Profile

山内 広美

東日本賃貸住宅本部
多摩エリア経営部
ストック活用計画課

2011年入社。外壁修繕工事等の発注業務に従事した後、出向、団地再生計画業務等を経て、2020年〜2022年に従事。団地の魅力や価値向上に向けたストック活用計画を担当。

多様な世代に向けて

UR賃貸住宅ストックのうち、1979年以前に管理開始され高経年化への対応が必要な賃貸住宅は、約46万戸にも及ぶ。団地の築年数の経過とともに、居住者の高齢化は進み、年少人口は減少している。URのみならず、日本が直面している課題でもある。
こうした課題を解決するため、URでは、多様な世代が生き生きと暮らし続けられる住まい・まち(「ミクストコミュニティ」)の実現に向け、「多様な世代が安心して住み続けられる環境整備」「持続可能で活力ある地域・まちづくりの推進」「賃貸住宅ストックの価値向上」という3つの視点から、UR賃貸住宅の多様な活用を推進している。

既存の建物に、新しい魅力を

「ストック活用」の基本は、既存建物の有効活用だ。ライフスタイルの変化を踏まえた改修などを施し、各エリアや団地の特性に応じた活用を行っていく。その基本計画を手がけているのが、入社11年目の山内が所属する「ストック活用計画課」だ。「私の担当エリアは、東京23区を除く東京都下の団地です。東京郊外で住環境もよく、通勤にも便利。人気のエリアですが、課題もあります。たとえば、建設から40年以上が経過した郊外大規模団地では、エレベーターがなくバリアフリー化が十分ではないですし、新しい団地でも駅から離れた立地では、将来的に選ばれない団地になる可能性があります。既存の建物を最大限に活用しながら、いかに魅力付けをして人気を回復するか。それが私の役割です。」「魅力付け」のわかりやすい例は、住戸の改修や、共用部・屋外空間の美化だ。ほかにも、バリアフリー化、エレベーターの設置、子育て世代が安心して遊べる屋外空間の整備、さらには医療支援拠点やコミュニティ拠点の整備といったソフト面にまで及ぶ。そんな中で山内が取り組んだのは、民間企業と連携した暮らし方の提案だった。

「イケアとURに住もう。」

ただ住む場所を提供するのではなく、快適で新しい暮らし方を提案したい。URは、平成26年度より、スウェーデン発祥の大手家具販売店「イケア」と連携し、「イケアとURに住もう。」をコンセプトに、イケアの色鮮やかなデザインを取り込み、更なる魅力ある住戸提供を。現在担当している山内はこう話す。
「今回の提案プランのターゲットは共働きで二人住まいのご夫婦。北欧の暮らしに興味があるハイセンスな層です。クールな住戸デザインと洗練された室内装飾で大人の雰囲気を演出し、イケアの発信力を武器に、UR賃貸住宅の魅力を広く届ける試みです。在宅ワークを意識した機能性も付加しました。団地の立地を活かし、緑あふれる中で在宅ワークができるという提案にもなったのではないでしょうか。」
現在、独自の企画として、子育てしやすい、家事の負担軽減を目指した住戸リノベーションも準備中だ。洗濯の動線を短くできるユーティリティ室、食洗機対応の分岐水栓、ダウンウォール収納を備えたキッチンの設置などを検討している。だが、山内の業務は住戸改修に留まらない。

ミクストコミュニティの実現に向けて

URが目指すのは、「多様な世代が生き生きと暮らし続けられる住まい・まちの実現」であり、重要なのが、高齢者や子育て世代など、多世代の交流を育む「ミクストコミュニティ」だ。山内は前部署で、団地のコミュニティが年々希薄化しているとUR賃貸住宅の自治会から聞いたことがあり、持続可能なコミュニティ形成が必要だと感じていた。
「現在、私が検討しているのは、団地内でイベントなど多彩な活動を行いながら、若者層・ファミリー層も含めて、多世代を団地に呼び込み、地域の担い手を増やしていく企画です。団地内にはサークル活動や部活動、同好会が少なくないと聞いていますが、それらを起爆剤にしたイベントも考えられます。マルシェの開催も楽しいでしょう。郊外らしく余暇を楽しめる空間づくりや、ゆるく繫がるコミュニティ形成を進めていくことで、さらに団地の魅力が向上すると考えています。住戸だけでなく、ゆとりある屋外空間も含めて団地全体を自分の家としてつかってもらうような感覚を持っていただき、地域コミュニティが発展していくと嬉しいですね。」

こうした取り組みを、社内や地域の関係者とともに、それぞれの地域に適したアイデアを出し合いながら進めていく。やがては共に取り組んでもらう民間事業者も巻き込み、実現に結びつける。その中で、山内には、常に目標としているものが3つある。
「1つは、UR賃貸住宅を住まいの選択肢として持っていなかった方々に対し、広くUR賃貸住宅を知ってもらうこと。2つ目は、URだけで住まい・まちづくりを行うのではなく、お住まいの方々が生き生きと活動することで、まちがより良くなっていくこと。そして3つ目が、満足度を高めることで、多くの方々に長く住んでいただくことです。」
これらの目標を叶えた先にはきっと、URが目指す持続可能なまちづくりがあることだろう。


※取材時の情報となります。