街に、ルネッサンス UR都市機構

街みちネット 第8回見学・交流会「根岸三丁目地区における密集市街地整備の取り組みについて」

これまでの活動の紹介

活動議事録

UR都市機構の携わった根岸三丁目地区における密集市街地整備の取り組みについて
根岸三丁目地区における重点的な取り組み課題

保坂 修
  • 当地区にはA~Fまでの防災区画道路が位置づけられているが、このうち、防災広場への避難路となるB路線については、現状2~2.7m程度で行き止まりになっており、 沿道には老朽化した木造住宅が並んでいる。これらの課題を解消するために現況道路5mに拡幅整備、行き止まりの解消という2つに取り組むことになっている。

従前の様子

保坂 修
  • B路線の角にある、屋根が落ちている住宅は正確な築年数はわからないが、ヒアリング等によると大体100年前に建てられたということも聞かれた。
  • 築40年くらいの共同住宅は、流しと玄関は共同で、室名札には今では使わない古い漢字が使われていた。キッチンは流しとガス台を置くだけの最低限のスペースだった。
従前の共同住宅の室名札

B路線整備のポイント

金井 康典 氏
  • この課題に取り組む上での関係権利者は、個人の地主が3人(うち1人は自己居住)、借家人が28人いた。借家人はほとんどが高齢単身の方だった。 また台東区がまちづくり用地を3箇所所有していたが、建物は建っていなかった。
  • この状況を踏まえてB路線整備のポイントを整理すると、まず台東区取得済みの用地を有効に活用することが重要だった。また、多数の高齢借家人への対応が必要だった。 言い換えると地主対応と借家人対応ということになるが、これら2つの対応に際し、URが支援をさせていただき、地主については土地区画整理事業による土地の再配置、 借家人については要請型従前居住者用賃貸住宅の活用を行うことで、地域の防災性の向上と周辺への波及効果を狙った。

B路線整備のスキーム

金井 康典 氏
  • 台東区取得済み用地を活用しB路線を整備するにあたり、通常の方法で整備するにはまず道路用地を確保する必要があるが、それを用地買収により行った場合、 不整形な道路残地が残ってしまうことと、区にとっても用地取得のために予算化して用地取得の交渉をして、といった事務が発生する。
  • また等価交換の土地交換により行う場合も、同様に不整形な区有地が残ったり、不整形な代替地を取得することになり、区と地権者はデメリットがある。また代替地の取得で税金もかかってしまう。
  • また、用地買収、土地交換、どちらでも1軒でも協議が難航した場合には虫食い状態での用地取得になってしまうという課題があった。
  • こういった課題に対応し、区画整理を取り入れることによって、区、地権者とも整形な土地を取得できる、土地交換による税金がかからない、新たに用地取得する必要がないといったメリットがある。
  • 区画整理は区と個人の用地を活用し、5mの道路を抜きC路線とぶつけて行き止まりも解消する形で行った。個人所有地については4箇所に整形に換地され、残りは台東区がそのまま持って、 今後の事業の代替地として活用していくことになる。
  • 最終形として、区画整理の後、台東区からURが土地を取得し従前居住者用賃貸住宅の整備を行った。
  • もう1つのポイントとなっていた借家人対応については、借家人の属性は住居面積が非常に小さく、賃料は2~3万円台が過半数、少し規模の大きい5万円台は7%という状況であった。 また高齢者が多く、事業開始当初の約3年前で70代が60%、60代も含めると約75%という状況だった。
  • そういった高齢・零細な借家人が多数いらっしゃるということで、道路拡幅に伴う移転をしていただくにあたり、移転先として一度にこれだけの賃貸住宅を同じ区内で同時期に 確保することは民間の物件では難しかった。公営住宅ではどうかというと、残念ながら台東区には区営住宅がなく、都営住宅は区内にはあるが非常に数が少なく、優先入居枠も非常に少ないという状況だった。
  • 以上を踏まえて、受け皿として従前居住者用賃貸住宅の整備が必要だということになった。

B路線整備についての台東区とURの役割分担について

金井 康典 氏
  • 密集事業の主体は台東区であり、区施行の道路事業によって拡幅と行き止まりの解消を行うが、実際の工事の施工と区画整理による土地の入れ替え、 土地所有者や借家人との交渉の支援はURが台東区より受託事業として受けてお手伝いをした。借家人対応については、補償と受け皿の確保は台東区の役割だが、 その確保の手段として、密集法に則ってURに従前居住者用賃貸住宅の要請があった。その要請に基づいてURは住宅の建設及び管理を行っている。 完成後、事業の進捗にあわせて、必要な時期に必要な戸数を台東区に借上げていただいて、受け皿住宅として使っていただく。このような役割分担の元、進めてきている。

従前居住者用賃貸住宅の制度概要

金井 康典 氏
  • まず根拠となる法律は密集市街地整備法で、こちらが平成19年に改正されて前居住者用賃貸住宅の制度ができた。密集市街地の整備にあたり、 移転が必要となる借家人等従前居住者のために、地方公共団体の要請に基づき、URが賃貸住宅を建設・管理するという内容となっている。 対象となる密集市街地の整備に関する事業は、防災再開発促進地区の区域内における防災街区整備事業その他の市街地開発事業と公共施設の整備に関する事業である。 住市総事業はその他の市街地開発事業に含まれるため、住市総のかかっている地区であれば、要請を受けて、URが建設・管理ができる。
  • 補助金等措置については、適用要件があるが、用地費・建設費等の2/3、家賃の激変緩和措置1/2が国からいただける。
  • 空家対応については、密集事業中に、従前居住者が入居しない期間は、URが定期借家等により一般公募、密集事業終了後はUR賃貸住宅として活用する。 これによって空き家も無駄なく活用できる。
  • この事業の進め方は、最初に従前居住者用賃貸住宅の整備敷地、必要戸数について公共団体とURとで協議、調整を行う。 協議が整ったら、公共団体からURに建設要請をいただいて、URが国土交通大臣に事業計画の認可申請を行う。 大臣認可が下りたら、賃貸住宅の建設が始まる。それに併せて、補助金も投入される。完成したら従前居住者の移転が始まり、住宅の管理が始まる。
  • 建物の管理方法は、今回は台東区がURから必要な住宅を借上げて、従前居住者へ提供することになる。この建物自体はURが共用部分を含めて全体を管理している。 そのうち台東区が従前居住者用として使いたい住戸を借上げ、その専用部は台東区で管理する。区は借上げた住宅を、従前居住者と契約を結んで提供するというスキームになっている。

従前居住者用賃貸住宅の建物概要

金井 康典 氏
  • 建物概要は下記の通りである。
敷地面積 766.73㎡
用途地域 第1種住居地域
建蔽率/容積率 60%/200%
前面道路幅員 5m
建築面積/建ぺい率 434.08㎡/56%
延床面積/容積率% 1,465.16㎡/177%
住戸形式 1K、1DK
住戸面積 27.82~40.45㎡
住戸数 34戸
駐輪台数 34台
従前居住者用賃貸住宅外観及び室内
建物の設計コンセプトは根岸地区の古き良き下町風情との調和を図りながら、高齢者への配慮や人や自然との関わりを大切にして、安全で安心な生活ができることである。ポイントが3つある。
  • 1つ目のポイントはコミュニティ・地域性への配慮であり、具体的な取り組みは2つある。まず共用廊下にふれあいの場となるコミュニティスペースといってベンチを設け、ベンチの背面に花台も設け、 居住者の方が自由に活用できる場を提供している。また、下町の雰囲気を生かした格子状のデザインのファサードと、地域との関わりに配慮し誰でも座れるベンチを設けている。
  • 2つ目のポイントである環境への配慮は5点あり、つたの絡まるトレリスによる壁面緑化ということで、住宅の妻側の専用部の窓に居住者の方が自由に植物を置くことができる花台を設けている。 あと自転車置場や建物屋上を緑化してヒートアイランド対策や建物の熱負荷の低減を図っている。また、集合住宅だと通常玄関扉は鉄扉になってしまい風が抜けないが、 玄関扉の横に小さな小窓を設けており、それを開ければ防犯上玄関の扉を閉めていても風が通り抜けるというしつらえにしている。また、共用廊下にLED照明を採用し、電力負荷の低減に努めている。 最後に歩道状空地への街路樹の整備ということで、できるだけ沿道に向けて樹木、植栽を植えている。
  • 3つ目のポイントは防災・安全安心への配慮ということで、前面道路に向けたベンチの下に蓄電池付きソーラーパネルを電源とし非常時にも点灯するLED照明を設置し、夜間に光るようになっている。 災害時等地域一体が停電になった時でも、隣の防災広場への誘導灯にもなりえる。最後に敷地内のバリアフリー化ということで、車椅子でも通行できるように段差の解消をしている。
配置計画
  • 道路側にエントランスと管理事務所棟があり、そこから入ると住宅が7戸並んでいる。2~4階は同じ配置で、5階だけ日影の関係でセットバックして6戸となっている。住宅タイプは5つある。
【Aタイプ】
  • 1K、28㎡であり、水周りの洗面、脱衣、トイレ、浴室等を縮めて、キッチンをコンパクトにまとめて、南側に居室部分を有効に取っているプランである。
【Bタイプ】
  • 間取りは一緒だが、南側の居室が和室になっている。
【Cタイプ】
  • 1K、40㎡で、対面型のキッチンがあって、L字型に居室が取られており、ダイニング部分と寝室部分を分けることもできるし、ワンルームとして使うこともできる。
【Dタイプ】
  • 1DK、40㎡の東妻のプランで、敷地形状を利用して斜めの壁になっているのが特徴である。ダイニングと洋室の間にあらかじめ建具が設置してあり、寝食分離がされている。
【Eタイプ】
  • 1DK、40㎡の西妻のプランで、対面キッチンにダイニングと洋室があるプランである。
  • 住宅設備・仕様の特徴的な部分を紹介する。まず床暖房だが、UR賃貸では東京ガスと別途有料の契約をすることにより利用可能となっている。また、浴室乾燥機、トイレコール、バスコールも設置している。 BS、CSアンテナが設置されており、インターネット設備も安く利用できる。また、エントランス、メールコーナー、エレベーター等への防犯カメラの設置、 不審者の侵入等を防ぐためのオートドアロックの採用により安心して生活できるような環境を整えている。
見学風景

まとめ

NPO玉川まちづくりハウス:林氏
  • 今日は実際に地区を見てみて非常に勉強になった。問題もあるが、素晴らしい環境の下町でなかなかいい人間関係がありそうなこの地区で従前居住者用賃貸住宅ができて、 防災広場も活用されていて、区とURの共同作戦がうまくいったのかなと思った。 今日の感想をアンケートにも書いていただいて、その情報を公表すると、色々な見方があることがわかっていいと思う。僕もそれを知りたいし、皆さんも役に立つのではないかと思う。 街みちネットで見て回っている事例は、あまり超高層などはなく、そこがいいところだと思っている。あまり巨大でないプロジェクトの中に様々な可能性があるのではないかと思うので、 そういう事例について、この会で少しずつ勉強を積み重ねられるといいと思っている。 東北の震災の後、巨大な住宅で津波に対抗しようという考えと、建築土木より災害のスケールの方が大きいのでもっとソフトな方法を工夫した方がいいという考えと両方ある。 僕は、建築土木の理系の頭の構造からするとソフトの勉強が足りないと感じることがたくさんあり、ソフトの方がこれからのまちや住宅や環境のあり方としていいという気もしている。 また是非、この街みちネットなど皆さんにたくさん来ていただいて、みんなで考えられれば嬉しいと思う。どうもありがとうございました。

関連リンク

関連ページ

メニューを閉じる

メニューを閉じる

ページの先頭へ