街に、ルネッサンス UR都市機構

全国団地景観サミット2010 審査の風景

審査の風景 トップ

地域や自然との共生、世代を超えた見守りの関係、豊かなコミュニティ…。UR賃貸住宅には、そこに住まう人の笑顔が息づいています。そんな感動を、写真やスケッチ、さらにはそこに添えられたメッセージに託して応募された作品は、そのどれもが生き生きとした生活や季節感に溢れる風景を、応募者それぞれの感性で写し取ったものなのかもしれません。
そんな作品を、そのクオリティだけでなく、タイトルや添えられたメッセージに込められた応募者の想いまで総合的に評価し、審査する「団地景観フォト&スケッチコンテスト」。フォトコンテストから「団地×コミュニティ」「団地×ランドスケープ」の2部門、そしてスケッチコンテストの受賞作品を、審査員の皆さんはどのように評価されたのか。審査後に行われた講評座談会から、それぞれの作品の魅力を探ります。

コメント

フォトコンテスト
大賞

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「ふるさと」
情感あふれる風物語であり、そこがふるさとであるという、明確なメッセージ。
大西 みつぐ
大賞作品の「ふるさと」は、団地のお祭りの縁日の明かりをメインにして撮っていますから、暗くて見えないところもあるんですけど、むしろ目で見た印象をそのまま写真にしているようで好感が持てました。
池邊 このみ
夏祭りをテーマにした作品のなかでは少し地味なのですが、子供たちが楽しんでいて、それを暖かく見守る大人たちの顔がある。それに対して「ふるさと」という名前を付けていることに、大賞たる価値があるんじゃないでしょうか。
大西 みつぐ
情感あふれる夏の夜の風物詩、団地の風物詩として楽しめるとともに、そこがふるさとであるという作者の明確なメッセージを伝えている作品ですよね。
なかだ えり
実は、最初に見た時に昭和の写真かなと思うほど、現代とは違うなと感じたんです。地域のコミュニティが希薄になっているなかで、みんなが集まる場所がある、それが、団地のなかで脈々と続いてる。おもしろいな、いいことだなと感じました。
藤本 壮介
大勢がいる全体の雰囲気と、顔が見える部分の親密さみたいなものの両方がうまく写り込んでいると思います。昭和というお話がありましたけど、懐かしい感じでもあるし、リアルでもある。それをドラマチックに映し出していて、まさに大賞にふさわしいんじゃないでしょうか。
審査の風景01
審査の風景02
審査の風景03
審査の風景04

スケッチコンテスト
大賞

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「初夏の昼下り」
古い団地を、大正モダンのように描いていて、日本の風景ではないような、新鮮さがある。
大西 みつぐ
「初夏の昼下り」は、作者を中心とした時間軸が大河ドラマのように読み取れて、色彩も含めて印象に残る作品だったと思います。一枚の絵の中にご自分が登場するなど、新しい視点で団地の営みを絵にしていますよね。
池邊 このみ
古い団地の持つ「らしさ」を、光の陰影が表していて、古いけれど、そこに明るさが漂っている。団地らしい生活風景や娘さんとのリアリティのある関係にも、団地が育んできた歴史が感じられます。
なかだ えり
若者のような、はつらつとした感じもありますよね。日常を描きながら、作者が自分なりに世代をつないでいる様子が、すごくいいなと思えます。
藤本 壮介
日本の風景ではないような、新鮮さがありますね。大正モダンのように描いていて…。登場人物も少し日本人離れした印象で、それがポジティブな明るさになっている。そのポジティブさのなかで世代が受け継がれているというのは、すごくいいなと思います。
なかだ えり
おだやかだけど明るい空気感があって、絵の技術としても非常にこなれているように思います。いつも楽しくスケッチをしている、ふだんの様子がにじみ出るような作品ですね。

フォトコンテスト
「団地×コミュニティ」部門
最優秀賞

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「団地の子供たち」
コミュニティの原点としての団地 その空間が支える。明るく自然な笑顔
藤本 壮介
受賞作品のなかでは、「団地の子供たち」が好きです。いかにも自分たちの場所だという感じで隙間に挟まって遊んでる。子供のたくましさが見えてすごくいいなと思います。「楽しいひととき」もそうなんですが、子供たちが団地という不思議な空間に、新しい命を吹き込んでいるような気がします。
大西 みつぐ
階段って、コミュニティの原点みたいな場所で、そこで子供たちが笑顔をうかべている。自然な笑顔をこちらに向けていて、それがメッセージとして伝わるんですね。
藤本 壮介
「ありがとう」という、ちょっとノスタルジックな写真ですが、時間が積み重ねられているということの驚きが美しい写真になっていて、これも好きな写真ですね。時間の蓄積という点では、「並木道」にも驚きました。団地の植栽が日光の杉並木みたいになっている。時間の蓄積がダイレクトに表現されていて不思議な写真です。
池邊 このみ
植栽を撮影した作品では、「昔よき時代」も気になりました。最近の子供たちは、木に触れることも少ないと思うんですけど、この子供たちは親しみを持って木に触れている。作者はそこによき時代を見ているんだと思いますが、木に登ることができて、それを危なくないようにみんなが見守っている。そういう団地の良さが伝わってくる写真だと思います。
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【優秀賞】
「楽しいひととき」
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【優秀賞】
「ありがとう」
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【審査員賞】
「並木道」
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【審査員賞】
「昔よき時代」

スケッチコンテスト
「団地×ランドスケープ」部門

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【最優秀賞】
「春の嵐の後で」
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【審査員賞】
「大きなみどりのパラソル」
巨大だけれど、そこには生活がある。独特な風景をつくりだす団地という不思議な集合体。
大西 みつぐ
「大きなみどりのパラソル」という写真は、ちょっと俯瞰したところからパースペクティブを縦位置で切り取っていくという写真の定型的な仕事がなされていて、そのなかに、そこに映っている木が大きく育って多くの人を集めるだろうという希望が見えてくる。明るい写真だなと思いました。
池邊 このみ
「大きなみどりのパラソル」が撮影された団地「アルビス緑丘」は、なるべく五月山が見えるように建物を建てようという五月山条例がある地域に建てられていますから、この団地も五月山の景観に配慮してつくられたのだと思います。
「春の嵐の後で」は、早春の桜ですよね。雲間からの光が桜の幽玄な世界とマッチして、左側に団地があって緑が広がる構図も美しい。「ハンティング・ハットの家」は、建物の建て方やまっすぐな道路など、北海道の地域性をイメージさせるような写真ですね。うっすらと積もった雪が何もかも美しく見せている。屋根が赤い帽子のように見えて、メルヘンチックなイメージで…。
藤本 壮介
僕は北海道の出身なんですが、僕の知ってる北海道よりも北海道らしい。「春の嵐の後で」もそうなんですが、団地って、不思議な集合体ですよね。巨大だけれど、そこには生活があって、それが独特な風景をつくりだしていますよね。
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【優秀賞】
「ハンティング・ハットの家」
若いの団地に対しての想い。新鮮さ、空間の美しさが、伝わってくる。

スケッチコンテスト

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【優秀賞】
「永い年月おつかれ様でした(桜より)」
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【審査員賞】
「夕暮れの団地列車」
藤本 壮介
スケッチコンテストでは、「永い年月おつかれ様でした(桜より)」という作品が気に入っているんです。生命力に溢れていて、何とも大胆な作品ですよね。お話としてはちょっと寂しい感じなんですが…。
なかだ えり
「夕暮れの団地列車」も印象に残ります。建物や風景を何かにたとえられるのも、団地だからこそなのかなという気がします。
池邊 このみ
長大な住棟が迫ってくる感じを、列車という印象で捉えているのがおもしろいですね。今回応募された皆さんは、比較的若い方が多くて、「聖夜に…。」もそうですけど、若い人が、団地に対して新鮮な空間の美しさを感じていることが分かるような作品が多かったように思います。
大西 みつぐ
「聖夜に…。」は、ロミオとジュリエットのように男の子と女の子がベランダ越しに向かい合って、プレゼントを持っている。物語性が非常に濃厚で、誰もが分かりやすいイメージを構成しています。雪、クリスマスと、何となく切なくなってくるイメージなんですけど、明るくさらっと、いまの若い人の思いを伝えているような気がします。
【優秀賞】
「聖夜に・・・。」

キッズ作品

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【キッズ大賞】
「セミ団地」
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【キッズ賞】
「レンタマ公園」
【団地×ランドスケープ部門 優秀賞】
「夕やけぐも」
近づきたい、手で触りたい。そんな子供たちの感覚に今まで見えていなかったものが隠されている。
池邊 このみ
大賞作品の「セミ団地」は、ありえないくらいセミがとまっている木のリアルさと、団地の各階が違う色という子供の目で見た印象が共存している。子供らしい想像力ですよね。
「レンタマ公園」もそうですけど、子供たちって、よく見ていますよね。公園にできた新しい遊具にレンコンのような穴があいてるから、レンタマって名前をつけましたって…。こちらも、すごく楽しい作品だと思います。
なかだ えり
「夕やけぐも」は、団地は少ししか写っていなくて、ほとんどが空の写真なんですが、雲のほんわかした丸さが、その下に緑の木々があったり、幸せな家族がいるんじゃないかと、見えない部分まで想像させてくれて…。想像力をかき立てられる写真だと思いました。
藤本 壮介
大賞の「セミ団地」や入選した作品以外にも、子供の目線で団地の風景とか団地で起こっていることを捉えた作品はいっぱいあるはずですから、ご両親も、「これ出していいのかしら」とは考えずにどんどん応募していただくと、本当に違った視点が見えてきますよね。
大西 みつぐ
そのものに近づきたい、手で触りたいという感覚で、難しいセオリーを無視して、対象に向かっていく。そこに僕らに見えていなかったものが隠されている気がします。

審査を終えて

記憶を継承することが、全国団地景観サミットの意義。作品から見出されるさまざまな団地の表情
大西 みつぐ
最初に感じたのは、どの写真もしっかりと撮っているなということです。じっくり一枚ずつ見ていくと、そこからいろいろなものが見えてくる。見れば見るほどよく見えてくる作品が多かったという印象があります。
藤本 壮介
当たり前といえば当たり前なのかもしれませんけど、団地にはちゃんとした生活の場がつくられていて、それが時間を経て熟成していって、また新しい子供たちが入ってきて…。そういうことが繰り返されている事を目の当たりにできて、非常におもしろかったですね。
なかだ えり
刺激的でしたね。この審査は。
大西 みつぐ
絵や写真とメッセージが一体になっていて、決して映像だけではないし、言葉だけでもない。だから、メッセージの深い想いに気付くと、写真をよく見るようになってしまう。写真を見ながら、語りかけてくるものを吸収していかなければならない。そういう意味では、慎重に審査せざるを得なかったですね。
池邊 このみ
応募作品を見てみると、団地ならではの多面的な人との関係性というのが、すごく現れてきますよね。このサミットで、団地の多面的な価値をより多くの方に伝えていただきたいなと思います。
なかだ えり
人が映っていない作品も、メッセージと併せて読むと、ちゃんとコミュニティがあって、生き生きとした人々の生活があるんだな、というのが伝わってきたので…。プラス思考になる体験でした。
大西 みつぐ
審査しながら、ものをつくっていく人たちの原点を僕らが共有していく。たぶんそれは、この絵や写真を見てくださった方が、絵を描くのは楽しいじゃないか、シャッターを押すのは楽しいじゃないかという想いにつながると同時に、それが、自分たちの感動を見直し、これからの暮らしを支えていくための下地になっていくんじゃないかなと思います。だから、このサミットも、継続すると意義深い。記憶から記録へじゃないですけど、本当にいいものが残っていくんだと思います。
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