企業や大学等の移転に伴い、昼間人口が減少して、まちの活力が失われつつありますが、夜間人口は減少に歯止めがかかってきており、単身世帯が大幅に増加しています。地域の人口の動態は、平成14年で約2,500人、その15年後の平成29年に約4,000人と約1.5倍に増加しています。その一方で、世帯数は平成14年で約1,200戸、平成29年で約2,500戸と、約2.1倍となっており、新しく千代田区民になられた方には単身者が多いという事が言え、地域コミュニティにも問題が発生してきています。神田地域には良い所もたくさんありますので紹介しておきます。伝統的な祭りや、江戸以来の「粋」の文化、神田らしい下町気質など、良いところもたくさんあります。
神田地域のまちづくり
まちづくりの目標とストーリー
  • 地域の方々と、課題が何なのか、それを見つけて解決に向けて話し合いをしました。「つなぐまち神田」とありますが、課題解決に向けたまちづくりの目標です。「人」「まち」「歴史」「文化」「緑」のつながりを通して、まちの個性と魅力を価値へとつなげるまちづくりを進めていくことにいたしました。
神田地域のまちづくり
  • 神田警察通りの整備をきっかけに、神田を今以上に魅力あるまちに変えていくことで、働く人、住む人を増やし、内側から活力を取り戻そうと考えています。そして、周辺の魅力あるまちから人を呼び込み、相乗効果を生み出すことで、まちの活性化や賑わいの創出につながっていくというイメージです。
神田地域のまちづくり
  • 外部から人を呼び込むことで、神田を知っていただいたり、あるいは神田のよさを発見していただく。神田地域の周辺には、神保町、お茶の水、秋葉原、皇居、そして大手町、日本橋といった魅力あるまち、街区がありますので、そこから人を呼び込む手立てを考えていこうとしています。その手法の一つが、この後講演いただきます社会実験へとつながっています。
神田地域のまちづくり
神田警察通りの整備方針
  • こちらがガイドラインから抜粋した神田警察通りの道路整備のイメージです。先ほど申し上げましたが、幅員22m、総延長1.4kmの区道です。現在車線が4車線ですが、3車線に減らし、その減らした分だけ歩道を広げようとしています。現在の歩道幅は狭いところで1.8m、広くても2.5m程で、その中に植栽帯があったり、路面がガタガタであったり、段差があったりと、非常に歩きづらいため、歩道を広げて、さらにその中に自転車道路をつくろうとしています。これは、自転車専用というわけではなくて、歩道の中を分離して、自転車と歩行者が住み分けて通れるようなものを整備しようとしています。
  • 当初、車道の部分に自転車専用道路を設けることも検討していましたが、神田警察通りは神田駅方向の一方通行であるため、車道部分を自転車が反対向きに走るというのは危険ですので、不可能ではないのですが、いろいろハードルが高いということで、拡幅した歩道に自転車道路を整備する計画となりました。
神田地域のまちづくり
  • 東京電機大学跡地では、今、建物の工事が進められていますが、そういった開発等がある場合は、道路に面した部分に極力広場を設けていただいて、立体的な、開放的な沿道空間を形成しようとガイドラインを定め、事業者にご協力いただいています。
    このように、外から人を呼び込むための取組みや、まちの価値を高める道路整備、それに合わせた沿道の開発、といった具体的な取組みは、まさに最近始まったばかりです。取組みを地域の方々とともに、適宜見直しを図りながら、まちの個性と魅力を価値へとつなげるまちづくりを進めてまいりたいと考えています。
神田地域のまちづくり
  • 最後は、簡単にまとめた模式図で、まちづくりの流れです。区のまちづくりの基本的な方針である「都市計画マスタープラン」には地域ごとのマスタープラン的なものも含まれており、それを踏まえて、まちづくりの議論をする素材である「まちづくりグランドデザイン」を作成します。更に地域の方との話し合いの中で将来像を共有化し、それを構想やガイドラインといった将来像にまとめていきます。場合によっては地区計画等で公的な担保を行いますが、例えば開発があったときに、公的な縛りで、ある部分を広場にしなさいと誘導することで、開発や建替えの部分に合わせて、まちを整備していこうというものです。

  • 従来のまちづくりは、道路や建物といったいわゆるハード面の整備が優先されているところがありましたが、地域の魅力を高めて持続的な反映を目指す、本当の意味でのまちづくりというのは、開発後のまちのあり方までも見据えたトータル的な展開が大切になってきますから、開発後のエリアマネジメントの取組みが非常に重要になります。このエリアマネジメントの取組みは、まだ地域の方と検討しているところですが、具体的な組織体制はまだまだこれからかなという段階で、引き続き検討してまいります。
神田地域のまちづくり
  • 私は、神田地域まちづくり課で、神田地域と秋葉原、西神田などを担当しておりますが、秋葉原にタウンマネジメントという組織があり、そこの設立の際に少し関わっておりましたので、いろいろお話しできるところもあるのですが、今日は時間に限りもございますので、ひとつ取組みへの思いを言わせていただきます。エリアマネジメントの取組み自体は、地域を構成するさまざまな方々とまちの価値を高める取組みを持続、継続してやっていくことが大切というところです。志も大切ですが、やはり安定的に継続的にやっていくためには、資金が大切です。その資金をどのように安定して得ていくのかが、非常に大事になってくるでしょう。また、行政が持っている権限をある程度エリアマネジメント組織に渡してあげることも非常に大切なことでしょう。
    以上で神田地域のまちづくりのご説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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