ゆたかなくらしって? ひと×コミュニティ
「ご近所以上、家族未満」の関係をはぐくむ「団地テーブル」って?シェアで暮らしが豊かに

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2025年7月、UR都市機構は、団地誕生70年を迎えるに当たりUR賃貸住宅の新しい事業メッセージ「ゆるやかに、くらしつながる。」を発表しました。そんな事業メッセージにぴったりなお店が千葉県千葉市の花見川団地にあります。その名も「団地テーブル HANAMIGAWA」。
どのような場所で、どのようなつながりが生まれているのでしょうか?
(上の写真の左側)©Koji Tsuchiya
みんなが集うことができる第二のリビング
UR賃貸住宅が新たに掲げた事業メッセージ、「ゆるやかに、くらしつながる。」。
この事業メッセージと同じように、ゆるやかなつながりを大事にしているのが、花見川団地にある「団地テーブル HANAMIGAWA」。2024年11月にオープンしました。
プロデュース担当の平岡雅史さん、コミュニティデザイン担当の岩宗勇希さん、設計・クリエイティブ担当の浅子雄祐さんにお話をうかがいました。岩宗さん、浅子さんは団地で暮らしています。


「団地テーブル」は、「ご近所以上、家族未満の関係を地域ではぐくむ」をコンセプトにした複合交流拠点です。
毎日店長が変わる日替わり食堂、自宅とは違う、もう一つのリビングのように使える会員制のシェアリビング、自分の好きな本を誰かと共有できるシェア本屋、団地内の別の場所にあるシェア住居(社宅制度)の、四つの機能を備えています。
僕自身、これまで全国で「絆家」というシェアハウスを運営する中で、シェアする暮らしの魅力をさまざまな世代に伝えたいと考えていました。この団地であれば実現できると思い、新たな場をつくることにしました。


この日の日替わり食堂は、「スパイスカレーとハーブティーのお店 SUNA」。店長の高橋さんは、店舗の2階で暮らしています。

一つの飲食店を構えるだけでは、固定のファンはできても、広がりは限られてしまうと感じていました。日替わり食堂という形であれば、大学生がコーヒーを出す日、近所のおばちゃんがたこ焼き屋をする日など、いろいろな世代、国籍の人がつながることができる場所になると思い、このような形にしました。
現在シェア住居では、2名の若者がお店の運営サポートをしながら入居していて住みながら商いにチャレンジしています。


「団地テーブル HANAMIGAWA」の設計を担当したのは浅子さんです。家具もご自身で設計しています。

もともとこのスペースはコンクリートの壁に囲まれた、少し冷たい印象の場所でした。しかし、施設としての居心地を考え、光を取り入れた明るい空間へと変えました。入り口には大きなガラス窓を設け、商店街とのつながりと、地域に開かれた店構えを意識しました。
店内ではコミュニケーションを楽しんでほしいという思いから、食堂とシェアリビングを大きなテーブルでつないでいます。また、床にカーペットを敷いているので赤ちゃんがごろんと寝転がることができ、パパとママもリラックスができるようにしています。
この場所では、50年以上にわたってフルーツ屋さんが営業していて、当時は赤いペンキで床が塗られていました。その歴史をリスペクトしたいと思い、カーペットの色を選ぶときも、昔のお店のインテリアを意識して取り入れたんです。

多世代が暮らしているから生まれる、新たなつながり
そもそもなぜ花見川団地に複合交流拠点をオープンすることにしたのでしょうか?


イベント開催時にお客さんとして花見川団地を訪れた際、来場者の多さから「ここにはポテンシャルがある」と感じました。また、自然が豊かで保育園も整っていて、ここなら子どもをのびのび育てられそうだと感じ、2022年に家族で移住してきました。
もともと「地域活性化に貢献できる拠点を持ちたい」と思っていたため、平岡さんに花見川団地を紹介し、相談したことでプロジェクトがスタートしました。


団地で育ったので、子どものころは隣のおばちゃんの家に遊びに行って、ご飯を食べたり、お風呂まで入らせてもらったりするのが日常でした。そんな「ご近所以上、家族未満」みたいな関係こそ、今の子育て世帯や、一人暮らしのシニア世代にとって必要なのではないかと感じていたんです。そんなときに、多世代が共に暮らす花見川団地の存在を知りました。
団地商店街のみなさんがとても協力的で、挑戦したい気持ちを後押ししてくれたことも、この場所にした理由の一つです。

オープンして約半年ですが、既に世代を超えたつながりが生まれているそうです。

日替わり食堂を担当する大学生は、飲食店の営業が初めてでした。オープン当初、提供時に料理が冷めていたことから、せっかく来てくれたおばあちゃんが帰ってしまったことがありました。
「もう来てもらえないかも」と心配だったのですが、おばあちゃんはその後も何度か足を運んでくれて今では大学生を応援してくれています。初回で見限らず成長を見守ってくれ、いつの間にか日替わり食堂がそのおばあちゃんにとっての居場所にもなっていたことは、団地という場所ならではの温かい出来事だと感じています。

今の大学生って、普段の生活の中で上の世代と関わる機会ってあまりないようなんです。でも、ここでお店をやるといろいろな世代の方が話しかけてくれるんですよね。あるシニア世代のお客さんが悩みを相談してくれたときには、大学生が「こういうことを聞けること自体がすごく新鮮」と話していたのが印象的でした。
また、花見川団地商店街にある別のお店の店主さんが、大学生にアドバイスをくれることもあります。そんな関係を自然に築ける場って、なかなかほかにはないと思います。


引きこもりがちだという10代の女性も、ときどき立ち寄ってくれています。「ずっと家にいるのもしんどくて、外に出る理由となる場所が欲しかった」と話してくれて、ここでのんびり過ごしたり、ほかのお客さんとおしゃべりしたりしています。
この場所が、その子にとって外とのつながりを生むきっかけになっていると思うと、うれしいですね。

入店時に靴を脱いでもらうのですが、心の距離が縮まるのか、訪れた人同士自然と会話をしている光景をよく目にします。「ここなら話しかけても大丈夫」という空気感があるのかもしれません。第二のリビングを目指す中で、徐々にイメージが形になってきていると感じています。

さまざまな形で自分に合った関わり方ができる
UR賃貸住宅の新事業メッセージ「ゆるやかに、くらしつながる。」について、実際に団地に住みながら複合交流拠点を運営するみなさんが、どう感じているのかをうかがいました。

団地に住んでみて、団地のマジックがあると気付きました。
例えば、「団地テーブル」に来た人が「団地に住んでます」と言うと、「何街区ですか?」、「いつから住んでますか?」と会話が続き、いつの間にか仲間のようになるんです。これはすごいマジックですよね。
同じ団地に住んでいるという意識が、ゆるやかなつながりをつくっていると感じます。


新しい事業メッセージには、「団地テーブル」と重なる部分があります。
商店街の道端で立ち話をしている人、「団地テーブル」でごはんを食べに立ち寄る人、日替わり食堂の店長としてお店に立つ人、そしてシェア住居(社宅制度)で暮らしをともにする人。
こうした多様でゆるやかな関係のグラデーションを、「団地テーブル」でも大切にしています。

一般的に若い人が住むシェアハウスというとクローズドなコミュニティになりがちですが、「団地テーブル」は“住み開き”のように、住んでいる人がお店を開いて、街の人たちと自然につながる場になっています。
つながり方に幅を持たせて、「団地テーブル」を通じた出会いのきっかけをどんどん増やしていきたいですね。

「団地テーブル」は、人も空間も自然体で、誰かとふと話したくなるやわらかい空気感がありました。関わり方がそれぞれに委ねられているこの場所であれば、日々の暮らしの中でゆるやかに人がつながることができそうです。
毎日が楽しくなるお店や催しがたくさんの花見川団地
花見川団地では、「MUJI×UR団地まるごとリノベーション」を実施。2024年3月に商店街や住棟の外観、屋外広場、商店街区がアップデートされました。雰囲気が明るくなったと好評で、訪れる人も増えています。

商店街には「団地テーブル HANAMIGAWA」をはじめ「中屋フルーツ」、「ミトーリ工房」、「レンタルスペース はなみがわLDK+」、「ROUTEMAP COFFEE & BOOKS」、「お休み処 えがお」、「Piggy Gang」、週3回のMUJIによる出張販売など生活に便利なお店が立ち並んでいます。「100円商店街」、「花見川団地マルシェ」、夏祭りなどのイベントが行われることもあります。
敷地内には、千葉市による「花見川・子育てリラックス館」があります。子育て中のパパ・ママが親子で気軽に集い、先輩ママやスタッフと話せたり、アドバイスをもらえたりします。また、敷地内は歩車分離されているので子どもと一緒でも安心です。
心地よい距離感で人と出会い、自分らしい生活を送ることができるUR賃貸住宅。今後もゆるやかなつながりをはぐくむ住環境を提供し続けることを目指しています。


「団地テーブル HANAMIGAWA」で心地よい出会いが増える!
- ・「団地テーブル」は日替わり食堂、シェアリビング、シェア本屋、団地内の別の場所にあるシェア住居(社宅制度)の、四つの機能を備えている
- ・今の時代こそ「ご近所以上、家族未満」の関係がある暮らしが必要なのではないか、との思いからオープン
千葉県千葉市花見川区花見川1ほか
京成本線「八千代台」駅からバス3~10分、徒歩で1~8分。
花見川に沿って広がる、戸数約5700戸の大規模団地。団地の中には、公園や広場もあり緑豊かな環境が魅力。近くの川での釣りやサイクリングも楽しめます。立ち止まってのんびりと談笑する住民の方々を多く見かけました。

花見川テーブル HANAMIGAWA
千葉県千葉市花見川区花見川2-42-105
花見川団地にある複合交流拠点。食やイベントを通して地域の人々が集まり、交流を深めることができる場所です。
日替わり食堂、シェアリビング、シェア本屋、団地内の別の場所にあるシェア住居(社宅制度)、の機能があります。
最新情報は店舗のSNSをご確認ください。- 【定休日】不定休
- 【営業時間】日によって異なります。
- 【Instagram】
https://www.instagram.com/danchitable_hanamigawa/
©Koji Tsuchiya

くらしのカレッジ編集部は、「くらし」に関するさまざまなヒントをお届けすることを目的に、インテリア、リノベーション、DIY、子育て、イベント情報など、生活を豊かにするアイデアや日常的に楽しめるコンテンツをご紹介しています。
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