街に、ルネッサンス UR都市機構

街みちネット 第10回見学・交流会 質疑応答・意見交換

これまでの活動の紹介

活動議事録

会場からの質問と後日コレクティブハウジング社からいただいた回答など
質問と回答

質問1
  • 宮前さんの経歴をみると、今まで、都市計画や再開発事業などのまちづくりのハード系に取り組んでおられますが、コレクティブハウスというのは、どちらかというとソフト系なので、そういうふうに変わられたきっかけが何かあれば教えていただきたいと思います。再開発事業に嫌気がさしたのか、それとも人間を変えることに魅力を感じたのか。
CHC宮前氏
  • 再開発事業の経験は、私にとってコミュニティについて考える非常に重要な契機になったと思います。再開発の名の下に、まちづくりなんだか、街こわしなんだか解らないような事が、資本(お金)の力で行なわれ、さらに、バブルが崩壊したとたんに資本が引き上げ、街がゴーストタウンになるということに直面した私に、大きな疑問とこういう事に加担する事への問いを抱かせました。そして、その場所で生きる人が主役であり、その場所で生きつつ次世代につないでいくことが街が持続再生するということであり、それが可能である仕組みづくりをしたいと考えたことが、コレクティブハウスに向かうきっかけになり、試行錯誤ではじめた事が今に至りました。
  • URのみなさんに私も質問があります。76万戸もあるという国民の税金でつくられた資産を、資産としてこれからも活用していくためには、どのような責任を持った運営をお考えか?大きな組織で何を言ってもとなりがちだとおもいますが、皆様がそれぞれに自分の仕事として自分の人生として当事者であり何をなしていくのかという事は、何方にもそれぞれに問われる事と思います。
  • 希望を持ってつくられたたくさんの住まいが不良債権のようになってしまうとしたら、その責任はやはりURの皆さん一人一人にあるとおもうわけです。なんといっても当事者ですから。
  • 安心できる廉価な住まいは社会不安を解決する大きな資産であり、安定した健全な暮らしの基本でもあるとおもいます。そういう社会資本として、今ある住宅をどう活用するのかをもっともっと考えてくべきではないか?赤字だといって穴埋めに転売するというような浮ついた民間不動業のような経営でなく、どうしようもないと放置して塩漬けにしておくのでもなく、社会資本として生活保護同様 暮らしの最終ラインも支ええ、そこから人が復活していき、豊かなコミュの場でもあるという人を支える社会住宅としての価値や存在意味をもつことができるのは税金でできているURだけだと思います。 バランスの悪い現在の社会だからこそ、もっと社会全体の暮らしの場の在り方を積極的に提案していく事を私は支持したいと思います。
質問2
  • 私共も来月、再来月あたりから東北沿岸部に行くことになりました。先ほど挙げられた事例は都市部が多かったと思いますが、南三陸のような地区で、これまで都市部で使われた手法で、使えないなと思われたものがあれば教えていただきたいです。
CHC狩野氏
  • 住民がそこで暮らし生きていく当事者であり、その暮らしを支える社会的な仕組みを回す役割を担う当事者が地元行政ですので、外部の人間は第三者としてそのつなぎ手となる役割を担うというのは変わらないと思います。
  • 年代や新旧住民の考え方の違いによる軋轢など、地域の課題も基本は変わらないのでは思います。しかし、都会よりも地域や親類関係の助け合いによるコミュニティの底力(結、講、組合、自治会、行政区…)がある分、一人一人の意見が尊重される話合いによって物事を進めることに慣れていないこと、また行政との協働の文化はほとんどないところが多いため、住民間の風通しを良くする役割、住民と行政とを結ぶ役割は第三者に望まれるところだと思います。住民一人一人がどう暮らし、どう生きていきたいかを尊重するという姿勢をベースに、丁寧に住民同士の対話を続けていくための支援が必要とされていると思います。現地の人は、よそから持ち込んだ何かに期待していません。自分たちのアイデンティティに根ざした地道な暮らしの創造を望んでいると思います。
質問3
  • 空き家を再生してコモンハウスのようなことをやりたいと思っている人たちがいるのですが、町内会や自治会が、もう既に自分たちがやっていることをよそから来た人が何でやるんだと言って、なかなか地元の人たちとうまくいかないという例をよく聞きます。そういう場合、元々地元で活動されている方たちとどのようにうまくやっていくのか教えていただきたいです。
CHC宮前氏
  • 地元の人は当事者です。よそから来た人は支援者、第3者としての役割しかはたせません。
  • そこでの事業の継続性を担えるのは、当事者だけだと思います。しかし、よそ者には当事者でないからこそ出来る役割があります。外の情報を知らせ励ます事や、コミュニティ内で起こる問題に客観的な視点をもたらすことなどです。そういう役割をはっきりさせて、関わるという事が協力の考え方だと思います。
質問4
  • 今までのコレクティブハウスで居住者の方々のトラブルがなかったのか、もしあれば、どういうことがあって、どういう対応、ないしはお話をなさったのか、教えていただきたいです。
CHC宮前氏
  • まず、トラブルとは何か?それを考えて欲しいと思います。
  • 多様な人があつまって、一緒の場所でなにかする、暮らす、生きるのであれば、相違が常にあるのは当然の事である。さらに、相違がある事こそがまた素晴らしい未来、災厄にも打ち勝つ可能性を生むのだとおもいます。全体のメンバーの共通の価値観をそういう所までもどせるような支援を常にすること。そこからスタートして、今起こる問題を考えようと、第3者としては皆さんに対していいます。第3者である事は、中を取って調停するような事が役目ではありません。
  • トラブルの当事者に、もう一度少し問題からはなれた、客観的視点をもってもらう支援をすることだと思います。そういう事が出来れば、問題自体は本人たちが解決して行くと思います。
  • 早めの全体への問題の開示、が最も必要です。
質問5
  • 団地の管理・保全を担当しています。担当している団地では、自治会がやる気を持って、色々なボランティアや、お茶を飲むような場を設けたりという活動をされていますが、そういった場に参加するのは同じ方ばかりで、引きこもっている方々はなかなか出てこられません。そういう方に最初の一歩を踏み出してもらうための工夫が非常に大事だと思っています。やる気のある方以外にも参加していただくために、どういう工夫でどのように広げていくかというところを教えていただければと思います。
CHC宮前氏
  • とても難しいことです。まずは、自分が困っていないと思っている人は出てこない。ですから「困るという事に気がついてもらう」事も大事だと思います。
  • それと、やってもらうだけでなく、些細な事でも、自分がやる側にもまわれるような、緩やかな運営の仕組みづくりも必要だと思います。人のためにも自分も何か出来ること。
  • いつもお客さんであることは、やりがいもないし、必要ともされないし、お世話になるばかりで楽しい事とは思えないのではないでしょうか。
CHC狩野氏
  • 被災地の仮設住宅でも集会所に出てこられる人は問題ないが、引きこもっている人が孤立して具合を悪くしてしまったり死に至らないようにするにはどうしたらよいかという問題があります。しかし、人とお茶を飲んでしゃべることは、例えば男性にとっては興味のないことだったりしますよね。出てくる動機は人それぞれ、様々だと考えた方がよいと思います。
  • 結構難しいことではあるかも知れませんが、食べることは全ての人が生きるためにやらざるを得ないことなので、コモンミールというのは、おしゃべりしたくない人だって、自分が食べるために他の人の食事を作る日もあるとなると、出てきて共同作業の仕組みに加わる動機が生まれます。「人と関わらず変な人」というレッテルから解放されるようなほんの些細なコミュニケーションの機会ができると、自分の姿を見つめる鏡ができて「困るという事に気がついてもらう」ことができるかも知れません。
質問6
  • 現在、世の中でプライバシーが重視されている風潮があると思いますが、居住者の方に、コモンスペースを持つことがプライバシー以上にメリットがあるという話をどのようにされているのでしょうか。
CHC宮前氏
  • プライバシーもコミュニティもあって「暮らし」だと思います。どちらかでもないし、どっちが重要かなんて事も、人により、場合により時々に変化するのが当たり前の暮らしではないですか?
  • ですので、どういう暮らしをしたら、安心で快適なのか、どのような人とどのような関係を持ちながら暮らすのが自分にとっていいのか?メリットとか、デメリットとかでなく,そういう根本をどう考えているのか、皆さんで話し合う中から、コモンスペースのもち方も、内容も、皆さんが考えていきます。
  • 孤独は大事だけれど孤立はしたくないねーと多くの方はおっしゃいます。 では、あなたならどういう暮らしを望みますか?自分ならと考えてみられるといいと思います。
質問7
  • 賃貸で運営されていますが、分譲とした場合、どのような特徴・問題点等がありますか。
CHC宮前氏
  • 海外ではコーポラティブ方式のコレクティブなど、所有のものもあります。ですので可能性はないわけではありません。しかし、猫の額ほどのものを「持つ事」がこれからの社会にあうのでしょうか?まず、第一に、持つ事は移動の不自由をともなうのが日本の今の住宅の市場です。そういう心配はありません。第二に、家族の形態も経済環境も激しく変化し、右肩下がりになる中で長いローンも厳しく、家族の変化だけでなく自分の状況の変化などにも対応できる住まいはもってしまえば難しい。
  • ということで、いろいろな意味での移動の自由をもつことは、暮らしにとって、とても大きな賃貸の価値だと思います。
  • 現実的には、コモンスペースの所有権のありかた、相続の際の問題、コミュニティ環境があわない等の場合にも所有である事にはいろいろな問題があると思います。
質問8
  • 圧倒的リーダーがいるのではなく、一人ひとりが当事者として関わることでコミュニティが前へ進めるのだと思いました。お客でなく当事者にしていく、言うは易し行うは難しですが、秘訣はありますか。受け入れ励ましてその気にさせていくことでしょうか。
CHC宮前氏
  • 自分の生き方を自分でコントロールするのは、どの人にとっても自由の基本だと私は思います。
  • みんな生きる事の当事者です。自分はこの場所でどういきたいのか?(極端に言えば、どういう風に死んでいきたいのか?まで)そういうことを、他の人とともに考えていくことで、自分が自分のことをやっていくという当たり前の事に気がつき、みなさんどんどん快適に元気になっていきます。
  • 住まい手を、お客さんにししまうのは支援している側の対応(管理しやすいから、何か事件がおこると面倒だからなどなど)であることはとても大きいとおもいます。
質問9
  • 希望者の会員が増加しているそうですか、どういった人々でしょうか。(単身者、母子家庭が多いのでは)
CHC宮前氏
  • 様々な単身者が半数を占めつつある日本ですから当然単身者は多いです。全体の入居者の50%は単身者です。(80代から20代の幅があり、30代が最多です)子育て世帯は日本の世帯構成でも全世帯の25%?30%という状態ですのでそのくらいの割合です。シングルマザーが多いかと言われれば、一番安心や安全を得られそうですから、多くなりそうですか、入居している子育て世帯の20%?30%という感じです。特に多いとも言えないと思います。
質問10
  • コレクティブハウスのビジネスモデルはどの様なものでしょうか。(コーディネート費用、運営費など)
CHC宮前氏
  • ビジネスモデルとしては、20年から30年で事業主が事業費の返済が無理なく出来る賃貸住宅事業と考えています。コーディネート費は従前は入居者数×20?25万円くらいかかります。
  • しかし、入居者の募集経費などはかかりません。従後は自主管理ですが、運営支援費として毎月総家賃の6%程度の運営支援費をCHCに支払っていただき運営支援しますが、その他の運営経費を事業主が支払う事はありません。
質問11
  • 自身が千葉の方の左近山団地に似たような分譲団地に住んでいることもあって、コモンミールのプロジェクトをきっかけにしたコミュニティ再構築に非常に感動しました。これからの検討課題として、郊外の分譲団地はたくさん問題はあるかと思いますが、今後向かうべき道、ビジョンがもしあれば教えていただければと思います。
CHC宮前氏
  • 東京だけでない、全国の郊外の分譲地の課題は団地、一戸建てともに非常に重いと思います。高齢化の次には人口が減っていく事もあり、コミュニティを自分達で維持していく事にも限界があると思います。
  • そうなると、住民が参加して地域を有効に縮小していく事が快適な暮らしのためには必要になるとおもいます。そういう時に必要な法制度や融資制度、ファンド事業、税制また自然環境再生などのさまざまな技術を今から準備していく必要があると思います。今回の災害の移転などでの問題の解決法の件等も真面目につくればこういう「街をたたむ」「街を移動する」場合にも役に立つと思います。

その他の感想など

参加者
  • 現地を見られて住んでいる人の話しが聞けたのはとても参考になりました。私自身、空き家の住み替え支援事業を担当しており、コミュニティ、まちづくりで空き家の利用を考えられればと思います。コミュニティを作る上でコモンスペースの使い方が重要だと思うので、今戸建てに住んでいる人たちも、近所の空き家を上手く使えればと思います。
  • 現在、団地の管理・保全の仕事を行っていて、その中で感じていることとして、①住民の方の高齢化、孤立死の増加、②最低限のお金しかかけられていないサービスの中でどうしたら「豊かな暮らし」を提供できるのか?があったが、もしかしたらそのような問題のヒントになるのではないかと感じました。特にお客様としてサービスを提供するだけでなく、住民の方に当事者として生活を継承していってもらうことも大切だということが1番今日の中で勉強になりました。(設備投資をしなくては豊かなサービスが提供できないと思っていました。)そういった支援をする事が新たな「豊かなサービス」としての可能性を感じました。

関連リンク

関連ページ

メニューを閉じる

メニューを閉じる

ページの先頭へ