街に、ルネッサンス UR都市機構

2019年6月UP

熊本災害公営住宅を取りまとめる熊本県の方々にインタビューを行いました。

熊本県 土木部 建築住宅局 住宅課

取りまとめ

熊本県 土木部 建築住宅局 住宅課
課長:小路永 守 氏
主幹:笹淵 英樹 氏
建築課 審議員:折田 義浩 氏

聞き手

UR 都市機構
本社 技術・コスト管理部 設計課:村上 修一(※)
東日本賃貸住宅本部 技術監理部 設計第1課:助川 護(※)
(肩書きは平成31年3月末時点)
※平成29年度に設計担当課に所属

(2019年3月 インタビュー実施)

01 仮設住宅整備にあたり

Q1 どういった整備方針やスケジュールで取組まれましたか。

熊本県:小路永氏

前震が平成28年4月14日、本震が16日に発生し、県の災害対策本部が4月15日(本震の前日)に設置され、8月30日に解散しました。14日には災害救助法や被災者生活再建支援法が適用され、すぐに県営住宅や国の官舎も含めた公的住宅の提供を始め、並行して仮設住宅の供給準備に入りました。

熊本では、「被災者の痛みの最小化、創造的な復興、県経済の発展に繋げる」といった復旧・復興の3原則を掲げており、東日本大震災や熊本広域大水害時に、木造仮設や「みんなの家」(集会所)をつくった経験があります。これらを踏まえて、「あたたかさ、ゆとり、ふれあい」のある応急仮設をテーマとし、アートポリスのコミッショナーやアドバイザーと連携して 、熊本独自の特徴ある配置基準や仮設住宅仕様を決めていきました。

仮設住宅の建設は、発生から20日以内に着手という基準もあり、4月29日に着工して、早い団地では6月5日から入居が始まりました。

当初は2,000戸ぐらいの整備予定で建設を進めていましたが 、途中で入居要件が緩和されて半壊の方も入居できることになり、入居希望者が増加していったように思います。そのため、建設用地の確保に苦慮しつつ、結果的に4,303戸を整備するに至り、11月14日に全ての住宅が完成することになりました。

Q2 過去の事例(東日本大震災等)に対して、熊本ならではの考え方や取組みがありましたか。

整備にあたり、プレハブか木造か、それぞれのメリット・デメリットを市町村に伝えて選んでもらい、プレハブ3,620戸と木造683戸を整備しています。

これまでの仮設住宅の概念(できるだけ早く、できる限り多くの人に)で過密に整備した場合、住宅を無くされた方がお住まいになり、元気に住宅再建できるのかということに非常に疑問があり、アートポリスと連携して熊本独自の配置や仕様を決めました。

配置では、戸当たり割付けの敷地面積を100m2から150m2に、住棟間隔を4mから5.5mに、戸数を8戸程度の連棟から2戸や4戸の分節に変更しています。住棟間にコミュニティ通路(休憩用のベンチを設置)を確保し、そこを通っていくと「みんなの家」にたどり着くように工夫することで、コミュニティ形成に配慮しています。プレハブ協会では、仮設の既成概念に合わない、スピードが落ちるということで、当初は非常に難色を示されましたが、最終的には理解を得て、配置計画等にも協力いただきました。

バリアフリーにも力を入れており、最初は東北を参考に1割程度スロープを設置していましたが、途中から木造仮設で玄関と浴室など全ての段差を無くした簡易型バリアフリーや、介助が必要な方向けの本格型バリアフリー(内閣府と協議して1団地のみ)も整備しました。

集会所「みんなの家」は、団地内に1か所の場合は予め設計した企画型(60m2又は40m2)を、2か所の場合は1つ目を当初から企画型で整備し、2つ目では被災者の意見を聞きながら一緒に整備する方式をとれるようにしました。

敷地は、通常は公有地が原則ですが、用地が確保できずに内閣府との協議を経て、農地に整備した地区もありました。

  • 仮設住宅
  • 集会所「みんなの家」

Q3 実際の整備にあたり、狙い通りや良かった点、想定外で整備中に改善していった点、今後震災が発生した場合への改善点の提案などはありますか。

仮設住宅

熊本独自の配置基準や住宅仕様が上手くいったこと 、環境性能の非常に良い木造仮設住宅ができたこと、地域の工務店と連携して整備できたこと、が狙い通りでした。

改善した点としては、先に話した当初から変更を重ねたバリアフリーの件です。それと、土砂災害警戒区域の調査対象外だったグラウンドなどにおいて、仮設住宅の建設中にあらためて安全性を確認したこともあり、そういった点が整備中の改善点でした。

今後の改善点としては、仮設住宅の雨水処理は地下浸透が基本ですが、近年の記録的豪雨への対策が必要であり、また、地上設置型の浄化槽は劣化が非常に激しく、あるいは停電時に使えない、逆流するといった問題も生じており、今後の改善が望まれます。

今般、南海トラフ地震や毎年の豪雨災害などを想定し、九州での相互支援に係る九州連携の仕組みづくりに取り組んでいます。

Q4 支援団体(URや自治体)に期待されたことや、振り返ってみての感想はいかがでしたか。

熊本県 土木部 建築住宅局 住宅課

県庁内でも応援職員を配置しましたが、何か決まっているものではなく、よく分からない中で整備を進めるにあたり、マンパワーの支援はもとより、特に地盤知識のある土木の方や、検査経験等のある建築・電気・機械の方々には、個別地区の建設候補地の安全性の判断や色々なルールを決めていく際にも助言をもらい 、非常にありがたく思っています。

混沌とした状況下で、異なる自治体間では引継が上手くいかないこともありましたが、URさんではUR担当同士を1日ずつ被らせて、自らスムーズな引継を実行してくれて感謝しています。

02 災害公営住宅整備にあたり

Q1 URへの期待や求めることはどういったことでしたか。

被災市町村を支援するための国の直轄調査が平成28年8月頃からスタートし、東北での実績や技術力もあるURさんにはその最初の段階から市町村との意見交換の場に入ってもらいました。

被災地域に建設される熊本の災害公営住宅は、その後の復興まちづくりにとても重要にかかわるため、被災者対応を直接行う市町村が事業主体になっていますが、市町村のマンパワー不足で遅れてはならないため、県は市町村から業務を受託できることにしました。そのため、県の受託とURさんの買取り型というのが、最初の市町村の受け皿になりました。その後、県では、公共工事の不調不落対策や地元企業の活用といったことから、本店が県内にあることを条件とした民間買取りの支援体制も導入しました。

この他に市町村が直接実施している民間買取り(県内条件なし)などもあり、熊本県全体でいうと、特にRCの大きな案件を含む概ね1/4をURさん、概ね1/4を全国大手ハウスメーカー、残り1/2を地元の工務店等といったように、バランスよく色々な人の力を借りて進められています。

響原復興住宅

Q2 URとの協同作業を通じての感想はいかがでしたか。

熊本県:(左)折田氏、(右)小路永氏.

毎月の定例会議(県・UR)で、情報共有や意見交換、個別の相談や確認を行うことで、全体の進捗状況を把握でき、課題等を直接協議できたのは非常に良かったです。

熊本では仮設の経験を生かして、最初に理念や整備指針をつくり、災害公営住宅の整備においてもアートポリスの専門家の助言を受けるように定めています。URさんは自らノウハウや技術力を持っておられますが、それらについても全てコミッショナーやアドバイザーの意見を聞いてもらい、改善していく仕組みに協力いただき感謝しています。

Q3 県において取り組まれた調整事項にはどのようなことがありましたか。

熊本県:笹淵氏

県のレスポンスをいかに早くするか、そのためにできることは何かを常に考えています。安全性や品質については妥協しないなか、許認可や関連機関との協議で遅れることが無いように、徹底して取り組んでいます。

市町村にも早く決断してもらう必要があるため、県から市町村に行って上層部の人にも打合せに参加してもらい、極力 、具体的かつ直接話をして判断してもらったり、説得するようなことも多々ありました。

県工事の不調不落対策では、技術者の配置要件の緩和や、余裕期間の設置などを行ってきました。民間買取りの支援では、民間の受注状況などをヒアリングしながら、事業者募集のタイミングの見定めや資格条件の見直しなども行っています。

Q4 アートポリス事業における狙いはどういったことでしたか。

響原復興住宅 みんなの家

県で4団地、URさんで1団地の合わせて5団地で、アートポリス事業に取り組みました。県でつくった理念や整備指針は言葉で表現したものであり、具体的に形にするとどんなものができるのか、というのが分かりにくいものです。アートポリスの場合、シンポジウムなどを通じて情報を発信していくため、次のプロジェクトの参考になります。そのため、県が最初に受託した案件で、アートポリス事業で実施しており、その後の案件では、アートポリス事業ではなくても、アートポリスと連携して専門家の助言をもらう形で進めています。

アートポリス案件は、人と人、住戸と住戸、災害公営と周辺住民といった、コミュニティ形成を含めたモデルになると思っています。

Q5 県自ら整備した案件での取組みや感想はいかがでしたか。

響原復興住宅 リビング

県ではユニバーサルデザインに取組んでおり、住戸の中に入れば対応方法は大体同じですが、住戸に入るまでのアプローチについては、現地での指導も含めて、ユニバーサルデザインへの取組みが難しかったです。

また、コミュニケーションについて、東北ではリビングアクセスが成功した事例にあげられていますが、今回の検討を通じて、開かれ過ぎると逆に閉ざしてしまうこともあるので、閉ざすこともでき、半分開くこともできるような、地域の暮らし方にあったちょうどいい感じのデザインが必要だと感じています。

Q6 豊野町響原地区(アートポリス事業)の出来上がりを振り返っての感想はいかがでしたか。

響原復興住宅 リビング

アートポリス事業において、しっかりと計画された綺麗な建物で、住み心地も大変よく、広い敷地というのが 、贅沢ではないかという意見もありますが、地域の人たちから見ればごく当たり前の広さであり、地域にあった計画になっていると思います。

メニューを閉じる

メニューを閉じる

ページの先頭へ