街に、ルネッサンス UR都市機構

街みちネット 第19回見学・交流会 「谷中地区における台東区の防災まちづくりについて」

これまでの活動の紹介

活動議事録

講演1「谷中地区における台東区の防災まちづくりについて」

石川 和代 氏(台東区 都市づくり部 地区整備課 担当係長)
台東区の概要
  • まず始めに、台東区の概要から説明いたします。こちらのスライドは、台東区の都市計画図です。台東区は、総面積が10平方キロメートル強という23区で1番面積の小さい区なのですが、ご覧の通り、ほとんどが赤やピンク色で塗られた商業地域や近隣商業地域で、台東区の約8割を占めています。
  • 黄色で塗られたところが、第一種住居地域ですが、主に池之端と谷中、及び、根岸の各一部になります。また、濃い緑色の部分が第1種中高層住居専用地域に指定されているところで、上野公園と谷中の一部と上野桜木の大部分になります。台東区は上野や浅草を始め地域ごとに特徴があり、まちづくりについても各地域で積極的に取り組んでおりますが、本日は、谷中から上野桜木にかけて現場をご覧になるということですので、谷中地区における取組みを中心に、説明させていただきます。
  • こちらの赤く囲まれた谷中二・三・五丁目地区においては、区が事業主体となり、密集事業及び不燃化特区による事業を地域住民の皆様のご理解とご協力のもと、実施しています。一方、地域住民の方が主体となって活動している谷中地区まちづくり協議会は青い一点鎖線で囲まれた区域を活動区域としていらっしゃいます。また、台東区では町会の活動が大変盛んで、幾つかの町会が集まって「地区町会連合会」を組織しております。その一つ、谷中地区町会連合会の範囲が黒の破線で囲まれた区域となっております。
谷中二・三・五丁目地区における密集事業
  • つづいて、谷中二・三・五丁目地区における密集事業の取組みを説明いたします。
  • 谷中は、多くの寺社がある、特徴的な景観を残す歴史ある住宅地です。その一方、関東大震災や戦災の被害を免れた地域がほとんどであり、復興事業による大規模な基盤整備がなされておりません。また、古い木造住宅が密集して存在するなど、防災上の課題を抱えております。そのため、区では平成14年度から谷中二・三・五丁目の全域を対象に密集住宅市街地整備促進事業、通称、密集事業を実施いたしております。事業地区面積は28.7ha、事業終了は平成32年度の予定です。当地区における公法上の制限は、一部商業地域、近隣商業地域及び第一種中高層住居専用地域を含みますが、ほとんどが第一種住居地域、第3種高度地区、準防火地域となっております。また、都条例による、新たな防火規制区域や日影規制区域も地区内のほとんどに指定されています。
  • こちらのスライドは二・三・五丁目を中心に谷中の道路ネットワークを示した図です。左側は江戸時代の谷中の地図で、黄色い線は明治40年ごろの道路です。右は現在の谷中付近の路線番号図で、区道や都道などの公道に色が塗られています。見比べると、左の図の明治時代の道路ネットワークも、右の現在の谷中の道路ネットワークも、江戸時代からほとんど変わっていないことが判るかと思います。このような所ですので、なかなか大きな道が通っていないのが、いい所でもありますし、防災上の課題となる面もございます。
  • こちらのスライドが谷中二・三・五丁目地区の密集事業における整備地区計画図です。主な整備内容は、まず、避難路ネットワークの整備です。それから避難場所の確保、これにつきましてはこの谷中防災コミュニティセンターの目の前に平成19年に防災広場が整備されています。それから不燃建築物への建替えの促進。また防災関連施設の整備では、今皆さんがいらっしゃる谷中防災コミュニティセンターが平成27年3月に整備完了しています。更にポケットパーク等の整備を行っていくところです。
  • これらの整備内容のうち、重点的に取り組んできた箇所が、こちらのスライドです。道路整備については、本日の会場の前面道路であり、谷中二・三・五丁目地区の中央を南北にのびる主要生活道路A路線(オレンジ色の線)の現況幅員は3.5m~4.9mです。これを6mに拡幅整備する計画になっております。沿道地権者のご協力を得ながら用地取得を進めており、取得した土地については暫定整備を行っております。
  • A路線の北側に交わる主要生活道路G路線(七面坂)は、同様に、地権者のご協力のもと、8mへの拡幅整備を進めています。また、赤い丸で囲った箇所は、A路線の交差点改良箇所です。更に、防災広場と、今皆さんがいらっしゃる谷中防災コミュニティセンターは、整備が完了しています。A路線とG路線の交差点部にはポケットパークを整備し、空地の確保や防火水槽の設置を行うこととしています。
  • それでは、谷中二・三・五丁目地区のこれまでの取組みについて写真を交えてみていきたいと思います。
  • 防災広場の整備前の様子と、防災広場と谷中防災コミュニティセンターが整備された現在の写真です。従前、スポーツ施設があった敷地を約7千㎡の防災広場に整備しました。防災広場には、かまどベンチやマンホールトイレ、防火水槽、深井戸などが設置されております。また、谷中防災コミュニティセンターの集会室やロビーは、全面的に開放できるようになっており、災害時には防災広場と一体的に活用にすることで防災活動拠点としての機能強化を図っております。
  • 次は、A路線の拡幅区間です。整備前は、老朽化した木造の共同住宅が建っていました。これを除却、買収し、A路線の一部ではありますが、6mに拡幅しています。現在では、このような場所が沿道のご協力者のおかげで少しずつ増えてきております。
  • こちらのスライドはA路線北側と交わるG路線です。A路線は一方通行ですが、このG路線は交互通行のため8mに拡幅しております。写真右側は荒川区ですので、台東区側に一方後退をしております。整備前の塀が一般的な万年塀だったのに対し、整備後は瓦屋根の乗ったお寺の多い谷中の風景に馴染むような塀に整備いたしました。
  • A路線南側の交差点改良部分です。A路線は入口や出口が狭くなっており、車も曲がりにくく、消防車等の緊急車輌の円滑な通行確保が難しかったのですが、拡幅によってこのような形になり、地域の皆様からも曲がりやすく安全になったという声をいただいています。
不燃化特区の取組み
  • 続いて、平成26年度より取り組んでいる不燃化特区等について説明いたします。
  • 不燃化特区とは、既にご案内のとおり、東京都が実施している「木密地域不燃化10年プロジェクト」において平成32年度までに重点的・集中的な取組みを進めていくため、木密地域の中でも特に重点的・集中的に改善を図るべき地区を都が指定し、都と区が連携して「燃え広がらない・燃えない」まちづくりを進める制度で、谷中二・三・五丁目地区全域が、平成26年4月1日に指定されています。
  • 谷中二・三・五丁目地区では、不燃化特区の取組みとして、建替え助成、老朽建築物除却助成、古い木造住宅の所有者等に対する全戸訪問、また、相談したい内容が具体的にある方には申請に応じて専門家を派遣する士業派遣を行なっております。さらに、東京都の取組みとして固定資産税・都市計画税の減免制度がございます。
新たな防火規制の導入
  • 不燃化特区の取組みを始めるのと同時に、谷中二・三・五丁目地区内の準防火地域に東京都建築安全条例による新たな防火規制の区域を指定いたしました。この規制誘導により、事業終了後も「燃え広がらない・燃えない」まちづくりを継続していくことが可能になりました。
まちづくり交付金事業
  • 次に、平成17年度から21年度まで実施した「まちづくり交付金事業」について説明いたします。「まちづくり交付金事業」は谷中一~七丁目及び上野桜木一~二丁目、合わせて83haの区域を対象に行いました。この事業区域は、最初にご紹介いたしました谷中地区町会連合会の範囲と同じです。「まちづくり交付金事業」においても密集事業同様、歴史と自然を引き継ぐこと、誰もが安心・快適に暮らせること、防災性の向上などが目標となっておりました。
  • 5年間で行ないました主な事業はご覧のとおりです。こちらの丁字型に交わっている築地塀通りと北町小路では、東京電力(株)が国土交通省の細街路での電線類地中化に関する公募事業に採用され、当該箇所の電線類地中化(電線共同溝方式)を実施しました。その後、区が保水性舗装や自然石等を組み合わせた石畳調の舗装を実施いたしました。こちらの水色で塗られている茶屋町通りでは、区が隣接する都道(特例都道452号線)と一体施行の電線類地中化(電線共同溝方式)を(公財)東京都道路整備保全公社へ委託し、その後、区が保水性舗装や自然石等を組み合わせた石畳調の舗装を実施いたしました。また、茶屋町通りの整備に併せ、公衆トイレを周辺景観と調和した外観に改修いたしました。同時に設備も改修し、一部バリアフリー対応としております。その他、来街者の回遊性や利便性を高めるとともに、地域の歴史的、文化的資産の活用を図るため、既存の観光案内版と同仕様のものを数か所に設置いたしました。
  • こちらの写真が無電柱化と道路修景工事を行った築地塀通りの整備前、整備後です。
  • こちらのスライドは茶屋町通りです。
  • 茶屋町通りの公衆トイレと情報板です。今日この後、まち歩きをされる際に、どこにあるか探してご覧になってみて下さい。
まちづくり協議会の支援
  • 台東区のまちづくりは区が主体となって行なう事業だけではなく、区民が主体的に関わるまちづくり協議会の取組みへの支援も行なっています。谷中地区では、平成12年度にまちづくり協議会が発足し、継続的に活発な活動をされており、区は、相談員の派遣や団体補助などにより支援させていただいてきております。密集事業により防災広場や谷中防災コミュニティセンターを整備する際には、区とまちづくり協議会が協働して検討してまいりました。
最近のまちづくりの動向と今後の取組み
  • 最後に、最近のまちづくりに関する動向と今後の取組みについて簡単にご紹介します。平成27年12月に東京都が谷中地区内にある都市計画道路3路線の廃止の方針を決定しました。このような動きを踏まえ、現在、区では「防災性の向上を図りながら、地域活力と落ち着きのある暮らしが調和したまちづくりの実現」を目標とする「谷中地区まちづくり方針」を地域の皆様にも検討していただきながら、策定中です。今年度末にまちづくり方針を策定することを目途としております。まちづくり方針を策定しましたら、来年度以降はまちづくり方針に基づいた検討を進め、地区計画の策定に向けて、地元の皆様、地権者の方々と一緒に取り組んでまいります。
  • 以上で谷中地区における台東区のまちづくりについての説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答

質問1
  • 防災上の計画をご説明頂きましたが、道路の整備計画で主要生活道路と防災区画道路がありますが、基本的な整備の方法・手法を教えて下さい。
  • また、建物の建替えに対する助成についてご説明頂きましたが、糸魚川の大火などを見ていると、建替えない建物の防火耐火性能を上げていくような改修による取組みも重要なのかなと思うのですが、区としてこれから進めていくような予定はあるのでしょうか。
石川氏
  • 主要生活道路の整備については、沿道の方のご協力が得られたところから買収して拡幅するという手法です。防災区画道路については、建替え連動型ということで沿道の方が建て替える時にセットバックするという手法で、区が買収するという事はやっておりません。
  • 建替助成について防火改修の考えがあるかどうかというご質問ですが、墨田区などで行われているという事は存じておりますが、準耐火建築以上という防火性能は改修だけ行うのと建替えるのとほとんど同じ金額を要するという話もありまして、今のところ台東区では改修に対する助成は考えておりません。しかし耐震改修の助成はありますので、上手く利用して頂ければと思います。
質問2
  • 今年度、谷中まちづくり方針を策定中とお話がありましたが、今までも道路の整備の計画などはお作りになっていたと思いますが、今年度のまちづくり方針では何か違ったもの、新しい事があったりするのでしょうか。内容を教えていただきたいです。
石川氏
  • まちづくり方針はあくまでも方針でして、地域の皆様と行政とが同じ方向を向いているということを、今一度確認し明文化していこうと思っています。「防災性の向上を図りながら、地域活力と落ち着きのある暮らしが調和した~」というところのこの「調和」がミソであるかなと個人的には思っております。事業としてはどうしても防災性の向上という部分が前面に出て来てしまうのですが、特徴的な景観を保全することも大事な事だと区も認識しておりますので、それがどうしてもなかなか方向性として相反するように捉えられやすく、また具体的にも相反してしまう場面はありますので、それを両立していく方法にはどんなものがあるかなという事で、こういうまちづくりを目指したいという方針を、地域の皆様と確認し合い、作っていこうというのが目的でございます。
  • また、「上記まちづくり方針の策定に基づき~」と書いてありますが、今後まちづくり方針で大きな方向性が確認できましたら、地区計画の策定を具体的に進めていく予定です。
質問3
  • 「東京都が谷中地区内にある都市計画道路3路線の廃止の方針を決定しました」と書いてあるのですが、これはとってもすごい事です。この廃止に当たっては、これに変わる何かが必要だったのでしょうか、それとも単純にこれだけが廃止と決まったのでしょうか。防災に限らず、何か代替する話があったのでしょうか。
石川氏
  • 都市計画道路は「廃止の方針」が決定したという事で、まだ「廃止」は決定しておらず、手続きなどはされておりませんが、東京都から見直し方針が示されたときに、地域のまちづくりの状況を見ながら手続きに入っていきますというような事が書かれています。最終的に廃止を決定する上では、我々が今取り組んでいるまちづくり方針の策定などといったまちづくりの活動をみながら、東京都も動いていくのではないかと思っています。

関連ページ

メニューを閉じる

メニューを閉じる

ページの先頭へ