街に、ルネッサンス UR都市機構

街みちネット 第16回見学・交流会「すみれ野地区事業概要」

これまでの活動の紹介

活動議事録

講演1「すみれ野地区事業概要」

西村 雅博 氏(株式会社サポート)
西村氏
本日の説明内容について
  • 当社は、都市計画コンサルタントという立場で、北鴻巣駅西口土地区画整理事業の事務局として携わらせていただきました。本日は、この地区の取組みがスタートした経緯をご説明させていただきます。
  • この地区のエリアマネジメントの一連の活動は、区画整理事業の立ち上げ段階から、エリアマネジメントの活動のスキームの検討を進めてまいりまして、今年10年目という大きな節目を迎えております。
  • 本日、私の方からは、事業期間において、まず、コンサルタントとしてエリアマネジメントや、住民を主体としたまちづくりを展開していくに当たって、どのようなことに取り組んでいったのかをメインにお話しさせていただきまして、その後の現地見学を挟んで、後半の部でNPOの事務局長である一瀬から、エリアマネジメントの理念に基づいてどのようなまちづくりが展開されているのかという、今のまちづくりの姿をお話しいただこうかなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
本地区について
  • まずは、この地区の紹介ですけれども、鴻巣市は、埼玉県の中央部、少し東側に位置しております。JR高崎線でお越しになられた方が多いかと思うのですけれども、東京駅から概ね1時間、約50キロ圏に位置しているまちでございます。
  • そのため、今お住まいになられている戸建てやマンション住民の皆様の多くは、都心のほうに通勤しています。都心通勤が十分可能な立地ということで、新しい住民の皆さんの世代で言いますと、大体30代から40代の第1取得者層と呼ばれるような方たちが非常に多く住んでいるまちになっております。
  • この地区は、区画整理によってこのような住宅系の市街地が形成される以前、駅の反対のほうはURさんの団地やディベロッパーさんの集合住宅も建設されていましたが、当時、こちらについては事業認可を受ける前までは、駅に隣接している土地であるにもかかわらず、田畑として土地利用がなされていました。
北鴻巣駅西口土地区画整理事業について
  • 事業名称は「北鴻巣駅西口土地区画整理事業」で、区画整理によって新しくまちをつくった地区で、組合による事業になっております。
  • 施行面積は約9.3haと、比較的小規模な事業区域で実施してまいりました。施行期間は、平成17年12月の認可から平成24年の3月末日までの概ね7年程度となっております。
  • この地区の事業化検討に当社のほうで着手するにあたって、まちづくりコンサルタントという立ち位置で果たすべき3つの役割というものを掲げさせていただきました。
  • まず1つ目は、事業成立に向けた青写真をしっかり描くこと。2つ目が、区画整理を進めていくに当たって、地権者、民間企業様、あとは行政庁といった三者のニーズをしっかりと聞いて把握すること。3つ目が、この三者の皆様が要望しているニーズに対して、利害調整も含めてですけれども、マッチングをしていくということでございます。
  • 本日は、後ほどつながっていくまちづくり、エリアマネジメントの活動の展開ということで、地権者様にフォーカスを当てて話を進めていければと思っています。
それまで事業化に至らなかった背景
  • 冒頭でもお話しさせていただいたのですけれども、駅前に隣接している、場所としては非常に立地優位性があるような場所であったにもかかわらず、それまで事業化に至らずに、田畑、農地としてずっと利用されていた背景についてお話しさせていただきます。
  • 当社がこの地区に参画させていただく以前から、ここの事業化検討に関する組織も設立されていて、順次話し合いを進められていたのですけれども、事業化に至らなかったという背景がございました。 我々のほうでこの地区に取組みさせていただくにあたって、事業化に至らなかった背景を整理しました。
  • まず1つ目が、設定していた事業区域が非常に広くて、未同意者も含めた区域によって検討がずっと進められてきたという背景がございました。図の青い点線が、当初計画として指定されていた区域で、大体24haという規模で事業化検討が進められてきました。中には、先ほどの写真でも、ぽつぽつと宅地があるのがわかるかと思うのですが、西口の区画整理が認可される前に、ミニ開発でも一部宅地化されており、そういった方にとってみれば同意しにくいような状況であると。そういった方たちも含めた区域の設定になっていました。
  • 2つ目、今の1つ目の話と関連してくるのですけれども、事業区域が広いということで、中にはそういったミニ開発であったり、あとは移転対象になるような物件も多数ございますので、そういった事業の負担が伴うようなリスクも散見されており、その中で、未同意の方も含めて、どうしていこうかということをずっと続けていましたので、なかなか合意形成が図られなかったというところがございます。
  • 3つ目、農地として土地利用していく中で、市街地農地ということで、もちろん宅地に比べれば減免されていても、税負担のことについて、地権者さん自身が悩みの種としてお抱えになっていたというところがあります。最終的に自分たちの土地をどのように使っていったらいいのかまだ具体的に描けていない中で、事業に対してなかなか合意できないというのが当時の地権者さんのご意向でした。
  • この3つの側面で、地権者個人の皆さんの生活設計のめどが立っていない状況であったというような把握をまずさせていただきました。
コンサルタントとしての取組み
  • この背景に対して、我々のほうで、先ほどお伝えした3つの果たすべき役割の中で、3つキーワードとして挙げさせていただいたのですけれども、まず1つ目は、できることから始めるということで、事業を早く進めてほしいと強く願っている地権者さんも多くございましたので、まずは、事業に対して合意が図れる範囲はどこまでなのか、そこをしっかり線引きをしましょうということで、まず、ふくらんでしまっていた区域の縮小に取りかかりました。
  • 2番目に、地域特性に合わせるということで、地域の地勢的な条件とか、土地利用に合わせた計画を立案するということで、整備をしなくてもいいであろう箇所に関しては、柔軟に区域の指定をしていきまして、なるべく事業の負担リスクを伴うような要素は外していこうという考え方で区域の見直しをさせていただきました。
  • 具体的には中抜きのところや、あとは、基本的に区域の設定の時には、地形、地物に沿った形で区域の指定をしていくと思うのですけれども、その実情に合わせて細やかに区域のほうの設定を行うことを認可時に県から許可をいただいて、進めていきました。
  • 3つ目は、機動的に動かすということで、地権者さん自身の生活設計のめどが立っていないことが非常に大きな課題だと捉えまして、まずは地権者さんの土地利用のニーズをしっかり把握しなければいけないということで、9.3haの区域の中で資産分割を行うために、地権者様と一人一人個別面談させていただきました。その個別面談の中で、土地活用のキーワードということで共通言語を地権者さんと我々で持ちまして、土地を売る・貸す・使うという大きく3つの土地利用の合い言葉をもって、一人一人の地権者さんのほうに訪問させていただいて、具体的な土地活用が例えば「売る」の場合であれば、現況の土地からこちらに移るので、減歩率であればこれぐらいですよ、賃料としてはこれぐらいですよという、概算伝えられる範囲の中で一人一人にご説明差し上げていって合意形成を図っていきました。
  • その中でも特徴としていつもお伝えしているのが「目的換地」ということで、現状、農地になっている土地の位置は、照応の原則に沿って、同じ場所に返すという考え方もあるのですけれども、まち単位でまちの付加価値を高めていく、その中に個々人の土地があるという話から、土地利用の目的に応じて、皆さんの換地をあわせて配置していくという手法で進めてまいりました。
  • その事業主体になる三者、地権者さん、民間企業さん、あと行政さん、この三者のあらかじめ必要な情報やこの事業に参画するための条件をまずしっかりと把握した上で、一つ一つクリアしていったことで、平成17年12月、組合設立認可を迎えることができました。
  • 認可前の段階で個別に想定の換地をして、土地利用に関しての概ねの合意を取りつけたということを事業の担保として設立認可を迎えておりますので、事業認可後は速やかに、手続関連で年を挟んで年度末になりましたが、認可4カ月後には仮換地指定をさせていただきまして、その後、速やかに造成工事の着手というような流れになっております。
  • したがいまして、区画整理組合の事業期間のほとんどの部分を工事期間としてスタートすることができましたので、個別ヒアリングの中で一人一人の皆さんとお話ししていく中で、工事期間およそ2年強の中で、具体的にまちができた後、もしくは土地活用として売る・貸すというように、自分たちの資産を分割した先の土地がどのようになっていくのか、どうあるべきなのかというような、まちづくりについての話をさせていただける時間を見出すことができたというところが非常に特徴的な点かなと思っております。
取組みの経緯
  • 年表のオレンジ色の時間軸が主に区画整理事業の歩み、下段のブルーの時間軸がエリアマネジメントの活動を進めていく上で母体として設立したNPO法人の組織化について記載していますが、認可後、まずできることから始めていこうということで、地権者さんのヒアリングの中で、有志を募って、NPOの準備会を速やかに設立し、事業がスタートする最初の段階からNPOを設立していくことを前提に準備を進めていきました。
  • 個別面談を実施していきますと、地権者様一人一人の家族構成も見えてきます。そうすると、例えば、息子さん世代は勤めに出てしまっていて、もう農家も継がないし、この地域から離れたところに住んでいるので、自分がお持ちの土地を将来どうするのかというのをご本人にお伺いしても、なかなか具体的には考えられないというお話をよく聞きました。
  • ただ、じゃ、お孫さんは元気にしていますかというような話をしていくと、やはりこの地域に帰省された時に、孫と一緒に過ごす時間というのは非常に重要だというように、子どもは遠くに出ていってしまったんだけれども、かわいい孫についてお話をさせていただくと、まちの将来とか、自分の暮らしの先々、どうなったらいいのかというようなことに思いをはせてくれるという方がいまして、そういった人たちの話の中で、この活動はスタートしてきたのかなと思っています。
取組みの主旨・目的
  • このような一連の活動は、我々は事業期間中にこんなまちをつくりましょうと皆様にお伝えしていっても、その取組みの趣旨や目的がしっかりと明確になっていなければ、なかなか理解も協力も得られないということで、まず、我々は北鴻巣駅西口を区画整理によって新しくまちをつくるといった上で、このような解釈をさせていただきました。
  • まず、これはケーススタディとして、一般的な住宅市街地で起こり得る危険性ということで整理されたものです。どのまちも共通点は、市街地整備事業が完了した段階というのは、道路、宅地、建物施設なども含めて、新しく整備したばかりで、まちとしてのきれいさや価値は一番高い位置にあるのかなというふうに捉えさせていただきました。そこから、その土地を購入した住民の皆さんによって、まちでの暮らしがスタートしていくところです。
  • ただ、住民の皆様の意識として、例えば、自分の住宅は、10年後に屋根とか外壁の修繕は入れるけれども、まちに関しては別に我々は関与しないというもので、当然と言えば当然の解釈ではあるのですけれども、では、まちの管理は、全て行政サービスの一環というような捉え方をしてしまった場合、一人一人の意識は、住宅以外には向いていかないですし、一方で行政としては財政の予算の都合もございますので、特定の区域だけに予算をつけて管理をしていくことは基本的にございません。そういったことを考えると、最低限の管理にとどまってしまうと。その中で時間の経過とともに、まちが、ハードの意味合いなんですけれども、劣化してしまうと。その劣化とともに、住民の人たちも、汚くなっているからごみを捨てても良いやというような、負の循環を生み出してしまうリスクもあるのではないかというような捉え方をさせていただきました。
  • 時間の経過に伴って、建物の劣化、ひいてはまちの価値の低下、そういったことを招いてしまった先には、まちも非常にさびしくなってきてしまう、にぎわいも減少してしまう。将来的にまちを継続的に発展させていくためには、購入世代から子世代のほうにバトンタッチをしていくタイミングがあると。そこまでまちとしての魅力は維持できないのではないか。そういった考え方をさせていただきました。
  • このような負の循環に対して、では、この地区でエリアマネジメントというこの地区特有の取組みをすることによって、どのような現象、どのような成果を目的としていくのかというのがこちらのスライドになります。
  • 先ほどのスライドでもお伝えしたように、建物や道路などといった施設構造物は、完成時点が一番きれいで、そこから経年劣化は徐々に進んでしまう。これは避けられないことということになりますが、それとあわせて、例えば公園の緑、今、この集会所の皆様から見て右手にすみれ野中央公園がございますが、こういった公園の緑や、あとは戸建て、マンションの集合住宅の公開空地などにも緑地が配置されているのですけれども、そういった外構の植栽といった景観要素、こういったものは維持管理を重ねていくことによって、年を追うごとに魅力、価値というものはどんどん増大していくのではないかという考え方を、この地区では持っています。
  • ただ、ここで皆さんにしっかりお伝えしなければいけないのは、景観要素というものは維持管理が必要であるということです。翻って言うと、管理を行わなければ、緑とか景観要素というものは、好き勝手に伸びてしまって荒れてしまい、景観阻害の要因にもなり得るという相反関係にあるものだということで、大事なものは、景観要素をしっかり質を上げて、適切に管理していく。それをセットで捉えていくまちをつくりましょうということをお話しさせていただきました。
  • そうすることによって、景観のほうは年を追うごとにこの地域になじんでいき、まち並みの景観も醸成されていくと。あとは、何よりもその活動を一人一人がいろいろな形で、それぞれの立ち位置によってかかわり方が変わってくるのですが、皆様が何かしらの形でこの活動に携わっていく、そういったことによってこの地域性というものが生まれてくる。もっと大げさに言うと、ゆくゆくはそのような地域の文化性のような独自の取組みがあることによって、まちの魅力とか住環境というのは徐々に向上していくんだろう。そうすれば、ハードの劣化に対して、ソフトな部分、景観要素と維持管理というような取組みをセットにもっていくことによって、まちの資産価値の下落というものを下支えして、ひいてはもっと引き上げていこうという考え方で、このまちづくりはスタートしています。
事業を通した取組みの舞台づくり
  • 我々まちづくりコンサルとして、今のような目標を掲げると、取組みの目的としては、これは多分皆さん、なるほどと思われると思うのですけれども、では実際、誰がどうやってやっていくのかという時に、なかなか話が盛り上がっていかないということがあると思います。ですので、我々としては、まず1つ、最初に取り組んだのが、事業を通して取組みの舞台をつくるということに仕事として取り組ませていただきました。
  • 先ほどお話しした、資産価値が経年劣化とともに下落していく、負の循環からプラスの循環に転じていくようなアクションというものを、まちが完成した後、まち開き後に本当に有効に機能させていくためには、事業によって、まちをつくる段階、道路の形や宅地の配置の仕方、そういったところでも留意しなければいけないことがあるのだろうと我々は考えました。
  • その一番の取組みの舞台、魅力というものを、今日、皆さんが駅から出られて最初に自由通路を降りた時に、公園が先にまっすぐ延びていたと思うのですが、こちらをまちのシンボルとして捉えていきましょう、公園をまちの一番の魅力、シンボルとしましょうという考え方によって、土地利用計画をつくらせていただきました。
  • これが土地利用計画図を模式的に表したものですけれども、駅前広場がありまして、そのまま地つなぎですみれ野中央公園が中央に配置されているというサイトプランになっております。その公園を囲むように宅地、主に戸建ての宅地が公園を囲んでいくような形で配置されている。そのようなマスタープランを採用しました。
  • こういったマスタープランを今回この地区で採用した背景としては、中央公園と住民との接点をなるべく増やしていこう。まちの魅力とするためには、みんなに使ってもらえる公園にならなくてはいけませんので、まずはハード、配置の関係からも住民と公園がより密接につながるような配置関係を考えましょうというようなことで、この形になっております。
  • 住民との接点をなるべく増やしていくような配置、なるべく視線の先に公園があるような形でまちをつくっていくことによって、住民が日常の中で、公園で行われている活動とか取組みというものを少しでも自分の事として捉えやすくなってもらえるような配置関係を目指しました。
  • 駅から出てすぐに、公園を通り道にして、皆さん帰宅の道につくのですけれども、まず、動線的に公園を使ってもらうということ。あとは、公園の周りに住宅が配置されていて、例えば、リビングの窓、反対側の住宅地がないので、リビングを配置することができるのですけれども、視覚的にも公園が感じられる。公園に隣接していない宅地であったとしても、前面の道路から公園のほうまで見通していける、公園という存在がなるべく身近になるような配置計画となっています。
  • 具体的には、aという写真は、自由通路から4月ごろ撮ったものですが、駅前広場を出て、ドーンと公園が広がっていくというようなサイトプランになっておりまして、公園の中には、皆さんが家に帰るのに区画道路を通らなくても、近道で抜けていけるような、歩いて楽しいような舗装もつくっています。
  • 一方で、公園に面していない宅地についても、区画道路が最終的に公園のほうに行き着くような形にすることで、自宅から出た時に、公園に視線が抜けていくような配置計画となっております。
  • あとは、まち並み景観をつくるために、戸建ての宅地はオープン外構を主体とした緑のつながりが感じられるような外構計画になっています。
  • 今お話ししたように、中央公園との配置関係をまち並みレベルで、人との接点を少しでも多く増やすような土地利用計画を考えたのですが、それを一つ一つの空間レベルで、見る・見られるというような景色の重なり、これを借景と定義づけて、公園と個々の宅地との間で借景の関係性をしっかりと生み出していきましょうということで、「建築外構ガイドライン」を策定させていただきました。こちらについては紳士協定で、現在はNPOで運用されておりまして、事業期間中は、区画整理法の76条の申請に伴って、鴻巣市さんのご協力を得ながら、一件一件、外構を審査・指導させていただいたという経緯をたどっております。
  • 紳士協定であるがゆえに、絵に描いた餅に終わらないように76条申請との関連づけをしたことに加えて、この地区内の保留地を取得されるハウスメーカーさんに、事前にガイドラインの趣旨や、このまちはエリアマネジメントを主体としてまちの価値を高める取組みを今後成長させていくということを、一番最初にお伝えしました。
  • ですので、ハウスメーカーさんが参画する事前の段階から、ガイドラインの内容については協議をさせていただき、ひいては、ハウスメーカーさんのほうから、住宅を購入される方たちに対して、重要事項説明の中に、この地区の取組みの説明やNPOの加入についてもしっかりとご説明をし、ご理解いただいた方に土地を買っていただくという進め方をとってきました。
  • これは、振り返ってのまとめになってしまうのですけれども、ガイドラインとして取り組む時に、ハウスメーカーさんとは概ねの合意がとれたとしても、施主さん、住民の皆様個人としては、もちろん自分たちがお金を出した土地に対して、権利の制限のような話になってくると思うのですけれども、そういったものをなぜやらなければいけないんだというような意見も実際何件かありました。そういった意見も当然出ることを事前に想定しておりまして、もちろん紳士協定の中でやっていくにしても、ガイドラインをまち並み景観の質を高めるためにつくりました、だけではなく、もう少し具体的にガイドラインをつくる意味、必要性というものを整理して、事前にハウスメーカーさんや住民の方たちに、場合によっては説明会という場を開きまして、この地区の住み方ということをご案内してまいりました。
  • 結論から言うと、何もしないまちに対して、緑地をしっかりと確保して夏場の温度上昇を3度抑えるような効果を発揮させていきましょうというのが、このガイドラインの中で求めている目標数値になります。
  • まず、第一次取得者層の30代から40代の子育て世代の方々に、子どもにとってもなるべく優しいまちをつくっていきましょうという切り口でガイドラインの取組みの必要性を伝えてきました。その時に、地表面の温度の上昇の変化について着目し、皆さんにガイドラインの遵守をお願いしてきました。
  • 東京工業大学の梅干野(ほやの)先生の研究所で開発されたソフトによって、実際のこれまで過去に記録された天気、気候のデータを入力した上で、実際に線路沿いのある街区の仮想の宅地で、何もしなかった一般舗装に対して、例えば舗装に保水性を持たせるだとか、ガイドラインで言われている緑化、芝生で被覆した場合に、夏場の温度上昇がどれぐらい変化するのかというものを事前にシミュレーションしました。
  • このシミュレーションの結果、5度以上の差が出ることはわかったのですけれども、まず、努力目標ということで3度を共通キーワードとしてガイドラインをつくって、皆さんで達成していきたいのはこういうことですということをお話ししてまいりました。
NPO法人エリアマネジメント北鴻巣の立ち上げ
  • 事業期間の中で、土地利用計画図や個々の宅地の外構を考えるといったハードに関する舞台は、このように整えていったのですが、その舞台の中で実際に演じる人たち、そこで活動していく人たちや活動する仕組み、それをソフトと説明させていただくのですが、その舞台を使って何かしらをする、その何かを考えなければいけないということで、我々で事業期間中に活動の受け皿になる住民組織の設立に取組みました。それが「NPO法人エリアマネジメント北鴻巣」という組織になります。
  • 現在、NPOを取り巻く地域の組織の関係性ですが、まずは「NPO法人エリアマネジメント北鴻巣」に9.3haの施行区域の住民の皆さんに会員として入会してもらっています。まず、最初に正会員か一般会員に属していただくということをお伝えしております。それによって細かく規定はあるのですけれども、まずは全体の関係性ということでお話を進めさせていただきます。
  • 事業区域の中には、マンションと住宅地、新しくできた住宅地もあれば、従来からある既存の住宅地もございますので、すみれ野自治会のほかに地区内に3つの自治会の区域が設定されています。ですので、施行区域の中には、戸建ての住民を中心とした自治会組織、あとはマンションごとに管理組織があるというような形で住民組織が成り立っております。
  • それに対して、我々株式会社サポートは、事業の時には事務局としで事業を進めていきまして、事業完了後の今でも、住民の皆さんが活動を進めていくために、必要に応じてアドバイザリーを行うという立場で、NPOさんとの関係性を築かせていただいています。
  • こういった取組みをすることによって、当社としても事業完了後の住民自身による持続可能な地域経営が可能になっていく事例を自分たちで取り組んだ地区の中で有することができるということも大きな魅力になり、しっかり我々の中で一つ一つ経験させていただきながら、NPOさんと一緒にこれまで活動を展開してきたという経緯になります。
  • あとは、公園は現在NPOで指定管理者制度の指定を受けて管理をしており、第1期3年の指定管理期間を経まして、今、2期目に入っているところでございます。通常、市直営で管理する公園よりも、今の公園整備水準は非常に高い水準にございまして、それに関する費用もNPOでしっかりと管理をしているということで、鴻巣市さんとしては指定管理者をうまく活用しながらNPOを介して良好な公共用地の管理を進めていくことができているということになります。
  • あとは、地元の組織と鴻巣市さんの関係として、官民が管理業務を分担する一つの事例としてこの地区を捉えていただいている、そんな形になっています。
  • あと、もう一つ、地元企業からもいろいろな形で支援をいただいています。すみれ野中央公園の中にスポンサー花壇が配置されていまして、事業当初からいろいろな企業様にお声がけをさせていただいて、増減はあるのですけれども、継続的に地元企業の支援をいただきながら活動のフィードバックをさせてもらっていると、そのような地域のつながりをつくらせていただきました。
組織体制の推移
  • 組織体制がどのように推移してきたのか、時系列にまとめさせていただいたのですけれども、我々が事業に参画したばかりで事業認可する・しないのころ、個人5名で、お花いじりが好きな方がいらっしゃって、まずはこの5名の方たちからお話をさせていただきました。
  • その上で、実際、準備をしていこうということで、例えばこの方のご主人様や、ご主人様のお知り合いというように、どんどん伝聞式で人を探していきまして、10人程度の組織でもってNPO設立準備会を組織しました。
  • 当時、準備会を構成されていたメンバーとしましては、事業に参画してくださったディベロッパーさん、この5名の方の関係者を通じて紹介してくださった地元住民の方、当時の公園の設計者さん、あとは、人の紹介で、鴻巣市というのは花卉産業が盛んな土地でして、花卉市場はありますが、花卉市場の当時の副社長さんもこの活動に支援いただけるということでスタートいたしました。
  • ここでまず身内で25人程度の組織をつくりまして、事業期間の中で、実際にエリアマネジメントの仕組みや、どのような活動をしていったらいいのかということを一つ一つ話し合いました。
  • 土地の造成工事が進んでいけば、使用収益も開始されていきますので、まとまって使用収益が開始された時、戸建て住宅で大体100名ぐらい新規住宅の建設が進みまして、2009年には一気に新規住民が100名増えるというような組織の増加になっております。マンションができれば、またマンションの住民単位で増えていくというように、新しい住民が来る前の段階に、しっかり、まちのコンセプトや、まちの住み方のマナー、ガイドラインのルールの運用の方法など、そういったものを固めておくことによって、住民の皆様に、このまちはこういう住み方のまちですよということをあらかじめ伝えた上で住んでいただくというような迎え方をしていきました。
  • もちろん実際に入居される前の段階で、一回一回住民の説明会を開きまして、コンセプトの説明、やはりどうしてもハウスメーカーの営業担当者さんのお伝えの仕方はばらつきがあるというのが経験上ございましたので、なるべく回数を重ねて住民の説明会をさせていただき、理解醸成に努めてまいりました。
このまちの「安心」の定義
  • このようなまちをつくっていくエリアマネジメントの仕組みをこのまちに持たせていくといった時に、「安心・安全」というキーワードが住民の方たちからも出てきました。事業認可の前に地権者の個別面談をしていく中で、ある地権者さんがおっしゃったのは、まちづくりを進めていくのはいいが、せっかくつくるのであれば、新しい住民とぎくしゃくしてしまうようなまちはつくってほしくない、安心して住めるまちをつくってくれないかと、もちろん自分たちの資産活用の話をしっかりとなされた上で出てきた言葉だと思うのですけれども、そういった言葉をいただきました。そういった意味では、その一言がこの活動の一番最初のきっかけになっているのですけれども、やはり皆さんにとって安心して暮らせる場所、安全なまちというものは非常に重要だろうということで、この地区では安心・安全の定義を3つに分けて定義づけをさせていただきました。
  • 1つ目は、エリアマネジメントという取組みによって資産の目減りを防ぐ、資産の価値が極力落ちない、資産価値として安心なまち。
  • もう一つは、建築外構ガイドライン、こういったオープン外構を主体とした、死角がなるべく少ないようなまち並みをつくり出すことによって、防犯上の安心、あとは道路を子どもたちが通って遊んだりしていた時も、車の視線の抜けが非常にいいですから、防犯上、あとは交通安全上、安心・安全なまちということ。
  • 最後は、事業の当初から、このまちのあり方というものを議論していったことによって得られたものだと思うのですけれども、まちのコンセプトをあらかじめ共有した一定のマナーを持った住民の皆様が集い暮らしているまちであるということで、相隣関係でいろいろと住民トラブルが起きている昨今、このまちで住むにあたっての必要最低限のマナーがあるというのが一つ安心につながってくる重要な要素なのではないかというように定義させていただきまして、このような安心・安全の定義を定めながら、皆様と対話をしていったということになります。
  • 住民に話をしていく時に、一つ一つこういった取組みを皆様に共有していただいた上で進めていくことに重点を置きながら進めていった地区事例ということになります。活動の概要としては以上になります。ありがとうございました。

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