Profile

香月 秀仁

東日本都市再生本部
まちづくり支援部まちづくり支援課

2018年入社。入社以来、バスターミナル改修工事の設計、密集市街地における測量業務の監督、UR保有土地の用地管理工事などに従事。2020年より長野県佐久地域における災害復旧支援を担当、翌年からは同県内のまちづくり支援を担当している。

長野県佐久地域を襲った豪雨

URは「都市再生」、「賃貸住宅」と並んで「災害からの復旧・復興支援」を事業の柱と位置付けている。自然災害は激甚化・頻発化の傾向にあり、URの取り組みは極めて大きな社会的意義を有する。例えば東日本大震災における復興支援では、26の被災自治体において、復興市街地の整備、災害公営住宅の建設等を強力に支援している。時は2019年10月、日本に大型台風が上陸した。後に「令和元年東日本台風」と名付けられた台風第19号だ。広い範囲で記録的な大雨となったが、中でも大きな被害を被ったのが長野県佐久地域である。住宅被害は全壊33戸、半壊206戸、床上床下浸水合わせて1,200戸以上。道路・河川など公共土木施設の被害は692ヶ所に及んだ。こうした事態を受け、長野県はURに災害復興支援を要請。URはこれまでの復興・復旧支援経験を活かし、「災害復旧工事マネジメント」に特化した支援を開始した。

被災状況の全容を掴め

URが取り組んだ「災害復旧工事マネジメント」。それは、膨大な復旧工事の効率的・効果的な推進と早期完了を目的とした横断的な調整業務だ。長野県佐久建設事務所、UR、長野県建設技術センターの三者で構成した「佐久地域災害復旧支援チーム」によって進められた。災害発生の半年後、このチームに参加したのが、当時入社3年目の香月である。初めて現地に入った時、香月は被害の大きさに呆然としたと言う。「道路・河川の約700ヶ所に被害が発生していると言われましたが、イメージがつきませんでした。復旧には相応の時間がかかることを覚悟しましたね。」香月がまず取りかかったのが、被害の全容を明らかにすること。被害の「見える化」である。「どこで、どの程度の被害が起きているのか。俯瞰的視点で整理を進めました。」

一体的な復旧をめざして

香月は着任早々、被災情報の収集と確認に奔走した。
「まずは、佐久地域の市町村など16の工事発注者、及び120を超える施工者の声を聞くことに努めました。時間はかかりましたが、関係者と会話を重ねることで信頼関係を構築できました。数値に現れない課題も、次第に伺えるようになりましたね。」復旧工事が必要な箇所は約2,000箇所以上にのぼり、それらの復旧が地域全体で一体的に進むよう、適切なマネジメントが求められた。そのため、災害復旧支援チームは3つの会議体を立ち上げた。工事発注者が情報の共有・調整を行う「発注者調整会議」。120社以上の施行者が情報共有等を行う「工事連絡調整会議」。そして、工事で使用する資材の安定的な調達を担う「施工確保対策連絡協議会」だ。香月は主に「工事連絡調整会議」の運営を担当した。
「工事の進捗状況や工程の情報を、正確に収集してまとめることがカギでした。それらが明確になれば、時期に応じて必要となる資材のボリュームも把握でき、必要な対策の検討に繋がります。それらの対策の積み重ねにより『一日も早い復旧』の実現に近づくことになります。」

現場の「今」を共有する

香月が常に意識していたことがある。「『現場を見ること』『現場担当者の声を聞くこと』『収集したデータを正確に把握すること』の三点です。特に現場担当者の声を聞くこと、生の情報を集めることを心がけました。現場で今、何が起こっているのか。その課題・情報共有が、復旧を前に進める力になります。」
香月は、コロナ禍における会議体のオンライン化、ホームページを通した広報の支援も担当した。

「同時多発的な河川流域型洪水の災害復旧支援は、URとしても初めての経験でした。しかし、復旧に向けた合意形成のための場づくりなどは、URが蓄積してきたコアなノウハウです。今回の取り組みでも、それが十二分に活かされたと思います。」

復旧の景色に感じたやりがい

URの取り組みは高く評価され、長野県知事からは感謝状が贈られた。香月自身にとって、2年近くにわたって関わってきた災害復旧とは、どのようなものだったのか。「業務のスタート時点では、地元(工事の受発注者)から『URに何ができるのか』と思われていたはずです。だからこそ、関係者との信頼構築にもっとも時間をかけました。生まれた信頼によって仕事が前進し、災害から復旧していく景色に出会いました。そこに、微力ながらも貢献できたことに大きなやりがいを感じました。」その実感が、香月を成長させたことは間違いない。香月は令和3年9月現在災害復旧支援と並行して、長野県内のまちづくり支援という新たなプロジェクトにも参加している。


※取材時の情報となります。