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街みちネット 第18回見学・交流会「不燃化特区 荒川二・四・七丁目のまちづくり」

これまでの活動の紹介

活動議事録

説明1「不燃化特区 荒川二・四・七丁目のまちづくり」

大内 武彦 氏(荒川区防災都市づくり部 防災街づくり推進課 防災街づくり担当係長)
大内氏
荒川区の概要と市街化の変遷
  • 荒川区は東京23区の北東部に位置し、面積約10平方キロメートル、人口約21万人、大部分が標高0~3mの低地です。交通の便が非常に良い立地です。
  • 国土地理院の地形図によれば、大正4年の当地区は大部分が水田ですが、既に三河島の下水処理場の予定地が分かります。これは市区改正設計(市区改正は、明治時代から大正時代に行われた都市計画、都市改造事業)に定められている施設の一部で、大正11年に運転開始されています。
  • 昭和32年になるとほぼ現状と変わらない街の構成になっていますが、市区改正設計から旧都市計画法、新しい都市計画法に移っていく中で、戦災復興院による都市計画の定めがあり、市区改正設計から引き継がれている街の骨格というものが現在でも見て取れます。
  • 東京が15区から35区に拡大された昭和7年、東京市の一部として荒川区ができました。35区になった昭和初期の荒川区の人口は、30万人程度と非常に多かったそうです。
荒川水系の洪水被害の想定
  • 先日国交省から発表された荒川水系の浸水想定区域図によると、荒川区のほぼ全域が浸水想定深さ3~5m、また新たに示された浸水継続時間は2週間以上とされ、具体的には4週間程度と言われています。低地に住む約20万人の住民が高台への避難と2週間以上の避難生活を余儀なくされるということが想定されます。
  • 一方で水が引いた後に何が起きるのかを想定すると、かなりの数の受変電設備が水に浸かり使用不可になることが考えられ、受変電設備の入替えをしないと受電できず、事実上生活ができなくなるでしょう。この事態の復旧計画や対策についてはまだまだこれからの課題となっています。
東京都の防災都市づくり推進計画と荒川区
  • 「整備地域」とは震災時に甚大な被害が想定されるエリアであり、そのうち「重点整備地域」は、東京都の中で事業を重層的集中的に実施し、対策を図ってゆく地域として定められています。荒川二・四・七丁目地区は重点整備地域に定められる前の平成24年度から不燃化特区事業を開始しています。国が行う事業では地区指定前には補助金を付けていただけないところですが、東京都はそれより少し柔軟な考え方であるという事が言えると思います。
  • 荒川区ではこれまでに住宅市街地総合整備事業(密集型5地区、拠点開発型1地区)、都市防災不燃化促進事業(9地区)、市街地再開発事業(12地区)を行ってきました。現在は、住宅市街地総合整備事業(密集型)と不燃化特区事業を2地区(町屋・尾久地区、荒川二・四・七丁目地区)と都市防災不燃化促進事業(2地区)を行っています。本日ご紹介するのは「荒川二・四・七丁目地区」です。
荒川二・四・七丁目地区の概要
  • こちらは昭和22年に米軍が撮影した航空写真です。黒い部分が戦災の焼け残りと思われる部分です。東京は焼け野原になったというイメージが強いですが、荒川区内ではこのように焼け残った部分が非常に多く点在しており、現在でも焼残りと思われる建物を見られるところもあります。都市基盤は戦前とほとんど変わっておらず、こういった中でまちづくり事業を行っているという状態です。
  • 事業が始まった平成18年度当時の当地区の人口は1万1千人強、現在とほぼ変わりありません。住宅戸数密度もあまり変わりませんが、不燃領域率は当初52.3%だったものが平成28年3月時点で63.5%まで向上してきています。このような中で、居住者の高齢化は進行し、建物は老朽化が進んでいます。戦前と同じような都市基盤の市街地ですので、道路が狭く消防活動が困難であり、公園も不足しています。また未整備であった都市計画道路補助線街路第90号線の整備が動き始めたところですが、地域の問題点の解消に向けて、主要生活道路や二項道路の整備、不燃化建物への建替、公園の整備、住民参加のまちづくりを行っているところです。
まちづくり事業の概要
  • 本地区の(住宅市街地総合整備事業における)密集事業は、①主要生活道路や細街路の整備 ②公園・広場の整備 ③都営住宅等の跡地の整備 ④密集市街地での共同建替の支援 ⑤防災まちづくり活動の支援 があります。
  • 道路の拡幅整備は4路線を指定し整備を行っている所です。2項道路あるいは幅員4m程度の道路を6mに拡幅していくものです。都営住宅等の跡地は主要生活道路4号線を従前居住者用賃貸住宅の建設と絡めて整備し、道路の南側では区の施設(ゆいの森あらかわ:荒川図書館を含む複合施設)を建設中です。
  • 平成17年から実施している密集事業ですが、主要生活道路1号線106mは既に完成しており、荒川四丁目児童遊園、従前居住者用賃貸住宅(コンフォール町屋:UR)も完成しています。荒川二丁目グリーンスポット、荒川二丁目公園の拡張が整備済です。主要生活道路2号線・3号線・4号線が拡幅整備中、現在の荒川図書館の跡地に(仮)荒川四丁目公園が計画されております。
  • 一方で、平成24年から実施している不燃化特区事業では除却助成事業6件、寄付除却事業17件、戸建て建替え助成事業13件の事業成果が出ています。
  • 主要生活道路の整備はたかだか幅員4mから6mへの拡幅ではありますけれど、現場に行って見ていただけると分かると思いますが、非常に狭小な道路ばかりの荒川の街なかからすれば、とてもインパクトのある改善となりました。
  • それぞれの整備の中身を見ていきます。
  • 主要生活道路4号線では電線の地中化を行っております。
  • 従前居住者用賃貸住宅はURが整備し、900㎡程の敷地にRC造5階建て27戸の住宅を整備しました。
  • 建替え促進による従前・従後の写真です。
  • 公園整備は、面積として18,976㎡あるものの地域内で配置に偏りがあったため、西側のエリアにも公園等を検討しているところです。
  • 荒川区では密集事業の中で、永久水利と呼んでいる枯渇しない消防水利の確保・整備を進めています。深井戸を整備し地下水を利用するもの、墨田川の水を汲み上げ貯めて使う施設など、大規模な火災が発生した際に、消火用水が不足するであろうことを想定し、対策を立てています。深井戸も河川からの水の汲み上げも揚水能力は毎分2tあり、自家発電を使用し72時間運転可能な準備をしています。
UR都市機構との事業連携
  • 荒川二・四・七丁目地区では、UR(都市再生機構)との事業連携をしています。URでは老朽住宅、道路用地の残地を取得し、不燃化促進用地を設けています。不燃化促進用地とは、荒川区から要請を受けて取得した土地で、URが地権者から土地を買い上げ、密集事業の整備に伴って建物を失った方の代替地として活用する目的で用意している土地です。荒川区内には6か所727.4㎡の不燃化促進用地が用意できており、当面は地域の公開空地として公共利用できるように、協議会の中で使用のルールを決めて、みんなで使える土地として利用しています。
  • 当地区内の不燃化促進用地の分布は図の通りです。現状、区では整備費を付けておりませんのでただの空き地となっていますが、雑草の抑制のためクローバーの種を蒔き育成しています。それでも夏場は月に1度ほどは除草しないと大変なことになってしまいます。
  • こちらは現場で示している看板で、まちづくり協議会で決めたルールを掲示しています。土地の利用例としては、お祭りのときの神輿や人の待機場所などに利用されています。
不燃化特区事業の概要について
  • 東京都で定めている木密地域不燃化10年プロジェクトの中で不燃化特区事業を行っています。内容は都税の減免、都有地の提供、執行体制の確保、不燃化助成の上乗せでありますが、密集事業の至らないところを補完する形で行われています。密集事業では共同建替、延焼遮断帯形成にしか建替に関する補助が出ません。それに対し都では一般の建替えについても補助を行っています。大きいのは固定資産税の減免で、東京都の力の入れ様を感じさせる施策です。
  • 不燃化特区では平成32年度までに不燃領域率70%を実現させるため、戸建住宅の建替え助成、専門家の派遣、密集事業では対応できない100㎡未満の公園用地の取得、また特定整備路線や主要生活道路の整備などを行っています。荒川区内では「町屋・尾久地区」と「荒川二・四・七丁目地区」の2ヶ所が不燃化特区に指定され、都の事業として都市計画道路補助第90号線延長1.2kmが特定整備路線に指定され整備が進められています。新しい取組みとしての固定資産税の減免措置等は、建替えの促進に大きく寄与していると感じています。
  • 荒川区の不燃化特区での取組みとして、建築相談ステーションを開設しており、週2回窓口を開いて相談に対応しています。また、主要生活道路を6mに拡幅した場所の路肩にステッカーを貼り、皆さんの協力で整備していることをアピールしています。
  • 不燃化特区を指定する際にはコア事業を設ける決まりがあり、荒川二・四・七丁目地区では荒川図書館の移転先である複合施設の整備、従前居住者用賃貸住宅、主要生活道路4号線の整備を一体的な整備をコア事業とし、まちの更新を周囲に波及させていこうとしています。
その他の事業等について
  • 区内では都市防災不燃化促進事業を行っています。避難路の安全確保、延焼遮断帯の形成のため、補助第90号線の沿道30mを不燃化促進区域と定め、区域内の建替えについて、高さ7m以上の耐火建築物に対して助成を行っています。
  • また、荒川二・四・七丁目地区では地区計画を定めています。内容は一般的な地区計画ですが、敷地面積の最低限度の定めにより新たな敷地の細分化を防ぐことは、今後の密集市街地の改善に効果を期待できるものと思われます。その他に建築物等の用途の制限、壁面線の制限、建築物等の高さの最高限度、生垣・柵に関する制限などを定めています。
まちづくり協議会の取組みについて
  • 最後になりますが、荒川二・四・七防災まちづくりの会という地元のまちづくり協議会の取組みについてお話しさせていただきます。防災まちづくりの会は多い年で年に8回、近年は年に3~4回開催しています。その一方で防災・減災まちづくりフォーラムを年に1回開催しています。フォーラムでは毎回著名な方を含め様々な方を講師に招いてお話しいただき、参加者に防災・減災について考えていただく場を作っています。まちづくり協議会の最近の活動例はこちらに示していますが、先程お話ししました不燃化促進用地の利用ルールの看板の内容を決めたりしています。
  • 協議会はこれまでに42回開催されてきました。今議題となっているのは荒川図書館の移転後の跡地の公園計画で、住民の皆さんで中身を考えている所です。

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