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団地景観フォト&スケッチ展2014 審査の風景

審査の風景

世代を超えた様々な人と暮らしが集う団地。そこは人と人とのふれあいによる物語が生まれ、ささやかな感動や笑顔の源となっています。
第6回目を迎えた「団地景観フォト&スケッチ展」は、ふれあいの団地〜笑顔の集まる場所〜というテーマで開催され、団地での温かな暮らし、心のつながり、そして団地という建造物への愛着の眼差しが特に強く現れている作品に高い評価が集まりました。
審査後に行われた講評座談会から、それぞれの作品の評価ポイントを探ります。

審査総評

※敬称略

大西 みつぐ (写真家)

景観写真となると団地の建物群が中心になりがちですが、暮らしの中の何気ないワンシーンを切り取った写真もあり、興味深く拝見しました。カメラの機能を上手に利用するのも今の写真の楽しみ方のひとつ。美しい風景や鮮やかな色彩にこだわりすぎることなく、これからも気軽に団地での生活の断片を捉えた作品に期待したいと思います。

大西 みつぐ (写真家)

千葉 学 (建築家)

私にとって団地とは幼いころから身近にある風景で、昭和の時代から日本の発展と共にさまざまなタイプの団地が生まれています。作品を通じて感じたのは、それらが既にあらゆる世代の方にとってひとつの原風景になってきている、ということです。団地に対する見方はそれぞれで異なり、新しい魅力も見いだしている。それが私にとっても新鮮な発見でした。

千葉 学 (建築家)

なかだ えり (イラストレーター)

2010年にも審査をさせていただきましたが、今回は前回に比べて、近代的な建物を撮った作品が増えたように感じました。建物自体は新しいのにどこか温かみがあるのは、住んでいる方の団地への愛着が写し出されていたからなのかもしれません。子どもからお年寄りまでが暮らす団地の中で、世代を超えた交流や物語のようなものが見て取れる作品に心惹かれました。

なかだ えり (イラストレーター)

池邊 このみ (ランドスケーププランナー)

今年は特にスケッチ作品が多様になり、これまでになかったタイプの作品も見受けられました。団地ならではのひとコマを切り取ったものや、逆に日常生活の中のストーリーを描いたものもあり、団地での暮らしはこんなにも温もりや人間味にあふれ、居心地が良いのだよ、というメッセージが作品から伝わってくるようでした。

池邊 このみ (ランドスケーププランナー)

コメント

フォト大賞

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「朝日を背にランニング」
大西みつぐ
朝日と団地である我が家を背にして走っている親子の写真ですね。
本来、逆光の状態ではなかなかシャッターを切らないものですが、絶好の被写体に出会い、親子を照らす朝日がきれいで、思わず撮ったのでしょうね。作者の実感が伝わってくる一枚です。
電線や屋根にあたる光も美しく、絵画のように豊かな色合いで、とても斬新な写真表現になっています。
池邊このみ
色彩が素晴らしく一瞬で目を引く写真です。
とても造形的で大賞にふさわしい作品だと思います。
千葉 学
写真表現としての素晴らしさもさることながら、とても前向きな印象があっていいですよね。

スケッチ大賞

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「全員集合」
なかだ えり
団地に住む人への愛着や感謝があふれていて、きっと作者の方は一人ひとりの顔を思い浮かべてニコニコしながら一生懸命制作したのでしょうね。それにこの作品、人物の部分が切り絵で作られているんですね。この表現方法も秀逸です。生活感が出てしまいがちな布団や洗濯物がこんなにポップでかわいく仕上げられていて、とても好感が持てます。
大西 みつぐ
私たち写真家の場合は、布団や洗濯物は撮らないようにします。
生活感がリアルに出てしまうので。でもイラストの場合は色使いでとてもポップに仕上がる。
池邊 このみ
メッセージには「一人っ子だった私は、毎日、遊び相手を探しに団地に直行」していたと書かれています。そこには友達がいて、誰かが遊んでくれる。団地に対するイメージが作品からよく伝わってきます。
千葉 学
何と言っても「全員集合」というタイトルがいいですね。
なかだ えり
布団を干したままちょっと出かけられる。
そんな身近な距離感も団地ならではですよね。

UR理事長賞

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「お手手つないで」
池邊 このみ
パパとママに手を引かれながら幼稚園へ。
URのコマーシャルに使えそうで素敵です。

審査員特別賞

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「春宵の鴨谷台の団地」
大西 みつぐ
作者が一幅の絵画を見たとおっしゃるように、無駄のない適切な構図と自然な色合いで、美しい風景としてまとめられています。
昨今は強めの色彩の写真が好まれがちですが、この作品の場合はコントラストを抑えて正解だったと思います。
淡い色彩で日本的な情感をしっとり表現するのもいいものですね。
池邊 このみ
落ち着いてしっとりした印象でどこか色気もあります。
84歳の方の作品ですが、色彩は若々しい。
桜の美しさだけを狙ったのではなく、遠くに見える団地も含めて一つの風景として捉えていらっしゃいます。
以前は、「団地景観」というと、住棟を中心にした写真も多かったのですが、今年はこの方の作品のように、街並に溶け込んだ団地、暮らしの中の団地を表現した作品が多かったと思います。

優秀賞

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「花束贈呈」
なかだ えり
作者の方は91歳の男性で、亡き奥様を思いやるメッセージも書かれてあり、思わず涙ぐんでしまいました。
団地内のほのぼのとした交流が描かれ、それらが尊い時間としてこの方の中に積み重ねられているのでしょう。ぜひ来年も応募していただきたいと思います。
池邊 このみ
一見しんみりした印象ですが、実物の作品を拝見すると意外と明るさも感じられます。花束を持っているし。
何と言ってもこのエネルギーがすごい。
ぜひ100歳になっても応募していただきたいです。

優秀賞

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「ここで過ごした3年」
大西 みつぐ
私は人が好きです。自分でも「人が生きる町」という観点で写真を撮っていることもあり、人物の写真に心が惹かれます。
この写真には父親の胸に去来する思いがしっかりと写し出されていて、ドラマもあり、切なさもある。
女の子は小さい頃の写真を持っていますが、ほぼ同じ場所で撮影していますね。きっとこの子は思い出を大切にしてくれるでしょう。
千葉 学
私の中では大賞に選ばれてもいいくらい、良い作品だと思いました。

優秀賞

「秋近し」
千葉 学
20歳の方の作品ですが、びっくりさせられました。
建築界ではどちらかというと均質化と揶揄されていた風景ですが、若い人はそこに景観美を感じている。
団地がひとつの日本の原風景となっているようでとても興味深いですね。実に詩情があふれる作品です。
大西 みつぐ
結構お若いのにコメントに「ヒグラシの鳴き声」などと書かれている。俳句もやっているのかな(笑)
なかだ えり
私もこの作品には驚きました。
建物しか写っていないのに、季節感もしっかり出ていて素敵ですよね。
池邊 このみ
今年は、団地をフォトジェニックに捉えた作品が多いですね。
もともと団地そのものがフォトジェニックな形ではありますが。

優秀賞

「美空団地での暮らし」
千葉 学
美空団地というところがあるんですね。いい名前だなぁ。
大西 みつぐ
ほのぼのとした印象があっていいですね。
一見、プロかと思いました。すごくうまい。
池邊 このみ
私は団地はライフスタイルだと思っています。
そういう意味で、この作品は団地らしいスタイルを端的に表現していると思いました。「行ってらっしゃい」から始まる1日を1コマ1コマ描いたマンガのような表現も新鮮です。
生活感たっぷりで人物の表情もとてもリアル。
円満なご夫婦が目に浮かび、こちらまで幸せな気分になりました。
審査の風景01
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審査の風景04
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