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隈研吾さんと佐藤可士和さんが洋光台団地とまちを変える!展覧会で語った「団地の未来プロジェクト」への想い

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神奈川県横浜市の洋光台団地を舞台に、団地での新しい住まい方や、地域のあり方を創造していく「団地の未来プロジェクト」。建築家の隈研吾さんとクリエイティブディレクターの佐藤可士和さんが中心となり、URと連携して進めています。この取り組みについての報道関係者向けのトークセッションが、2021年3月、「佐藤可士和展」(※)を開催中の国立新美術館で行われました。そこで二人が語った想いをレポートします。

※2021年5月10日まで開催

「住む」が楽しくなるリニューアル

「団地の未来プロジェクト」の前身である「ルネッサンス in 洋光台」の取り組みは、2011年にスタート。隈研吾さん、佐藤可士和さんら各分野のスペシャリストが提言を行う「アドバイザー会議」、地域関係者や行政が意見交換する「エリア会議」が両輪となり、「洋光台中央」、「洋光台北」、「洋光台西」の3団地の再活性化に向けた議論が重ねられてきました。

写真:太田拓実

この取り組みをさらに活発化させ、それまでのアイデアを実際に形にしていくために、2015年に立ち上げられたのが「団地の未来プロジェクト」です。
隈さんがディレクターアーキテクト、佐藤さんがプロジェクトディレクターを務め、洋光台団地の広場や集会所、住棟外装をリニューアル。住民が気軽に立ち寄れるコミュニティカフェや、ユニークなライブラリー、住民交流をサポートするコミュニティスペースなども新設され、団地が明るくにぎわいを取り戻し始めています

こうした「団地の未来プロジェクト」の様子は、佐藤さんの代表的な活動の一つとして、「佐藤可士和展」でパネル展示されていました。

「集まって住む」で、団地を世界の資産に!?

「佐藤可士和展」で行われたトークセッションには、隈さん、佐藤さん、UR都市機構の中島正弘理事長とともに、大月敏雄さん(東京大学大学院 教授)、幅允孝さん(ブックディレクター)、清野由美さん(ジャーナリスト)が登壇
この方々は、 「団地の未来プロジェクト」のWebサイト上に開設された、「TALKING」というディスカッションの場にも参加している各界の有識者です。

トークセッションでは、ファシリテーター(進行役)の清野さんが、有識者ごとに質問を投げかけていきました。

「世界的に著名な建築家にとっての団地再生の意義」を問われた隈さん。高校生のころ、草やぶに洋光台団地が建ち上がっていく光景に衝撃を受けたというエピソードを披露しつつ、団地の価値の話へ。
「日本の団地のような集合住宅は、実は世界でもほとんど例がありません。日本の集合住宅は、20世紀に数多く造られたましたが、当時、『シンプルだけれど格好良く住める住宅』だった団地は、日本人の気質と、どこか相性が良い気がします
そんな団地を現代的に再生化できたら、世界遺産のような特別な資産になれると僕は思っています。それには、何としても格好良くしなきゃいけない! と、可士和さんたちにも参加を呼びかけました。」(隈さん)

名だたる企業のブランディングを成功させてきた佐藤さんには、「トップクリエーターが団地再生に感じる挑戦のしがい」が質問されました。
「小学生のころ、地元に団地が建ち始めました。デザインは自分の家と全然違うし、友達が住んでいた5Fは見たことのない展望で…。
僕の中で団地って、日本の良き時代の幸せな記憶なんです。その団地の再生が今、社会的課題にもなっています。僕が仕事を通して感じてきたクリエイティブの力で、課題解決のお手伝いができればうれしいです。」(佐藤さん)

また、「団地再生での課題発見と、目指す解決方法」について聞かれた佐藤さん。
「最初に考えたのは、人が集まって住んでいる団地の住まい方を、どのように価値化していくか? ということ。そこから、『集まって住むパワー』をプロジェクトのコンセプトに立てて、集まらないとできないことを見つけていこうと思いました。
それには、たくさんの方のいろんな知恵が必要です。『TALKING』という知恵が集まる場所をつくり、ここからさまざまなアイデアが生まれました。隈さんには建築を、僕はそういうソフトの部分をやっていけたら、と思っています。」(佐藤さん)

洋光台団地発で豊かな未来を!

トークセッションの後半には、テレワークスペースの開放やキッチンカーなど、各地のURの団地で実施されている、さまざまな取り組みも紹介されました。そして最後に、有識者の方々からのひと言が。

「今、幸せの定義が変わってきています。これまで会社は株主の利益が最優先でしたが、それ以上に社会に奉仕すべきという声が、コロナ禍で高まっています。
そんな中、世の中が目指す『新しい社会像』のようなものを、リアルな形で見せてくれるのが団地だと僕は思っていて、団地の可能性は、コロナの後の時代にいよいよ大きくなる気がしています。
洋光台団地をきっかけに、URさんにぜひ社会の大きな流れをつくっていただき、新しい時代の『救い』になってもらいたいです。」(隈さん)

そして、前身の「ルネッサンス in 洋光台」のころからを振り返って、佐藤さん。
「あのころから10年くらいかかり、ようやくこうして発表できるまでになりました。今までさまざまなプロジェクトをブランディングしてきましたが、このプロジェクトが一番、多くの人とかかわり年数がかかっています
いろんな人が参加し、知恵を出し合い、団地を通して共に社会の未来を考え、創って、共創していけるプロジェクトのプロトタイプ(原型、手本)になれれば最高ですね!」(佐藤さん)

今回、「『集まって住むパワー』による新しい豊かさとは」をタイトルに開催されたトークセッション。団地の集まって住むからこそのパワーが、新しい住まい方やまちの活性化を生み出し、未来をも豊かにできると、大きな期待を抱きました。

記事のまとめ

佐藤可士和さんと隈研吾さんがタッグ!団地の再活性に挑む「団地の未来プロジェクト」

  • ・隈さんをディレクターアーキテクト、佐藤さんをプロジェクトディレクターに、団地の再活性に向けた議論を具体化。「集まって住むパワー」を生かすさまざまなアイデアを実践していく「団地の未来プロジェクト」
  • ・これまでに洋光台団地の広場や集会所、住棟を改修。独創的なライブラリーなど、ライフスタイルを提案するスペースも新設
  • ・URでは、団地を生かした新しい住まい方や地域のあり方の発信している

隈 研吾さん

建築家。
1954年生。東京大学大学院建築学専攻修了。1990年隈研吾建築都市設計事務所設立。東京大学教授を経て、現在、東京大学特別教授・名誉教授。
1964年東京オリンピック時に見た丹下健三の代々木屋内競技場に衝撃を受け、幼少期より建築家を目指す。大学では、原広司、内田祥哉に師事し、大学院時代に、アフリカのサハラ砂漠を横断し、集落の調査を行い、集落の美と力にめざめる。コロンビア大学客員研究員を経て、1990年、隈研吾建築都市設計事務所を設立。これまで20カ国を超す国々で建築を設計し、(日本建築学会賞、フィンランドより国際木の建築賞、イタリアより国際石の建築賞、ほか)、国内外でさまざまな賞を受けている。その土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、やわらかなデザインを提案している。また、コンクリートや鉄に代わる新しい素材の探求を通じて、工業化社会の後の建築のあり方を追求している。

Webサイト:https://kkaa.co.jp/

隈 研吾さん写真
Photo(c)J.C.Carbonne

佐藤 可士和さん

クリエイティブディレクター、アートディレクター。
博報堂を経てSAMURAI設立。日本を代表するクリエーター。主な仕事に、国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロ、セブン-イレブンなどがある。著書としてベストセラーの『佐藤可士和の超整理術』、『聞き上手話し上手』、『佐藤可士和の打ち合わせ』など。慶應義塾大学特別招聘教授(2012-2020)、多摩美術大学客員教授。

Webサイト:https://kashiwasato.com/

佐藤 可士和さん写真
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