Profile

千野 優斗

入社:
2017年
専攻:
工学系研究科建築学専攻
研究内容:
震災復興に関わる調査研究(建築計画)

大学院では、東日本大震災からの復興に関する調査・研究を行った。復興に向けた仮設・集合住宅や避難先の公共教育施設などの建築物の検討とそれらの運営等、建築の視点から震災復興に取り組んだ。

Career

  • 2017年:

    東日本賃貸住宅本部ストック設計部設計企画課
    (新規建設団地の設計・工事発注業務)

  • 2019年:

    東日本賃貸住宅本部東京東エリア経営部ストック技術課
    (既存団地の住戸内および共用部改修の設計・工事発注業務)

1年目で手がけた団地の建替え。
ぎりぎりの交渉から、基本を学ぶ。

大学院で災害復興を研究したことが、入社のきっかけと聞きましたが。

URは、「災害復興」を事業として取り組んでいます。発注者という立場で被災自治体と一緒に事業に取り組む組織になるので、災害復興を直接的に業務として関われることに大きな魅力を感じたのはもちろんですが、実は団地にも興味がありました。研究室時代に、URの赤羽台団地を対象としたプロジェクトに参加していたのです。コミュニティづくりや、既存団地の利活用がテーマでUR職員とも関わりがありました。

入社直後に手がけたのも、団地の建替え設計ですね。

昭和30年代から建設が進められてきたURの賃貸住宅は、経年に応じて適切な修繕・改修が繰り返されます。また、高経年の団地の場合は、建替えを行うこともあります。建替えの場合、その規模、敷地や予算などの条件を計画部門が策定し、私が所属していた設計部門の建築担当が各職種の意見を取りまとめ設計条件を整理します。公募を行い決定した設計事務所や工事施工者とともに、住棟の配置計画から竣工までをマネジメントしていきます。

何か印象深い経験はありますか。

入社1年目のことです。工事内容の変更について工事施工者との調整をするのですが、とても難航したことがありました。工事は進み期限が迫っている中で、事業のパートナーである工事施工者とURの双方が納得できる答えを導かなくてはなりません。先輩と役割分担して対外的な調整と社内調整を並行して進めながら、期限ぎりぎりで妥結点を見つけることができました。相手がどういうことを求めているか、こちらが譲っていけないことは何か。相手を理解するために想像することや、物事を曖昧にしないことの大切さを痛感しましたし、当時の経験は、今の私の「スタンス」の形成につながっています。

トレンドとコスト。
バランスの取れた改修で、住みたくなる住宅を。

現在は、改修の方に携わっているそうですね。

UR賃貸住宅の住戸や共用部の改修を担当しており、対象は東京23区南側半分(江戸川区、中央区、世田谷区など)に位置する約5万戸に当たります。その半数近くは、昭和54年までに建設された「メインストック」と呼ばれる団地が占めており、間取り改善などの大規模なリノベーションを進めています。その他は昭和55年以降に建設された「ニューストック」「フレッシュストック」と呼ばれる団地で、必要に応じた改修を行っています。

住戸の改修はどのように進められるのですか。

賃貸住宅経営における重要なポイントのひとつに、空室の解消があります。お客さまの退去後、次のお客さまに早期に入居いただけるよう、私たちの手で魅力的な改修を企画します。メインストックにおいては、標準設計の間取りを大量に供給していた背景があるため、退去された際は予め用意した設計を元に効率を意識して改修していますが、間取りの変更を含め、時に営業部門からのニーズに合わせることも重要です。ニューストックについては、団地によって間取りが様々なので住宅ごとに改修内容を決めています。検討の際には、お客さまのニーズ、住まいのトレンド、さらにコストや工期など、さまざまな条件を重ね合わせて仕様を決定し、改修を実行していきます。

最近のトレンドは何かありますか?

コロナ禍でリモートワークが進み、かつてのようなLDK空間とは別に個室のニーズが高まっています。関連して、ネットワーク環境を重視する声も多いですね。また、かねてよりキッチンをはじめとする水回り設備は注目されやすいポイントです。機能的なシステムキッチンに人造大理石を採用するなど、プラスαのグレード感が重視されています。ただ、こだわりすぎるとコストや工期に影響してしまう。常に目指しているのは「うまい(良い住宅)、早い(短工期)、安い(低コスト)」。このバランスを保つのは非常に難しいですが、適切な着地点をいかに見つけるかが仕事の醍醐味でもあります。改修した住戸の評判がよかったり、入居した方の声を聞いたりすると、やりがいを感じますね。

共用部の場合は、進め方が違うのですか。

エントランスなどの共用部は、お住まいの方が常に使用している中での改修になります。工事の安全対策やお住まいの方々への配慮など、ハードルは上がりますね。一方で住戸内と異なりお住まいの方全員が使われる空間だからこそ、いい仕上がりになると達成感も大きいです。あるエントランスの改修では、オートロックなどの機能向上を盛り込みつつ、アクセントウォールや木質系床材を採用し内装を一新するなど、いい意味でUR賃貸住宅らしくないエントランスの実現に挑戦しました。その結果、お住まいの方々はもちろん、社内からもよい評判が聞こえ非常に嬉しかったです。

Day Schedule

  • 9:15

    出社。メールとスケジュールのチェック

  • 10:00

    住戸の改修方針に関して部内で打ち合わせ

  • 11:00

    会議資料作成、設計事務所からの図面チェック

  • 12:00

    昼食

  • 13:00

    メール対応

  • 13:30

    改修工事業者と工程打ち合わせ

  • 15:30

    団地へ移動。退去後の住戸調査。改修完成後の住戸確認

  • 17:40

    現場より直帰

わかるまで追求する姿勢を貫き、
設計のプロとして、フィールドを広げたい。

My Future

手がけたエントランス

満足度の高い改修のために、普段から心がけていることは何でしょうか。

単身から結婚、子育てとライフステージが変わる中で、自分自身や身近な人がどんなことを住宅や生活に求めるかを客観的に意識しています。街中の住宅や不動産仲介ショップを観察することも、仕事柄、生活の一コマになっていますね。

なるほど、そういった日々のアンテナは重要ですよね。では最後に、今後の目標をお願いします。

設計系の業務を中心に幅広い経験を積み、新しい価値を提案できるようになりたいと考えています。私は発注者という立場ですが、現場の方と充分に意見交換ができる知識や技術力など、自身のリテラシーを向上させていくことが目下の課題です。そのためにも、わからないことは曖昧にせず、何でも聞き、徹底して理解することを心がけています。将来的には、設計のプロとして、都市再生や災害復興といった事業にも挑戦してみたいですね。