街に、ルネッサンス UR都市機構

全国団地景観サミット2009 座談会

『全国団地景観サミット2009 UR賃貸住宅 「団地景観フォトコンテスト」』に入賞(※1)された方々にお集まりいただき、作品撮影時のエピソードや作品に込めた想い、サミットに参加した感想、団地に対する想い等についてお話いただきました。

※1 座談会では、最優秀賞、各部門の金賞・銀賞受賞者にお集まりいただきました。

主催者挨拶

池邊このみ氏
池邊
本日はお忙しい中、ご出席ありがとうございます。UR都市機構都市デザインチームの池邊(※2)と申します。

まず、今回のコンテストにご参加いただいたことに感謝したいと思います。このコンテストには、全国団地景観サミットという名前が付けられています。サミットというと誤解される方もいらっしゃるかと思いますが、「団地景観サミット」は、皆さんが撮られた写真が、それぞれの団地を代表する写真となり、団地の代表として集まってくることを意図して名付けられたもので、団地には居住者の方の想いがあり、その周辺に暮らす地域の方には、居住者の方とはまた違った団地の見方がある。そんな団地の景観についての皆さんの想いを、より多くの方にも知っていただきたいという考えから始めさせていただきました。単に優劣を競うコンテストではなく、皆さんに集まっていただくということですね。

写真コンテストは、2008年(平成20年)に初めて開催したのですが、2回目の今回は2008年の倍近い方にご応募いただき、前回なら入選しているようないい写真、いいメッセージがいっぱい集まり、入選作品を決めるのが、とても大変でした。

このコンテストでは、従来、授賞式は開催せず、皆さんに賞金や入選作品集をお送りさせていただいていましたが、今回は、皆さんの団地への想いを直接伺わせていただきたいと思い、入賞者の皆さんにお集まりいただく機会を設けました。どうぞよろしくお願いいたします。

※2 任期満了にて、2010(H22)年3月末に退任いたしました

作品エピソード

最優秀賞

※原則として、受賞作品は1作品ですが、審査会による検討の結果、写真やメッセージの内容、
応募者の関係性を勘案し、2枚を組写真の一作品として、最優秀賞作品とさせて頂きました。

【 生まれ育った場所で 】
- 武川 友布貴 -

【 寿 】
- 佐藤 綾子 -

【 生まれ育った場所で 】
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【 寿 】
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(両作品ともグリーンヒルズ東久留米(東京都))
(組写真として受賞)

佐藤さん
東京のUR賃貸住宅「グリーンヒルズ東久留米」から来ました。
コンテストに応募したのは、エレベーターの前の掲示板に貼ってあったチラシを見た娘に誘われたのがきっかけです。
武川さん
佐藤の娘です。エレベーターの前に貼ってあったチラシがきっかけです。去年のお正月に父が倒れ、仕事を休んで介護していたのですが、自宅で看ていたので、車いすを押して散歩に出る機会が多かったんです。春の桜の時季など、写真に撮ったらいいだろうなと思っている時にチラシを見たので…。
実は、父を撮ろうと思っていたのですが、うまくいかなくて、その後、コンテストのことはすっかり忘れていたんですが、自分の結婚式の写真を見た時に、ちょうどいいかなと思う一枚があったので応募したんです。
結婚する事が決まり、父に「結婚するから」といおうとした日に倒れちゃったんです。結婚式も挙げようかどうしようかと悩みましたが、相手の人に「やっぱり結婚式はしておいた方がいいよ」といわれたこともあって挙げました。父もまだ家にいたので、介護の方に頼めば、集会所だったらできると思ったんです。団地の管理サービス事務所の方も、珍しいことなのでとすごく親切に対応してくださいました。
ところが、結婚式の前に父が危篤状態になってしまって…。父は参加できなかったんです。結婚式とお葬式が同じ日になっちゃったらどうしようという感じですよね。結局、父が危篤だということをみんな知っている中で結婚式に来てくれて…。うれしいんだか悲しいんだか複雑でした。結婚式の後、1カ月を過ぎた頃に父が亡くなり、呆然としていた時に入選の連絡をいただいたんです。応募したこともすっかり忘れていたんですが、改めてうれしいことがあったということで、とてもよかったです。
池邊
我々職員としても、佐藤さんと武川さんのどちらの写真を最優秀賞にするか、後ろ姿もいいけど、お餅をついている瞬間もすごくいいし、1枚選ぶとしたらどちらかというところで悩みました。最終的には、親子でいらっしゃるということが分りましたので、お二人に最優秀賞を、ということにさせていただきましたが、団地で結婚式を挙げていただけることは、職員冥利に尽きるということで、本当に感謝しています。
佐藤さん
そうですね。団地での結婚式だったからか、ご近所の方たちがたくさん参加してくれたのは、すごくうれしかったです。みんな花を1本ずつ持って、おめでとう、おめでとうって来てくれて、向かい側の窓からも見てくれる人がいたりして…。
武川さん
雨が続いていたのに、あの日は、晴れで…。
佐藤さん
そうでした。いいお天気で。
武川さん
実は、集会所には入りきれないので、親戚と近い友だちだけに参加してもらうことにして、ご近所の方は呼んでなかったんです。ところが、外でお餅つきをやったら、わらわらって人が…。皆さんに来ていただいてうれしかったですね。
佐藤さん
私が高齢になってからこの子を産んだもので、周りの人も出産の時から喜んでくれました。ですから、結婚式を集会所で挙げると聞いた時にも、大きくなったわね、元気そうねという感じで、自然に集まってくれたんだと思います。この子は、東久留米の団地で、みんなに見守られて生まれ育ったので…。団地にずっといたからこそかなと思って喜んでいます。
こんなすばらしい賞をいただいたのは、亡くなった主人の計らいじゃないかなとも思います。結婚式が終わった時、すぐに、近所の人がプリントしてくれた写真を持って、ドレスのままの娘といっしょに病院の主人のところへ飛んで行きました。主人は、結婚式から1カ月ちょっとで亡くなったんですが、全部見届けて逝ったのかなとも思います。亡くなってすごく悲しいんですけど、主人も全うして逝ったかなと思ってホッとしている部分もありますね。
左・佐藤 綾子さん 右・武川 友布貴さん
武川さん
団地なので、結婚式の時もお葬式の時も次から次へと近所の家からおかずが届くんです。結婚式の前の日で大変でしょう、病院に通っていて大変でしょうって。
佐藤さん
東久留米団地ができてから50年ほど、できた時から住んでいますが、そういうところは、団地に住んでよかったなと感じる部分ですね。
池邊
実は、前回のコンテストでは、緑の写真の応募はいっぱいあったんですけど、人がいる写真が少なかったんです。そんな反省もありまして、人がいる作品が集まるのではないかと、コミュニティ部門をつくったんです。夏祭りの写真やコミュニティの行事の写真などいろいろあったんですけど、この2つの作品はダントツでした。今お話のあった団地の皆さんの絆というか、助け合っていらっしゃることが感じられる作品だったからかもしれませんね。
佐藤さん
どこの団地もそうでしょうけど、東久留米も住んでいる人が高齢化していて、子どもを見かけることもないし、結婚式なんて本当に久しぶりって感じで皆さんに喜んでもらって。集会所しか主人を連れて参加できる場所がないということで、URの方々のお世話になって決めたんですけど、それが功を奏したというか、皆さんに祝っていただいて、しかもその結果、こんなすばらしい賞をいただいて…。ありがとうございます。
座談会風景01

団地×建物部門  金賞

【 雪後の団地 】
- 臼井 正一 -

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雪後の団地 (入間駅前プラザ)
臼井さん
私は埼玉県の入間駅前プラザに住んでいます。駅前プラザには、賃貸部分と分譲部分があって、私は分譲の方に住んでいるんですが、賃貸と分譲と一緒に夏祭りをやったり消火訓練をやったりと、一体感があるんです。
賃貸の方にも写真をやっている友だちがいて、写真の好きなメンバーが集まって、このコンテストに誰が応募するかということでジャンケンをしました。負けた人が応募するんじゃ落選するからと、勝った人が応募することになって、たまたま私ともう一人が勝ち、締め切りぎりぎりに応募したんです。結果、幸いなことに金賞をいただきまして、団地の中で少し自慢話ができるようになりました。
撮影したのは、ちょうど雪が降った翌朝です。よい天気になって団地全体に光が入って…。団地の裏が基地なんですが、今は使われていなくて林になっているんですね。そこに雪が積もっていて、すごくいい感じだったんです。時間的にもうちょっと遅いと、ベランダに洗濯物が並んでしまうんですが、その前の時間帯ということで、ちょうどよいシャッターチャンスをつかめました。
池邊
今回はカレンダー賞も設定していましたので、臼井さんの作品のような雪景色をはじめ、四季折々の写真が集まったのは、すごくありがたいと思います。
臼井さん
カレンダーも拝見しましたが、カレンダー賞の作品は、ほとんど東京で撮影されていますね。地方の人の作品も載せると張り合いが出るんじゃないですか。全体的に、応募者も東京が多いようですけど…。
池邊
今回のコンテストの作品をまとめた作品集に、都道府県別の応募団地数を載せていますが、関東からの応募が多くて、結果的にカレンダー賞はほとんどが関東の団地を撮影した作品になってしまいました。今日も、来ていただける方だけにお集まりいただいているということもありますが、入選作の中にも関東からの応募がやや多いという印象です。
私どもとしては、全国の1,800団地の作品が揃うのが夢ということで、各団地から写真が集まってほしいなという想いがあるんです。今回、県内にいくつも団地があるのに応募者がゼロの県もありましたが、都道府県別の情報などを載せて、うちの県の作品がないね、うちの団地で応募したら入選するんじゃないかということで、チャレンジしていただきたいと思っています。
臼井 正一さん

団地×コミュニティ部門  金賞
【 団地で育った幼馴染 】
- 平賀 輝明 -

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神代(東京都)
平賀さん
はじめまして。東京都の神代団地で撮影した作品で応募した平賀です。実家が神代団地にあって、今も同級生の友人が何人か住んでいます。そんな友人たちと、同窓会の帰り道に一緒に歩いている時に撮った写真です。深夜、車が全然通らない道路を歩いていたら、道の真ん中にセミがひっくり返っていて、死んでいると思った友人が触ったらバタバタッと動いたりして…。その場面がちょうどフレームに納まりました。

撮った後、団地の掲示板で今回のフォトコンテストの募集を見た友人が、出してみたらと勧めてくれたこともあって応募させてもらいましたが、撮ってからコンテストのことを知ったくらいなので、撮影の時もあまり力が入っていなかったのが、かえってよかったのかなと思います。入選の通知も、応募したことを忘れたころに届いたので、すごくびっくりしたんですが…。
池邊
まさにシチュエーションとおりだったんですね。
平賀さん
そうですね。セミは、小さすぎて写真では見えないのですが…。
実は、僕はこのころカメラを持っていなくて、たまたますごい一眼レフカメラを買った友だちが、使わなくなった入門用の一眼レフを半年ぐらい貸してくれていたんです。それを、同窓会に持っていっただけなので、カメラの専門的な知識はそれほどありませんでした。暗いのでシャッターを長めにというぐらいの操作はしたんですが。
事務局
よく見ると少しぼやけているじゃないですか。これはわざとか、たまたまか。これが結構効果的だったので、審査の時には、これは狙って撮影したんじゃないかという話も出ていました。
平賀さん
シャッターの速度をちょっと遅くしていて人が動いちゃったので、ブレてるだけかもしれません。 カメラは、ほとんど地面に近いところに置いてました。
事務局
それは審査の時にも話題になっていました。すごく低い視点で撮ってるから、おもしろいということですね。この団地には昼間に行くことがあるんですけど、夜になると全然違う風景になるというのが印象的でした。
平賀さん
実際に目で見るより、ずいぶんきれいに写ったなと思っています。シャッターを遅くしたら、こんなに明るく、月の表面みたいな地面になりましたし…。
池邊
ちょうど花が咲いているのも効果的ですよね。
平賀さん
このバス通りは一直線で、道路からすぐのところに団地が迫っている感じではないんです。歩道のさらに奥に団地があって、ゆとりがあるので結構気に入っている場所なんです。
池邊
真っ直ぐの道が、団地らしい風景ですよね。今回のコンテストでも神代団地を撮影して応募された方は多かったようです。
平賀さん
神代でもう一つ入賞作品がありましたが、応募されている方が結構いらっしゃるんですね。
右・平賀 輝明さん

団地×建物部門 銀賞
【 ヌーヴェル赤羽台1号棟外観夜景 】
- 山田 幸三郎 -

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ヌーヴェル赤羽台(東京都)
山田さん
私が、東京都北区の赤羽台団地に入居したのは、50年ほど前です。2回目の募集の時に初めて申し込んで、6回目の抽選で入居できました。友だちには、「6回目で入ったのか、私なんか10回以上申し込んでももまだ当選しないんだよ」なんていわれましたが…。それからずっと、赤羽台に住んでいます。
今、赤羽台では建て替えをやっていて、新しくなった住居に、順番に入居できるようになっているんですが、最初に建て替えた棟に空室が出た時に、申し込んでみたんです。1度目の抽選の時は、かなり後ろの順番になってしまったんですが、URの方に、「あきらめないでくださいね」といわれて待っていたところ、何と6回目の抽選で入ることができました。最初にこの団地に入ったのも6回目で、今度も同じ6回目。新しいところへ移れるんだということで、すごく喜びました。
今回応募したのは、この入居の申請に行った時に、窓口の女性の方に「URでこんなことやってるんだけど出してみない?」と勧められて、応募用紙をいただいたのがきっかけです。
実は、赤羽台は工事中であまりいい写真が撮れないんじゃないか、どこを撮ったらいいんだろうなと悩んだんですが、今までの建物はみんな棒型だったのに、運良く移れた新しい棟はL型になっているんですよね。おもしろい建物の建て方だから、建物を被写体にしようと思って撮ったのがこの作品です。最初は昼間に撮ったんですが、昼間だとどこの団地でもみんな同じような写真になるので、少し変わったところを狙わないといけないと思って夜に行ってみたら、共同廊下の照明でとてもきれいな光景になっていたんです。それで、これはおもしろいなということでシャッターを切りました。その後、遊びに来た建築関係の友人が写真を見て「この写真おもしろいぞ。出して見ろ。何とかなるんじゃないか」なんていうもので…。全国から応募があるんだから、私なんかだめじゃないかと思ったんですが、応募してみました。
応募はしてみたんですが、締め切りを過ぎて審査がある時期になっても、なかなか連絡が来ない。あきらめた方がいいかなと思っていたところに、入選の通知が来たんです。「本当ですか、これは!」なんて思って、すぐに応募用紙をくれた窓口の女性のところに行って「写真が入選したんですよ!」と伝えました。すると、「よかったですね。赤羽台では、応募しても入選した人はいなかったから、山田さんが初めてですよ」といわれて…。「そうですかねえ」なんて答えましたけど、うれしかったです。
普通のフォトコンテストだと、入選した方が表彰状と賞品をいただくだけで、後は、どこどこに展示してあるから見においでと連絡が来るだけなんですよね。ところが、こんな作品集をつくっていただいて…。東京の品川にいる妹に、「こんな作品集が届いたんだよ!入選したんだよ!!」っていったら、「見せて!見せて!」なんて家へやって来て、「いままで写真展に応募して、こんな作品集をもらったのって初めてでしょ。いい宝物になったね」なんていわれました。うれしかったですね。
池邊
ありがとうございます。あの照明は近田玲子さんという有名な照明デザイナーによるもので、入賞作品を発表した時に、ご本人から、私の手がけた場所の夜景の写真が入賞してすごくうれしいとお礼をいただきました。夜景に注目したのもお目が高いと思います。
山田さん
カレンダー賞の12月の作品を撮られた方も、偶然、同じ赤羽台の方なんですね。それでお会いして、「カレンダー賞でよかったですね」といったら、「それよりあなたですよ」って…。実は、新聞に、赤羽台団地から富士山に太陽が沈むところが見られると書いてあったので、何とか撮ってみようと、新聞に書かれていた時期になると上階に行ってカメラを構えていたんですが、去年、ちょうど富士山の真上に太陽が沈む写真が撮れました。富士山の端から太陽が移動してきて、真ん中へ落ちるまで、連続でシャッターを切ってみたんですが、その方にお見せしたら、「こんなことできるんですか、ダイヤモンド富士ですよね。これは」なんていわれまして…。その作品は、大きく伸ばして部屋に飾ってあります。
山田 幸三郎さん(一番右)
山田さん撮影 「赤羽台から見える夕日と富士山」

団地×自然部門 金賞
【 希望 】
- 塩田 俊雄 -

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小金原(千葉県)
塩田さん
私は、千葉県松戸市の小金原団地から参りました。
作品を応募するまでの経緯ですが、今思えば、この賞をいただいたことは、女房からのご褒美のような気がします。
昨年の1月まで、私たち夫婦は東京都足立区の竹の塚第一団地に住んでいました。子育ても一段落して、二人でこれから楽しめるなという矢先の2000年に女房が難病で倒れまして、2007年3月まで介護してきました。そんなこともあって、竹の塚から離れたいなという気持ちになり、柏にいる子どもと、今度6年生になる孫娘から「おじいちゃん、松戸においでよ」という話があったこともあって、松戸に移ったんです。
松戸の常盤台や小金原は、桜の名所なんですね。景観がすばらしいです。私も桜の季節は初めてだったものですから感動しました。作品を見ていただくと分かるように、ちょうどアーケードになっているところに日が上から差していまして…。タイトルも「希望」にしました。今、私は、子どもと離れて独居生活をしているんですが、これからやってやるぞというような希望ですね。メッセージにも、家族の絆というんですか、そういったものをうたったらいいなと思いました。
実は、この作品を撮影した後でコンテストのことを知ったんです。団地の事務所の掲示板でフォトコンテストの募集を見て管理事務所に行き、応募要項をいただきました。 たまたまアルバムを見ていた娘からも、「おじいちゃん、この写真いいね」なんて後押しがありまして、6月20日から8月20日までが募集期間だったんですが、おそらく私が一番早いくらいじゃないかと思うくらい早々と、事務局に送らせていただきました。
作品は朝撮ったものなんです。今日も希望の日が昇るということで、タイトルも「希望」ですから…。朝の6時前後だったと思いますが、桜のアーケードを望遠レンズでちょっと拡大して撮ったのが、あの作品です。
池邊
確かに審査員の間でも、これは夕方だろうか朝だろうかという話になりました。ただ、いずれにしても光が一つのテーマになっている写真だねということで…。
塩田さん
早起きは三文の徳じゃないですけど…。私も引っ越してきて間もなかったので、光線の様子は分らなかったんですが、アーケードの桜が強烈に頭にあったものですから、三脚を担いで、どこかいいポジションがないかなと思って探したんです。
三脚をセットして、リモートコントロールでシャッターを切りました。何枚か撮った中の1枚です。
塩田 俊雄さん

団地×自然部門 銀賞
【 ダイヤモンドツリー 】
- 川口 清 - 

コンフォール上野台(埼玉県)
川口さん
私は「ダイヤモンドツリー」を撮らせていただきました川口清と申します。
実は、申し上げにくいんですけど、この作品は、埼玉県ふじみ野市で行われていた、自分のとっておきの場所を紹介してくださいというフォトコンテストに応募しようと思って撮影したものだったのです。ところが、写真を撮った後に、枝が半分のところから切られてしまって、さみしい感じになってしまいまして…。とっておきの場所として応募するのはちょっと気が引けるなと思いまして、こちらのコンテストに応募しました。

この場所は小学校の跡地で、小学校だったころから、この木が紅葉した時にはいい写真が撮れるなと思っていたのですが、敷地に入ることができませんでした。2~3年ほど前に、ここが団地になって入ることができるようになり、よしと思ってはいたのですが、やっとこのシーンにめぐり会えたのは撮ろうと思ってから3年ぐらいたってからでした。いつも通勤でここを通るのですが、気がついた時には枯れ葉になってしまっていて…。たまたまこの日は、市のフォトコンテストのために、近くのスーパーマーケットの駐車場から富士山を撮ろうと思って、朝、7時くらいにここを通りました。その時は、駐車場のゲートが開いていなかったので帰ることにしたのですが、帰り道に、横から光が差しているぞと思ってこの木の方を見たら、朝日がちょうど昇ってくるところで、何度かシャッターを切りました。その中の一番いい写真ですね。
写真を始めたのは5年ぐらい前です。海外旅行をしようかなと思い、その準備に一眼レフカメラを買ったのがきっかけでした。それから風景写真を撮るようになって、何度かコンテストにも応募しています。
この写真は、ちょうど日が出てきたので、夢中で手持ちで何枚も撮った中の一番いい出来のものです。最初は、絞らないでそのまま撮影したら光がボワッと丸くなってしまったので、絞ってみたらうまく光線が星型になりました。露出も、木に合わせてやっと撮れました。ちょっと大変だったのですが…。
池邊
実は、川口さんだけでなく、皆さんの写真がプロ並みのクオリティだったので、本当にアマチュアの方なのか確かめたんです。私どもはプロの方にはご遠慮いただいているので…。
川口さん
いままでの賞でこれが最高です。今回の賞金でレンズを買わせていただきました。
池邊
このコンテストは、2010年も開催しますので、ぜひそのレンズで撮った作品でご応募ください。
川口 清さん

座談会

受賞者の団地への思い ~全国団地景観サミットを通じて~

座談会風景02
川口さん
私は団地ではなくて、団地のそばに住んでいるのですが、通勤で団地の中を通っています。以前は、小学校だったり、入りにくい住宅街だったりしたのですが、団地になって歩けるようになったので、いろいろなルートを開拓して、公園を歩くような気分で歩いています。いろいろな木々や花があったり、おばあさんたちがラジオ体操をしていたり…。会社のことを忘れられる通勤路になっていると思います。
事務局
普通の街の中を歩くか団地の中を歩くかといったら、私は、団地の中を歩きたいと思うんですけど、団地の中を歩くと気分は違いますか。
川口さん
そうですね。団地の中を通らないで、車通りの多いところを歩くと、ああもう会社に着いてしまうんだなという気持ちになりますが、団地の中は公園を歩くような気持ちで歩けるので、一時の気分転換というか、気持ちを静かにできると思います。
事務局
塩田さんは、お住まいへの想いをエピソードに書いていただいているんですが、お住まいになって感じた団地の印象とか、もっとすてきな面があるといったとはありますか。
座談会風景03
塩田さん
私の住んでいる小金原団地は、かなり大きな団地なんです。棟もたくさんあり分譲もある。私は、今ウォーキングをやっているんですが、敷地内に結構アップダウンがあって、団地内をウォーキングするだけでかなりの運動になるんです。ですから、次回の応募作品の撮影場所を探すような気持ちで、楽しみながら歩いています。次回の構想というか、私なりに頭に入れているのは、今、少子化時代ですから、子どもをメインに撮ってとか…。団地とか、例えばプールなんかは、少子化のいい例になると思うんです。最近、プールで遊ぶ子どもが少なくなっていますし…。我々の世代にはプールがいっぱいになりましたので、そういう意味ではちょっとさみしい感じなんですけれども、その辺をアピールしたいなと思っています。
池邊
団地の中に子どもがいて、お母さんがいて…。私どもも少子化対策といった部分には力を入れているんですが、お子さんが安全に暮らせる点をうまくアピールできるといいなと思います。
事務局
臼井さんは、入間駅前プラザでは分譲と賃貸が一緒になってコミュニティ活動を行っているとお話しされていましたが、そのあたりのことをもう少しお聞かせいただけますか。
座談会風景04
臼井さん
団地内に、植栽とか囲碁将棋、コーラスなど、いろいろなクラブがあるんです。そういうクラブも、賃貸と分譲とで一緒にやっていて、非常に和やかです。
うちの団地は名前のように本当に駅前なんですよ。一番近いところなら駅まで2分、遠い棟でも5分はかからない。スーパーも、デパートも、コンビニや銀行も近くです。ですから、我々のように年をとってきても非常に生活がしやすい。駅前に駐輪場があって、近隣の皆さんは駐輪場を使うんですが、団地の人は、「電車が来たよ!」っていってから家を出ても間に合うぐらいの距離ですので、うらやましがられていますね。
入間市駅は西武池袋線なんですが、都心に近く、ターミナル駅の池袋からの特急が停車するんです。だから、年配の方とか、お子さんがいる人は特急券を買っておけば、指定席ですし安心して帰れるんですね。僕らも、定年になる前は、酔っぱらっても切符を買っておけば安心という感じで…。本当に引っ越せないくらい便利なところです。
事務局
利便性もよくて、お写真のようなすてきな風景もあるようなお住まいで、私はすごくうらやましいなと思いました。
臼井さん
毎年、近くの入間基地で航空ショーがあるんですよ。それが、団地のベランダから見えるわけです。夏は基地の花火大会もありますし、皆の集まりやすい、とても楽しい団地です。家にも、親戚や友だちが代わるがわる遊びに来たりして…。
池邊
分譲の場合は入居された方に所有権が移っていますので、むやみに人が入ってはいけないということで、このコンテストでは賃貸だけを対象にしています。分譲の方には、何で自分のところを撮っても応募対象にならないのかと聞かれるのですが…。臼井さんのところでは、分譲と賃貸の交流があるということは新しい発見でした。
臼井さん
そういった交流のことも知っていただけて、本当によかったと思います。
このコンテストで入賞させてもらって、ご近所の知り合いの子どもさんが、この写真を見て詩をつくってくれたんですよ。団地をコンサートホールに見立てた「朝の音」という詩なんですが、今年の年賀状に、入選した写真と詩を組み合わせて親しい友だちに送ったら、元旦から電話はかかってくるし、メールはどんどん入ってくるし、大騒ぎになりました。

詩を書いてくれたのは、小学校6年生の子なんです。

このコンテストのおかげで、こんな素敵な詩をつくってもらって、私も非常に心が豊かになったような気がします。
臼井さん作成の年賀状
「 朝の音 」 仲谷淳之介
  • 昨夜まで静かだったコンサートホール
    スポットライトがあたり
    コンサートの始まり
    ベッドから転げ落ちる音
    電気のスイッチの音
    カーテンを開ける音
    ドアの音
    水の音
    ひげそりの音
    せんたくきの音
    ご飯を作る音
    楽しい一日の始まりの音
    コンサートホールに広がる朝の音
池邊
すばらしいですね。ひげそりの音とかいろんな音が、団地の朝にはある感じがして…。メッセージ賞を差し上げたいぐらいです。
臼井さん
写真は、撮るだけじゃなくて、こういうことで付加価値がついていくのが、とても楽しいですよね。ただ応募するだけじゃなくて、反響が返ってくるので…。
池邊
6年生のお子さんが写真に心打たれて詩をつくるという、それがすごいなあと思います。そのお子さんの感性も、その感性を導いたお写真も、心を打つものだったということですよね。

座談会風景05
神代団地
平賀さん
入選した写真には写っていないんですけど、撮影した時は、後ろにもっと友だちがいたんです。それまでは、友だちも団地にはあまり興味がなかったようなんですけど、あの時撮った写真が入賞したという話をきっかけに、次に会った時、4人くらいの友だちと、団地の話になりました。
神代団地は、昭和40年ごろにできた建物だと思うのですが、最近は古さが逆に愛着を感じるポイントになっています。例えば窓を開ける時には隣の棟に聞こえるぐらいギーッと音がするとか、玄関のドアが空洞の鉄みたいな構造で、階段中にドカンと音を響かせて閉まるとか…住んでいる人同士でそういう共通の話題で盛り上がれるようになったり。10年ほど前には、本当にそういう古さが嫌だなという時期があったんですが、それを通り越してしまいました。今は古いものが再認識されているじゃないですか、昭和ブームとかもあって。古い団地ならではの味が出てきている感じがしています。
友だちと、車でいろんな団地に行こうということになっていくつかの団地を見に行ったのですが、自分が生まれていない、昭和40年代とか30年代後半に全国で大量に建てられた団地って、みんな同じような形をしていて、「団地と言えばこういう形」というイメージが日本全国で共通認識になっていたから、“団地”という言葉が言葉として認知されているのかなと思います。
でも悲しいのは、最近は建て替えをきっかけに、xx団地ではなくて、ちょっとかっこいい名前になって、URが建てているのか、普通のマンションなのか区別がつきにくくなっていることですね。建物のつくりも普通のマンションと同じ、何も違わないようにも見えるので…。昔、大勢の人が住んでいた、憧れていた、そんな時代の団地の特徴はどこにあるのかなと。今後、団地という言葉は、会話の中に出てくる頻度も減って、いつか無くなってしまうのではないかと、結構まじめに、友だちと話しました。
事務局
どの辺の団地に行かれたんですか。
座談会風景06
平賀さん
東京では世田谷区の烏山の方とか…。みんな感動していたのは、横浜のみなとみらい地区にある海岸通り団地です。後ろに見えるランドマークタワーとのギャップがすごい。ただちょうど、建て替え工事をしていたところで、もうちょっと早く来ればよかったねみたいな話もしました。友だちがネットで調べて、「1年ぐらい前だったら、壊す前の部屋に入る体験ができるキャンペーンをやってたらしいよ」といっていて。そこまで団地に夢中になって、みんなで団地探しに動き回った後に全国の団地の応募作品が掲載されたフォトコンテストの作品集が送られてきたので、これがあればもっと楽に団地を探せたのにと話したんです。
事務局
ぜひ作品集を片手に、また遊びに行ってみてください。
池邊
確かに、建て替えられると団地という名前じゃなくなるんですけど、ある場所に行きましたら、公団通りという道があって…。都市再生機構になる前は、公団という名前と団地という名前がセットで日本全国の皆さんに親しまれていた時期があることに気付きました。そんな文化がだんだん失われていくのはよくないといった考えもあって、このコンテストの名前にも団地という言葉を使って、団地景観サミットにしたんです。
赤羽台団地(東京都)
ヌーヴェル赤羽台[建替後](東京都)
臼井さん
団地という言葉が死語になっていくかもしれないですね。私が前に住んでいたのが町田市の町田山崎団地というところで、それから埼玉に来たんですけど、近くに入間黒須団地とか、古い団地もあるんですよね。でも、私のところみたいに何とかプラザというと全然イメージが違ってきますよね。
池邊
名前だけみると、民間のものかURのものか分らないということですね。
臼井さん
確かに、団地という言葉を知らない世代がでてきていますね。
事務局
武川さんと佐藤さんは、まさに東久留米団地からグリーンヒルズ東久留米と名前が変わった団地に長い間住んでいらっしゃいますが、その移り変わりについては、どう思われますか。
佐藤さん
私は結婚して子どもができてすぐに入居してから50年近く、ずっと住み続けているんですけど、建て替えの時に、まだ元気だった主人と、間取りがいろいろあった中で2LDKぐらいがいいんじゃないかというような感じで抽選を待っていたんです。ところが、待っている間に、主人が、結婚してからずっとこの団地の狭いところに住んできたんだから、最後ぐらい手足が伸ばせるような一番広いところへ行かないかっていいだしたんですね。そこで、それもそうだな、そんなにお金を残してもしょうがないし、家賃で蓄えがなくなったとしても、せめて最後はそのくらいしたいねということになったんです。その場でバタバタと変更を希望して、結果、87m2の広いところへ入れたんです。主人も、亡くなるまでの間、そこで過ごせました。マンションに住んでいるみたいな感じでしたね。
武川さん
リビングが広かったので、さみしいのが嫌いな父のために、リビングの真ん中にベッドを置いたんですよ。
座談会風景07
佐藤さん
今考えると、ベッドの脇に娘と二人で寝てつき添えたのがよかったと思います。主人の住みたかった部屋に入居して、私たちも心ゆくまで看病できましたし…。よく主人は、狭いところに自分の土地や家を持つことはないよ、団地に一生いたいねっていっていたんですよね。
長い間、賃貸に住んでいて、これからもたぶん住み続けると思うんですが、団地には他とは違う楽しみがたくさんあります。それは、人の交わりとかそういうことだと思います。とにかく私は、これからも、元気で楽しく過ごしたいなと思っていて、そうすることが夫の申し送りかなとも感じています。
事務局
武川さんは今、団地にお住まいじゃないんですか。
武川さん
今は、母のところと、主人の実家がある横浜を行ったり来たりという感じです。
佐藤さん
一人になったら狭い部屋に移れると聞いていたので、1LDKでも1DKでも、一人だったらいいかなとは思っています。少しの間でも広いところの楽しみを味わったので、別に私はどこでもいいかなという感じですね。
私は、来年で30年になるんですけど、地域の児童館に拠点を置いて「けやき座」という名前で人形劇のサークル活動をしています。この子は、芝居の世界にいますが、そこに飛び込んでいったのは、児童館での人形劇団の活動に一緒に連れていったからなのかな、という感じもしていますけど…。それも、全部団地から始まったことですね。
事務局
これからも末永く団地の生活を楽しんでいただければと思います。
佐藤さん
そうですね。元気なうちはがんばりたいと思います。

座談会風景08
事務局
最後に、山田さんも長い間お住まいになられているということで、赤羽台のお話をしていただけますか。
山田さん
今、赤羽台は全棟で建て替えが進んでいるんですよ。1期、2期、3期と行われるんですが、1期が終わって、2期の工事をやっているところです。先程もいいましたが、私は、1期の住宅の空き室に運良く抽選で入居できましたので、非常によかったです。
家内がちょっと体調を崩して、近くの病院に2カ月ほど入院したんですが、今は家内も元気になって帰ってきて、現在、二人で生活しています。
池邊
奥様が入院されたのは新しい家に替わられてからですか?
山田さん
ええ、それもよかったんです。設備が新しいので。退院した後も、また古いところに住んでいたら大変だったのではないかと思います。二人ともここが気にいっているので、これからもずっと、私の命がある限り赤羽台に住もうと思っています。
事務局
これからも赤羽台のいろいろなよいところのお写真を、ぜひ楽しんで撮っていただければと思います。ありがとうございます。
池邊
本日は本当にありがとうございます。今回のコンテストでは、写真に添えてメッセージをいただいているんですが、今日皆さんのお話をいただきまして、それぞれの写真やメッセージに劇的なドラマがあることが分かりました。そういった皆さまの団地への想いをこれからも大切にしていきたいと思います。
これからも、私どもは、高齢者の方が安心して住める、子どもさんにとっても安全な、楽しい、そして何より、いい景色のある団地をつくっていきたいと思いますので、ご支援のほどよろしくお願いいたします。
なおこのコンテストは、2010年も、写真とスケッチのコンテストとして継続して開催します。今回ここにいらしていただいた皆様も含め、入賞経験がある方でも、自由に応募できますので、ぜひともご応募のほどよろしくお願いします。
平賀さん
前回入賞した者でも大丈夫なんですか。
事務局
何度でも(笑)。前回入賞された方で今回も応募された方は結構いらっしゃいました。連続して入賞された方は一人だけいらっしゃいました…。
本日は本当に長い間おつきあいいただき、ありがとうございました。
座談会風景09
座談会風景10
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