シャレール荻窪のRenovation
2012年1月UP
JR中央線荻窪駅の南側住宅街にあるUR賃貸住宅「シャレール荻窪」は、荻窪団地創設より半世紀を経て、平成23年に再生された団地です。
善福寺川を流れる涼風、団地内の大木による緑陰、緑や水を求めて集まる小鳥や虫たちなど、緑豊かな地域の環境資産を活かし、お住まいの皆様の地域に対する想いを受け継いで、安心・安全で快適に暮らせるまちに生まれ変わりました。
荻窪の自然環境
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緑環境
団地南西側を流れる善福寺川沿いの緑地や団地北側の大田黒公園など、団地周辺には多くの樹木が残されており、豊かな緑に恵まれています。
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熱環境
夏の地表温度は、緑の多いところで低くなっています。
団地や善福寺川緑地などの緑は、ヒートアイランド現象の緩和に役立っています。
※図は、UR都市機構と東京電力が平成18・19年度に実施した『「緑と水と風の道」を活かした環境共生型団地計画手法に関する共同研究』より抜粋 -
生物環境
環境の指標である野鳥のコゲラは、善福寺川緑地を生息地としており、荻窪団地は採餌のため飛来する樹林地となっています。
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風環境
夏は南南西の善福寺川緑地から比較的涼しい風が吹きます。
冬は北北西の風となりますが、団地北側のマテバシイ群がその風を和らげます。
荻窪らしさを受け継ぐために
団地の建替えにあたり、団地やその周辺地域にお住まいの皆様と懇親会やワークショップ等を行って、基本構想や配置計画、具体の住戸プランや団地でできる環境配慮などについて考えました。
そこから、「荻窪らしさ」について、5つのキーワードを導き出しました。
- 「荻窪らしさ」とは
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- 豊かな緑に囲まれたまち
- 生き物が集まるまち
- 風が通り抜けるまち
- 涼しいまち
- 地球にやさしく、人がふれあえるまち
荻窪らしさを活かす
荻窪団地は、団地にお住まいの皆様の想いや新しい環境技術を取り入れることで、環境に配慮した地球に優しいまちへと生まれ変わりました。
環境配慮への取り組み
01. 緑のネットワーク形成:豊かな緑に囲まれたまち
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団地で育った樹木を、保存・移植・再生等によって100%活用し、緑豊かな荻窪の環境を受け継いでいます。
●ヒマラヤスギの移植
団地北西部にあるヒマラヤスギは、樹齢約60年、樹高15mの大木です。伝統技術の立て曳き工法により、貴重な大木を保全しました。
●中庭の演出
住棟間の屋外空間は、その場所の既存樹木を生かしたテーマを中庭ごとに考え、新植を含めて設計しました。
[中庭の3つのテーマ]
「山の庭」: ケヤキの大木を生かした山の夕景を楽しむ庭
「野の庭」: クヌギ林、野原の風景を楽しむ庭
「里の庭」: マツ、カキ、サクラを活かした里の風景を楽しむ庭
02. 生物多様性の継承:生き物が集まるまち
野鳥のためのバードバスの設置や、蝶のための柑橘系樹木の保存などを行い、周辺に生息する多くの生き物が自然に触れ合える団地を目指しています。
03. 風の通り道の確保:風が通り抜けるまち
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夏は南側のクールスポット善福寺川緑地等から南風が吹き、川上空にも涼風が吹いています。
団地内に風の通り道をつくり、この風を住戸内にも通すことで、快適な住環境をつくりました。
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●パッシブクーリング (住戸内風通し) 住棟間に流れる風を住戸内に積極的に取り込みます住戸内に風が通ることで、エアコンなどの冷房負荷を削減することができます。 (一部住居)
04. ヒートアイランド現象の緩和:涼しいまち
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屋上緑化、植栽増加、保水性舗装等を施すことで地表面温度を下げ、ヒートアイランド現象を緩和しています。
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●屋外駐車場配置の工夫
平面駐車場の一部を住棟内に取り込むことで、団地屋外の植栽面を増やし、夏の地表面温度の上昇を低減しています。 -
●屋上緑化、保水性舗装等
芝による屋上緑化やツル性植物による壁面緑化、高木の既存樹木を中心に植栽した中庭、屋根庇の高反射塗装、打ち水効果のある保水性塗装や浸透トレンチなどにより、表面温度の上昇を防いでいます。
05. 環境にやさしいライフスタイルの支援:地球に優しく、人がふれあえるまち
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団地にお住まいの皆様が自然に親しみ、交流がはずむよう、花壇や菜園を設置しています。
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●クラインガルテン(貸し菜園)
クラインガルテンでは、自然に親しみながら、収穫の喜びが味わえる野菜作りができます。 -
●ecoスタイルの住宅
風を団地内に取り込み、建物や屋外、設備等に工夫を施すことで冷暖房負荷を減らし、CO2削減に貢献しています。