街に、ルネッサンス UR都市機構

街みちネット 第22回見学・交流会「太子堂・三宿地区のまちづくりについて」

これまでの活動の紹介

活動議事録

世田谷区からのご挨拶

世田谷区世田谷総合支所 街づくり課長 伊東 友忠 氏
  • 本日参加されている皆さんは、まちづくりに携わっている専門家の方々ということで、日ごろより世田谷区の区政、まちづくりの様々な場面でご理解ご協力をいただいていると思います。この場をかりて御礼申し上げたいと思います。いつもありがとうございます。

    世田谷区では、昭和50年に地方自治法改正に伴いまして区長公選制がありました。初代の区長自らがまちづくりに高い関心を持っており、『まちづくり最前線』という書籍を発行するなど、熱意を持って取り組んでいたこともあり、世田谷区は早くの段階からまちづくりに熱心に取り組んできた自治体であると職員一同思っております。

    今、地区計画は世田谷区内に74、沿道地区計画も含めると90あります。世田谷区独自の条例に基づくまちづくりの計画に至っては100を超える程あります。過去から現在において、まちづくり活動が区内のいろいろなところで行われ、花が開いている状況です。

    その様な中で、とりわけ太子堂・三宿地区は、世田谷区のまちづくりの中でも、いわば老舗とも言えるような地区であり、昭和の時代から、地域の皆様と区と事業者が一体になり、協働という形でまちづくりに取り組んでいます。

    地区の中には、これまでのまちづくりの足跡を示すようなものも幾つか残っていますし、本日はこのまちづくりに詳しい井上先生や梅津さんからもお話いただけると思います。私がこの職に就いたとき、梅津さんから、結局、まちづくりは人と人をつなぐものだということを教えていただき、私も全くそのように思っております。

    私が太子堂地区のまちづくりに関わったのは、キャロットタワーの担当を務めたことがきっかけでした。その後の国立小児病院跡地を含めたまちづくりについては、この後、柳田担当部長からお話をいただけると思いますが、当時、街づくり推進課という部署や北沢の方でも一緒にお仕事をさせていただきました。地区内には約3,500m2の防災空地や周辺の整備、当時まだ世田谷では実施したことがなかった整地整序型の小規模な区画整理など、様々な手法も取り入れており、他にもこの地区内には様々なモデル的取組みがありますので、皆様方の参考になるものがあるのではないかと考えております。

    本日、皆様のお手元に配布した緑色のパンフレットは、平成27年に三宿まちづくりハウスの展示コーナーを整備した際、私ども世田谷総合支所街づくり課の職員が、ほぼ自前で作成したものです。まちづくり活動を行う者として、こうしたまちづくりの歩みを伝えていくことが重要ではないかと考えて、これまでの長い歩みを、井上先生や梅津さん、千葉大学の木下先生方にも見ていただき、いろいろな方の視点も入れながら整理した資料です。現地にはパネル展示もありますので、お立ち寄りいただいた際に参考にしていただければと思います。

    本日は、まちづくりに関する出会いと活用に繋がるような充実した時間となりますよう、協力させていただきますので、よろしくお願いいたします。

講演1「太子堂・三宿地区のまちづくりについて」

世田谷区世田谷総合支所 街づくり課 街づくり担当係長 二見 征 氏
世田谷区の概要
  • 世田谷区は、東京23区の南西の隅に位置し、新宿や渋谷に近く、南側は多摩川を挟んで神奈川県川崎市と接しています。都心から放射状に、北から京王線、小田急線、東急田園都市線、幹線道路は中央道や東名、国道20号、246号などが通っています。
  • 世田谷区の面積は58.05km2で、23区全体の面積の約1割を占めており、大田区に次いで2番目の広さです。人口は23区で一番多い91万人に迫っています。昨年公表した世田谷区の将来人口推計では、一貫して増加傾向が続き、平成54年には約108万7,000人となるとしています。
  • こちらは、用途地域を示す図です。世田谷区全体の約9割が住居系用途地域であり、土地利用も専用住宅と集合住宅が約5割を占めています。都市計画法に基づく地区計画等の数は、現在90地区となっております。
  • こちらは、平成27年4月に改定した世田谷区都市整備方針で示す都市づくりの骨格プランです。世田谷区では、三軒茶屋駅周辺、下北沢駅周辺、二子玉川駅周辺を、商業業務機能及び文化情報発信機能が集積し、全区的な核であると同時に、本区を越えた広域的な交流の場として、広域生活文化拠点と位置づけております。その他様々な拠点や軸をこちらで示しております。 都市整備方針については、区のホームページで公開しておりますので、詳しくお知りになりたい方はご覧いただければと思います。
太子堂・三宿地区の概要
  • この写真は、首都高速3号線ができる前の国道246号線を三軒茶屋駅から渋谷の方向で見たものです。
  • 太子堂・三宿地区は、東急田園都市線で渋谷から2駅の三軒茶屋駅に接した地域です。古い建物が多い下町ですが、そうした立地から、若い単身者やファミリー世帯なども多く住んでいる地域です。面積は約80ha、人口は約2万人、人口密度は1km2当たり2万5,000人です。人口密度を比較すると、特別区は約1万5,000人、世田谷区全体としても平均は約1万5,000人です。
  • 次に、当地区の成り立ちについて説明します。
    この地区は、明治時代はずっと農村地帯でした。地区南側の国道246号は、江戸時代の大山詣でで賑わった大山街道で、街道沿いに建物が建ち並ぶ程度でした。
    その後、周辺に軍事施設が誘致され、関連した建物が徐々に建ち始めました。後ほど説明する国立小児病院の前身となる陸軍東京第二衛生病院もこの頃、明治33年に出来上がりました。
    大正12年に発生した関東大震災の被災者が、都心からこの地区に多く移り住み、急激に市街化が進みました。その際に、道路は農道のままで都市基盤整備がされなかったため、道路が狭く木造住宅が密集した地域になりました。
  • そして、太平洋戦争後、被災した人々がまたこの地区に移り住んできました。被災者を受け入れるため、敷地内にアパートを建てる、いわゆる庭先アパートなどの建築等もあり、さらに密集が進みました。地区には、終戦直後に建てられた長屋が今も残っている地区があります。
  • 現在の地区の状況です。周囲には広い道路がありますが、地区の中の道路は狭く、木造住宅が密集した地域となっております。
  • こうした木造住宅密集地域は、山手線外周部を中心に広範に分布しており、世田谷区においても、区の北東側に多く分布しています。
太子堂・三宿地区のまちづくりの概要
  • こちらは、三軒茶屋駅西側の再開発ビルのキャロットタワーから見た現在の太子堂・三宿地区です。
    ここからは、緑色のパンフレットに従って部分的に説明していきたいと思いますので、あわせてご覧いただければと思います。
  • 太子堂・三宿地区のまちづくりの特徴は、住民参加のまちづくりと修復型のまちづくりです。
    住民参加のまちづくりは、住民の皆さんのご理解とご協力のもとにまちづくりを進めるために、計画や事業について住民と行政の協働作業で進めるまちづくりの手法です。
    また、修復型のまちづくりは、道路拡幅や公園整備の際に、都市計画事業とは異なり、計画線に係る個々の住民の建替えなどの動きがあったところから徐々に整備を進める手法です。スクラップ・アンド・ビルド型ではなく、住民の負担が少ないまちづくりの手法です。
太子堂・三宿地区のまちづくり~経緯
  • こちらは、太子堂・三宿地区のまちづくりの年表です。
    当地区のまちづくりの経緯は、昭和50年の地方自治法改正により区長が選挙で選ばれることとなり、住民より選ばれた区長のもと、区の基本計画の中で、災害に強いまちづくりを重点事業としたことです。昭和54年に行われた6項目評価による町丁目別危険度調査により、下北沢駅北側の北沢三・四丁目地区とともに、こちらの太子堂二・三丁目地区が最も危険な地区として選定され、モデル地区として改善の取組が始まりました。
  • 昭和55年より、区主催によるまちづくり懇談会が開催され、昭和57年に地区の将来像を検討する住民組織であるまちづくり協議会が設立されました。同じ年に、区と住民によるまちづくりを担保し制度化するための世田谷区街づくり条例が制定されました。まちづくり協議会による住民の皆様の様々な検討が行われ、昭和60年には、まちづくり協議会から区へ、まちづくりの中間提案が提出され、区は、その内容を尊重し、太子堂地区まちづくり計画を策定しました。さらに、昭和63年には協議会から区へ、地区計画策定に関する要望書が提出され、区は平成2年に太子堂二・三丁目地区地区計画を策定しました。
    これらと並行して、世田谷区では、昭和58年に国の補助事業、平成2年には都の補助事業を導入し、いわゆる密集事業による基盤整備を始めました。
  • また、太子堂の東隣の三宿一丁目地区においても同様に協議会が発足し、協議会からの要望書をもとに平成7年に地区街づくり計画、平成15年に地区計画を策定しております。
    これらの計画をもとに、建築行為の誘導や基盤整備を進めております。また、不燃化特区制度など、社会情勢の変化に伴う新たな制度を導入し、防災まちづくりを加速させています。
    当地区では、現在まで、まちづくり協議会等による地区住民の様々な活動や、地区内の大小様々なスポット的な整備検討など、数えきれないような出来事がたくさんありました。その一部は、後ほど井上さんや梅津さんからご紹介いただけるかと思います。
太子堂・三宿地区のまちづくり~事業
  • 当地区では、国や都の補助事業を活用し、木造住宅密集地域における消防活動や避難活動の円滑化、建物の延焼防止を目的として、道路や公園の整備、老朽木造建築物の建替えによる不燃化、建築行為等の規制誘導などを進めております。
    道路や公園の整備では、いわゆる密集事業を活用して、主要区画道路の拡幅、行き止まり路の解消、通り抜け路の整備、ポケットパークなどの公園整備などを進めております。
  • 老朽木造建築物等の建替え促進では、これまで密集事業による建替え促進制度とあわせて、東京都木密地域不燃化10年プロジェクトによる不燃化特区制度を平成26年より導入し、さらなる不燃化の促進に取り組んでおります。また、防災性の高い建物への規制誘導では、地区住民とともに作成した地区の将来像を実現するための計画である地区計画・地区街づくり計画や、東京都建築安全条例に基づく新たな防火規制などに基づき、建築行為等について規制誘導を行っております。
  • こちらは、太子堂二・三丁目地区におけるこれまでの事業実績を示した事業実績マップです。
    これまで22カ所の公園・広場整備、12カ所の通り抜け路整備、道路拡幅や建替えの促進などを進めてまいりました。
  • 次に、地区内においてスポット的に大きく変化した場所について紹介します。
    1つ目は、(A)国立小児病院跡地の整備についてです。地区の北側の高台、淡島通り沿いに、明治33年に陸軍東京第二衛戍病院ができ、戦後、国立小児病院となりました。平成9年に統廃合による移転が公表されまして、病院跡地は、住民・区・事業者が話し合いを策定した計画をもとに、約3,500m2の防災空地を設置することなどを条件に民間事業者に売り払われ、開発が行われました。平成20年に事業者による建設工事が完了し、完成した防災空地は、あわせて整備された太子堂円泉ヶ丘公園や隣接する2つの都住宅供給公社の敷地、関連して整備された元法務省研修所である三宿の森緑地、これらとともに平成25年に太子堂円泉ヶ丘公園・三宿の森緑地一帯として広域避難場所に指定されました。
  • 2つ目は、(C)三太通りについてです。こちらは、三宿と太子堂の境の道路であるため、三宿の「三」と太子堂の「太」をとって三太通りと呼んでいます。もともと幅員4mに満たない狭隘道路で、さらに3カ所のクランクする場所があったため、車が通るのもなかなか苦労するような道路でした。この通りは、この木造住宅密集地域であるこの地区を南北に貫いて、地区の南側に隣接する昭和女子大学一帯広域避難場所、地区の北側の先ほど紹介した太子堂円泉ヶ丘公園・三宿の森緑地一帯広域避難場所への重要な避難ルートであるため、計画の中で主要区画道路と位置づけ、地区の延焼遅延効果も期待して6mに拡幅することとしました。
  • 道路整備をめぐっては区と住民による話し合いが行われ、太子堂・三宿の両協議会の呼びかけにより沿道会議が開かれまして、整備に係る共同宣言が締結されました。現在、整備を進めておりまして、全体の8割以上の整備が進んでおります。
  • 最後に、防災まちづくりに関連する事業概要を幾つか紹介させていただきます。
    まず、上位計画の位置づけから説明します。太子堂・三宿地区は、東京都防災まちづくり推進計画において重点整備地域に指定されています。また、東京都の都市再開発等の3方針のうち都市再開発の方針においては再開発促進地区2号地区に位置づけられています。また、防災街区整備方針においては防災再開発促進地区に指定されています。
  • 世田谷区都市整備方針においては、テーマ別方針の一つ「安全で災害に強いまちをつくる」の項目のもと、地域整備方針において、既に策定された計画に基づきまちづくりを進めていくアクションエリアに位置づけられております。
  • 続いて、密集事業について概要を説明します。
    まず、事業地区名としては「太子堂・三宿地区」、事業期間は昭和58年度より平成32年度、施行面積は80.7ha、対象地区は太子堂二・三丁目、三宿一・二丁目全域、池尻四丁目の一部。事業概要としては、整備内容は道路・公園の用地取得・整備ほか。総事業費は約33億円。これは、平成27年度から31年度までの金額となります。
    進捗状況としては、不燃領域率は、平成29年度末の参考値として71.1%に達しました。また、先ほどの三太通り拡幅事業については、平成29年度末で83.7%となっております。
  • 最後に、不燃化特区についての説明です。
    事業地区名は「太子堂・三宿地区」。事業期間は、平成26年度から平成32年度。施行面積は80.7ha。
    取組としては、コア事業として三太通り拡幅整備、不燃化建替えの促進。主な支援策としては、士業派遣、全戸訪問、戸建建替えの設計費・除却費の支援。助成状況としては、平成29年度は、老朽除却を12件、戸建建替えを3件認定しています。平成30年度としては、10月末現在で、老朽除却を4件、戸建建替えを3件認定しています。平成26年度の導入当時からかなり数は増えてきましたが、今は少し落ち着いている状況です。

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