街に、ルネッサンス UR都市機構

街みちネット 第7回見学・交流会「富山県射水市放生津地区のまちづくり」

これまでの活動の紹介

活動議事録

富山県射水市放生津地区のまちづくり

丸山 豊 氏
地区の概要
  • 射水市は富山市と高岡市に挟まれた場所にあり、放生津地区は古くからの港町である。射水市全体の高齢化率は約21%だが、この地区は約41%と高い。 住市総事業地区が約8haで、そのうちの重点密集市街地が約4haとなっており、富山県唯一の重点密集市街地である。
  • 海からの眺めや内川の風景など、魅力的な景観がある一方、県道裏手の浜側は背戸(せど)町と呼ばれ、細い道路と狭小老朽住宅が建て詰まった重点密集市街地となっている。 内川沿いは元々漁師の仕事場で街の表の顔ではなかったが、まちづくり交付金を使って、散策できるように整備が進められている。
  • 地区の中に入ると細い道が連なっており、空き家や崩れてしまっている廃屋もあるような状況である。
  • この地区を整備するにあたって、重点密集市街地に指定されているのは奈呉町、中町、山王町の3町だったが、隣接する四十物町の町会の役員から 「うちも同じ状況だから入れてほしい」と要望が出されたため、事業としては四十物町も含め、4つの自治会を6つのブロックに分けて検討を行っている。
射水市放生津地区の風景
自治会ごとの曳山
検討の方向性について
  • 中町西部と奈呉町第一街区が先行地区で、ここでは従前居住者用住宅を含む共同建替えによる共同住宅の建設を柱にしながら、戸建での再建も行う。 それ以外の地区ではあまり共同住宅は考えておらず、空き家を行政が除却し、土地の交換分を持ちながら土地のまとまりを作って更新をし、 その中で街区内の生活道路を少しずつ広げる方針で検討を行っている。住環境と住宅を一体的に整備し、住宅の再建と最低限の生活道路の整備を基盤にしながら 更に高齢者の安心居住、子育て世代の定住、自然や文化の継承などもこのまちづくりの中で実現していこうということで、「多世代が住み続けられるまち放生津」を目標にして検討を進めている。
  • 平成20年度に先行地区である中町西部と奈呉町第一街区の全ての世帯、またその他の地区の一部の世帯と個別面談を行った。その中で平成21年度から中町西部で先行的に検討を行っている。
先行地区(中町西部地区)での検討内容
  • 住戸が41戸あるが今住んでいるのが14戸だけという状況である。
  • 個別面談でうかがった将来設計や住宅再建の希望を元に、地元のコミュニティの中心となる公民館と曳山の蔵も道路空間を確保しながら建替え、共同住宅と戸建が混在した再建案のプランを検討している。
  • 街区内道路は当初4mで提案したが、曳山を通したいからそれでは狭いという話になり6mにした。さらに、共同住宅の1階には福祉施設のゾーンを設けて、高齢者の介護や子育て支援ができる福祉施設を整備したいと考えている。
  • 現在、土地利用の検討で権利者の合意を確認しようとしている段階である。空き家の除却もそろそろ始まり、この秋口には建築工事に着工して平成24年の夏には竣工できるよう準備を進めている。
先行地区(奈呉町第一街区)での検討内容
  • 住戸数は66、居住世帯数が39あり、中町西部地区より1年遅れで進んでいる。地区の奥行きがあり密集度が高く、地区内に車が入れる道路が1本しかなく行き止まりになっているところを、 生活道路を2本通し改善することを検討している。共同住宅での建替えの検討を進めている他は、現状のままの家と、この機会に建替える家が混在することになると思う。
  • 構想案として、共同住宅敷地、個別利用敷地、生活道路、存置の他に、手法は未定だが子育て世帯が戻ってきてくれるような住宅供給の種地を設け、これから工夫していこうという話をしている。 また、敷地の形状が悪く検討中のところは、降った雪の置き場として空地にしておくという案も出ている。
先行地区以外での検討内容
  • それ以外の地区は、空き家はほぼ除却してほしいという希望である。残す方は、現状のままを希望される方や、空き家だが釣りをするためにたまに使っているので場所は確保しておきたいという方もいる。 様々な希望を踏まえて、道路は蛇行してもいいから造る、土地のやりくりをしてそれぞれの希望の広さの土地を確保し、余ったところには新たな若い人に入ってもらえるようなことを考えていこうというのがこの地区全体の構想となっている。
防災街区整備事業導入にあたっての問題点
  • 防災街区整備事業導入の検討を行ったが、個別利用区については建物構造を準耐火構造以上にしなければならないという条件があり、 地場の工務店に参加してもらいたいが準耐火構造のノウハウがないため難しく、今回は事業の導入を見送っている。また、導入条件となる特定防災街区の指定など県と市をまたぐ手続きの煩雑さも導入を見送った理由である。

福祉施設との一体的整備に向けた取り組み

丸山 豊 氏
取り組み状況について
  • 放生津地区の検討を行っている防災まちづくり検討会の中に今年の1月に福祉部会を作った。共同住宅の一部に地域密着型の施設を整備して高齢者の介護支援や子育て世帯への支援を提供して 多世帯が住み続けられるまちを目指し、福祉事業者から提案を募集して、選定した事業者と一緒に更に内容を詰めていくという形で進めていきたいと考えている。
  • 第2回目の検討会では、富山型デイサービスに取組んでいる「いちにのさんぽ」や、小規模多機能型居宅介護を展開している「本町サポートセンター」を訪問し、見学やヒアリングを行っている。
  • 地域に密着した高齢者介護と子育て支援のサービス拠点として、元気な高齢者から子供たちまでが集える場所にしないと、自分達も利用できないし、あまり意味がないということで、それを条件に出しながらやっていこうと考えている。
事業資金の考え方と補助制度活用の問題点
  • 住市総で福祉施設を一体的に整備すると補助金が上乗せされる制度があるが、福祉事業者へのヒアリングの結果、計画の内容では、家賃が高くては入れないということだった。 他の補助金や、借り入れを少しでも減らして、共同出資で施設を造ることができないか検討しているところである。
  • 一方、福祉施設そのものに対する補助金もあり、厚生労働省で平成23年度までは緊急整備で2,625万円、通常でも1,500万円補助が出る制度がある。 ところが今回、平成23年に工事を始めて24年に竣工するので、制度の切り換え時期に当たり、どちらの補助金も出ないというのが県と市の考え方で、そこから進んでいない。
  • 福祉法人に施設を取得してもらって、都市再生住宅との関連を持って運営してもらうということも考えている。都市再生住宅は20年間の借り上げで、 20年が終わると所有者が処分するなり、賃貸にするなりするが、福祉施設が持ってくれて、より一体的に地元で展開し、高齢になった人もそこへ順番に入ってくるなどの仕組みができるといいと思っているので、取得の道も是非開きたいと思っている。
活用を検討している補助制度
  • これまで住宅市街地総合整備事業と地域介護・福祉空間整備等交付金をメインで考えていたが、高齢者居住安定化推進事業や、これから法改正で動き出す地域優良賃貸住宅制度もある。
  • この4つの制度は高齢者メインだが、何とかしたいのが子育て世代への補助である。子育て世代の若い人たちに密集市街地に戻ってきてほしいが、 普通に住宅が供給されても、あまり高い家賃のところには住むことができない。特優賃で段階的に補助金がなくなっていくものがあったが、段階的に家賃が上がっていくと他の安い物件に移ってしまったり、 払いきれなくなったり、制度的な問題がある。地域優良賃貸住宅制度の改正内容を見ると、子育て世代への支援策として、段階的に収入が上がっていくという入居条件を外すことになっているようなので、 制度改正の内容によっては、検討中の共同住宅の何戸かを若い世代に入ってもらえるように家賃を下げることができるのではないかと期待している。
街並み・観光まちづくりに向けた取り組み
  • まちの資源を探そうということで、12月にまち歩き・地図づくりイベントを開催した。NPO法人水辺のまち新湊という、先ほど紹介した内川を中心とする町おこしをしようとするNPOと協力して行った。
  • 放生津地区には内川から見える立山連峰、漁船のある夜景、木造の蔵の連なり、住宅の瓦屋根のリズミカルな連なりなど、素晴らしい景観がある。 まちの中を見ても、格子のある町屋のまちなみや、銅版仕上げの建物、小道、蔵、石垣、お地蔵さんなど、色々な資源がある。他にも漁港があり、漁師も住んでいて、カニや白えびなどの海産物もある。
  • NPO法人水辺のまち新湊は内川を中心にこの地区で活動を展開していて、川の駅という観光船の発着所にもなる施設を2年前に建設して管理運営をしたり、 県道沿いや内川沿いの民家を市が借りあげた滞在施設の運営も行っている。他にも勤労青少年ホームの運営をしたり、まち歩き絵図を作ってまちの魅力をPRしたり、 歴史散歩の事例を提案したり、イベントの開催も行っている。このようなNPOと協働しながら進めることは、特にまちの魅力を高め、発信していくという意味で重要だと思う。
密集事業と街並み整備の相乗について
  • 住宅市街地総合整備事業による老朽住宅等の買収は、除却を前提とするため、買収した住まいを改装して使いたいという場合でも、古い住宅を改修して活用することができない。 歴史ある地区では良いものを残して活用していくために古い民家の活用などが重要だと思うので、うまくマッチできるとよい。良いものを残して活用していくことが、密集事業でも上手くできるといいと思う。

長崎市斜面市街地再生事業からの発展

丸山 豊 氏
  • 以前関わっていた長崎市の斜面市街地の再生事業との比較で事業のポイントとなる点を紹介する。
北大浦・東山手町地区、稲佐・朝日地区での事業の概要
  • 生活道路整備に併せて、共同建替えによりコミュニティ住宅、従前居住者用の戸建住宅を整備することを提案していた。 地元の合意は完全にできて、事業施行者が決まって基本設計まで行ったが、途中で長崎市からコミュニティ住宅の整備は止めたという話があり、潰れてしまった。
整備を進める上でのポイント
ポイント1:コミュニティ住宅の確保
  • 射水市の事例でも合意形成を図る上で非常に重要だと思う。
ポイント2:福祉施設の一体整備
  • この地区では介護保険が導入されたばかりで、行政は施設整備の計画を持っておらず断念してしまったが、今は地域密着型については行政も計画を持ちながら進めていこうという時代になってきていて、 積極的に何とかしようというやりとりができるようになっている。
ポイント3:育て世代向けの住宅の供給
  • 家賃低廉化は自治体の独自の施策がなければできなかったが、新しい仕組みの中でできるのであれば、一歩前に進んだ話が展開できて非常にいいと思っている。 少しずつ制度が変わって前向きな話ができるようになっていると感じている。

まとめ

NPO玉川まちづくりハウス:林氏
  • 大変長い時間ありがとうございました。プレゼンターになってくださった方は、我々の頭を活性化させるのに力のあるお話をしていただいたし、まだ質問したいと思っておられる方もたくさんおられるかと思うが、 こんな形の機会がまたほしい、また機会の持ち方をこんな風にしたらいいんじゃないかということがあれば、是非このアンケートに書き込んでいただきたいと思う。

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