Profile

大島 茉子

東日本都市再生本部 事業推進部 事業推進第1課

2017年入社。団地再生事業に従事した後、総務部総務課を経て、2021年~2022年上期まで従事。豊島区東池袋エリアの事業を担当。

「木造住宅密集地域」という、東京の急所

東池袋一帯は戦災に遭わなかったため、戦前からの木造住宅が多い。木造住宅密集地域、いわゆる木密地域では、大地震や火災時における避難の困難さや延焼の危険性が高く、かつ道幅が狭いために消防車が入れず、被害が大きくなる可能性が高い。豊島区では、かねてより道路の拡張や土地の取得など木密地域の改善に取り組んでいた。2011年の東日本大震災をきっかけに、その重要性はより一層認識されるようになり、2013年にURは豊島区から要請を受け、協力者として参画している。

東池袋四・五丁目地区は東池袋駅から徒歩圏内で、大型商業施設であるサンシャインシティにも隣接する利便性の高いエリアである一方で、全体としては狭い路地や木造住宅が密集した防災性に課題がある地域だ。その改善として取り組んでいるのが、大島が担当する木密地域の改善である。

大島は2021年4月、新たにプロジェクトメンバーに加わり、東池袋四・五丁目地区の木密地域改善の計画担当となった。大島は当時をこう振り返る。「都市再生事業に関わるのは初めてでした。中でも『木密地域の改善』というプロジェクトは、全体像が見えにくいように感じました。まずは関係する事柄の一つひとつを、徹底して理解していくことがスタートでしたね。」

安心安全なまちづくりと。

現在、大島は主に3つの事業に携わっている。「老朽建築物の建替え等を促進するための土地取得。移転が必要な居住者のための住宅建設。地区内のまちづくり協議会の事務局支援に携わっています。」こうした取り組みが、不燃化とどのように関わっていくのか。「たとえば、すでに住む人がなく、相続する人もいない土地をURが取得し、木密地域の改善に協力した者の代替地として活用します。また、安全なまちづくりに向け、地元の方々で組織されているまちづくり協議会の事務局を支援する立場として、都市再生やコーディネートのノウハウを提供しています。安心安全だけでなく、持続的な発展をかなえる魅力あるまちづくりを目指し、サポートしています。」

地元の方々に受け入れられる喜び

多岐にわたる業務の中でも、大島が深く関わっていたのが「従前居住用賃貸住宅」の建設だ。「『従前居住用賃貸住宅』とは、たとえば道路の拡張など、木密地域の改善に伴って移転を余儀なくされるものの移転先の確保が困難な居住者向けの賃貸住宅です。私は計画担当として、事業の執行管理のほか、工事、設計、賃貸住宅部門など、関係各所との調整役をつとめました。嬉しかったのは、住宅が竣工してご近所に挨拶に伺った際、「こんなに素敵な住宅ができてうれしい」とおっしゃっていただけたことですね。地元の方々に受け入れられたことに安堵しました。」このほかに、大島は木密地域の改善に向けた取り組みとして、まちづくりの拠点の整備を行った。「URが地区内で取得した建物の一部を、公募で選ばれた事業者にお貸しし、URと事業者が地元の方々とのつながりを生む場としてリノベーションしました。この場ができたことをきっかけに、このまちに住む方々とより近い距離感でコミュニケーションを取りながら、安全なまちづくりへの想いを共有していきたいです。」

「URにしかできない」。その実感を力に。

大島はなぜ、地域の人々とここまで真摯に向き合おうとするのだろう。「木密地域の改善は喫緊の課題です。けれど、改善によって、まちの景色が大きく変わることにもなります。長年にわたってお住まいの方から『変化は受け入れなければならない。でも、不安な気持ちもわかってほしい』という言葉をいただいたこともあります。抱えていらっしゃる不安と誠実に向き合い、丁寧な説明を重ねて信頼を得ること。その姿勢がなければ、進めることのできない事業だと思います。」この事業は、URにしか手がけることはできない。大島はそう強く感じている。「土地を取得する際にも、URは中立・公平な立場で、地権者の目線に立って考えます。ですから、その土地を確実に木密地域の改善のために使うという信頼も寄せていただきます。また、木密地域の改善という大きな課題に対して、点ではなく面の解決を進められるのもURならでは。今回も、土地取得から従前居住者用賃貸住宅の建設、そしてまちづくり検討の支援まで、一連のプロジェクトとして手がけています。それらを地方公共団体と並走して進めていけるところに、URの強みを感じます」。東京の弱点をなくし、安心・安全、そして魅力あるまちづくりへ。大島は、着実に歩みを進めている。


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