街に、ルネッサンス UR都市機構

街みちネット 第5回見学・交流会「共同建替えにおける合意形成の流れ等」

これまでの活動の紹介

活動議事録

共同建替えにおける合意形成の流れ等
事業の流れと合意形成の経緯

(株)象地域設計:三浦氏
  • この地区は篠崎駅ができるまでは、陸の孤島のような状態で、足がない不便なところだったと聞いた。しかもミニ開発地で、幅員3.6mの行き止まりの私道が5本この地区に入っており、災害にも弱いし緊急車両も入って来られないという問題を抱えていた。
  • 戸建志向が強い方が多いというのが第一印象だった。
  • 平成11年から地区全体の54世帯の方に向けて「新しい住まいづくり検討会」を開催し、自分の敷地で、道路を通してどういう家が建つのかという建築のルールの勉強のためのワークショップを行った。その中で、戸建ではあまり面積が確保できないという問題意識が培われ、解決策の1つとして共同化をクローズアップできた。また、事業後に違反建築が建っては意味がないので、戸建住宅の勉強会も平行して行った。その結果、戸建住宅も法に適った形で建替えされて、いい街並みになったと思う。戸建志向だが問題意識もあったということが、共同化を検討する上では大事だった。
  • 今回、区画整理の中で高度利用推進区をかけ、飛び換地ができたので、共同建替えの難しさの1つである、土地が連担していなければならないという制約が取れ、提案しやすかった。
  • 問題意識が強い方、老後を考えてバリアフリーな住まいにしようと考えた方などが参加された。
  • 最初は、道路を3本で済ませるには合計して1,000m2以上の土地が必要になるという計画を提示した。4~5戸の共同化では、戸建区画を確保するには道路が4本必要になることを繰り返し説明した。結果的には、1世帯あたり平均40m2の宅地を持ち寄ってぎりぎりの720m2の土地が集まった。
  • 「新しい住まいづくり検討会」で1年間検討を進め、共同化に関心のある方30人くらいに手を挙げていただき、その後、更に1年くらい共同化の検討会を行った。決断していただいた時には希望者は18名になっていた。その後、共同化の場所、ボリューム、負担などの検討を行い、スタートから3年くらいで共同化に参加する方の気持ちは固まったが、道路の線形や共同化の敷地の場所の検討中に異見が出たりして2回ほど変更があり、2年ほどお待ちいただく状態になってしまい、実現できたのはその5年半後だった。スタートから8年半かかった。
  • 18名に絞ったところで、まず問題になったのは資金だった。私達の応援する事業ではいつもそうだが、自宅を新しくつくるのだから持ち出しは当たり前ということを前提としている。ただ、共同化にすることで負担をどうやって下げるか色々考えましょうと最初に提案する。だから権利者の方もお金を負担すること自体は覚悟している。
  • 見学していただいて、あの街には6階建ては不釣合いでギリギリになっている印象を持たれたと思うが、あれでも容積は200%弱しか使っていない。付近は200%だが、あそこは高度利用推進区で300%にしており、そのうち200%だけを使った。道路斜線などを考えると、あれくらいが限度だったと思う。今回は、周りの人たちもここで共同化を行うことは知っていたので、摩擦は少なかった。

合意形成のポイント

  • 合意形成に必要なことは、心配を取り除いていくことである。心配を全部取り除いてしまうと、もう参加するしかないということになる。合意形成へのプロセスには以下のようなポイントがある。
(1)負担を減らすための外売り
  • 先ほど18世帯が参加したと言ったが、2世帯は外へ転出し、実際に住んでいるのは16世帯である。住戸は20戸なので4戸は外売りにすることにして、2戸は工事業者に条件を付けて処分をお願いした。外売りというのは自分達の土地の持分を減らすということだが、そういう形で負担を下げた。
  • あとの2戸は私共もビラを作ったりして募集のお手伝いをした。そのうち1戸に入居された方は、戸建で換地したが希望を変更された、顔なじみの方だった。もう1戸は本八幡にお住まいで土地勘のある方が入居された。この方達も、入居前に建設協議会に入ってもらい顔なじみになった。
  • また、優良建築物等整備事業の補助を使うことでも負担を減らした。
(2)コーポラティブ方式による自由設計
  • 地区内にいる16世帯の方はもちろん、後から入られた方の住戸もコーポラティブ方式による自由設計を行った。自分の生活に合った形の住まいができることが安心につながったと思う。
(3)コーポラティブハウスの見学
  • 自由設計とは言葉で言っても具体的に何かわからないということで、見学会を開いて、自由設計したコーポラティブハウス、あるいは共同建替えの事例を見学していただいた。
(4)事業に対する誇り
  • 住民の方が、自分達が共同化をすることによってここの区画整理が成立するという意識、つまり誇りを持っている。これも共同化に向かう意思を固くした要件の1つではないかと思う。
(5)借り入れ制度
  • 資金を工面するための借り入れ制度も同時に検討した。江戸川区には大変優れた制度があって、区画整理などの場合には、補償金と同額までは区から直接、低利で融資が受けられる。そこまでフォローしないといけない。
会場の様子

閉会の挨拶

NPO玉川まちづくりハウス:林氏
  • 私自身、この地区のワークショップに関わったことがあり、非常に関心を持っていた。その後少しずつ進んでいく様子を見て、素晴らしいまちづくりが進んでいることに感銘を深くしていた。
  • 今日は、蓄積して合意したものが、時間がかかることによって風化するおそれもあるということを伺って、時間がかかる事業のマネジメントは大変だと思った。
  • 改めて感心したのは、区がこの事業を都から受託してきめ細かい工夫をしながら、これが区画整理かと住民に言われるくらい柔軟な区画整理をベースに、共同化や辻公園の整備を行ってきたことである。辻公園は、非常にユニークな空間である。地域の方々が自分達であそこをカスタマイズしていき、それがまたこの街の良さを生むのではないかと思い、楽しみにしている。
  • 全面改修の区画整理というのではなく、地域でやれるところはやるというのは本来の姿だと思う。ただ、江戸川区のような力量があるところはめったにないので、どこでも一律にやることはないと思う。江戸川区の場合は住民の皆さんもそういう区と長年一緒にやってきているので、お互いにこういう事業が培われるのではないかと思う。
  • 共同化で建て替えても負担はあることや、容積率を使い切らないことなど、しっかりした考えで進められていると思った。周りとのバランスで容積を積まないというのもよくわかると思った。
  • まちづくりの方法が多様化していて、まちの良さを残しながら進むということも出てきている。例えば、大森ロッジは、6軒の長屋をマンションにせずに建て替え、木造の白壁にして、人気があるから家賃も少し高くでき、街並みとしても無理がない、ということをやっていて、非常に感心している。最近の街の中では、このように多様化しているところに注目している。URの街みちネットがそういうところに着目しているのは非常に大切なことだと思う。

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