街に、ルネッサンス UR都市機構

「暮らしと。」フォト&スケッチ展2017 審査の風景

2017 審査の風景

審査総評

※敬称略

池邊 このみ(ランドスケーププランナー)

今回、9回目の審査に参加させていただきました。「暮らしと。大賞」は、こんなにコミュニティにあふれているところは他にはない、というような素晴らしい作品で、従来の団地としては本当に評価すべきものです。一方で、フォト&スケッチ展のスタートから9年が経ち、「団地」というものの捉え方も、そろそろ変わってもいいのかなと感じています。例えば最近では、公園にもカフェができたり、バーベキューをしたり、「公園」というものの使われ方が変わってきました。今回の受賞作品にも、公園、オープンスペース、緑の空間などが出て来ますが、そのような団地の資源を活用した、新しいライフスタイルがどんどん出て来るといいなと思いました。

池邊 このみ(ランドスケーププランナー)

池本 洋一(SUUMO編集長)

シニアの方は現在の充実した暮らしを描いた作品が多く、一方、若い世代の人たちの作品には住まいへの希望のようなものが描かれていました。そのメッセージがシャープに導き出されているものを評価しました。インターネットというデバイスの進化によって、人気駅とか、駅からの距離といったスペックによって住まいの選択肢が絞り込まれ、「暮らし」というものが見えないまま、住宅が選ばれるようになっています。このような「暮らしの軸」から住まいを選んでいくようなことを、もう少し一般の方々に知っていただける機会を増やしたいと、常日頃から思っていました。このフォト&スケッチ展にも、そのような役割があるのではないかと感じました。

池本 洋一(SUUMO編集長)

一之瀬 ちひろ(写真家)

団地は写真の被写体としてすごくフォトジェニックなもので、コンテストの枠組みがなくても、団地を撮りたい人は多いと思います。今回、団地景観部門と暮らしと。部門に分けましたが、「団地の造形的な美しさに魅かれて、写真を撮りたくなった」という気持ちが伝わる作品と、「実際にそこで暮らしている中で、一瞬の美しい景色を撮ったら、それが団地だった」というような作品がありました。その両方が見えたのがよかったと思います。私も団地の作品を撮っていますが、やはり普通の住宅やマンションとは違い、空間の独特さみたいなものを感じます。

一之瀬 ちひろ(写真家)

キン・シオタニ(イラストレーター)

僕は団地で二十歳過ぎまで育ってきたので、共感できる部分がある作品を選びました。団地に住んでいた当時、「向こう三軒両隣」ではない時代でしたが、団地の公園では色々な人たちと触れ合える機会が多かったです。家庭環境は違っていても、同じ団地に住んでいるという共通の土台のようなものがありました。僕の世代のことだけだと思っていましたが、今回のフォト&スケッチ展の作品を通して、今でも触れ合いがあることがわかってすごく嬉しくなりました。どんどん古いのを壊して、どんどん最新に、というよりも、昔ながらの団地の良さを感じる人たちが、昔よりは増えて来ていると感じています。

キン・シオタニ(イラストレーター)

西田 司(建築家)

非常に色々な切り口の作品が集まっており、かなり楽しませていただきました。撮った人、描いた人の目線が、フォトだけでなく応募メッセージにも込められており、ある日常の1枚を、それを切り取った時の気持ちとあわせて審査できるのがいいと思いました。審査員の先生方と、団地の日常の豊かさについて、色々な捉え方を議論しながら作品を選びました。写真が現在の様子を捉えているのに対して、今回の「暮らしと。スケッチ大賞」に選ばれた作品は、団地でこういうことも考えたらいいんじゃないか、と示唆するような未来的な目線もあり、10歳の子どもの絵に対して、一種のリスペクトさえ覚えました。

西田 司(建築家)

コメント

暮らしと。
フォト大賞

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「大大大大家族」
池本 洋一
「多世代」といえば「おじいちゃんと子ども」を連想しますが、団地では子ども同士の中でも様々な年代が一緒に遊んでおり、魅力的なシーンです。

暮らしと。
スケッチ大賞

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「楽しいワクワクUR」
池邊 このみ
「ワクワク」という言葉から、家の中やベランダ、隣の人、何かを想像するだけで楽しいという気持ちが伝わってきました。
西田 司
10歳の子が自分の思いのまま描いたということで、非常に未来予想的な感じがあっていいなと思いました。

団地景観
フォト大賞

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「夕景」
キン・シオタニ
空が赤くなった時に、外を見たらすごかったという感動が伝わりました。
池本 洋一
デザイン的に扉の色が変わっていて、団地らしくかつおしゃれな雰囲気が表現されています。

団地景観
スケッチ大賞

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「ワンダーランド」
池本 洋一
勢いと、伝えたいメッセージがものすごく明快で、引きつけられました。
池邊 このみ
「ガオーッ」「キャーッ」という声が聞こえてきそうな、五感を刺激するような作品です。そんな動きのあるリアルさと、楽しさが溢れています。

優秀賞
(池邊 このみ選)

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「雨上がりの非日常」
池邊 このみ
もっと日が暮れて真っ暗になると光だけになってしまいますが、その間の時刻をとらえ、緑も非常に上手く入っています。
西田 司
このアングル(構図)に出会えた喜びを感じました。

優秀賞
(池本 洋一選)

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「我が家へようこそ」
池本 洋一
外国人の方がお子さんと笑顔で団地に暮らしているというのは、今の時代性や、団地の寛容さを捉えていると感じました。

優秀賞
(一之瀬 ちひろ選)

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「しばし手を止めて」
キン・シオタニ
この風景を見て、「あまりにも美しかった」と思える感性が本当にいいなと思いました。団地は箱が並んでいるようなのに、暖かさまで感じてしまう素晴らしさがあります。
一之瀬 ちひろ
「何かいいな」と思って、ついつい撮ってしまったようなところに魅力を感じました。

優秀賞
(キン・シオタニ選)

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「大望の影」
キン・シオタニ
被写体の人たちは、撮られていることに全然気付いていない。そのことも含めて、ある意味で親のように、子どもの成長を願って見守る気持ちが伝わりました。

キッズ・ジュニア賞
フォト

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「花火していせき」
西田 司
子どもの視点で撮られた作品であることを知ると、その良さに惹かれました。
一之瀬 ちひろ
反則的な可愛さがありますね。自宅で撮っているのもいいなと思いました。

キッズ・ジュニア賞
スケッチ

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「いつも美しく掃除」
一之瀬 ちひろ
団地で働く人々の姿が、団地で暮らす人たちにとって日常的な風景であることが描かれていて、なぜか心に深く残る風景だと感じられました。
審査の風景
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