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街みちネット 第11回見学・交流会「初黄・日ノ出町地区 まちづくりの経緯」

これまでの活動の紹介

活動議事録

初黄・日ノ出町地区 まちづくりの経緯

谷口 安利 氏
活動のきっかけ
  • 黄金町環境浄化の活動は約10年前、平成14年9月からスタートした。
  • 京急線の高架下は、阪神・淡路大震災後、京急電鉄が耐震補強を行うために、入っていた違法風俗店を立ち退かせ、その跡が鉄板で覆われている状況だった。
  • 立ち退いた違法風俗店は、高架下の周辺を中心に最終的に約260店舗まで増えた。普通の家があったところも違法風俗店に占領されていった。店舗をいくつもつくって、その間に挟まれた人はとてもいられなくて出ていくというようなやり方で、どんどん増えていった。とても我々の手に負えるような環境ではなかった。
  • 平成14年6月に新聞記者の人が尋ねてこられて、違法風俗店について初めて取材を受けた。
組織の立上げ・環境浄化に向けての活動
  • 当時、私は初黄町内会長を務めていて、どうしたものかと悩んでいたところ、日ノ出町町内会の会長さんから、一緒に活動しましょうと声をかけられた。その時は、警察や行政の支援もなく、こういう場所なので反社会的な組織の事務所が二つも三つもあり、先が全く見えないトンネルに入ったような状況だった。
  • まず手をつけなければということで、平成14年9月、「風俗拡大防止協議会」という第1回の会合を日ノ出町、初黄町内会合同で行った。
  • 活動として、中区役所に話を聞きに行ったり、違法風俗店で働いている不法滞在の女性たちを何とかできないかと入管にも伺った。女性と店、客、この三つがあって成り立つものなので、その中の一つでもなくすことが突破口になるのではないかという提案で始まった。
  • その当時は、違法風俗店が260店近くあった。
  • 風俗拡大防止協議会として活動している最中に、歌舞伎町やすすきのなどの繁華街対策を全国的に改善しようという動きがありここにも当時の国家公安委員長が視察に来たそうだ。その結果、この地区は風俗取締まりの重点地区になった。それを機に、今の「初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会」という名前にして新たなスタート切ったのが平成15年だった。
  • 活動を印象づけるために、共通のベストをつくって防犯パトロールを行った。初黄町内会、日ノ出町町内会はもちろん、山側にある東小学校のPTAにも声をかけて、3者で組織をつくって防犯パトロールやその他色々な行事を行うようになった。
  • 中区の協力を得て、新大久保へ視察に行き、今後どのように活動を進めていくかを探るため、色々と意見交換をさせていただいた。
  • その後、当時の横浜市長も何回か視察に見えて、法務大臣に要望書を提出した。
防犯パトロールの様子
「バイバイ作戦」による取締り
  • 平成17年1月11日、神奈川県警が「バイバイ作戦」という特殊飲食店の一斉取締りの活動を始めた。そこで初めて撲滅宣言をして、活動を強化していった。その前、平成16年12月20日に、県警の機動隊がバス4~5台を広い道路に停めて24時間監視を始めた。当然、客は来なくなる。一番わかりやすい行動をしていただけたと思う。
  • 私たちの町内会の会館を機動隊の駐屯先として提供し、それから平成17年の3月31日まで20~30人の方が巡回して、毎日警らをしてくださった。
  • そのおかげで、店はあるけれど、人気がまるきりなくなり、電球は消え、表向きは全部閉めてしまったようになった。後でこの界隈を歩いていただくとわかるが、特殊飲食店の特徴であるテント型看板がずらりと並んでいたが、今は8割方くらい取れた。
地域住民同士の価値観の共有
  • 4月に、大岡川両岸の8町内が運営を行う大岡川桜まつりを開催しており、今年で21回目になる。町内会同士はそれぞれ100年以上の歴史があって、文化が違うが、大岡川桜まつりを通して、まちに対して同じ価値観と同じ危機感を共有していた。そのおかげでこの活動がいい方向に向かったんだろうと思う。
  • 価値観を共有するということが地域として一番大事なポイントだと思っている。他の地域でまちづくりの活動される際にも、何かそういうものを見つけると動きやすいのかなと思う。
  • 桜まつりも当初は規模が小さく、人もあまり通らなかった。それでも根気よく続けた結果いい基礎ができて、地域の浄化ができたと思っている。
  • 違法風俗店で働いている女性は数百人いたと思われ、それによって成り立つ衣食住のお店もあったが、違法風俗店を排除したことで直接の不満をぶつけてくる人は幸いいなかった。
再生への取組み
  • 中区役所と地元有志・警察の連携による再生への取り組みとしては、まちづくりイベント実施と広報、まちづくり活動拠点整備、継続的な防犯パトロールの実施、大岡川の整備と活用、京急電鉄への要望などがあり、今でも進行中である。
  • その一例として、防犯パトロールや、「打ち水大作戦」といって川沿いの湧水を利用して打ち水をして、その後、かき氷を無料提供してみんなで食べるというようなことをしている。
  • 光の実験をしてみようという提案で、光のアーティストに来てもらい、個人の家のコンセントを使わせてもらって、提灯を灯す取り組みも行った。
  • 子どもたちが、このまちを恥ずかしいと思っていることはよくないと思い、東小学校に話をして、4年生を対象に社会科のカリキュラムとしてこの界隈の歴史探訪、いわれなどを、地域の住民の方に話してもらうまち歩きを行った。
  • 京急線つながりで、三崎のマグロを販売する朝市を開催した。これも、施設が今のような状況ではなかったので続けることが難しかったが、活気づけるイベントとして、改善の一つのきっかけにはなったと思う。
  • 安全のために今でも高架下に鉄板が張られて人が入れなくなっている部分があるが、「パブリック・フェンス・アート」として、この地域にいるアーティストの方に来てもらって、思い思いに絵を描きましょうという提案をした。子どもを対象にワークショップを開いて、どういう思いで描いたらいいかというところまで踏み込んでもらって、実施した。
  • 違法風俗店の借上げ転用例として、中区の協力で、防犯拠点「ステップ・ワン」を設置した。
  • また、別の借上げ店舗の転用としてはNPO法人BankARTと連携し、アーティストに滞在制作を行ってもらった。また、同じく借上げ店舗の転用として横浜市大の鈴木ゼミに来てもらい「コガネックス・ラボ」という安心・安全のまちづくり拠点を設置した。毎年学生さんがゼミ活動の一環として、地域の人たちと密着した活動をしている。
  • 京急電鉄には色々要望し、その結果、今は高架下にこのスタジオのような文化創造拠点となる施設ができた。京急電鉄の所有なので、当初は利用も難しいところがあったが大変なご協力を頂いている。今後は、高架下の活用を、京急電鉄自体も考えていくような方向に向かいつつあると聞いている。そうすると、より明るいまちに変身していくだろうと思っている。
  • 「アートによるまちづくり」の取組みとして、借上げ店舗をコンバージョンしそこをアーティストや建築家にアトリエや事務所として貸し出して活動をしてもらっている。
  • また、黄金町交番を新設した。県警も、この高架下に駐屯の場所があったが、いつまでも仮住まいはできないという考えもあったようで、たまたま個人所有の土地を無償提供するという話があり、そこに交番を誘致した。交番は、地域ごとに数が決まっているが、日ノ出町にあった交番を立ち寄り所にして、こちらを拠点にしようということで、地域と警察とがうまく連携してこういう結果が得られたと思っている。
黄金町バザールの開催とNPOの立上げ
  • 平成20年に、「横浜トリエンナーレ2008」があり、これに合わせてこの地域をもっと創造都市の文化拠点として発展させたいという提案が横浜市よりあり、「黄金町バザール」というアートフェスティバルを横浜トリエンナーレと連携しながら開催した。
  • 「黄金町」は、全国的に知られた悪いイメージがあり、昔はこの界隈でマンションを建てても「黄金町」という地名出さなかったが、今は幸い、悪いイメージが薄れてきて、「黄金町駅から徒歩1分」という看板でマンションが完売するような環境の変化が起きている。
  • 黄金町バザールのオープニングでのご挨拶に、神奈川県知事、横浜市長、神奈川県警本部長の三人がそろって来ていただいた。それだけ皆さんに関心を持っていただいたと思っている。
  • まちづくりというものはエンドレスなので、どこが最後ということはないと思う。アートによるまちづくりを推進しているが、先はまだまだ長いと考えている。今も違法風俗店の特徴である日除け型テント看板を外す活動をしている。
  • 黄金町バザールの後に、活動を継続させたいとして、NPO法人黄金町エリアマネジメントセンターを立ち上げて、私どもも理事として参画している。

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