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全国団地景観サミット2011 座談会

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2011年4回目が開催された『全国団地景観サミット』。入賞(※)された皆さまにお集まりいただき、座談会を開催しました。
撮影やスケッチにあたっての想い、実際に作品をつくる上でのエピソードに加え、団地や、団地とその周辺の地域との関わりについて、お考えをお話しいただきました。その一部を抜粋してご紹介します。

※ 座談会では、上位入賞者の皆さまにお集まりいただきました。

主催者挨拶

UR都市機構 技術調査室
都市再生設計チームリーダー 里見 達也
座談会01
里見
本日はお忙しい中、ご出席いただきましてありがとうございます。
全国団地景観サミットは、平成20年から毎年実施していますが、今回の応募総数は写真とスケッチを合わせて683点、複数の作品をご応募いただいた方も含め366人の方にご参加いただきました。年々作品のレベルも上がってきている中、有識者の方々に審査をしていただき、入賞作品として54作品を選定させていただきました。
UR賃貸住宅は、全国に約1,700団地あり、それぞれの団地がデザインや景観など個性を持ち、お住まいの方による夏祭りなど、季節のイベントも積極的に実施されています。
この全国団地景観サミットは、そうしたいろいろな活動や四季の美しさなどを広く知っていただくために、団地の良さを集約して発信することができないかとの考えから実施しています。2011年は、北は北海道から南は熊本県まで269団地から応募をいただきました。
60代以上のご高齢の方から、10歳以下のお子さままで年齢も幅広く、UR賃貸住宅以外にお住まいの方からの応募が60%ほどと、お住まいの方以外にも関心を持っていただいています。
本日は、その中から上位入賞者の皆さまに出席していただき、作品への想い、団地への想いなどをお聞きする機会とさせていただきたいと考えています。よろしくお願いいたします。

作品エピソード

フォトコンテスト 大賞
【 手伝いたいの 】
- 田中 由香 -

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西上尾第二(埼玉県)
田中さん
今回、「手伝いたいの」という写真でフォト大賞をいただきました。埼玉の西上尾第二団地の田中です。
この作品は、幼稚園に通っている息子とその友人の、団地の清掃作業をされている方との触れ合いの一コマを撮影したもので、画面の一番左が息子、その右の制服を着ているのがクラスメートのお友だちです。団地に暮らしていますので、いつもお疲れさまという気持ちで作業される様子を見ていますが、草刈りをしていれば「もうそんな季節だな」とか、落ち葉拾いをしていれば「秋が始まったな」とか、季節の風物詩のように感じています。
ふだんからカメラを持ち歩いているわけではないのですが、この日は持っていまして、いろいろと撮った中の一枚です。
事務局
お子さんはいつも団地で遊ばれているのですか?
田中さん
この日は、一度帰って着替えたので息子は私服ですが、幼稚園も団地内にありますし、グラウンドもあってサッカーなどもできますから、毎日、団地の中で遊んでいます。樹木も多いので、遊び回る子どもを、ママさんたちが木陰で見守るという光景もよく見られます。 自宅の玄関を出てすぐに幹線道路があるような環境だと、子どもにとっては危険ですし、私たち母親も手をつないで交通の様子を見てから外に出るという生活を強いられると思いますが、団地だと広い公園の中に住んでいるような感覚ですし、安心して目を離していられるのではないでしょうか。
田中 由香さん

フォトコンテスト 最優秀賞
【 黎明 】
- 長 吉秀 -

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四箇田(福岡県)
長さん
団地景観サミットのことを知ったのが10月でした。締め切りが12月前後だったので、まず何を撮ろうかと団地に行ってみたのですが、たまたま行った団地が外部からの立ち入りがしにくく、人物を入れて写す場合は了解を取る必要もあって、人物の撮影はあきらめました。
次に頭に浮かんだのが、福岡市の西側の四箇田団地です。夜間、佐賀県の唐津市の方から福岡に戻ってくるときに福岡側で一番明るく見える建物なのですが、そこを撮影することにしました。1週間ぐらい周囲を見て回り、団地全体を見下ろせる山の中腹まで登って夕方から夜9時ごろまで撮影した後、山を降りたところで、この作品のアングルで撮影できる場所が見つかりました。朝焼けのシーンを撮ろうと晴れた日を選んで通い、10日ほど、朝の4時、5時ごろから8時ごろまでずっと撮影したのですが、空がなかなかイメージどおりの色にならなくて苦労しました。
この作品は、その中の1日、黒い雲が湧いてきて、雨が降りそうな雰囲気の時に写したものです。団地の灯が、7時前後になると消えてしまいますので、6時半ごろに何十枚か写したうちの一枚だと思います。
事務局
この朝焼けの色は、なかなか撮れる色合いではないですよね。団地を不思議なオブジェのように写していただいた作品はあまりなかったので、すごく目をひかれました。
長さん
10月前後だとこういう色合いになる日もあるのですが、11月に入るとなかなかこの色にならなくて。家から車で20分くらいのところなので、晴れそうな日には、毎朝行って撮影していました。朝早くとか、夜遅い時間に撮影していたので、怪しい人物に見えたのか、警察の方に職務質問をされたこともありましたが、この写真が撮れてよかったと思っています。
長 吉秀さん

スケッチコンテスト 優秀賞
【 楽しや、今年も団地の盆踊り 】
- 大久保 三男 -

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小平(東京都)
大久保さん
スケッチ優秀賞をいただきました大久保です。東京の小平団地ができた昭和40年以来、今日まで四十数年住んでいます。
私が入居した当時は、敷地の隣にある遊歩道の植栽も2、3メートルくらいの高さでしたが、今は、5階建ての建物の屋上を越すほどの高さになりました。小平団地は、旧海軍経理学校の跡地ですので、桜やイチョウの並木も当時からあったものかもしれませんが、ふだんの手入れのおかげできれいな人工林になっていて、春の桜から始まって、初夏の緑の広葉樹、秋の紅葉と、四季折々の美しさを見せてくれます。
私は、もともと絵は嫌いではなかったのですが、仕事が忙しかったころは絵心を感じることもありませんでした。ここ10年ほどは仕事も暇になりましたので、孫と一緒に旅行した時にスケッチを楽しんだのをきっかけに、画材を買い揃え、団地の四季を描くようになりました。
この団地景観サミットのことは3年前に知りました。ちょうど桜を描いた作品が手元にありましたので、「団地は春爛漫、桜花を愛でる。」というタイトルで、老木が枝を横に出し、満開の桜の下で老若男女が花見をしている作品を応募させていただきました。この作品で入賞させていただきましたので、2年目は、団地の中央を通るケヤキ並木が真夏につくる緑のトンネルをテーマにした作品と、秋のイチョウ並木の作品の2点を応募し、緑のトンネルの作品「緑燃える陽春の団地内散歩道」で入賞させていただきました。 2回受賞させていただいて、3回目はあきらめていたのですが、たまたま夏休みで帰ってきていた息子に励まされてその気になりました。

ちょうど盆踊りの季節でしたので、その様子を描いてみようと色鉛筆でスケッチし、それをもとに水彩で仕上げたのが今回の応募作品です。日本舞踊のクラブに入っていらっしゃる方はさすがに身のこなしが違いますが、見よう見まねで踊っている方もいて、子どもさんから年配の方まで、非常に幅広い年代の人たちが楽しんでいましたし、踊る方の活気にひかれて見学していた方も多かったようです。
見ている方の熱気が踊る人に伝わると、いろいろな想いが表情や踊りのしぐさに出てきます。そんな表情やしぐさまで描きたいと思ったのですが、大きさも限られていたこともあって、2枚ほど描き直してから応募させていただきました。
事務局
小平団地は、盆踊りは盛んなのですか。
大久保さん
実は、高齢化の影響もあって、団地のお祭りも、ひところから比べると参加する人も少なくなってきていたのですが、去年は、恐らく東日本大震災の影響ではないかと思うのですが、地域のつながりが昔に戻ったように感じられました。久しぶりにたくさんの人が集まったように思います。
事務局
大久保さんは、別の作品も応募されていますよね。
大久保さん
はい、近くの遊具がある広場で、秋、葉がいくらか色づいてきたころに子どもが遊んでいる様子をスケッチした作品です。私は、絵を習ったことはなくて、いわゆる自己流なのですが、今回、初めて優秀賞をいただいたことを励みにして、続けていきたいと思います。
大久保 三男さん

フォトコンテスト 優秀賞
【 金木犀 】
- 岩田 二郎 -

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赤羽台(東京都)
岩田さん
東京の赤羽台団地から来た岩田二郎です。フォト優秀賞をいただきました。
3日前に89歳になったのですが、こんな賞をいただけるなんて、長生きはするものだとつくづく思っています。

この写真は、10月に金木犀の木を写したもので、管理サービス事務所に行った時にコンテストのチラシを見て、ひとつ応募してみようかという気になって応募したものです。メッセージにも書いたのですが、この金木犀は、今年25歳になった孫が2歳のころ、ウサギを抱いている女の子に出会った場所なのです。
孫がウサギを抱きたいといったら女の子がすぐに抱かせてくれて、孫も大喜びだったのですが、そんな思い出のある金木犀です。今年も10月が来れば、開花するのではないかと楽しみにしていますし、次回の全国団地景観サミットにも張り切って応募したいと思っています。スケッチも好きなものですから、どちらも応募してみたいですね。
事務局
岩田さんは、赤羽台団地には長くお住まいなのですか。
岩田さん
団地生活はもう55年になります。 最初が神奈川県横浜市の下倉田団地、次が埼玉県の南浦和団地、それから、勤めの関係で赤羽台の団地に転居しました。 赤羽台団地は非常に交通便の良いところで、勤め先にも近く気に入っています。 建替後、新しくなったヌーヴェル赤羽台に住んで5年目になりますが、非常に快適です。
事務局
添えられたメッセージにもお孫さんのエピソードが書かれていて、審査員の皆さんにも好印象だったようです。ありがとうございました。
岩田 二郎さん

フォトコンテスト 優秀賞
【 バレンタイン雪景色 】
- 大原 孝子 -

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平城右京(奈良県)
大原さん
奈良市から参りました大原と申します。このたびはフォト優秀賞をいただきまして、ありがとうございます。
発表が3月から4月とのことでしたので、ひんぱんにURのサイトを開いて確認していました。ある日、昼休みに携帯電話で開いてみたら、自分の写真が画面に出ていたので、全員の作品が載るのだと思ったのです。ところが、よく見ると優秀賞とのことだったので、興奮しながら会社の同僚に「入賞しちゃいました」と、URのサイトを見せてしまいました。
この写真は、2011年の2月に撮影したものです。奈良市内も、昔はよく雪が降ったのですが、最近はほとんど降りません。たまに降っても1、2センチ積もるだけなのですが、この日は、珍しくあたりが白くなるほど降りました。朝、娘が「いってきます」と出かけた後で携帯電話が鳴ったので、また忘れ物かと思いながら電話に出たら、「お母さん、下、見て」と。寒いのに何だろうと思いながら下を見たら、タイヤの跡が綺麗なハート型に残っているところに娘からのメッセージが書かれていて、慌てて一眼レフを手にとって、バシャバシャと撮影したものです。
娘から、いいプレゼントをもらったような気持ちになったのですが、写真そのものは誰にも見せられないと思ってお蔵入りになりかけていたところで、たまたま団地景観サミット開催の案内を見て応募してみようかなと。ただ、団地の建物が一切入っていない、人も写っていない作品ですので、応募しても右京団地とはわからないのではないかと思って…。とりあえず、「右京団地」と書いておけば部屋の窓から撮ったことはわかっていただけるかなと、のんきな感じで応募しました。
事務局
確かに団地は写っていないのですが、娘さんとのやりとりの情景が浮かびますし、何より、貴重な瞬間を写した写真だということで審査員の皆さんも注目していました。
大原さん
まさかこういう賞をいただけるとは思っていませんでしたが、入賞作品の写真集をいただきましたので、それを見せながら、親族や会社の人たちに機会あるごとに自慢しています。写真を楽しんでいるということは会社の人にも言ってあったのですが、こんな賞がもらえるほどの力があるとは誰も思っていなかったと思います。もちろん自分でも思っていませんでしたが、今回、賞をいただいたことを励みにして、またがんばって写真を撮っていこうかなという気持ちになっています。
娘に受賞の話をした時には、「お母さんはシャッターを切っただけで、つくったのは私やで。この作品、ほぼ私の作品やん」と言われたのですけど、「それをうまく切り取ったのはお母さんやで」と言って、とりあえず自分の作品にさせていただいています。このわだちをつくった車の運転手の方とそれを見つけた娘がいなければ、このシーンは切り取れなかったと思います。雪の少ない奈良市内ではあり得ないようなシーンだったので、この一瞬を切り取れたことはすごくよかったと思っています。どうもありがとうございました。
大原 孝子さん

スケッチコンテスト 最優秀賞
【 みどりあふれる我が団地 】
- 正田 芳枝 - 

小山田桜台(東京都)
正田さん
東京都町田市の小山田桜台団地に居住しています。
入居したのは、4年ほど前になりますが、それまでは建築パースの仕事をしていて、千代田区に事務所を持ち、自宅は足立区の五反野でした。大病を患ったのが入居のきっかけです。
もともと建築パースの仕事をしていて、1週間に1回くらい徹夜をしても顔には出ないと威張っていたのですが、人並みだったということかもしれません。体調が悪かったこともあって自宅を処分して転居することにし、90歳に近い母親と暮らすということと、絵を描く仕事のための部屋が欲しいということで、インターネットで探して、普通の団地より広くてリーズナブルな家賃ということを条件に選びました。 転居したときは、転居のきっかけになった病気の他に、アレルギーや喘息もあったのですが、小山田の空気が良いからか喘息は良くなりました。電動自転車を乗り回して、結構、快適に暮らしています。 転居後、以前からやりたかった水彩画を楽しむようになりました。
建築パースと違って水彩画は素人ですが、団地管理サービス事務所の方に、コンテストに出したらと言われて応募しました。連絡が来るまでに時間がかかったので、だめだったのかなと思って忘れかけていたのですが、うれしい知らせをいただきました。どうもありがとうございました。今回の入賞をきっかけに、もうちょっと個性的な表現を磨きたいと思います。
事務局
水彩は素人というお話でしたが、正田さんの作品に関しては、イラストレーターの審査員の方も、技術的にも素晴らしい作品だという評価でした。今お仕事のお話を聞いて納得できました。
正田 芳枝さん

スケッチコンテスト 優秀賞
【 子ども広場は楽しいな 】
- 藤波 喜競 -

西大和(埼玉県)
藤波さん
藤波です。私がこの絵を描いたのは79歳の時、孫や娘、息子をサプライズさせることができたらいいなという気持ちで描きました。
私は、埼玉県和光市の西大和団地に25年ほど住んでいました。今は西大和団地には長男が住み、団地で生まれ育った娘は嫁に行っていますが、昔はただの広場だったところが、壁にライオンが描いてあって、滑り台があってと大きく変わっています。その変わりようを娘に知らせることができたらサプライズになるのではないかと思って作品に仕上げました。滑り台の上に立っている女の子は娘をイメージして描いたのですが、こんなに小さくてもどこか似ている気がします。
孫にも、ママが育ったところはここだということで見せたのですが、孫は、「すげー」と今の言葉で驚いていましたし、昔は絵を描いていなかったので、娘も「えーっ こんなのよく描けたね」と、すべてサプライズに通じたということで喜んでいます。どうもありがとうございました。
事務局
藤波さんの絵はポップな印象で、実は年齢を伺うまで、これは若い人が描いた絵だと思っていたのです。
壁の絵や遊具などを意図的に見せたいという狙いで目立たせる彩色をされたのですか。
藤波さん
この壁の絵も、遊具も、もともとこういう色使いなのです。イタリアのファッションブランドみたいな感じですね。25年住んでいた私も、その変わりようにすごく驚いています。 もちろん、壁も見たままの色です。夕方だからなのか、光の関係でこうなることがあるのです。赤い色などが派手に見えてしまう。イメージとして描き入れたのは娘だけで、あとは見たままを描いています。
藤波 喜競さん

スケッチコンテスト 優秀賞
【 老いも若きも 】
- 福井 俊二 -

北坂戸(埼玉県)
福井さん
福井です。埼玉の北坂戸団地に2年ほど住んでいます。昭和51年1月結婚してすぐに、同じ東武東上線朝霞台にある朝霞浜崎団地に入居し、10年ほど住んでいました。子供が成長し家を買った後も朝霞市に住んでいました。定年後、息子に家を譲ることにし住まいを探していた時に山歩きに行く為東上線に乗り、たまたま目的駅を乗り過ごし、慌てて降りた隣の駅で見つけたのが、環境豊かな北坂戸団地でした。管理サービス事務所で話を聞くと部屋は空いているとのことでしたので、帰りに再度立ち寄って内覧し、その日のうちに入居を決めました。
以前はゴルフやドライブを趣味にしていましたが、定年後はあまりお金のかかることも難しい。昔から絵は好きでしたので、描いてみようかと思っていた矢先、近所で絵が上手な人にめぐり会い水彩画を始めました。今は、もっぱら近所を歩きながら絵を描いています。そこで描いた一枚がスケッチ優秀賞をいただきました。北坂戸団地は駅からも近いし、買い物にも便利だし、利便性抜群で年をとっても快適に暮らしていけるのではないかと思っています。
事務局
福井さんの絵は日常の風景ですが、登場人物が前に進んでいく力強さを、審査員の方々は評価されていました。
福井さん
私は、風景に人物などの点景が入った動きのある明るいモチーフが好きです。今はペン画に水彩を載せて仕上げています。
福井 俊二さん

フォトコンテスト 優秀賞
【 団地の盛春(せいしゅん)】
- 三原 有次 -

立川一番町東(東京都)
三原さん
今回いただいたフォト優秀賞は、初めての大きな賞です。ありがとうございます。
私は、囲碁やゴルフ、写真と趣味が広いのですが、写真では、団地の朝、昼、夕の風景、折々の花、鳥、樹木を撮り続けていますし、今住んでいる立川市の立川一番町東団地から自転車で10分ほどのところにある国営の昭和記念公園にも、四季折々の花を撮影するために通っています。一番町東団地の近くには、富士山の撮影ポイントもあります。最近は、富士山もちょっと食傷ぎみではあるのですが、ずっと撮り続けていると光の微妙な変化や雲などの変化も楽しめます。
今はデジカメですから、いくら撮っても現像代がかかりません。続けてシャッターを切っていると、一刻一刻の雲の流れも撮影できて興味深い被写体です。 今回の写真は、団地の中央の直径が4、50メートルの円形の広場に咲く桜を写したものです。毎年桜の時季に撮影しているのですが、この作品は、南仏の風景を連想できるような気がしています。白い壁、右側の3階建ての建物の背景にあるケヤキの手前は芽吹いていて、後ろはまだ芽を出していない。この情景を、私は、南仏のレンガ色の屋根になぞらえて撮影しました。
昨年の7月ごろ、団地の集会場に飾らせてもらったのですが、その後、思いたって応募しました。サミットの過去の入賞作品は、団地と人とのふれあいが感じられる作品が多いのですが、私は風景写真の場合は人物を配するのを避けるので、これはだめだろうと思っていたのですが、思いがけず入賞できました。
画面の右上の白い花は山桜、左のピンクはソメイヨシノ、中央の大木がケヤキです。画面左の艶やかなソメイヨシノと対比する素朴な山桜がポイントだったのですが、広場の整備の際に伐採されてしまいました。植栽の手入れの際には、景観にも配慮していただければと思っています。
事務局
審査では、人の触れ合いだけでなく、季節の美しさなども評価しています。今回の三原さんの作品は、さわやかな色合いで季節の一瞬をとらえていて美しいとの評価でした。
三原さん
ありがとうございます。中学時代にカメラ雑誌「アサヒカメラ」に応募したのが最初で、2回目が一昨年の団地景観サミット、3回目の今回は、賞をいただきました。まさに三度目の正直というところですね。
三原 有次さん

キッズ・ジュニア賞
【 花と緑に囲まれた住宅 】
- 安間 隼斗 -

拡大レンズ
白島北町(広島県)

キッズ・ジュニア賞
【 団地と川と船 】
- 安間 伊吹 -

拡大レンズ
白島北町(広島県)
事務局
キッズ・ジュニア賞はご兄弟での受賞となりました。ご両親からお話しを伺いたいと思います。
安間さん
広島から来ました安間です。子どもたちは、この座談会に来るために新幹線に乗れるというだけで大喜びで、東京駅でも楽しそうにおしゃべりしていたのですが、この会場に着いたとたんにかたまってしまいましたので、私から応募の経緯などを話させてもらいます。
今回は、息子2人とも受賞させていただきましたが、2人とも絵を描くことが好きで、いろいろな絵画コンクールに応募する中で、こちらの団地景観サミットを知って応募しました。
私たち家族は団地に住んでいないのですが、よく広島城に行くことがあります。その広島城の天守閣の一番上から、すぐ裏手に見える白島北町団地を表から見た絵が兄の隼人の作品、裏から見たのが弟の伊吹の作品です。天守閣から見下ろしたときにすごくきれい見える団地なので、この団地を描いてみようかと思ったようです。伊吹は、とにかく乗り物が好きで、「団地の裏には船もあるよ」と言ったら大喜びで描いていました。ただ、本当は1艘か2艘しかなかった船の数が、描くうちにだんだん増えていって、「ちょっと、それ多すぎるんじゃない」という感じになりましたが…。
2人とも、この座談会のような場所ではじっとしていられないようなのですが、絵を描き始めると集中して描いています。弟のほうは、私も知らないような乗り物を細かく描いていますし、兄のほうは数字が好きなので、時計だったり、駅だったりを描いていることが多いです。団地を描くことはなかなかないのですが、ふだん好きなものばかり描いているとどうしても題材が偏ってしまいます。
こういうコンテストがあると、いろいろな視点で絵を描くことができるし、そこで発見もありますので、コンテストに応募するのもいいことなのじゃないかなと思っています。
今回の審査員の皆さんの講評がURのサイトに載っていましたが、伊吹の作品は、人はいないけど灯っている明かりから人が住んでいる生活の感じが伝わってくるという評価をしてもらっています。私は、今までは子どもの絵をそういうふうに評価できなかったのですが、そんな視点から褒めていただいたことで、子どもに伝えることができました。子どもも喜んでくれましたので、応募してよかったなと思っています。
事務局
ご兄弟とも色鮮やかな作品で注目を集めていました。満場一致で選ばれていたようです。絵を描くのはいつも外ですか。
安間さん
外での写生大会もありますが、家で少しずつ描いていることが多いですね。私は、絵は描けないので、マネージャーのように子どもが描いたものを応募するだけ、次はこのコンテストだからがんばってという感じです。
最初は、色合いや構図のアドバイスをすることもあったのですが、特に弟の伊吹はがんこで自分の思うようにしかしないので、今は自分が描きたいように描かせています。
安間 隼斗くん
安間 伊吹くん 

座談会

事務局
ここからは、団地に住んで感じていらっしゃること、お住まいになっていない皆さんにとって団地はどのように見えていらっしゃるのかということなど、団地についてお話を伺わせていただければと思います。
まずは団地にお住まいの方に、どういうところが良いと思われているのかをお聞かせいただければと思います。

受賞者の団地への想い ~団地が核となった地域の絆~

事務局
田中さんは、お子さんを団地内で遊ばせることも多いかと思いますが、団地の環境についてどう思われますか。
田中さん
いつも団地内で遊ばせていますが、団地住民が高齢化しているという話も聞きますし、実際に砂場が何カ所か埋め立てられてベンチに変わっているのを見ると、遊ぶ子どもがいないのだなということがわかります。砂があると不衛生という理由もあるようですが、3カ所ほど、埋め立てられてベンチに変わりました。
座談会02
事務局
お子さんは、クラスメートと一緒に遊ぶことが多いのでしょうか。
田中さん
幼稚園だけでは全然遊び足りないようで、幼稚園が終わってから、そのまま一緒に公園へ、という毎日ですね。
事務局
安間さんは、お住まいの近くに団地はありますか?
安間さん
すぐ近くに小さな団地があって、周辺に公園が4つあります。小学生が放課後になるとそこに集って遊んでいますが、家の方もそこに行けば自分の子がいるので安心なようです。公園では、お祭りもありますし、広島市でも田舎のほうなので、地域のつながりはまだ残っていますね。
座談会03
事務局
お祭りといえば、大久保さんは、かなり長く住んでいらっしゃるようですが、お祭りの運営にかかわられたことはありますか。
大久保さん
1,700戸もの見知らぬ人が集まりますので、入居した最初の年に自治会を立ち上げようと走り回りました。仕事の面でも少し余裕があったので、PTAと自治会、両方の役員を務めましたが、そのころはまだお祭りはできませんでした。2年目は、仕事の関係で役員は辞退しましたので、お祭りの運営に直接携わったことはありません。あくまでも住民の一人として参加していますが、子どもや孫たちは夏祭りを楽しんできました。今は、孫たちも成人して別の場所に住んでいますので祭りに来ることもありませんが、太鼓の音を聞くと、今年もみんながんばってやっているなと思います。
事務局
お孫さんが幼いころは、参加されていたのですか。
大久保さん
ええ。子どものころは、金魚すくいとか、盆踊りなどを楽しんでいました。
事務局
先ほど、震災以降、お祭りに参加する人が増えたのではないかとおっしゃっていましたが、団地生活の共有感のようなものが見直されて、深まったという印象でしょうか。
大久保さん
確かに参加者は多かったですね。団地の人だけでなく、周辺住民の方も心待ちにして集まってくれたのだろうと思います。昨年は、踊り手も多くて、その場の雰囲気に誘われて参加するような、自然な雰囲気で盛り上がったという印象でした。震災で故郷を失った東北の人に思いを寄せて、それぞれの人が地域の絆を思い直していたのだと思います。
座談会04
長さん
地域との関わりということとは少し違うかもしれませんが、今お話しにあったお祭りにしても、いつ行われるのかをどこで調べたらいいのか、団地外に住んでいるとそうしたことがわからないんです。また、団地の中に入って撮影するのも難しいんですよね。許可をとるにはどうしたらいいのか。とくに子どもを撮ろうとすると必ず団地の方に見咎められますし…。
事務局
ある意味では、そういう力が働くことが、防犯力にもなっているのだと思います。また、人物を撮る際の一般的なマナーではありますが、本コンテストでは、被写体の方々の承諾を得てから撮影していただくようお願いしています。
岩田さんは、先ほど、赤羽台団地の建て替えられたほうにお住まいとおっしゃっていましたが、著名な建築家の方が設計に携わるなどして、今は非常にモダンな建物になっていますよね。去年も建替後の街区でお祭りが行われていましたが、ご覧になりましたか。
岩田さん
ありましたね。今年も団地祭がありますが、幹事の方たちは、昨年自粛した分も盛大にやろうと考えているようです。
座談会05
事務局
前回の団地景観サミットでも、お祭りの写真は何点か応募がありました。赤羽台団地のものも写真集に掲載されています。
田中さん
おしゃれなところですね。うらやましい。
事務局
正田さんがお住まいの小山田桜台団地には、調整池の公園や遺跡公園など団地内に大きな公園が何カ所もあって、都心とはまた違った雰囲気なのではないですか。
正田さん
小山田桜台団地は、立地が中途半端というか、街づくりも何となくすっきりしなくて最初はあまり気に入らなかったのですが、だんだん公園団地の良さがわかってきました。植栽が多くて、2階建てのテラスハウス住宅のあたりや、団地の横の土手を散歩していると昼間でも怖いくらいの大きな木があって…。病気が快方に向かったのも、そういう自然がよかったのではないかと思っています。友だちが来た時も、すごく空気が良くて東京とは思えないと言っていました。
三原さん
気になっているのは、立川一番町東団地に空き家がいくつかあることなのですが、空き家を埋める工夫として、URはどう考えているのでしょうか。ホームページを見ても、間取り例などがあるだけで、魅力が伝えきれていないように思います。私自身、今住んでいる団地はすばらしいと思っていますので、空き家にしておくのはもったいないと思うのです。
座談会06
事務局
地区によって取組み方は違いますが、いろいろな工夫を私どももしています。室内のグレードアップをしたり、各団地の魅力や特徴をわかりやすくまとめ、広くお伝えするようなPRの取組みも始めています。
団地景観サミットにご応募いただいた作品は、いろいろなところでPRにも使わせていただいていますので、三原さんの作品もPRの場で活用させていただくかもしれません。この団地景観サミットも、団地の良さを知っていただく一つの機会になってほしいと考えています。
福井さん
北坂戸団地では、管理サービス事務所で私の作品を拡大して掲示板に貼ってくださっています。実際、管理サービス事務所や団地内のクリーニング店さんなどから、よく描いてくれましたと感謝の声も…。団地景観サミットの効果は十分出ているのではないでしょうか。
大原さん
実は、この写真集を会社で見せたら、「これはどこに置いてあるの?」と言われたんです。「こんなん、そこらにあったらいいのになあ」とか言われましたけど、どこに置いてあるのかもわからない。前回までの入賞作品集は、今日初めて拝見したのですが、もう少し目に付く場所で配布していただくといいのかもしれませんね。
こういう写真集を見るまでは、日本にこんなにURの団地があるのも知りませんでしたし、写真やスケッチが、駅などにも貼りだされると効果があるのではないかと思います。
こういう写真集を配るのは大変かもしれませんが、住んでいる人の実際の生活感が伝えられるといいですよね。
私が住んでいる団地でも、駅に近いところは結構埋まっていて、遠いところは埋まりが悪いという感じですが、逆に静かだという魅力もあります。そんなふうに感じている人たちもいるので、皆がどういう思いで住んでいるかということがわかれば、魅力あるURになるかなと思います。 全国版ではなくていいから、各都道府県別に、住んでいる人の声が聞こえるようにしていただけたらと思います。
座談会07
事務局
この団地景観サミットの作品集については、冊数は限られていますが、多くの皆様に見ていただければと思い、営業センターや管理サービス事務所に置いています。今回いただいたご意見を参考に、団地の魅力を広くお伝えできるツールとして、今後も活用していきたいと思います。

受賞者の団地への想い ~変わっていく団地~

藤波さん
埼玉県鶴ヶ島の松ヶ丘団地には、バルコニー側にエレベーターが付いている棟があるのですが、あれを見て、みんな驚いています。ベランダ側にエレベーターがあるって、ちょっと違う景色ですよね。
座談会08
事務局
中層階段室型住棟へのエレベーター設置については、階段室の踊り場に設置する場合が多いのですが、その場合、住戸に入るためには半階分の階段の昇り降りが残ってしまいます。バルコニー側に付ければ、ほぼ段差がない状態で家に入れるということで実施したものです。
藤波さん
一部の住棟でペットが飼えるようになっていたこともサプライズでした。砂場の周りは、犬や猫が入れないように柵で囲って、子どもは柵の中に入って遊ぶようになっているのです。私が入居を申し込んだのが昭和41年、以降の団地の変わりように、今、驚いています。 団地というのは、子どもが生まれて育つ場所、常に子どもの声がしているという印象が強い。だから、子どもがいる人にどんどん入居してもらえればいいと感じます。今、公園になっているところも、娘が育ったころは遊具もないただの広場でした。でも、当時は子どもがたくさんいて子ども同士でいろんなことを考えて遊ぶので、遊具がなくても遊べたんですよね。
正田さん
藤波さんの絵は、外壁に壁画がありますが、小山田桜台団地の壁面は、白かベージュ。日本人の全体の好みかもしれないですが、個性を殺しているように感じます。ヨーロッパのように、なぜ壁に色をつけないのか不思議です。
座談会09
事務局
一時期、団地の環境向上を意図して、壁面に絵を描いたこともあったのですが、賛否両論ありました。最近は、塗装の色合いを工夫してイメージアップに取り組んでいます。建物や屋外環境など、団地の改修を順次実施していますが、育んできた団地の良さを活かしつつ、魅力をさらに向上させるため、様々な検討を進めているところです。

事務局
本日は、お忙しい中をお越しいただき、作品にまつわるいろいろなお話をお聞かせいただきありがとうございました。
また、本日いただいたURに対するご意見を参考に、皆様が安心して住み続けられるような団地づくりに、今度も取り組んでいきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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