街に、ルネッサンス UR都市機構

トップメッセージ

2025年07月01日

はじめに

ごあいさつ

この度はURの事業報告書にご関心を寄せていただき、誠にありがとうございます。

理事長に就任し2年目を迎えました。この間、止まらぬ人口減少・少子高齢化、災害の激甚化・頻発化等、社会課題に対してURに何が出来るか、何をすべきかを考え、関係者の皆さまとともに解決に向け取り組んできました。昨年、能登半島では、大きな災害が続きました。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。

寄り添って能登半島の復旧・復興を支える

能登半島の復旧・復興については、被災された皆さまに寄り添った支援を進めております。まちの復興には、従前の状態・機能に復旧させるにとどまらず、その後の生活やまち
の姿なども見据えた中長期的なまちづくりの視点が必要になります。URは、発災以降、阪神・淡路大震災や東日本大震災等の支援経験を通して培ってきた知見とノウハウを活かし、職員派遣等による応急仮設住宅の建設支援等を通して、被災地の迅速かつ円滑な復旧や被災者の早期生活再建を支援しました。また、国とともに、被災市町の意向確認や、URが実施可能な支援メニューの提案を行っております。

また、昨年4月に金沢市内に復興支援事務所を、その後、輪島市に「UR奥能登・輪島ベース」を設置し、被災市町の要望に応じて、復興まちづくり計画の策定や合意形成に関
する技術支援や、災害公営住宅の整備に向けた支援に取り組んできたところです。

被災された皆さまが1日も早く平穏な生活を取り戻すことができるよう復興を支えてまいります。

「社会課題を、超えていく。」

昨年7月にURは、設立20年を迎えました。前身の日本住宅公団から数えると今年(令和7年)で70年になります。その間、目標や組織の形態は違えど、まちづくり、くらしづくりを担う国の政策実施機関として、時代の要請に応じた使命を果たし続けてきました。

「社会課題を、超えていく。」 このメッセージは、本報告書の冒頭にあるように、URの使命や姿勢を端的にまとめたもので、役職員一人ひとりが大切にしている思いです。事業を通して、時代の社会課題の解決に貢献し、その先にある「人が輝くまち」の実現を目指す。これが我々URの価値創造プロセスであり、使命です。そして、目標実現に向けて挑戦する姿勢を多くの皆さまにお伝えし、ご理解とご支援をいただきたいと思っています。

私は、就任以来、職員に対して常日頃から、「URにとって最も大切なものは“社会的信頼”であり、その上に“目標の実現”がある。“社会的信頼”を得るためには、世の中がURに何を求めているかを常に意識し、それに応えるとともに、URの存在意義を国民の皆さまに理解していただくことが必要である。」と話し、意識を高めています。

本報告書を通じて、URの価値創造、存在意義をご理解いただければ幸いです。


令和6年度の振り返りと事業戦略

令和6年度は、第5期中期計画の初年度に当たります。中期計画の開始と同時に就任したこともあり、まずはURの3本柱である都市再生、賃貸住宅、災害対応支援の事業をしっかりと前に進めることに注力してきました。

≪都市再生≫ 安全で魅力あるまちづくり

都市再生の分野では、都市の国際競争力強化・魅力向上、地域経済の活性化・コンパクトシティの実現、まちの防災性向上による安全・安心なまちづくりや減災対策など、都市政策上の課題解決に向けて、地方公共団体や民間事業者、地域の皆さま等と連携し、着実に事業を進めることができました。

その一つであるうめきた2期区域(グラングリーン大阪)(大阪府大阪市)では、昨年9月に先行まちびらきを迎えました。URは、1期区域(グランフロント大阪)も含め全体のプロデューサーとして20年にわたり関わってきました。URが参画する意味は、単なる公園や道路等の公共施設の整備だけでなく、エリアの価値向上に向け、広域的なビジョンを持ち、公平中立な立場で多様な事業関係者の立場や意向を踏まえながらまちづくりの全体に携わることです 。また、エリアマネジメントにも力を入れ、交流と賑わいを生み出しています。さらに、平時には賑わいの場であるうめきた公園は、災害時には34,000人を受け入れ可能な広域避難場所となるなど、安全・安心なまちづくりにも貢献しています。

都市再生には、地域の実情に合わせた様々な形があります。地方都市等で地域経済の活性化を目指す上では、行政や地域で活動するプレイヤーとの連携が欠かせません。URの持つノウハウを活かしながら、地域の皆さまとともに、まちづくり計画の構想・策定や地域を動かす体制づくりのお手伝いをしています。現在、長野県小諸市が進めるコンパクトシティのまちづくりでは、支援の一環として、URが小諸駅近くの「まちタネ広場」に隣接する明治時代に建てられた建物を取得しました。今後、地元の事業パートナーとともに、広場との一体的な運営により、駅周辺地域がさらに人々の集う居心地の良い空間となるよう、建物の活用を推進していきます。

これまでの復旧・復興支援の経験を踏まえ、大規模地震や豪雨災害等の発生に備え、災害に強いまちづくりも推進しています。例えば、密集市街地においては、道路の拡幅、建築物の不燃化等による防災対策・安全性の強化や、防災啓発活動を通じて地域防災力の向上に取り組んでいます。

また、大規模な都市開発の経験やノウハウを活かし、海外における都市開発事業への日本企業参入を支援しています。令和6年度は、新たにインドネシアとタイに現地事務所を開設し、現地政府や民間企業との関係強化、情報収集を進めました。タイでは、バンコク郊外の開発事業に関する基本構想・計画を支援し、日本企業の事業参入に向け、下支えとしての役割を務めています。

≪賃貸住宅≫ 多様な世帯が安心してくらし続けられる住まい・まちづくり

賃貸住宅の分野では、住戸や空間の活用に加えて、生活支援アドバイザーやUR子育てサポーターの配置等、コミュニティ形成に資するソフト面の取組みも重視してきました。生活の豊かさは建物や住戸の質だけでなく、住んでいる方の暮らしの質の向上によってもたらされると思っています。

また、居住支援協議会等の地域関係者と連携・協力し、地域の事情を踏まえた住宅セーフティネットの役割を充実させています。高経年化した賃貸住宅ストックについては、地方公共団体のまちづくりと合わせて団地を再生するとともに、団地に子育て施設や高齢者施設を誘致し、地域にお住まいの皆さまの生活に貢献することで、地域全体の魅力や価値を高めています。耐震化、バリアフリー化や省エネ改修などの安全・安心や脱炭素・環境配慮の取組みはもちろん、多様化するライフスタイルや住まいのニーズに対応したリノベーションも進めています。

例えば、昨年秋、横浜市の港南台かもめ団地では、民間事業者と連携した「MUJI×UR団地まるごとリノベーション」により、集会所が開放感あふれる利用しやすい空間に生まれ変わりました。改修に先立ち団地や地域の皆さまとともに立ち上げた「かもめ会議」を中心に、気軽に参加できるイベントが開催されるなど世代の壁を越えた交流が広がっています。

≪災害対応支援≫ 災害からの復旧・復興支援

東日本大震災からの復興支援については、未だ復興途上である原子力災害被災地域の福島県大熊町、双葉町、浪江町の3町において、復興拠点の整備や地域コミュニティの再生に取り組んでいます。

URが基盤整備を実施した、かつて大熊町の中心部であったJR大野駅周辺では、令和7年3月に賑わい再生の拠点となる産業交流施設、商業施設がオープンしました。避難の長期化により、住民も経済活動もゼロからの出発という背景を持つ原子力災害被災地域では、ハード整備だけでは復興支援と言えません。安心して生活できる環境を取り戻すことは容易ではありませんが、企業誘致や人が戻る仕掛け、交流拠点の運営体制構築などソフト面での支援を通して、交流人口や関係人口の創出・拡大にも引き続き取り組んでいきます。

また、URが培ってきた経験やノウハウを、発災時はもちろん、事前防災に役立てることにも力を入れています。URが策定した防災研修プログラムの地方公共団体等への提供や、「ぼうさいこくたい」など国が主催する防災イベント、団地での地域コミュニティイベントを通して多くの方に防災意識を高めていただくよう活動しています。

脱炭素、環境への配慮

URでは、平成17(2005)年度に「環境配慮方針」を宣言し、環境に配慮したまちや住まいづくりを推進してきました。昨今の環境に関する動向を踏まえ、多様化する社会的要請に応えるため、令和7(2025)年4月1日に本方針を「環境基本方針」として改定し、環境への取組みを推進してまいります。さらに、地球温暖化対策の実行計画である「UR-eco Plan 2024」では、令和12(2030)年度までのCO2排出削減目標を70%に引き上げるとともに、例えば賃貸住宅事業において、建替え時におけるZEH基準の標準化や太陽光発電設備の設置を図る、また既存住宅の窓建具改修時には複層ガラス化を推進する等、地球温暖化対策を推進しています。今後取組みの加速化が求められる中で、一層の貢献ができるよう取り組んでまいります。

令和6年度の経営状況

金利上昇に加え、資材価格や労務単価の上昇等による建築工事費の増加など、事業を取り巻く社会・経済環境に大きな変化が生じていますが、賃貸住宅事業における稼働率の向上や都市再生事業における大型施設の完成等により、経常利益は1,179億円、純利益は74億円と、安定的な業績を確保しました。有利子負債についてはキャッシュ・フローの着実な確保により951億円を削減し、有利子負債総額は9兆5,655億円まで減少し、財務体質の改善は順調に進捗しています。

債券発行に関しては、昨年度に続き、サステナビリティボンド及びソーシャルボンドを発行しました。調達した資金はSDGsへの貢献や脱炭素社会に向けた活動に活用しており、投資家の皆さまにも共感していただくことで、安定的な資金調達につながっています。

今後も、金利上昇や価格高騰、発注環境等の変化に加え、高経年化した賃貸住宅ストックを良質化するための建替えや修繕の費用が見込まれるなど経営のかじ取りが難しくなることは間違いありません。URの経営は、事業の持続性を確保し、政策実施機関として長く社会に貢献していくことを重視しています。将来を見据えて必要な投資をバランス良く行うことにより、堅実に自立的な経営を維持し、社会課題の解決に向けて継続的に取り組んでまいります。


持続的に発展する組織であるために

対話を通じて共感しながら課題を見出し、その解決の糸口をともに探っていく

社会課題は時代の流れや状況によって変わっていきます。我々はそれを超えていくために、常に状況を見つめて、何が課題なのか、自分たちに何ができるのかを考え、対応できるように変化し続けなければなりません。現在の人口減少社会において必要なのは、ハード面だけでなくソフト面も含めた広い意味でのストック活用であり、それによって、どのようにまちの価値と活力を上げていくかが重要だと考えます。大切なのは、まちのあり方や将来像を考えること。どんなまちをつくるかという議論の段階から関わり、まちを想う人たちと対話を通じて共感しながら課題を見出す。今まで積み上げてきた経験やストックから活かせるものを活かし、解決の糸口をともに探っていく。そういったことが出来るのがURの強みであり、意識して取り組んできたことです。

皆さまと同じ目線で課題を考え、一緒に取り組んでいきたい

関係者の皆さまから「URがいてくれてよかった」と言ってもらえる存在でありたいと思っています。理想は、各事業で関わる方にとって、必要不可欠な存在になること。そのためには、皆さまと同じ目線で課題を考え、ときに状況を俯瞰し、URの持つノウハウを活かし、一緒に取り組んでいく必要があります。URの取組みを知っていただき、「一緒にやりましょう」と言ってもらえるような組織でありたいと考えています。

すべての人が活躍できる風通しの良い職場をつくる

私はなるべく、現場の職員と話をするようにしています。そして、その考えや情熱に寄り添い、チャレンジを後押しすることを心掛けています。URの職員は、自由度の高い空間にリノベーションしたサービスフィールド付住宅、猫と暮らしやすいペット共生住宅など色々なアイデアを出して、前向きに挑戦しています。URにとって、人が重要な資源であることは言うまでもありません。URに関わるすべての人がお互いを尊重し、活躍できる環境を作るため、職員一人ひとりのやりがいやキャリア形成はもちろん、ワーク・ライフ・バランスを実現できる仕組みや制度を充実させています。そして、何より重視しているのは風通しの良い職場です。普段から上司や仲間に相談をし、何かあれば私のところにも遠慮なく話が上がり、組織として、一緒になって考える、取り組むことが当たり前である職場を目指しています。風通しの良い職場づくりは、コンプライアンスの強化にもつながり、URにとって大切な社会的信頼につながるものと考えています。

人を育て、人との縁を大切にする

同様に、人を育てること、人との縁を大切にすることも意識しています。URには、さまざまな事業や地域にノウハウや人のつながりの蓄積があります。それらを共有し、縁のある人たちとの関係を大切にしながら、従来のやり方にとらわれず、なるべく自分にないものを吸収し、自分を磨いてもらう。それが組織の知恵となって、また別の人につながっていく。長い歴史の中で積み上げられた好循環が人を育て、URの強みとなっています。

加えて、社会全体のDXが加速する中で、個別の施策推進とともに、全職員のDXリテラシーの底上げを行いつつ、より高度な知識やスキルを持つ人材の育成にも取り組んでいます。

コンプライアンスをはじめ内部統制についても一層強化し、目標達成に取り組み続ける持続性を有する組織として、皆さまのご期待に応え続けられるよう努めていきます。


「人が輝く都市」の実現に向けて

今年9月に開設2年を迎える「URまちとくらしのミュージアム(東京都北区)」に、おかげさまで多くの方にご来場いただいております。新たな暮らし方を探求してきたURの歴史を知っていただくことは、職員にとっても大きな励みと自信になっています。また、この施設は、未来のサービスやビジネスを実践する場として位置付けています。昨年実施したトライアルコンペでは多くの方に応募いただき、団地の持つ可能性とともにURへの期待を感じているところです。

URのミッションである「人が輝く都市」の実現には、複雑化する社会課題に対して、多くの方と連携して創意工夫を重ねていく、そして何よりUR自体が変化を恐れず、自ら考え挑戦しなければなりません。役職員一人ひとりが、URの業務を通じて社会課題の解決に貢献するという高い意識を持ち、そのために何をすべきかを考えながら積極的に業務を推進する。その活動を通して、国民の皆さまから必要とされるURになっていけるよう尽力してまいります。

引き続きURへのご理解とご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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