TALKING

打ち合わせ風景

各界の方々と意見交換し、多角的な視点から様々な施策アイデアをふくらませていく「TALKING」。今回は「クラウド」「シェア」をテーマに、建築家で成瀬・猪熊建築設計事務所の成瀬友梨さん、社会学者の新雅史さん、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授の大月敏雄さんをゲストにお招きし、「団地の未来は、生き方の未来」と題して議論いただきまいた。その様子を4回シリーズでお伝えします。
(この座談会は2017年12月に収録されました。)

出席者

ファシリテーター:清野 由美(ジャーナリスト)

ゲスト:成瀬 友梨(建築家)、新 雅史(社会学者)、大月 敏雄(東京大学教授)

団地の未来プロジェクト プロジェクトディレクター:佐藤 可士和

UR:熊谷 雅也(UR東日本賃貸本部 ストック設計部長(当時))、尾神 充倫(UR 同本部 団地マネージャー(当時))

vol.22 団地の未来は、生き方の未来

「クラウド」は、団地の課題を解決するための考え方

尾神 本日はお集まりいただきありがとうございます。
神奈川県横浜市・洋光台団地を舞台にした「団地の未来プロジェクト」ですが、様々な取り組みを進めていく中で、団地再生の糸口として、私たちが「クラウド」と呼んでいる考え方があります。これは、皆様も多彩な形で取り組んでいらっしゃる「シェア」という概念に近いものだと思います。そういった団地やそのまちを活性化させるための大切な考え方を、これからどのように活用していくかという視点でお話できればと思います。本日は社会学者の新先生、建築界でシェアに関する本を出版されるなど、実際に取り組みをされている成瀬さん、そしてお二人をご紹介いただいた大月先生にもご参加いただいて進めさせていただければと思います。

一同 よろしくお願いします。

左:佐藤可士和氏 右:大月敏雄氏

佐藤 大月先生と僕は最初に「団地の未来プロジェクト」以前の「ルネッサンスin洋光台」のアドバイザーとして隈研吾さんに呼ばれました。それが6年前でしたよね。

大月 そうですね。

佐藤 1年間の会議を経て、正式なプロジェクトにしようと「団地の未来」という名前をつけて隈さんと僕でディレクターという立場で関わらせてもらっていますが、とても難しい課題なので、なるべくいろいろな方の意見を取り入れた「オープンイノベーション型」のプロジェクトとして進めています。隈さんが実際の団地の広場を改修されて、集会所のリノベーションのコンペでは僕も一緒に審査員をやらせていただいていますが、建物だけではなかなか課題解決は難しいので、もっと幅広い方々に入っていただこうと考えました。広場や集会所が完成すると、プロジェクトがもう少し可視化できるのではないかと思います。

尾神 今日はジャーナリストの清野由美さんにファシリテーターとして来ていただいています。今後の団地の肝として考えている「クラウド」と呼んでいるものに関して、団地が置かれた状況や社会状況なども踏まえて議論していただきながら、洋光台でこんなことをやったらいいのではないか、というご意見をいただければと思います。

佐藤 「クラウド」は僕がディスカッションの中で言ったキーワードなのですが、エリアの中の機能を全部自分たちで持つと大変だから、クラウドコンピューティングのように機能を外に置けばもっと運営を軽くできるんじゃないかなと発想したものです。例えば図書館も自分たちでやっていこうとすると大変なので、なるべく外に出したほうがいいのでは?とか。

ファシリテーター 清野由美氏

成瀬 それは団地の外、という意味ですか。

佐藤 いろいろ考えられます。外部のリソースだったり、場所は内部でも運営を外部に委託するとか、エリア外でも良いでしょうし。要するに、そこに住んでいる人たちが快適になるために、全部のリソースを自分たちで抱えなくても良いということです。積極的にその考え方を導入することで何かダイナミックなことができないかなと思っています。まだコンセプト段階ではありますが。

清野 クラウドの言葉の定義については後ほど補強しましょう。まずは洋光台プロジェクトの振り返りや、基礎的な内容を皆様に共有していただき、2番目に社会的な背景、社会課題などを皆さんと整理して、3番目にクラウドの定義をもう少し補強し、最後に皆さんの議論を深めていくという流れにしたいと思います。

洋光台プロジェクトのねらい

尾神 簡単に振り返りとしてご説明します。URの賃貸ストックは74万戸、ほぼ50年近く経つものが約50万戸近くあり、今後、時間が経てば間取りなどが、どんどん陳腐化していく状況です。少子高齢化や人口減少は、想定を超えるくらいの事態になっていくと思いますが。その中で、核家族というよりは単身が増えていくと予想されます。

清野 一人暮らしの方が増えるということですね。

尾神 URとしては高齢者の方でも保証人が不要という条件面もあって、高齢者の方の絶対数が多いのですが、その方々に対する施策をもちろんしつつも、まちが元気になるためには若年層ファミリーに入っていただくというところも急務かと思っています。

清野 その点で団地にはポテンシャルがあるということですね。

尾神 はい。ですが、団地だけが元気になれば良いということではなくて、団地を核にまち全体、いわゆる郊外住宅地の再生として取り組むということが考え方としてあります。

清野 それは大切な考え方ですよね。

洋光台プロジェクト 取組み概要と今後の展開(H23~)

尾神 「集まって住む力」ということが、プロジェクトの記者発表時に可士和さんからいただいた言葉ですが、団地のように人が、に住んでいるところで人と人との触れ合いを通じて何か新しい価値が生まれないか、新たな住まい方ができないか、ということが、クラウドという発想の原点です。

佐藤 価値の共有化によって新しい価値をつくる、という考え方ですね。

尾神 まず、プロジェクトの核である団地自体に魅力がないと話になりませんので、団地のブランドイメージ再構築という視点で、いろいろ取り組みはじめています。

清野 具体的にはどんな内容ですか?

尾神 団地の価値向上の視点では、バブルの頃のように新たなものを持ってきて再構築するということではなく、もともと50年近く経った街には、いろいろな人材や資源、空間資源も豊富だと考えているところからスタートしています。

佐藤 でも、ちょっと合わなくなってきているところもありますよね。

尾神 はい。資源が持つ価値の転換や向上への取り組みとして平成23年から「アドバイザー会議」を実施し、可士和さん、大月先生、隈先生からも忌憚のないご意見をいただきました。平成25年からは、小林重敬先生(横浜国立大学名誉教授、一般社団法人森記念財団理事長)に入っていただき、エリアマネジメントの会議を実施し、ワークショップやアンケートを実施しております。

清野 形として見えてきたものにはどんなものがありますか?

尾神 中央団地の外壁修繕が完成し、まちの玄関となるアーケードの改修を行いました。Ⅱ期については集会所のコンペを実施して、それに約150の応募があり、基本設計と実施設計が進んでいて、令和2年に完成予定です。

清野 楽しみです。

尾神 (配置図上の①)右手の高層住棟は住宅に建て替えて、一階部分にクラウドとなる共用的な空間を設けようと考えています。(配置図上の②)左手の住棟については除却し、高齢者系の施設を持ってきたいと検討しています。

清野 建て替えも行っていくとなると、今後を見通した新しいコンセプトが重要になりますね。

尾神 はい。どのようなものが必要になってくるかということも、本日ご協議いただければと思っています。

清野 今日の議題の対象はどの地区になりますか?

尾神 中央部分も関連しますが緑色でアミかけした地区全体と考えています。

清野 クラウドというキーワードで考えているのが緑の地区ですね。今の話を簡単にまとめると、URの賃貸住宅の抱えている課題としては、ストックの陳腐化のおそれ、社会背景として少子高齢化や人口減少、そして住戸に対するニーズの多様化といった3つがあるということですね。

団地は、人々が緩やかにつながるネットワークの「ハブ」

清野 今回の座談会の前提として、3つの課題(ストックの陳腐化、社会背景として少子高齢化や人口減少、住戸に対するニーズの多様化)があります。それらを乗り越えるために、団地を核とした街全体の魅力の向上と、「集まって住む」という住まい方の新しい提案と、UR賃貸ストックのブランドイメージの再構築を目指したいということですね。

佐藤 少しずつですが、進めています。

清野 社会背景としては、高度経済成長期にはベビーブームによる住宅不足で、URが積極的に団地をつくる必要性がありました。21世紀に入り産業構造も大きく転換した後、少子化、高齢化、空き家問題、都心への人口集中といった社会課題に、私たちは直面しています。

佐藤 社会の課題としては、正反対になりましたよね。

清野 家族構成の変化もあります。高度経済成長期に広まった核家族からもっといろいろな家族のあり方、もしくは個人のあり方が変貌して、一様に2DKで暮らしがまかなえるという状況ではなくなってきている。消費動向で言えば、20世紀は家族にとって郊外の一軒家が、住宅すごろくの最終的なゴールと言われていましたが、今は長いローンを背負って買った家も、資産価値が目減りしてゴールが揺らいでいる。家を買うにしても、あるいは賃貸に住むにしても、家に対する感覚が変わってきていると言えます。

尾神 その通りですね。本当に多様化しています。

清野 URが手がけてきたニュータウンが、現在、社会的にどのように捉えられているかというと、高齢化社会の象徴的な場所としてメディアに取り上げられています。それはその通りなのですが、記事報道の観点とは違う団地の良さがあるということは、もっと発信されていいですよね。

尾神 数十年前から5年ごとに統計上必要な数を抑えた定期調査をやっていますので、そのご説明を少しいたします。

スタッフ 団地居住者の平均年齢が初めて50歳を超えてしまいました。次に年少人口と高齢人口ですが、15歳以下の年少人口は5年間で2%減り、高齢者世代が25%から34%とかなり増えていることが分かります。戸建てを終の棲家とするのではなく、戸建てを世話しきれずに新たに入ってくる方もいますので、これだけ増えていると考えられます。
この数字だけ見ると、高齢者ばかり住んでいるように見えるのですが、世帯主年齢の分布を見ていただくと、30歳代と30歳未満の世帯主年齢が11%です。つまり、数でみると若い人たちもたくさん住んでいるのです。そういった資源もあると皆さんに知っていただきたいですね。

清野 実は、団地には若い世代の住人資源があるということですね。では、ご出席の先生方に、それぞれご自身が一番課題と捉えている社会的な背景についてお話しいただければと思います。

尾神 私たちも社会的な状況変化や今後日本がどう変化していくのかといったあたりに弱いところがあります。単身高齢者やパラサイトシングルの方々の世帯も増えていくだろうと思う中で、高度成長期の良い時につくられた団地が今の消費社会動向とどうマッチングするのか、それがどう変わっていくのかというところを把握しておかないとクラウドの議論にもつながっていかないと思っています。その辺を少しご教示いただけるとありがたいです。

清野 新さん、社会学の視点からいかがでしょうか。

新雅史氏

 団地で高齢者が孤立している状況を社会学では「社会的排除」と言います。団地といえば社会的排除の空間なのかなぁ、というイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、現実はそうではない。すべての団地とは言いませんが「包摂」の空間であることが多い。排除の反対の言葉としての「包摂」、包み込むという意味ですね。

清野 社会的包摂、ですか。

 はい。高齢化が進展する団地がこれまで維持できてきたのはなぜか。それは団地のなかで人間関係が幾重にも存在するからです。団地というと家族を入れる箱というイメージがあるかもしれませんが、団地の中にはそれ以外の人間関係が積み重なっている。標準的な家族像というものが溶けていく時代の中で、団地の住宅がネットワークのハブみたいな感じで使われている。

清野 団地とは「箱」ではなく、「つながり」の機能であるということですか。

 ここの家はおじいちゃんがいるけど、ひとり暮らしで健康管理は誰がしているんだろうと思ったら、案外近くにいる人たちが見守りをやっている。団地って、そういったいろいろなネットワークのハブとして使われているような感じがします。こうしたネットワークのハブという価値が、強くあるのだと思います。農村もそうだと思いますね。そのネットワークをうまく活かして可視化する、あるいはデザインの力を使って、メッセージにしていく。そういうことが今求められているかと思います。

清野 団地には、ネットワークのハブとしての価値がある、と。

 僕はそう思います。

清野 成瀬先生はいかがですか。

成瀬友梨氏

成瀬 高度経済成長期の頃はみんな終身雇用で会社に勤めることができて、会社と核家族というコミュニティ、それだけで充足していたところがあったと思いますが、終身雇用制がくずれてきていて、収入も安定しない人が増えて、で、家族も子供を産むのがスタンダードではなくなって、生涯未婚ということもある、と考えると、会社にも自分の拠り所となるコミュニティはないし、一人だと当然家族コミュニティもないし、今まで自然に存在していたコミュニティが崩壊してしまっていると思います。

清野 成瀬先生は著書でも書かれていますよね。(成瀬氏の著書「シェア空間の設計手法」を紹介)

成瀬 そういった背景を前提に、私たちの事務所ではシェアのことを社会問題と絡めながら考えているのですが、今まではレールに乗っかっていれば幸せになれたというところから、みんなが脱輪しつつあって。それは自由になることとも同義ではあるので、自由になった状態を苦しい大変なことと思わずに、皆がどれだけ楽しいことだ、幸せなことだと思えるかということが大事だと思っています。

佐藤 なるほど、レールからはずれることは自由で楽しいと。

成瀬 はい。戸建を自分で維持できなくなった人が団地に入ってくるという話もありましたが、私自身も家を買うか今だに迷っていて。自分は、建築家で設計もできるのに(笑)。

一同 なるほど。

成瀬 URの団地は保証人が要らないというお話がありましたが、今、高齢者の方が借りられる不動産だけを集めたWEBサイトがあって、運営しているのは若い20代の方らしいのですが、爆発的にヒットしてビジネスとしても大成功しているそうですよ。

清野 そういう仕組みが登場しているのですか。

成瀬 私が言うと自分の仕事の首を絞めるようになりますが…そういう価値観‘あるよね’と発信するって、ありだなと。

清野 全くありだと思います。

成瀬 新先生が仰っていたことに私が共感するのは、今まではプライバシーのある家が並んでいて、効率的に集まっていれば良かったのですが、その中で一人しか住んでいない家がある場合に、今までのハードのつくり方だと、自分から能動的に行動しないと人に会えない構造になっていることです。その部分はリノベーションなどで、自然と出会って自然と交わってしまうように空間を変えて、ソフトとハードの両面から解決できるかなと考えています。デザインの力が必要ですね。

清野 大月先生はいかがでしょうか。

大月 洋光台はここだけではなく西団地もあるし、周りも含めて「台のまち」と言われています。「台のまち」全体でいうと、団地の住民は周りと比べて比較的若いんじゃないかと思います。入れ替わりもありますし。私は以前から「近居」と言っていますが、自分は団地に住んでいて、周辺におじいちゃんやおばあちゃんがいて孫を預かってもらったりと、そういう住み方はあるんじゃないかなと考えています。

清野 今どきの新しい住まい方としての「近居」ですね。

大月 「近居」では、団地に住んでる1世帯と、周りの戸建てに住んでいる1世帯合計2世帯が一つの家族として暮らしていたりします。そうであれば、近居をする団地の1世帯の暮らしが変わることによって、周りの戸建ての1世帯の暮らしも、じわーっと変わっていく可能性があると思います。そこまでねらった、目に見える仕掛けをつくるというのは重要だと思います。

尾神 先生がおっしゃるように、団地の住民の方は、年間に概ね10%退去して10%入居してきます。洋光台団地は新陳代謝があって、郊外の分譲団地よりは明らかに若い人が入ってくる可能性がありますね。ところで、我々は実は団地だけじゃなくて、周辺のお祭りにも参加しています。お祭りの様子を見ると、洋光台では周りの分譲戸建てエリアのほうが子どもが多いんです。

清野 そうなんですか。

尾神 なぜかというと、二世帯、三世帯の住宅なんです。立地がいいから、親世代の家に、その子世代も戻ってくる。

清野 今まで、URで住まい方調査などはされているんですか?プライバシーの問題などもかなりあって、なかなか難しいとは思いますが。

 千葉県柏市に豊四季台団地という大規模な団地があり、そこで大月先生とも仕事をご一緒させていただいていますが、社会学のチームでスマートフォンを使って、行動調査と生活時間調査をやったんですね。そこで分かったことは、団地の周辺の人たちが団地を居場所として使っているということです。ちょうど建替えを進めている最中であり集会所や喫茶スペースが一時的に使えなくなったことがありますがそのときは住宅が集会所のように使われているのです。

清野 住んでいる人のところが、集会所になっているのですか。

 建替えられた広いワンルームにサークルの方々が集まって、趣味活動をしているのです。こうしたサークル活動は、団地にお住いの方に限っているわけではありませんから、団地周辺の方たちもワンルームに集合して趣味活動をおこなっています。

大月 それは自分のワンルームを開放しているんですか?

尾神 団地型の「住み開き」みたいな感じでしょうか?

 そうですね。サークルの方たちに開放していて、ぞくぞくとみなさんが入ってきます。

佐藤 自分の家を?

 そうです。

大月 だとしたら、洋光台もありうる?

尾神 場所によってですね。中間の部屋だと難しいから、やるとすれば妻側の部屋でしょうか。実は今、5階建て中層の妻側の部屋はいろいろな可能性があるだろうと思っていまして、そこをそういう風にしていくのはひとつの方法としてあるかな、と。

清野 今のお話は、URがどうというのではなく、皆さんが自発的に?

 もちろんURが仕掛けているわけではなく、サークルの方たちが自発的にやっているわけです。わたしも団地全体を調べているわけではないですから、どれだけの方が「住み開き」をやっているのか分かりませんが、じつは団地の中ではこうしたネットワークがいくつも存在しているように思います。ただ、団地の場合、同じフロアで「住み開き」をやっていても、気づかない可能性がある。団地が高性能になればなるほど、お隣でどのような活動をやっているのか、気づきにくい。だとすると、団地という密集した空間で、人々がどのようなネットワークをもっているか、お互いに見せるようにするのが次の話になると思います。

清野 ネットワークをさらにどうつなげていくか、と。

 ひとつ紹介させていただきたいんですが、社会学で「限界集落の農村がなぜ滅びないのか」という調査が行われています。これも先ほどの話と同じなんですが、農村の高齢化があんなに進んでいるのになぜ衰退しないで滅びないのか、と。農村は、人間関係が強そうに見えるかもしれませんが、案外、ご近所さんの状況をを把握できていないことがあります。一人暮らしの高齢者がたった1人で農地を管理しているのかと思いきや、実際は近くに住んでいる子どもや親類が定期的に手伝っていたりする。ですが、そうした実態を、集落全体で把握していないことが多い。農村社会学者である徳野貞雄さんは、集落の方たちに集まってもらって、それぞれの家族関係をお互い確認するワークショップをやっています。ご近所さんの家族関係を把握することで、子どもや親せきがじつは手伝いに来ている実態を知るというわけです。こうしたワークショップを「T型集落点検」と言います。

佐藤 そんなワークショップがあるんですね。

 たとえ家族が一緒に住んでいなくても、定期的に農作業を手伝っているならば、立派な家族ネットワークですね。こうした親族ネットワークの実態を、集落全体で把握するわけですが、ただ親族ネットワークがいつまでも利用できるかはわからない。10年後、20年後になると、手伝いにきている子どもや親族も、年老いてくるわけです。こうしたそれぞれの家族の将来見通しを地域全体で把握する。こうした把握を通じて地域が何をすべきかという議論になるわけです。

清野 なるほど。

 農村や団地には、こうした親族ネットワークや趣味ネットワークが存在しているわけですが、それを把握するのは難しい。ただ、こうした隠れたネットワークを可視化すると、確実に地域力が上がると思います。

清野 私のイメージでは、農村ってやっぱり親族的なネットワークが強固な感じがするのですが、今は少し変わってきているということですか?

 親族ネットワークはいまでも残っています。ただ、そうした親族ネットワークを把握する力が弱まっている。

大月 昔だったらそんなことやらずに、あそこのうちの息子はあそこに住んでいて、とか普通に分かり合っていたはずですよね。

 そうなんです。もしかすると都市部よりも農村の方が個別化しているのかもしれません。

佐藤 それはどうしてですか?

 都市は、農村に比べると人々が密集していますから、ネットワークを把握しやすいですね。また、同じような高齢化であっても、都市部と農村部では意味がまったく異なります。当然、農村部の方が移動に大きな労力がかかります。だからこそ「T型集落点検」のようなワークショップが必要になるのだと思います。

大月 僕のうちは農家なのでよく分かるんですけど、自立できるんですよ、農家は今。昔はトラクターを共同で買って、お金がないものだからみんなで使い回しして、共同でやっていた作業がいっぱいあったのですが、自分のところで一人でできるようになっちゃった。

清野 なるほど。

大月 だんだん隣近所との接点がなくなって、個別でやるようになってしまってきた。

清野 農村が都会のようになってしまったのですね。

大月 そうすると、プライバシー意識も高まって、今、戦後の新しい代がやっているから、他人の家にちょっかい出さない、みたいな自制心が働く。というのは、あくまで僕の私見ですが。

清野 …というように、団地に限って言えば、実はネットワークのハブがあるのに発信しきれていない今は人々のライフスタイルが20世紀モデルから変わってきて、いかに自由に生きるかがテーマになっているが、団地のハードはその流れに対応し切れていない。ただし、実際の住まい方を見ると、随分フレキシブルだね、という状況がある。そのギャップを埋められてない部分をクラウドという言葉で埋めていけるのではないか、というお話が、今回の主題ですね。

vol.23 団地の未来は、生き方の未来

進化している、現代の「シェアハウス事情」

清野 はじめに話をうかがった時に、「シェア」という言葉でなく「クラウド」ということが分からなかったのですが、もう一度可士和さんにご説明していただければと思います。

佐藤 まぁ、シェアに近いんですけど(笑)、もうちょっとなんていうか、デジタルの力も少し使いたいな、と。今はそういう意味合いとかも含めてクラウドといった方が分かりやすいかなというところですね。シェアは「行為」であり、クラウドは「在り方」とも言えます。

清野 シェアというのが今の世界で、一つのバズワードになっていて、受け取る人にとって定義がバラバラになっていると思います。

佐藤 クラウドって「クラウドサービス」というように使われているじゃないですか。だから、サービスを提供する側として、どういうことをやっていくべきなのかなと。利用する人たちがシェアしていきたいと思うようなサービスを考えていかなければと思ったので、クラウドの方が分かりやすいかなと考えました。

清野 なるほど、そういうことなんですね。

尾神 自分の体験で恐縮ですがiPhoneの調子が悪くて、緊急避難的にアンドロイドを買ったんです。で、OSが違うとなかなかうまくいかないですが、実はクラウドであれば問題ないわけですよね。今は洋光台団地をモデルに議論をしていますけど、実はほかの団地でも多様な展開の仕方があるので、それぞれに柔軟にハマるという考え方だと、クラウド的かなと。OSに作用されず、団地の置かれている立場とかにも左右されない。その意味で、クラウドという言葉は良いと思っています。

清野 クラウド、シェアといえば成瀬さんが建築の中で実践されています。実際にお仕事を通してシェアというものを追求していく中で、可能性と課題はどういったところにありますでしょうか。

佐藤 いつ頃から、シェアが大切と言われているんですか?建築業界では。

成瀬 私たちは2010年に「集まって住むを考え直す」という展覧会をやって、そこでシェアハウスの提案を出しています。その辺から私はシェアの話をしているのですが、建築家がシェアハウスの設計をすることは、当時は全く話題になっていなくて、やっぱり、3.11の後のような感じがしています。

大月 シェアハウスって言葉は、最初の頃はゲストハウスでしたよね。外国人用のゲストハウスみたいな。シェアと呼ばれ始めたのは2010年頃、その少し前ぐらいかな。

佐藤 それは、ざっくり言うとインターネットの影響でしょうか。ネットが発達したのはもう少し前ですけれど、主に一般化されたのは2000年代に入ってからですよね。それで世界中が繋がってから、所有するという概念が急激に薄らぎましたよね。音楽も昔はみんなレコードを買っていたのが、ダウンロードして買うようになって、巨大なサーバーに置いてある音源にアクセスしてシェアするようになった。シェアは、インターネットの大きな影響を受けて広がった新たな可能性ですが、それとこういった空間のシェアというのがどうつながっているのかな。

大月 昔からシェア的な思考はありましたね。ただ、コレクティブハウスは阪神大震災があった後から5年10年ぐらい流行しました。

成瀬 インターネットの普及はシェアを加速させていると思います。

佐藤 ライフスタイルがすごく変わった。ネットでつながったらいろいろなサービスが可能になって、タクシーもシェアするし、Airbnbとか、あらゆるものがクラウド化しました。しかもそのクオリティが良くなりましたよね。それも背景として大きいと思います。

大月 ビジネスとして成立するようにもなった。

佐藤 あと、ものを所有することへの憧れがガクッと減ったのも大きい。建築家の家もつくった時は新しいけれども、ライフスタイルや家族構成が変わると合わなくなってしまう。
車もそうです。音楽も所有する憧れがものすごく減っちゃったので、そういう意味でいうと、レコード会社も新しいビジネスを考えなくてはならなくなっていますね。

大月 LPジャケットが欲しいという類の憧れが、昔はあったのに。

佐藤 それこそYouTubeでも音質がほとんど変わらなくなっちゃったから。コピーではなく、そのものが出ていますから。好きな時に月々いくらで聴き放題ですと。ドサッとクラウド上にあると、敵わないですよね。

大月 我々世代は、容易にそこに行けない昭和の重たさを引きずってます(笑)。成瀬さんや新さんの世代って同世代なのかな。

 いや、どうなんでしょう。弱冠、僕らの方が若いです(笑)。

大月 クラウドにアクセスする軽さって全然違うように感じるんだけど。

 一歩目を踏み出すハードルは低いと思います。クラウドということでいうと、最近、社会学でシェアハウスの研究が増えてきていますが、個室の集合体としてのシェアハウスならば、それほど面白みがない。この点について、渋家(SHIBUHOUSE)というシェアハウスの方に聞いたら、とにかくミーティングが大切だと。コミュニケーションが肝だということだったんですね。

清野 コミュニケーション?

 これは、家族と比較するとわかりやすいかもしれません。家族は、あまりミーティングをしませんね。家族では、ミーティングをやらなくても、それぞれの役割がぼんやりとある。「私は洗濯します」って、わざわざ家族会議で宣言しない。でも、シェアハウスの場合、他人同士が集っているわけですから、共有スペースの管理について、ミーティングをこまめにやらないと、特定の人に過度な負担がかかる。

清野 はい、それはよく聞きます。

 特定の人に負担をかけないためにも、コミュニケーションが大切というわけです。さらに、ミーティングのやり方をどうするかっていうことが重要らしいです。それは「決定に重きを置かないミーティング」だそうです。何かを決めることが目的になると、いつも発言する人が有利な運営方法になりかねない。そうではなくて、とにかく時間をかけてコミュニケーションをとる。そうすることでフラットの関係性を構築するわけです。そう考えると、シェアハウスと家族は非常に対照的ですね。家族会議をやる時は、どちらかというと問題が起きた時で(笑)。

一同 笑

大月 それこそ昔の農村より農村チックですね。

成瀬 シェアハウスも今は2種類あると考えていて、新先生がおっしゃったのは、5、6年くらい、割と長く住むタイプのものだと思うんですね。最近のでは気軽に、家具などほとんど持たずに2年くらい住んで人脈をつくったら出ていくとか、次のシェアハウスに移っていく、といった話もよく聞きます。

佐藤 年齢的には何歳ぐらいですか?

成瀬 20歳ぐらいから40代の方ぐらいまで結構いらっしゃいますね。都内だと、50代でシングルになった方、なども住んでいたりして、様々ですね。

佐藤 そういう方々の「シェアハウスに住みたい」という一番のモチベーションは何でしょうか?いろんな知らない人とコミュニケーションして、いろんな価値観や情報に触れられるのが楽しい、というようなところ?

成瀬 たぶん2年ぐらいで出ていく人は、そういう傾向が強いと思います。刺激が欲しいという。原宿にある「THE SHARE」なんかだと、面白い起業家の人たちが住んでいるので、そのネットワークや個人的なつながりが欲しい、自分も成長したいというような動機ですね。すごく前向きな元気な感じ、いうなれば「ハレ」のパターンです。もう少し長期で住むタイプは、「ケ」というか、なんでもない日の積み重ねという場で、規模も小さめのものが多いのではと思っています。

清野 細分化されてきているんですね。

成瀬 5、6人程度の割と親密な雰囲気のものから、10~20人程度のもの、先ほどお話したTHE SHAREだと60人の規模です。100人規模のところもあるのですが、100人規模になってくると、人間関係はライトになってくると思います。規模が大きくなると、みんなでその場を維持していきましょうとミーティングするという自治の感じよりは、もう少しサービスを享受するタイプによっていくと思います。

 掃除などのサービスは、外出しにしているんでしょうか。

成瀬 そうですね、そういうシェアハウスの場合は、運営者がしっかりマネジメントしている。ですからホテルみたいなものに住んでる感覚。そこにみんなが集まるサロンみたいなものがあると。

佐藤 そこは重要ですよね。掃除を自分らでやるともめたりしそうですよね(笑)。

成瀬 コレクティブハウスでは、食事とかお掃除当番があることが多く、本当にそれが好きな人は、それで別にいいんですけど。

 サボれる部分を残しておかないとですよね。

佐藤 キツイですよね。

尾神 シェア畑なども、大変な部分はやってもらって、植える時と収穫は適宜参加して感動できるという仕組みが人気ですよね。そういう感じのシェアだとみんなが行ける。

成瀬 そういうグラデーションが今までは全くなくて、コレクティブハウスみたいにがっつりか、核家族か、の2パターンだった。その間に何段階もあるはずなのに、それがハードとして全くなかったので、今、いろんなタイプのものが出てきて、多くの人々に支持されているんだと思います。

佐藤 じゃあ、シェアと一口に言っても、タイプによって空間のつくり方もだいぶ違ってくるんですか?

成瀬 違うと思いますね。プライバシーを大事にしているタイプは、個室と共用部が距離的に離れていますし、襖を開けたらすぐリビング、といった昔ながらのタイプもあります。

清野 選択肢が増えているということなんですね。

成瀬 増えているし、みんながなんか違うなぁと気付き始めてきて、自分にあったものを探せる状況ですね。

清野 短いスパンの場合は、契約上のこともあるのでしょうか?

成瀬・新

成瀬 1年から契約できるものもあるようですが、最初はポジティブというか前向きな状態、オンな状態で住んでいたのが、2年くらいすると落ち着いてくる、といったこともあるようです。

佐藤 疲れてくるんですかね。

成瀬 そうですね(笑)。あとは、転勤で単身の方が家をわざわざ借りるのも面倒だし、初めての町で友達もいないので、シェアハウスに住むという例も結構あるみたいです。それでまた転勤となれば出て行って。そうは言っても結婚適齢期だったりするので、結婚して出ていくケースもあると思います。

 一回人脈を持てば、シェアハウス関連の情報が芋づる式に入ってきますね。いわゆる「マス」の情報としては流れませんが、僕にもいろいろと情報が入ってきます。最近も郊外にある社宅がシェアハウスになったという情報がながれていました。

尾神 そういう時代ですね。

清野 情報はデジタルで入ってくるのですか?

 SNS経由での情報が多いかもしれません。シェアハウスを運営している側もマス向けに発信する意識があまりないように思います。共感している人だけに情報が行けば良いと。

清野 「東京R不動産」のような感じでもないのですか?

 もっと、個別的にやっている人もいます。社宅をリノベーションしてシェア化するなんてのは、ソーシャルビジネスではないですよね。山っ気のある人。古い社宅を買い取ってシェアハウス、なんてのは山っ気がないとできないです。

佐藤 シェアハウスと一言で言ってもいろいろなんですね。

団地の「クラウド」は、空間と人材をつなぐ力。

(仮)クラウドとは(概念)案

尾神 こちらの資料は「クラウド」を一つの新しい概念として考えて作成したものです。空間と人材をうまくつなげるということや、団地ならではの「集まって住む力」でできること、その他にもこんなクラウドができますと考えました。その前の課題の部分に、新先生の著作をちょっともじって「なぜ団地は陳腐化したのか」と書きましたが、一番大きいのは団地は閉じちゃってたのかなという反省です。最近は様々な取り組みをしておりますが、これまではエリアとの連携をほぼやってこなかったという事実があります。社会状況がどんどん変わっていく中で、周りのエリアと連携しながら、団地の多様性を活かしてしなやかに持続性を持って変化へ追従するといったことが、クラウドで上手く実現できればと思っています。

佐藤 そうですね。

尾神 先ほどからお話が出ている、コミュニティの中のコミュニケーションは非常に大切だと思います。さらに、もっと多様なクラウドがあるかと思っていて、続けてご意見をいただければと思います。

清野 クラウドの中にはいろいろな可能性がありますよね。成瀬さんは子育て中でいらっしゃいますが、子育て空間として団地がどうあるのか、ご意見いただけないでしょうか。

成瀬 子どもを育てていると、今まで仲良かった仲間と遊べなくなって。

佐藤 今おいくつですか?

成瀬 3歳です。いろいろなところに出かけられるようになって生活は変わってきたんですけど、乳幼児がいると行動範囲も限られますし、子どもがいる人同士だと割といいのですが、子どもがいない人たちや高齢者の方など、子どもをどう思っているかわからない人と接するのが結構恐怖だったりします。

佐藤 そういう感覚は僕も分かる気がします。

成瀬 ただ、私はいろんな人がいるのは大事なことだと思っています。静かでいたいという人もいますし、全員に対してフレンドリーになってくださいという社会は、不自由だし、あまり好きじゃないです。

清野 なかなか難しいですよね。

成瀬 公園などへ行っていて分かったことは、子どもを育てていなくても本当は子どもと接したいと思っている人がいらっしゃるなということです。

清野 高齢者の方は、意外とそういう方が多いんじゃないでしょうか。

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成瀬 そう、ちょっと世話したいなという方とか。もともと保育士だった方もいるかもしれないですよね。団地に高齢者の方が多いのであれば、その割合も高くなると思うので、そういう人的資源を使わない手はないなと思います。団地は、広くて車とかも入ってこなくて安全な場でもあるので、子育てしているお父さんやお母さんがホッと一息つけるとか、そういう場所が実はつくりやすいんじゃないかなと思っています。

清野 それを団地の中に。

成瀬 そういう可能性は探っていけると思うし、してほしい。子どもを世話したいおばあちゃんとかいると思うんですけどね。スキルを持て余しているような。

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清野 それはクラウドに活かせるとお考えなんですね。

成瀬 できるんじゃないでしょうか。

スタッフ URみさと団地で、コミュニティ拠点をつくって試験的にやっていたことがあります。その時のコンセプトは、若年層をターゲットに、子育て層のコミュニティ拠点にしようということでした。URの団地ではものすごく珍しいことです。

尾神 そう、珍しいです。

スタッフ ここは広場に面しているんですが、高齢者しか歩いていなかったのが、いっぱいベビーカーがとまるようになりました。働いていたスタッフの中に子育て施設で働いていた人がいて、その人がお母さんたちのために開いた子どもの食育イベントの時の様子が、写真です。子育て層がいっぱい集まってきて、行く場所が他になかったんですね。高齢者用の場所はいっぱいありましたが、小さい子どもを連れた人はなかなか遠くまで行けませんから、こういう場ができてものすごく喜んでいました。

写真

スタッフ 次の写真のおばあちゃんですが、ここにコーヒーを飲みに来てたんですね。そしたら子どもが遊んでいると。この方も団地に住んでいらっしゃる方なのですが、「私、子どもが好きだから、お母さんがコーヒー飲んでいる間に私が子どもの面倒見てあげる」、ということになって、週に一回来てくださっています。全くのボランティアで、子どもと遊んでくださっていて、この前見かけたら、とても若く見えました。

清野 それはいいですね。

スタッフ 以前と同じ人だと思えないくらい、生き生きしていらっしゃっていました。団地の中でこういったコミュニティ拠点をつくったことで、そこに来る若い人と高齢者でいい関係ができています。

清野 そういった仕組みが広がる余地が団地にはありますね。

スタッフ それと、さっき新先生が豊四季の団地のところで「家に高齢者がいっぱい集まってくる」というお話をされていましたが、みさと団地の分譲戸建てに住んでいるある方は、お住まいが100平米以上あり、子どもがいなくなった後、ずいぶん広くてどうしようと思っていたと。でもここのコミュニティ拠点で働いてみて、人と接するってとても楽しいなと思ったから、うちの無駄に広いところを人の集まれる拠点にしますとおっしゃっていました。

成瀬 そういう人をどういう風にすくい取るかですよね。スマホで情報発信しても引っかからないような高齢者の方たちを。

大月 見えるところでやらないとダメですね。閉じた場所だと、おじいちゃんやおばあちゃんは通り過ぎていっちゃいますよね。表通りに面した場所を使ってやってもらえば、遊んでる子どもを撫で撫でするところからはじまりますよね。

スタッフ ここは同じような施設が実は2ヶ所あって、こちらは派手目なんですが、もうひとつは地味目の設えになっていて、地元のお煎餅売っていたりします。そこにおじいちゃんやおばあちゃんが来て、コーヒーを飲める場所なので、それを機に…とも考えています。

大月 なんかこう、蟻地獄のようにして、おいで、おいで、と(笑)。

一同 笑

尾上 そのように仕掛けを考えないと、なかなかコミュニティや人々のふれあいができてきませんよね。

大月 中が見えないコンクリートの壁をどうしたら壊せるか、ということも団地のこれからの課題ですね。

vol.24 団地の未来は、生き方の未来

団地には「オフ」が多過ぎる?

 僕は、団地の機能として「働く」ということを想像できる場所が少なくなっていると思うんです。「働く」「集まる」「緊張から精神をほぐしてリラックスできる」。この3つの場所がどれかに偏るといびつになる。実は、団地の高齢者は緊張から和らいでいることばかりをやっているんですよ。生活時間調査をやると、テレビラジオの時間というのが一番少なくても20%ぐらいで、一番長いと70%を超えちゃっている。

尾神 そうですよね。

 リラックスすることをやると依存状態になるってことがわかっています。僕は昔自転車が好きでよく乗っていました。自転車って何も考えない状態になれるんですよね。いつも頭が動いている状態を止めたいから。多分それと同じで、テレビを見ている間は何も考えなくていい。家事の途中でテレビ見る女性はそういう使い方していると思うんですけど、高齢者の方がテレビ見ているって多分依存状態の可能性があるんですよね。

清野 なるほど。

 団地は集まるところが多いし、リラックスできる場所が多いんですよ。ベンチとかも多いし。で、今、高齢者にとってこの(写真の)空間が「働く場所」に見えているのか。ここを高齢者にとってある程度責任持って働けるような場所に見せていくってことが、すごく重要なんじゃないかなと思います。

尾神 確かに、団地は心地良い生活空間がほとんどですね。

 写真のここもどちらかというとリラックス系の場所ですよね。このように考えると、団地には「オンの場所」がなかなかない。集まることを「シェア」「クラウド」「リラックス」の言葉で考えると、「シェア」と「リラックス」が多すぎて、オンがない。オンは東京の都心の方ばかりで、団地にいる人っていうのはオンがない感じがするなぁという気がします。

佐藤 そうですね。もともとこのプロジェクトも、前身のアドバイザー会議をやっていた時に、僕はもっとブランディングという視点を入れた方がいいと提言していました。団地には、ビジネス、マーケティング、ブランディングという視点がほとんど入っていなくて、今、新先生が言われたように「オフ」ばっかり。しかし、そういうオンの視点が入らないと、人が集まってこないし、サービスをつくっても、ただの箱だけになる。

大月 「この場所でやってください」というだけではダメなのですね。

佐藤 コミュニケーションすることを考えずに、箱だけでつくろうとしたら、知らない人は全然知らない、みたいなもので終わってしまう。前を通っただけでも「ここに集まりたい」という気持ちになることが大切ですし、またどこにつくるかもすごく重要ですよね。

尾神 重要ですね。

 自分が高齢者になった時に、責任を持ってここの空間に関わりたいと思えるかが大事。その意味でも、団地はリラックス系に寄りすぎなんじゃないですかね。見ててそう思いました。

佐藤 そうかもしれないですね。

大月 よくワークライフバランスっていうじゃないですか。でも、「ワーク」と「ライフ」を分けてバランスさせようと思っているから間違ってる。そもそも一緒のものじゃないですか。それと同じで、もっとクラウド的にごちゃごちゃに混ぜるようなやり方はどうでしょうか。

写真洋光台北団地 団地内通路

尾神 そうですよね。この団地内通路もまっすぐできれいなんですが、シーンとしている空間になっていて、オンとなるようなものがない。その周りの空間を、例えば食と農とか、あるいは高齢者と小さな子どもが出会う多世代交流の場とか、どのように持っていくべきかということを考えています。事業者にも来てもらって、オンの場所とオフの場所を配置して全体をうまくつなげていくことが必要かなと感じています。

清野 今まではどういう考え方だったのでしょうか。

尾神 皆さんお部屋の中が狭いものですから、外に出て豊かな暮らしができればいいなという形でやっていたのですが、視点が違ってくるのかもしれません。高齢者の方は非常に元気な方が多いので、その方々に活躍してもらう場もつくることもひとつでしょうし、第4回の話のように子育て層の人に子どもを連れて来て働いてもらうということもあると思います。そういった形でクラウドを考えていった方がいいですね。

佐藤 オフが多過ぎるというのは素晴らしい視点で、それこそ、世の中の働き方改革はどちらかというと働かない時間を確保することに注力していますが、ここだと逆ですよね。働いて逆に人生がいきいきするというか。その視点はまだ考えていなかったので、いいかもしれないですね。

成瀬 その時にすごく気になっていることがいつもあって、高齢者の方のいわゆる第2の人生というか、どう働くかという話に入っていくと思うんですが、さっきのおばあちゃんの話もそうですが、女性って、結構フレキシブルなんですよ。自分がどういう仕事してきたかとか、あんまり関係がないんです。子どもを育てた経験があれば子どものケアもするし、皿洗いだってできるし。それで仲間ができて、和気あいあい、楽しくなって、「最近オシャレしていて、いいかも!」みたいな展開がすごく容易に想像できます。

清野 そうですよね。

成瀬 ここにいらっしゃる男性の方たちにすごく聞きたいのですが、男性は自分のご専門のお仕事をされてきて、さて、退職しましたというときに何をやればいいのかと。あまり退職しなさそうな方もいますけど(笑)どういうきっかけがあるといきいきと働けるのかが、課題だと思っているんです。

尾神 確かに、男性は自分の専門に対する先入観やプライドが強いですからね…

成瀬 男性は例えば経理をやってきたのでそれが専門です、と思い込んでいて意外とリタイアした後のキャリア構築が難しい、という話を至る所で聞きます。女性は逆に会社の役員やっていたって、リタイアしたら保母さんみたいなこともできちゃうところがあるので、男性の高齢の方をどう取り込んでいきいきと働いてもらうか、そのきっかけづくりから、どういうことをやるかというところまで考えていくと、すごくいい発信になると思うんですよ。

尾神 そうかもしれないですね。

成瀬 子育て支援は、やっぱりおばあちゃんを頼りがちになりますし、ごはん系も、なんとなく女の人に期待している。そういう中で、リタイアした男性がそのスキルを活かして、地域の人の役に立つことができれば新しい。ですから、そのあたりを何か考えたらいいんじゃないかと思いました。

清野 せっかくだから可士和さんから順に、こちらの4人の男性陣の、自分だったらこんなことができる、というのを聞きたいな。

一同 笑

成瀬 先生たちは色々できますもんねぇ。

佐藤 僕はいろいろできますよ(笑)。整理とか、掃除とか(笑)。ん、掃除が好きなわけじゃないかな。整理が好きですね。

清野 いいじゃないですか。

佐藤 それぞれの家に行って整理してあげる(笑)。

尾神 今、流行っていますしね。

大月 僕は、畑仕事とか、家畜を飼うとか、プールで魚を養殖するとか。そういうんだったらいいなぁ。

清野 いいですねぇ。

大月 黙々と育てる系。蜂蜜とかね。巣箱はここに置くのがいいらしい、とかいいながら。

清野 新先生は?

 僕は商人の子なので、やっぱり商いじゃないですか。

清野 どんなものを?

 やっぱり食がいいなぁ。

清野 文筆家の平川克美さんが、地元でカフェやっていて、楽しそうなんですよね。

 なんかすみません、たいした話じゃなくて。

清野 いえいえ、男性は役立たないかなぁというイメージを覆してくださいましたもの。

成瀬 スキルを持ってはいるんだけど一歩踏み出せない、というのは、男性の方だと思うんです。

佐藤 まあ、そういうところは大ですよね。

成瀬 いかにも男性向けのコンテンツ、みたいなものもいいかもしれないです。

大月 あと、男性は女性から「これやってくれないかしら?」と頼られることにめっちゃ弱い。

清野 あー。

大月 多少できなくても頑張っちゃう(笑)。そういうニーズが聞こえてきていないんじゃないかな。

尾神 そうですね。今、洋光台の「CCラボ」という自由に使ってもらうスペースでも、9割は女性なんですよ。自治会活動は男の人が中心になっているのですが、誰とでも触れ合える場所は女性がうまく使っているんですね。男性でそういうところに出ていけるのは、おばちゃん化した男性。私もおばちゃんと言われることがあるんですけど(笑)。今、防災でお世話になっている永田宏和さんという専門家の方が、神戸で主催しているイベントの中で、「ぱんじぃ」というものがあります。それは、男の人がパンをつくるというものなのですが。洋光台でも男の人のモチベーションをくすぐれるのでは と。「防災」をテーマに「防災インストラクター」という地域の活動者の掘り起こす取り組みを始めています。

学びのプロセスを経て、「オン」につなげていく

清野 先ほどのお話でちょっとショッキングなことは、「CCラボ」という団地内の交流スペースを使うのは9割が女性なのに、自治会は男性中心というのが…。日本社会の役割意識が団地に凝縮されているというか。実際の会社の現場よりも息苦しい人間関係があるのではなかろうか、と思ってしまいました。

尾神 自治会はムラの典型だと言われました。昔を引きずっているということですね。あと2世代ぐらい行かないとあれは変わらない。次の会長はあなたですよ、という一子相伝みたいなところがあるんですよね。

熊谷 これから世代交代はしていくと思いますよ。男って、大月先生がおっしゃったように、みんなのニーズがあれば頑張るとか、それはそれであると思いますが、僕らよりちょっと若い世代、40代後半になると、男もかなり子育てや保育園の送り迎えをやっていますね。やはり住んでいる人についてもこれから世代交代していく時期になってきていると思います。

尾神 それはありますね。

熊谷 恐らく、団塊の世代の75歳というのは、その前の世代の75歳とだいぶ違う感じになってくるだろうし、その次の新人類の75歳もその前の世代の75歳とは違ってくるだろうし、男女の差というのもどんどん小さくなっていくでしょう。今、上手な仕組みを作っていくと、男も女も関係なくなっていったときに、団地という形にはいろいろな新しい可能性ができてくるのではないか。今、その入口をうまくつくりたいので、そこについてご意見いただければと思います。

 一番最初に可士和さんが団地を重装備にせずに軽くするみたいな話をされていましたが、軽くするという時に今の男性の話ってすごく重要な気がします。豊四季台団地で生涯学習関係のイベントをいろいろやっているのですが、やり方を少し変えないといけないんじゃないかなと思っている最中なんです。あんまり言うと身内の悪口に聞こえちゃうと思うんですけど(笑)。東大でもいろいろイベントをやっているのですが、IT関係や食が多いんです。例えばiPhoneの使い方とか、キッチン系が多くて、あれだと男性があまり来ないだろうなと、今、気づきました。例えば、防災とかコミュニティマネジメントとか、難しいネタを扱った方がいいかな。「自治会」ではなく「コミュニティマネジメント」なんだと(笑)。

尾神 新しい用語にしてみる。

 そうして、学びのプロセスを経た上で、オンにつなげていくといういことをやらないと。今、学びは学び、コミュニティ農園はコミュニティ農園、みたいな感じで、全部分かれちゃっている感じがするんです。学びのプロセスの中にオンを作っていく回路ができれば本当はいいのですが、空間的にも分かれてしまっているんです。ですから、もう少しそういう形でオンを顕在化する仕組みがつくれると面白いんじゃないかなという感じはします。

尾神 オンがつくれると、地域の人に受け渡していける感じになるでしょう。是非そういう風にしていきたいと思いますね。最終的には地域の人が、自ら考えてやっていくという風に。

清野 新先生のご研究で、一昔前はサラリーマンになること以外に職業の選択の巾がなかったというテーマがあります。私はそれを非常に大きな指摘だと思うのですが、今は終身雇用が崩れているから、別にサラリーマンになるだけが生き方じゃないということもありますよね。その傾向はシェアハウスの一般化にもつながっていると思います。シェアハウスの住人には、自由業の人もいるし、サラリーマンや結婚している人もいるだろうし、していない人もいるだろうし。そのような多様性の中でカフェなどの個人商店とか小商いをすることが人気になっています。小商いは、団地の中で起業に向いているしビジネスになるのでは、と思います。

尾神 清野さんがこれまで調査された葉山や鎌倉のようなブランド力がここにあるわけではないのですが、ああいったブランド力を持ったような小商いのようなものを、もっとうまくつなげていくことができれば。団地って色が見えないところがあって、地域性もちょっと見えなくて。そうはいっても団地は40年、50年ぐらい経って、ここが実家という人もいるし、故郷化なんてことも言われているから、もう少し個性をつけていくことをしないといけないのかな、と思います。

清野 せっかくあの中央広場がおもしろい形であっても、あそこに並んでいるお店に魅力がないと、コミュニティは変わっていきませんよね。

尾神 あそこはこれから変わっていくと思います。

清野 例えば1軒でもいいから、鎌倉にあるようなコーヒーロースターができればいいかもしれません。今は、若い方から高齢者までカフェが好きではないですか。そんな装置も必要だと思います。それが実現できていないのは、賃借契約とかね、仕組みができていないんだと思います。いいお店にはタダで貸してあげるぐらいの覚悟がないと、とりわけ若い人が来ないと思いますね。

大月 今だに団地の住宅は住宅以外の使い方はできないんですか?

熊谷 基本的なルールはそうなっています。

大月 そうですか。そこから変えないといけないですね。

尾神 変わってきているんですけどね。だいぶ柔らかくはなってきた。この5、6年で。だけど、もう少し進めないといけないですね。

大月 公営住宅でも、空いているところにちゃんとお店を入れたらいいのに、と思うことは多いのですが、ルールがね…。

熊谷 実際には、小説家だったり、WEBで仕事やっている人、在宅ワークやっている人など、自宅で働いている人はそれなりにいるんです。ただ、看板出してというのは、今も一部の場合を除き制限されています。

大月 どんどんそういうのもやればいいんですよ。オーナーさんがどうかというのもあるけれど、ルールを変えていけばいい。

 僕は商店街の研究をやっているので、いろいろな商店街を見ているのですが、熊本の「上乃裏通り」という通りを紹介したいと思います。熊本には「上通り」と「下通り」という大きな商店街があり、その横に上乃裏通りがあるのですが、通りの名前がついたのは結構最近なんです。以前は全く廃れてしまっていたのですが、リノベーションで若い人たちがかなり入ってきて人通りが増えて、上乃裏通りという名前が付いたんです。単なるリノベーションの通りかと思って行ったら、結構違っていて、それを仕掛けた山野さんという工務店のおじさんがキーパーソンになっているんです。実質的に何をやっている人かというと、完全にコンサルティングなんですよね。どういうコンサルかというと、事業をやる時、全員に「貧乏人チャート」といって、「あなたが事業やるのに何が必要か」、という内容を400項目ぐらい書かせるんです。一回事業をやったことある人だったら、案外400って書けるらしいんですよ。山野さんが話していたんですけど。

清野 へぇ。

 一回もやったことのない人は、「お金がこれだけ必要だ」というのを、何の根拠もなく言ってしまいがち。最近は政府系の金融機関が、割とすぐ貸してくれるので、それでだいたい潰れてしまうんです。

清野 それで、事前に書かせるようにしたと。

 貧乏人なんだから全部書けと。書かせて、あなたが持っているものにマルを付けてみろ、友だちからもらえるものにマル付けてみろと。それで、次に何やるかというと、山野さんが郊外にすごく大きな倉庫を持っていて、そこに壊れた什器などさまざまなものが置いてあるんですよ。そこから全部持っていっていいよと。そういうふうにしたら、購入するものって、すごく減るんです。本来は中小企業診断士がやらないといけないようなことを、工務店のおっちゃんがやって、復活した通りが上乃裏通りなんです。僕はこの話はすごくいいなと思って、URでもできるんじゃないかなと。

清野 団地も集合していますからね。

 集合しているメリットとして、生活財をどこかに集積してリサイクルして、ある種のDIY的な拠点にする。「あー俺たちこういう家具で囲まれて生活していたんだ」と思いながら、それを引き継ぐ、みたいなことをできる人は絶対いると思います。洋光台でこの机が40年生き残って41年目に俺が引き継ぐ、といった話がブランドになってもいいんじゃないかなと思います。

清野 そうですよね。まさしく。

 山野さんが熊本の郊外に持っていた倉庫が、洋光台にもあっていいんじゃないかと。それによって生活の費用も下がるし、面白い空間だと思われるし。本来の意味でのシェアなんじゃないかなと。

清野 リサイクルの最適化ですね。

 クラウド的な感じもします。

大月 そこで親父たちがうんちくを垂れながらね。

成瀬 いける雰囲気、ありますね。

vol.25 団地の未来は、生き方の未来

境界を壊して、新しい価値へと再編する

打ち合わせ風景

佐藤 こういうオンの話って、今まであまりしていませんでしたよね。

尾神 そうですね。

佐藤 議論が住むことばかりでしたから。「働く」ということに焦点をあてた場合、団地では難しいことはたくさんありそうですか?

熊谷 たとえば、住宅に看板を出して事務所として登記してやるようなことは、今のURのルールでは、制限があります。

佐藤 共用空間で最初からそのように設定すればできる?

尾神 共用空間の未来を、運営も含めてどのように再編していくか。クラウドを想定する住棟も含めて、地元の人に参画してもらうとか、この中のある部分は私がやりますという、そういった装置をつくっていくということですね。

熊谷 そもそも、仕事と仕事以外を何をもって線引きするかというところなんですが、たぶんいろいろな仕事の仕方というのがあるんだと思います。今あるルールなど、時代に合っていないところがあれば変えていかなければならないところもありますし、そういったこともこのプロジェクトで考えていければと思います。

佐藤 洋光台だけでなくて、全団地でいうと、URにはすごい戸数があるじゃないですか。一方で年々人口は減っているわけですから、全てを住むことだけで解決するのは難しいですよね。

尾神 例えば、5階建て中層だとどこが空いてくるのか、空いたところをどう使うのか、などを想定しながら、5年10年後を想定して、中層棟の再編を考える必要が出てくる。それは、壊してつくり替えることではなく、空間をうまく使っていくことになると思います。今後は必ず人が入らなくなっていくところが出てくるわけですので。

佐藤 そうですよね。例が違いすぎるのかもしれないけれど、原宿の同潤会アパートなどはどういうふうな感じだったんですか?もともとは人が住んでいたわけですよね。

大月 住宅です。あれは、戦後払い下げになって住民が所有したんです。

佐藤 払い下げなんですね。

大月 公団とか公営みたいなルールの適用外でした。だから、好きにやっていたんです。

尾神 お店がパっとできたりね。そこら中お店になってましたよね。

佐藤 なっていましたよね。じゃあ、そもそもの仕組みが違うんですね。

熊谷 そうは言っても、私たちURの方でも建物のリノベーションをやるだけでなく、いろいろなルールの方もリノベーションしていかないと。

佐藤 そうですよね。「住む」と「働く」ということもどんどん近くなりつつあるから、そういう新しい事例になると面白い。

尾神 住宅じゃない展開はやっていく必要があると考えています。1階の妻側の床スラブのないところは、働く場かどうかは別として、共用的な施設としてのあり方を考えないと難しいでしょう。

成瀬 働き方が多様化している中で、住宅とオフィスとを別々に借りるほどの売り上げがまだ上げられないけれども、チャレンジしたい、という芽は私たちの世代ではすごく出てきています。どやどやと人が来るのはさすがにダメかもしれないですけど、例えばちゃんと看板も出せるし登記もできるなど、ある程度ルールをつくることは必要ではないでしょうか。そうすれば、ただ鉄扉が並んだ住宅だけが集積しているところよりも、まちの賑わいのようなものが出てきて、だいぶ雰囲気も変わるのではないでしょうか。

大月 東南アジアの集合住宅だと、上のほうにカラオケ屋があったり、ドラッグストアがあったり、非常に楽しいですよね。

成瀬 例えば、ネイルのお店をやりたいというお母さんがいたりしたら、そういうのをやってもいい、とか。

尾神 もうなくなっちゃいましたけど、昔、香港にあった九龍城には、そこら中に店がありましたよね。すさまじい勢いで、完全に迷路の町になっていました。まあ、九龍城は極端な例ですが、制約もある中でどう組み立てていくかというところですね。

成瀬 1階部分に、小商い用みたいな小さなスペースを借りられる場所があってもいいかもしれないです。

佐藤 そうすると人が出入りするようになるから、急に活性化しますよね。

成瀬 そもそもあまり大きいと借りられないから。

尾神 そうですね。

清野 昔の商店街は、1階が店舗で家族はその2階に住んでいました。小さな建物で、工夫してやっていらした。

大月 洋光台にもありましたよね。

 デザインのことを考えると、専門家の可士和さんを前に言うのもなんですが、商いって、すごくデザインの力を使えるところだと思うんですよ。変化もさせやすいじゃないですか。定期的に変えられるので、デザイン力があれば中に入ってこれるし、回路もつくれる。商いをやる空間をつくると、空間自体も変化するし、それこそデザイン的なところも問われるので、空間的にすごく面白くなると思うんですよね。

清野 洋光台では、若くて資金がないけれども小商いをしたいです、という人たちを一気通貫でサポートする仕組みがあってもいいんじゃないですか。

尾神 そうですね。団地の中ってやっぱり今は静かなしーんとした空間なんですよ。そこを昔のような元気のある空間にしていくには、いただいたご意見は重要ですね。この写真の場所なんかもしーんとしている感じですよね。とても凄いことなのですが、掃除も行き届いているので、きちんとやりすぎだと言われることもあるぐらいです。

大月 右側の広場があるじゃないですか。そこがカフェだったら…

清野 いいですよね。

洋光台北団地

尾神 最近、熊谷部長とも話をしていて、豊かな空間の「豊か」の意味をちょっとね、もう少し変えていかないと。この写真の場所も「豊か」なんですよ。緑が豊かで空間もきれいなんだけど、人間の息吹を感じられない。そこをどう変えられるかというところをやっていかないと。

清野 この中にカフェをつくるというのは、法律的にも難しいのですか?

大月 できるんじゃないですか。
例えば、洋光台なんかでも車でアクセスする時にしか使えない道を廃止して、車で入る人は別のところから入るようにして、学校の敷地とつなげちゃうとか。

尾神 あぁ。つなげちゃうと。

大月 道も廃道にして。そうするとつながるじゃないですか。学校も規模が縮小しているから緑道をつくってもらって、ここまで団地だという感じで拡張する。団地って言えば公園みたいなものだから、つながっているんですよと。市と協議して、10年、20年かけてやるって決意しないと。

尾神 決意しないとできないですよね。

大月 敷地を分断している道を、ずっと道だと思っているから、変わらずにつまらないまま。周りがつまらない空間で囲われちゃっていて、非常にもったいない。せっかくなら、そういったことをやると、日本の都市計画やまちづくりがぐんと良くなると思いますね。

尾神 できた当時は、何もない丘陵地でしたから、区割りが、カチッカチッとできているんですよ。今は団地の中だけを、という話になっていますが、周りをどうするかという観点とうまくつなげることが絶対必要だと思います。

佐藤 当時は「区画整理」だったわけですね…。僕はほとんどの仕事が既存の境界線を壊す仕事なんです。境界線を壊せば、まさに団地の中に学校、学校の中に団地があるという感じになるというか…(笑)

大月 まさにクラウドじゃないですか。

佐藤 そうですね。そういうモデルケースができたら…

清野 いいですね。

尾神 道路に時間がかかるとすれば、団地の中から意識しながらはじめていくと。

大月 しかも10年も経って車も自動運転になるとすれば、全く問題ないですよ。廃道にするのなんて。団地を再編する計画に合わせて、歩車道の再編も今進めないと間に合わないですよね。

佐藤 そっちのほうが大事かもしれない。建物だけじゃなくて。

熊谷 今までは、ひとつずつの家や団地のことを考えてきましたが、家と家の間だったり、団地と地域の間だったり、「間」をどうデザインしていくのが大事になっていくということですね。

佐藤 そうですね。

大月 一番ダメな空間が、車道ですからね。車道とどう真正面から向き合うか。あと、駐車場。

佐藤 なるほど。

清野 「団地の未来」で建築の監修を務めている隈研吾さんが、「消滅可能性都市」と名指しされた豊島区で、豊島区庁舎の建て替えを手掛けられました。それによって豊島区は流入人口がグッと増えて若返ったのですが、タワーへの機能集約と、その隣にある「南池袋公園」というかつては危険だった公園を一体的に整備したおかげでした。まさしく、なんでそれまでこういったまとまった場所があったのに、きれいに整備できなかったのだろうと。目が開かれるような事例です。

尾神 素晴らしいですね。

南池袋公園(東京都豊島区)

清野 「南池袋公園」は、一面芝生を敷いて、そのビューポイントにかっこいいカフェがある。そのカフェには大きなテーブルがあって、図書があって、あらゆる年代の人が使えるようになっている。それが実際にできると、「素晴らしいね」と思うのですが、発想するまでに見えないハードルがあった。今の団地の敷地はそのような再構成にぴったりじゃないですか。

成瀬 団地で思うのが、建物のことは割とコンペなどもやられてすごく検討されているのですが、ランドスケープも大事ってことですね。植栽計画が、できた時と今の生活では合っていない部分もあると。低木が想定以上に大きくなっちゃったということなどもあると思います。南池袋公園もさりげなくランドスケープを頑張っていますね。引き算の考え方でしょうか、この木は抜いちゃおう、勇気をもって、と。コスト的にも、つくるよりもお金をかけずに手っ取り早く良くできるところからやれる。団地もランドスケープを考えるといいのかなと思います。

尾神 そこは、ずっと熊谷部長とも話をしているところです。あと、もう一つ、昔はプレイロットと広場が役に立っていた。そこが今、未利用空間になっているので、それも含めてどうするを考えていかなければと思っています。

熊谷 リノベーションというと、建物をどういじるかという話になりがちですが、それよりも屋外が先ではないか、例えば主要な動線の再編や、ランドスケープを新しい生活にあったような形で再生していくなど、そのあたりが一番最初に考えるべきことだと思います。

根本的なルールから、変えていきたい

清野 あと15分ほどですので、まとめ時間にしたいと思います。今日お話いただいたように、人の働き方が変わっていて、住まい方もそれに密接に結びついている状況があるわけですが、現代の多様な働き方に団地というものが、ハード的にもソフト的にも対応しきれていない。さらに、これからのテクノロジーの革新を考えると、皆さんがおっしゃるように自動運転なども生活に関与してくる中で、いつまでも同じ考え方でやっていてはとてもリーディングプロジェクトにはなり難いんだということでした。

尾神 そうですね。

清野 こういった議論の中でありがちな結論として、「コミュニティで、地域、みんな結び合いましょう、つながりましょう」といったことがありますが、私は、つながらない自由もすごく大事だと思うんですね。集合住宅に関して、ちょっとネガティブなイメージがあるとしたら、嫌な人とも付き合わなきゃいけないのでは…というものがあると思います。都会のワンルームマンションがあれだけ建てられてきたのは、「孤立したい」というニーズもあるからだと思うんですね。そういうこともどうやってすくい取っていけるか。それも課題だと思っています。また可士和さん、大月先生、成瀬先生、新先生に順に伺っていきたいのですが、それぞれ、ご自身が専門とされているところから、この座談会で思ったことを一言ずつ教えていただければと思います。可士和さんはまさしく本プロジェクトにおける「クラウド」というキーワードの生みの親ですね。

佐藤 今日はいろいろご意見を伺ってすごく良かったです。「団地はオフばっかりで、オンがない」もそうですし、ランドスケープの話もそうですし。団地の未来プロジェクトって、基本的には、必死に開いていこうとしているんですが、堅い壁がいっぱいありますよね。こういうディスカッションを続けているから、「そういうことが大事だよね」ということは共有できてきたと思います。でも、大月先生が言うように、根本的なルールを変えないと、変えられないものがいっぱいあるのかなと、感じました。境界をつくっていたものをどう壊していけるか。今、僕のほとんどの仕事がそうかなと思っています。世の中で起きている問題も、世の中と業界の壁があるわけですが、各々の業界によって常識が違うので、それが壁を越えて外に出た時に問題化されているのかなと思いますね。あと今日思ったのが、「団地が高齢化の温床になっている」というトーンの記事がメディアに取り上げられがちなのは、その方が書きやすいからですよね。団地がそのようにポジショニングされているところから、いかに変われるか。マイナスからプラスに変える最先端事例にできるといいなと思います。

清野 まさしく豊島区は「消滅可能都市だなんて、勝手に呼ぶな」ということで変わってきました。団地はそこまで危機感がなかったということですかね。

佐藤 豊島区は、僕も西武線沿線に住んでいたからわかります。この周辺に関しては相当危機感があったと思いますよ。

清野 危機感があって、逆に良かったということですよね。

佐藤 行っちゃいけない場所と言われていました。そこをクリエイティブの力で変えた。今の洋光台は、そこまでの危機感はない。洋光台は団地の中ではも恵まれている環境です。

尾神 まだまだ恵まれています。

清野 新しい試みは、恵まれているところでやらないとだめだと思います。

尾神 そうですね。体力のあるうちにやらないと。落ちてからでは、上がれないです。再編していかなければ。

清野 URのある団地を見せていただいた時に、駅から一番遠い住戸をかっこよくリノベーションしていました。条件の悪い5階の小さい物件をデザインし直しているんだけれども、それじゃあやっぱりもったいなくて。一番条件のいいところをリノベーションしないと、世の中に届かないのです。だから、ここでこそ、やるべきなんでしょうね、大月先生。

大月敏雄氏

大月 私は洋光台団地に携わって結構時間が経って、最初は本気かなぁと半信半疑だった(笑)。すばらしいのは尾神さんがずっと同じポジションで、準公務員的な立場なのに同じポジションでいられるというのは公団としては革命的。それで何が起きたかというと、当初しゃべっていた、「こんなのできたらいいね」みたいなことが、連鎖的にぽつぽつとできてきた。それは非常にすばらしいことで、是非継続しなければいけないということだと思います。もう一点、今日説明のあった定期調査ですが、いろんな計画の実施前後の違いを、エビデンスとして見せられるといいですね。エビデンスがあると、次はこれを仕掛けて、将来はこの数値をこう変えたいんだ、というような議論を前向きに進められます。あれこれをやりましたという写真を撮って、一応試みとして頑張ってます、という出し方ではなくて、ボディーブローみたいに、ちゃんとこのデータが変わったんだという根拠が必要。その軸をどこに置くかが、スタッフとしては非常に頑張らなきゃいけないところですね。

尾神 事業評価ですよね。実は今日のお話にはお出ししてなかったのですが、平成25年、28年、31年にアンケートをやって、これを事業評価としてまとめようと思っています。まち全体にやっているんですよ、アンケートは。

大月 もう少し定期調査なり、国勢調査なり、リアルにこういう世帯がいるとか、そういう感じでちゃんと認識したほうがいいと思います。

尾神 そうですね。

清野 内部資料だけでなく、ヨーロッパでもアジアでも、世界の研究機関で使えるような。

大月 他で適用できるような、ね。

尾神 そうですね。

清野 では、成瀬先生。

成瀬友梨氏

成瀬 今日はありがとうございました。隈先生の奥様の篠原聡子さんは、シェアハウスの研究をされていて、先日篠原先生と話をしました。シェアハウスの調査をすると、10人ぐらいとか15人ぐらいの規模では、その内のひとりはあまり共用空間に出てこない人がいるらしいんです。その人は何のためにシェアハウスに住んでいるんだろうと思うのですが、その人にとっては賑わいのある場所にドンとは入り込まないんだけれど、そこに住んでいること自体が価値がある。自分のプライバシーはあるけれども、その場に居合わせるということがその人の精神衛生上かなりいいんだということでした。団地もそういうところがあるかなと。清野さんがおっしゃったような、混ぜすぎて、つながりすぎて、一人でいたい人にとって心地悪い空間ではいけない、というのはまさにそうだと思います。全員がつながらずに一人でいても、居心地がいい。コミュニティ空間、パブリックスペースって、そういう良さを持ちながら、開かれた場であるべきだと思います。一方、今の団地のままだと、つながること、賑わいの部分が足りていないので、そこらへんは課題なんだろうなというふうに思いました。この「団地が高齢化の温床になっている」という記事はセンセーショナルな内容だと思いますけど、逆に可能性があるなと思います。地縁ではないところで新しい発信をしたり、男性のセカンドライフの活かし方とか、団地での働き方とか、そういうのあるよね、と気づかせてくれるようなところがあります。洋光台は先進事例として整備されていかれると、これだけ豪華な先生方に支えられていますし、発信のしがいがあると感じます。私も、団地の再生ってそんなに関わっているものはないんですけど、いつも注目しているトピックではあるので、今後も活動をフォローさせていただければと、楽しみにしています。今日は本当にありがとうございました。

清野 では、新先生。

新雅史氏

 今日、話そうと思っていたことは話せました。しゃべりまくってすみませんでした(笑)。で、もうひとつだけしゃべりたいことがありました。最近読んだ本で、先進国で足りていない資源ってなんぞやと。みんな資源とかリソースとかって言うんだけれど、それって何?となった時に、どう分解できるか。通常、経済学者が考えるのは、労働と人ですよね。あと空間。これは土地とも言えますが、土地だけではないですね。それと金。経済的にはこの3つが基本的な資源と言われます。しかし、ある人類学者によれば、先進国では基本的にこの3つは既にあふれていると。先進国に実は欠けていて、うまく使いこなせているかどうか?というものが、時間意識と情報とアイデンティティだということでした。資源を編成する、つまり人をどうやって組み合わせるかとか、空間やお金をどうやって組み合わせるかとかは、実は発展途上国の方が豊かなんです。構造的資源が人・空間・金で、編成的資源が、時間・情報・アイデンティティだと言っていて、これはすごい目からウロコでした。日本の政府も含めて、人も空間も金もなんとかして増やそうとしているんですけど、そうじゃないんじゃないかと考えています。時間意識が明確になってないとか、必要なところに情報が行っていないとか、自分が何者かよくわからないアイデンティティの部分が欠けているのではないでしょうか。

清野 わかる気がしますね…

 東日本大震災の時に、僕がショックを受けたことは、なんで闇市ができなかったのかということ。あれだけ土地が余っていて、結構ニーズもあった時に、事業が立ち上がらなかったんですよ。それは、時間意識にかなり不安があったからだと思います。この10年、20年をどういう感覚で生きていけばいいか。また、被災者ってアイデンティティがなくなってしまっていて、そこで山っ気を持って事業で稼いでやろうみたいな人が出にくくなるんです。これは被災者だけの話ではないとも思います。日本全体ですね。僕が被災地に行って思ったのは、東京で地震が起きて、闇市ができなかったらいやだなということ。建物が壊れて、そのあとバラックでも、テントでも建てて商売をやる人がいないんじゃないかと。

大月 神戸だとテント村ができましたけど。

 神戸はそうでした。そういう意味で言うと、団地の中で、今後の20年、30年をどういう時間軸で見ていけるか。情報をどうやって受発信するか、が大切だと思います。生活時間調査を見ると、今の高齢者って、ずっとテレビ見ているんですよね。インターネットを使う人はいないんですよ。でも、あと20年後はみんなインターネットを使うようになっている。その20年後に高齢者の人たちが、どういう情報を受信して発信できるようにしていくのか。その空間をどうつくるのかを、今から考えておかないといけないですよね。また、アイデンティティという点で言うと、どういう人に住んでもらいたいか、ということを考えるべきでしょうね。たぶん全方位でやる必要はないと思うんですよね。この団地は誰に住んでほしいのか、どういうアイデンティティを持ってもらいたいのかを、もっと設計者が提案してもいいかもしれない。それを今はURが明確に出していないから、お金もあるし空間もあるし人もいるんだけど、どう組み合わせたらいいか分からない。ただ、今は方向性が明確じゃないから、逆に可能性があるかなと思うんですよね。

清野 その問題意識は、「団地の未来」が洋光台で立ちあがった時に、可士和さんが指摘していたことに近いでしょうか?

佐藤 そうそう、URの団地プロジェクトはターゲットが明確でないと言ったんですよ(笑)。広告の戦略やブランド戦略といえば必ずターゲットというものがあるので、僕はそこがよく分からなかった。最初にそれを質問した時、URからは「全方位的」ですと答えが返ってきました。

尾神 全部です、って言っちゃったんです。

大月 国民のためにありますからね。

佐藤 それは結構難しいなと、僕は言わせていただきました。

清野 そこは当初から変わらない問題なんですね。

佐藤 そうですね。

清野 意識として変わってきているのでしょうか。

佐藤 現在は「ターゲットを限定してはいけない」という意識が裏目に出てしまっている、ということだと思うんですよ。

成瀬 ただ、今はもう「みんなに共通」って難しいですよね。

佐藤 「みんな」って誰?っていうことですよね。

 一番良くないのは、結果的に誰かが住んじゃう、ということだと僕は思うんですよ。フランスの郊外みたいに、結果的に荒れた地域になっています、とか。というよりは、「こういう外国人を積極的に受け入れる」という発想があっていいと思うんです。クリエイティブな外国人の人たちに一部住んでもらいましたと、結果的に外国人比率が高くなるのであれば、最初からそういう設計にすることを考えた方がいい。

尾神 うちはそういう視点ではやってきていないので、今後、心に留めたいと思います。

清野 では、今回は時間が過ぎましたので、こんな感じで。個人的には熊本の商店街の「貧乏人の400項目」を是非見てみたいと思いました。

 「貧乏人チャート」「山野」で検索すると出てくると思います。画像も出てくると思いますよ。

清野 はい、見させていただきます。今回は時間になりましたので、ここで終了とさせていただきます。ご参加の皆様の、それぞれの意見が興味深かったです。皆様、本日はありがとうございました。

一同 ありがとうございました。

新 雅史

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新 雅史 Masafumi Arata 社会学者

1973年、福岡生まれ。流通科学大学商学部専任講師。
東京大学人文社会系研究科博士課程( 社会学) 単位取得退学。
主著に『商店街はなぜ滅びるのか』( 光文社新書)、「両大戦間期における商店街理念の生成」『ソシオロゴス』( 三五号) 、「コンビニをめぐる〈個性化〉と〈均質化〉の論理」『ネットメディアと〈コミュニティ〉形成』( 東京電機大学出版局) 、「災害ボランティア活動の『成熟』とは何か」『大震災後の社会学』( 遠藤薫編著、講談社現代新書)

成瀬 友梨 Yuri Naruse 成瀬・猪熊建築設計事務所 / 建築家

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成瀬 友梨 Yuri Naruse 成瀬・猪熊建築設計事務所 / 建築家

2004年東京大学大学院修士課程修了。2007年同大学院博士課程単位取得退学。
2007年成瀬・猪熊建築設計事務所共同設立。2010年〜2017年東京大学助教。
地域・ライフスタイル・コミュニケーションという観点から建築を考え、シェアをキーワードに設計を行う。
代表作に「Dance of light」「ナインアワーズなんば駅」「LT城西」「31VENTURES KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」など。
主な受賞に、日本建築学会作品選集新人賞、JIDAWARDS 2015 大賞、第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 出展 特別表彰、大韓民国公共デザイン大賞 国務総理賞。主な著書に、『シェア空間の設計手法』(責任編集,学芸出版社)、『子育てしながら建築を仕事にする』(編著,学芸出版)

大月 敏雄 Toshio Ohtsuki 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授

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大月 敏雄 Toshio Ohtsuki 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授

1967年福岡県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、東京大学大学院修士課程・博士課程修了。博士(工学)。横浜国立大学助手、東京理科大学助教授を経て現職。
古い集合住宅の住みこなしや、アジアのスラムのまちづくり、戸建て住宅地のマネジメントなどを中心に、住宅地の生成過程と運営過程について研究。住宅・集合住宅・住宅団地の計画や設計も手がける。著書に「集合住宅の時間」(王国社)、「住まいと町とコミュニティ」(王国社)、「町を住みこなす」(岩波書店)、「住宅地のマネジメント」(建築資料研究社)などがある。

清野由美

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清野由美

1960年、東京都生まれ。東京女子大学文理学部卒業。慶應義塾大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程修了。ケンブリッジ大学客員研究員。出版社勤務を経て92年よりフリーランス。「世界を股にかけた、地を這う取材」で、国内外の都市トレンド、ライフスタイル、先端人物のインタビューを手がけ、そこから時代を牽引する価値観を探る。主著に『住む場所を選べば、生き方が変わる -葉山からはじまるライフシフト-』(講談社)、『観光亡国論』(アレックス・カーと共著、中公新書ラクレ)、『変われ! 東京 自由で、ゆるくて、閉じない都市』(隈研吾と共著、集英社新書)など。

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