高田地区・今泉地区
概要
陸前高田市震災復興事業の工事施工等に関する一体的業務(以下、「一体的業務」)は、事業主体である陸前高田市、事業受託者であり一体的業務の発注者であるUR、一体的業務の実施者である清水・西松・青木あすなろ・オリエンタルコンサルタンツ・国際航業陸前高田市震災復興事業共同企業体の三者が連携し、三位一体となって整備を進めました。
早期復興が求められる中で、高田地区と今泉地区では、両地区合わせて約300haという広大なエリアにおいて、今後の津波防災のために高台部を掘削し、低地部をかさ上げする、月平均30万m3、計1,200万m3という大量の土砂を運搬等する超大規模土工事を実施する必要がありました。そこで、ベルトコンベアを用いた土砂運搬や、盛土材のトレーサビリティ管理等により効率的な施工を実現し、周辺道路の交通量や地域住民の生活環境等の周辺環境に配慮しながら、早期復興に貢献しました。
所在地:高田地区・今泉地区(岩手県陸前高田市)
土木学会賞技術賞
受賞年度:2021 主催者:公益社団法人土木学会
受賞物件名:陸前高田市震災復興事業の工事施工等に関する一体的業務
共同受賞者:陸前高田市、清水・西松・青木あすなろ・オリエンタルコンサルタンツ・国際航業陸前高田市震災復興事業共同企業体
【講評】
津波防災のために高台部を掘削し、低地部をかさ上げするという超大規模土工事を実施するにあたり、大量の土砂を運搬等するこれまでに類を見ない大型のベルトコンベアを用いることで、ダンプであれば8年以上を要する運搬期間を2年半に短縮したことや、ICTの活用等により効率的な施工を実現し、周辺道路の交通量や地域住民の生活環境等に配慮しながら、早期復興を実現したことが評価されました。
日建連表彰2023 土木賞
受賞年度:2023 主催者:日本建設業連合会
受賞物件名:陸前高田市震災復興事業の工事施工等に関する一体的業務/土砂運搬専用吊り橋により工程を大幅に短縮した大規模土工事
共同受賞者:陸前高田市、陸前高田市震災復興事業共同企業体
【講評】
東日本大震災により壊滅的な被害を受けた陸前高田市の震災復興事業である。一刻も早い復興へ向けて早期に住民の高台移転を実現し、復興まちづくりを推進することが求められた。陸前高田市(事業主体)、UR都市機構(発注者)、陸前高田市震災復興事業共同企業体(受注者)の3者が連携し、敷地面積300ha、切土量約1,200万m3、盛土量約1,100万m3におよぶ大規模土工事に対してCM方式、ファストトラック方式を採用し、先端技術を活用した急速施工により早期に事業を完了させた。
工程上の隘路となっていた土運搬に関し、気仙川を横断する部分に仮設吊り橋を構築し、一般道路を使用したダンプ運搬からベルトコンベヤによる運搬に変更した。このことにより土砂運搬工程を約8.5年から約2.5年に6年もの工程短縮をしたほか、大幅なコスト縮減となり、地元交通への影響やCO2発生量を低減し、環境面に関しても貢献することができた。
出来形・土量管理には当時最先端の自立飛行型UAV航空写真測量を実施し、あらかじめ設定したルートを時速80kmで飛行しながら写真撮影することで、わずか3日で測量結果を入手できた。また、測量結果を3次元モデルに反映させることで土工量を短時間で算出し、効率的な出来形・土量管理を行った。
盛土施工管理にはGNSSによる位置管理ができるブルドーザと振動ローラを用いて敷均し・締固めを最大12セットの同時稼働により行い、大規模土工におけるGNSS管理の先駆けとなった。なお、締固め管理データは3次元の形状モデルと関連付けたCIMモデルの構築を試行し、トレーサビリティを確保した。
新たな業務形態やICTを積極的に活用し、高台移転による新しい街づくりを事業関係者が一体となり早期完成させ、震災復興に対して大きく貢献した。これらのことから、本工事は日建連表彰土木賞に値するものと認められた。