街に、ルネッサンス UR都市機構

2019年6月UP

響原復興住宅に携わった宇城市と施工者の方々にみんなの家」にて
座談会形式でインタビューを行いました。

響原復興住宅 集会所

事業主体

宇城市 土木部 都市整備課
主幹:吉田 隆志 氏
参事:谷口 秀夫 氏

住宅施工者

(株)髙橋建設 建築部
部長:緒方 満之 氏
   守田 健吾 氏

集会所施工者

大和ハウス工業(株) 福岡支社 住宅事業部 福岡・久留米広域住宅工事部 工事第1課
主任:出西 章洋 氏

聞き手

UR都市機構
九州支社 熊本震災復興支援室 住宅建設課:波多野 晃、大平 丈
(肩書きは平成31年3月末時点)

(2019年3月 インタビュー実施)

01宇城市への質問

Q1 どのような背景や経緯のなかで、響原地区が建設地になりましたか。

宇城市:(左)吉田氏、(右)谷口氏

響原地区は、宇城市の東側に位置しています。北に見下ろすような丘が広がり、南に水晶山を見渡す、自然豊かな場所です。この建設地は、もともと宇城市の市有地で畑として使われており、隣には子育て支援住宅を含めた既存の市営住宅が2団地あります。そういった地域の方々と、新たに復興住宅に入居される被災者の方が、お互いに助け合えるコミュニティや多世代間の交流を、この地域全体で形成していくことを期待して選定しました。

Q2 復興住宅を建設するにあたって、仮設住宅で暮らしている方や建設地周辺の方々から要望はありましたか。

響原復興住宅 広場

地元の区長さんや住民の方から、響原地区にぜひ被災者向けの住宅をつくって、将来的に豊野町への定住化の促進や、地域の活性化につながる、地域の特性に合った復興住宅を建ててほしいという、強い要望がありました。

Q3 竣工しての感想はいかがでしたか。

宇城市:(中)吉田氏、(左)谷口氏

熊本地震によって、宇城市は一般住宅や市のインフラ、公共施設も大きな被害を受けました。その中で、職員のマンパワーが足りないなか、URさんには県内に先駆けて協定を結ぶことができ、本当に感謝しています。また、髙橋建設さんには、市内の他の事業があるにもかかわらず、こちらの復興住宅に協力をいただいて、本当にありがたく思っています。大和ハウスさんも、いろいろ全国的に展開されている企業さんならではの特色を生かして、協力をいただき、本当にありがたいと思っています。

URさんとシーラカンスさんで設計をしていただいて、私たち職員も一緒に協議させていただき、設計の段階から竣工するのを楽しみにしていました。

豊野町地域は人口が減少している中ですが、この復興住宅と「みんなの家」を、入居者をはじめ、地域の方に活用して頂き、地域のコミュニティづくりの拠点としていきたいと思います。ちょうど今も、下校中の子ども達が前を通りましたが、子どもさんから高齢者の方まで、お互い助け合いながら、安心して暮らせる地域となるよう、市としても協力していきたいと思っています。

02響原復興住宅について(株)髙橋建設への質問

Q1 どのような思いで響原復興住宅の建設事業に参画されましたか。

(株)髙橋建設:(左)緒方氏、(右)守田氏

Q2 被災地で建設工事を進めるに当たって、どのようなことに苦労されましたか。

響原復興住宅

個人住宅も公共施設も、同時期に復旧が集中したため、特に大工や左官の絶対数の確保が難しく、現場への乗り込み直前まで人員を確定できず苦慮しましたが、地元の協力業者のチームワークもあり最終的には乗り切ることができました。資材調達の面でも、協力業者さんに事前に手配してもらい、現場の遅れ無く、工程どおり竣工できたことに感謝しています。

Q3 工事についての感想や、竣工後の周囲からの声などはいかがでしたか。

響原復興住宅 リビング

工期内に引き渡すことが第一条件下、工事を何とかやり遂げたなと思っています。

被災地でたくさんの仕事がある中で、協力業者さん、職人さん、皆さんに改めて感謝しかないと思っています 。現場が仕上がってくる工事終盤で、化粧梁やアクセントとなる羽目板などが素敵な仕上がりになり、現場に入る職人さんから「私も住みたい」という声を頂きました。

それと、暑いさなかの基礎工事や台風対策、数々の苦労はありましが、施工者として熊本の復興に一役を買うことができて幸せに思っています。

03工事についての感想や、竣工後の周囲からの声などはいかがでしたか。

Q1 みんなの家(集会所)は、やや特殊な設計ですが、どのような思いで集会所の建設事業に応募されましたか。

大和ハウス工業(株):出西氏

弊社では、木造住宅や復興住宅の実績もありますが、住宅だけでなく木造の非住宅の物件を手がけるために新たな取り組みを始めている状況です。そういったことから今回の事業に応募しました。

Q2 設計図面を見ての感想について

響原復興住宅 集会所

図面の読み込みにかなり時間がかかりました。今回は集会所で、規模もそう大きくはなく、特に間仕切り壁もないため、本来であればもう少しイメージがわきやすいはずですが、和傘の形状がどういう造りになっているのか理解するのが非常に難しかったです。一般的なCADではなかなか寸法も拾えないところ、3D-CADを駆使して、画面の中で立体をぐるぐる回しながら、つくりや角度などを、プレカット工場の関係者を含めて事前に細かく検証しました。

Q3 計図面を見ての感想はいかがでしたか。「和傘」の実現にあたり、専門的な内容になりますが、工程や施工では具体的にどのようなことに苦労されましたか。

和傘

図面の読み込みにかなり時間がかかりました。今回は集会所で、規模もそう大きくはなく、特に間仕切り壁もないため、本来であればもう少しイメージがわきやすいはずですが、和傘の形状がどういう造りになっているのか理解するのが非常に難しかったです。一般的なCADではなかなか寸法も拾えないところ、3D-CADを駆使して、画面の中で立体をぐるぐる回しながら、つくりや角度などを、プレカット工場の関係者を含めて事前に細かく検証しました。工程については、基礎を作って土台を敷いて、柱を建てて梁を組むといった工程は一緒ですが、今回は外周部に梁があっても内部に梁が無いので、天井格子を施工するために、内部に全面ステージ足場とサポートを組んで下から支えながら作業しました。そのため、外にも内にも、全て足場を組んでの作業となりました。

「和傘」の骨組みは4つありますが、単なる意匠的なものではなく、構造体としての役割を持っており、1つの「和傘」で1本の丸柱から32本の方杖(円形に広がる細い木材のこと)が伸びています。「和傘」の広がり方は正円ではなく楕円形であり、4つそれぞれで長さや角度が異なり、総数64種類の方杖と128種類もの補剛材金物によって構成されています。

3D-CADを駆使して施工図を作成し、方杖のプレカットや、補剛材金物の製作を行いましたが、方杖は加工精度がよくても無垢材であるために多少の歪みが発生し、現場加工が必要になるなどの苦労がありました。

Q4 工事を終えての感想はいかがでしたか。

みんなの家

弊社にとってもほとんど実績のない建物構造と意匠でしたが、事業拡大に向けて、よい経験、実績になったと感じています。

今回、熊本の地元の職人さんや、佐賀から遠征で来ていただいた大工さんと仕事をしましたが、九州の方は皆さん仕事熱心で、我々が、無理難題をお願いしても、それに対して前向きに取り組んで頂きました。非常によい仕事ができたと感じています。

シーラカンスさんK&Hさんの設計による、独創的な意匠、構造で、施工はものすごく難易度が高かったのですが、完成してみて、非常に達成感を感じています。また、社内でも話題になっており、好評を得ています。

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