街に、ルネッサンス UR都市機構

団地景観フォト&スケッチ展2015 審査の風景

2015 審査の風景

人々が住まう空間であると同時に、家族や住民同士、地域の人々との交流などが生まれるコミュニティとしての機能も合わせもつ団地。独特の景観を作り出す建築物としても、昨今、注目を集めています。
「UR賃貸住宅 団地景観フォト&スケッチ展2015」では「ふれあいの団地~暮らしの風景~」をテーマに、団地の魅力をさまざまな視点から表現した写真とスケッチを募集しました。作品自体はもとより、タイトルおよび添えられたメッセージに込められた思いも含めた総合的な審査によって、各部門の受賞作品が決定しました。
審査員の皆さんは、どのような視点から作品を選んだのでしょうか。審査後の講評から、各部門の受賞作品それぞれの魅力に迫ります。

審査総評

※敬称略

大西 みつぐ (写真家)

昭和の時代を団地で暮らしたひとりとして、多様な作品が並ぶなかにも、そこに生活する人々のささやかな幸福感がシャッターの余韻のように浮かび上がってくる作品に心ひかれました。写真は時間や空間を切り取るものであるため、印象に残る出来事が一つの画面にていねいに盛り込まれるのではないでしょうか。季節感やロケーションなど、いろいろな工夫が凝らされた作品が多いように感じました。

大西 みつぐ (写真家)

千葉 学 (建築家)

例年、応募作品を見るたびに団地への理解をあらためて深める思いがします。団地は今や、私たちの原風景のような存在になっているのではないでしょうか。地域の風景を撮るとき、団地はひとつの大事な要素となりえるように思います。今年は特に、住んでいる方々の場所に対する愛着や楽しさ、小さな気づきなどが伝わる作品に注目してみました。団地から生まれるコミュニケーションを表現した作品に、今後も期待したいと思っています。

千葉 学 (建築家)

なかだ えり (イラストレーター)

審査に参加させていただいているうちに、子供のころは無機質なイメージで見ていた団地が、緑あふれる、自然の豊かな空間であることがわかってきました。四季折々を大切にして楽しみながら暮らしている方々の存在を感じます。今回は、ささやかな暮らしのなかの幸せが表現されている作品が心に残りました。なかでも特に、人間性をクローズアップしている作品を中心に選ばせていただきました。

なかだ えり (イラストレーター)

池邊 このみ (ランドスケーププランナー)

今回は多様な作品が多く、コミュニティの温かさを感じられる作品や、団地の特徴的な空間が表現された作品が選ばれていると感じます。このコンテストでは写真あるいはスケッチとメッセージを一つの作品として評価するので、よりいっそう皆さんの団地に対する思いが伝わってくる作品が評価されているのではないでしょうか。全国のURの団地の魅力や、そこに住まう生活の楽しさなど、さまざまな情景を見ることができて、大変満足です。

池邊 このみ (ランドスケーププランナー)

コメント

フォト大賞

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「雪の日」
大西 みつぐ
スケッチと写真を並べてみると、絵は夢のある団地景観を表現しているように思います。最近のカメラは、誰が撮っても簡単に撮れるという様な技術体系があり、人物像よりも団地の大きな空間を写した作品が多く見られる印象があります。
しかし、ある程度のレベルに仕上がるとはいえ、そのなかにスパイスを加えると、見ごたえのある写真になります。そうしたことから考えると、この作品はちょっとした工夫がよくなされていると思います。夕方、日が落ちて暗くなってきたときに、ただ単にポンとシャッターを切るだけでは、これほどまでに雪がきれいに写ってこないんですね。おそらく、内蔵のストロボを光らせたのではないでしょうか。
また、空の色が微妙に変わりゆく時間帯なので、上部と下部の色のバランスがたいへんよく、街灯の光にもきちんと気が配られています。家から漏れるオレンジ色の明かりは、明るい夕餉のイメージですね。そこに人がいることも伝わってきます。非常にバランスよく納まっている、技術的に上手な写真だなと思いました。
池邊 このみ
今回は思いのほか多様な写真が集まりましたが、なかでも若い撮影者や被写体が小さなお子さんというのが目立つという印象があります。毎回思うのですが、団地の風景の特色である、人の存在が感じられるコミュニティとしての温かさが伝わる作品が選ばれているのではないでしょうか。また、団地らしさがうかがえる特徴的な空間を切り取った作品も多いと思います。
「雪の日」は、いままで見てきた雪の写真とは少し違って、写真ではあるけれど、メルヘンチックな絵画のような温かみがあります。明かりがともった団地の景色は、クリスマスの空のような雰囲気がありますね。車が映りこんでいますが、それをほとんど感じさせないほど、景観的にまとまっていると思います。
大西 みつぐ
とても気持ちのよいバランスでまとまっていますね。
池邊 このみ
構図がすごくいいし、温かみがあります。そのままカードにしてもよさそう。

スケッチ大賞

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「みどりがいっぱい」
なかだ えり
外観、緑、人という要素がすべて本当にバランスよくとても細かく描きこまれていて、見ごたえがあります。
応募作品全体を見ると、今回はそれぞれの作品においてバランスがとれている印象があります。技術的に上手いかどうかだけではないですね。特に絵のほうが、メッセージとの結びつきが強いように感じました。
池邊 このみ
全国にあるURの団地はこんなに素敵なんだよ、こんなにいい空間がいっぱいあって、私たちはこんなに楽しい生活を送っているよというメッセージを一人でも多くの人に伝えたいという思いを込めて描かれたものでしょう。UR団地の魅力が存分に表れている作品だと思います。 今回の応募作品全体を見ると、団地が見せるさまざまな情景がよく表現されていると思います。こうして見る機会に恵まれて、とても満足しています。

優秀賞
(大西 みつぐ 選)

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「ピンポーン」
千葉 学
今回で7回目を迎えるこのコンテストでは、団地の中の名所といわれる場所は、比較的同じような形で撮影されて過去にも応募があったりするので、今年は日常の風景や、あるいは住んでいる人々のちょっとした“気づき”によって、場所に対する愛着や住んでいることの楽しさが伝わる作品に注目してみたいと思っていました。また、建築的な視点からも、団地のよさがうまく伝わってくる作品を見つけられるといいなと思って選びました。
応募写真全体を見ると、どうしても団地の外部を写したものが多く、団地の中や廊下という場所に着目した写真というのは本当に少なかった。例年そうなんですが、そうしたなかで「ピンポーン」は、扉が並んでいる廊下の風景に目をつけたことに大変共感しました。また、子供が傘で“ピンポーン”しているという姿自体が大変微笑ましいですね。
大西 みつぐ
お子さんの敢闘賞だな。僕は昨日ふたりの孫に会ってきたこともあって、孫を思い出させてくれるこの作品が好きです。
千葉 学
扉を見れば、古い団地であることがわかり、時代まで伝わってくるようです。そこで小さなお子さんが生まれて、生き生きとした表情を見せる。そんな生活が当然のように続いている。
添えられているメッセージには、子供が呼び鈴を押しやすいように、近所の方が配慮して傘を置いてくれていると書かれています。団地ならではのコミュニケーションですね。住んでいる皆さんがそれぞれ新しいツールを開発しながら、さまざまなコミュニケーションを育んでいっているということが写真から伝わってきて、本当に感動的です。素晴らしいと思いました。団地の中で繰り広げられるさまざまなコミュニケーションや、いろいろなつながり方、あるいは団地ならではの皆さんなりの秩序などが今後も伝わってくることを期待させてくれます。
大西 みつぐ
内容的には、物語がある写真も何枚かありました。そういう作品に関しては、メッセージを読んでから写真を見てますが、写真で表現できる部分はがんばって表現してほしいですね。言葉と映像をどういうふうに抱き合わせるかというのもこれからの課題だと思います。

優秀賞
(千葉 学 選)

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「夏の風物詩」
千葉 学
何年かこのコンテストの審査に参加させていただいていますが、皆さんの応募作品を通じて団地をより詳しく知ったという思いがあります。団地がみんなの原風景になっているという印象は年々強くなり、今では地域の風景を代表する存在になってきているようにも思います。
僕は子供のころ団地には住んでいなかったんですが、団地の風景は近所にたくさんありました。団地の階段を下りたところの前の通路に、住んでいる人たちがみんな出てきて何となくたたずむという風景自体は、いろいろな場面で目にしました。みんなが一列に並んで花火を見ているという風景は、非常に団地らしいと思います。
なかだ えり
写真の場合は、人に寄ったり、内部を写したり、切り取った視点であるにもかかわらず、団地だということがわかるところがスケッチと違うと思いました。より人間らしさをクローズアップしている点が面白いと思います。
今回は特に、そこに住む人たちの生活感や人間味を感じられる作品が多かったのではないでしょうか。
大西 みつぐ
今の写真は情報量も含め、よく写ってしまいますから、技術的な面を気にして撮られる方も多くいらっしゃいます。ですが、どう上手く撮るかよりもむしろ、ストレートな眼差しが一番大事だと思います。技術的な完成度より、どうしてこの被写体を撮りたかったのかという心の内をもっともっと素直に示してくれてもいいのではないでしょうか。そうすれば、いまの時代の生活感がさらに表現されてくるのではないかと感じました。

優秀賞
(なかだ えり 選) 

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「親子の絆」
なかだ えり
子供のころは団地に対して無機質なイメージがありましたが、何年か続けて作品を拝見するうちに、自然が豊かで季節感あふれる空間であることがわかるようになりました。まるで公園に住んでいるようなイメージで、都会のなかにあって、とても贅沢な空間なのではないかと思います。四季を大切にして、楽しみながら暮らしている方が多いんだな、と感じられます。
「親子の絆」は、カラスという嫌われがちな存在を、楽しげな情景として見ることができるように仕上がっている点が素晴らしいと思います。どちらかといえばイベントを描く作品が多いなかで、かなり面白い観点なのではないでしょうか。ささやかな暮らしのなかの幸せがよく表現されていて、心に残りました。
池邊 このみ
団地の壁の上にスズメの巣があって、そこにヒナがいる……。そんな細かな描写もいいですね。
なかだ えり
本作の作者は毎年応募してくださる方とのことですが、メッセージがとても面白く、まるで童話のようです。毎年送ってくださる作品を集めたら、一冊の絵本にできそうですね。
池邊 このみ
スケッチとメッセージ両方が一体となって受賞されている点からみても、団地に対する思いがきちんと表現されている作品が評価されているのではないかと思います。

優秀賞
(池邊 このみ 選)

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「コミュニケーション広場」
池邊 このみ
奈良北団地をスケッチしたこの作品には、「まさにワンダフル・コミュニケーションです」というメッセージが添えられています。メッセージも含めて見ることができるのが、このコンテストの良さですね。
プールと住棟と歩道という団地の要素が真ん中から四方を見るように描かれていて、想像力豊かでワンダフルです。実際は、このようには見えないのですけれどね。団地の遊び場のオープンスペースのさまざまな魅力があふれていて、後ろには山も見えているところがいいな、と思いました。
審査の風景01
審査の風景02
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