団地の未来プロジェクト 洋光台北団地エリアリニューアル 集会所・屋外広場・住棟ファサード改修

この度、本プロジェクトのアイコンとなる新たな拠点として、プロジェクト立ち上げ当初に実施した洋光台北団地集会所の建築アイデアコンペにおける最優秀案(当選者:NAAW長野憲太郎氏、王翠君氏)をベースに、隈研吾氏、佐藤可士和氏によるディレクションのもと実施案を策定したリニューアル工事により、「団地の集会所 OPEN RING」が完成いたしました。

あわせて、洋光台中央広場のトーン&マナーを継承して佐藤可士和氏がデザイン監修を行った、洋光台北団地集会所に隣接する、広場と住棟ファサードのリニューアル工事も完成し、洋光台地区の北エリアに新たな拠点が誕生しました。

集会所に併設した「団地のカフェ」には、団地の豊かな屋外空間の中で本に親しんでいただくための「団地のライブラリー」を設置するほか、様々なワークショップや広場を活用したイベントなどを予定しており、団地や地域にお住まいの皆様のコミュニティ拠点として「新しい住まい方」の発信を行っていく予定です。

来年春には高層住棟の建替えも完成を予定するなど、いよいよ本プロジェクトの拡がりが目に見える形になってまいりました。これからも多くの皆様のご支援を賜りながら、地域の皆様とともに進めてまいります。どうぞご期待ください。

団地の集会所 OPEN RING

団地の集会所

改修コンセプト(団地の集会所 OPEN RING デザインアーキテクト NAAW)

北団地の屋外空間の良さを活かすために、建物と地形の関係性を高めることを考えました。サンクンガーデンをより広く階段状に改修し、軒下空間と関係づけることによって、既存建物・周辺環境を含め全体として「集まり」を感じる空間をつくりました。新築、改修、既存部分を共存させることで、文脈と馴染んだ様々な居場所や交流の場所を創出しました。また、軒下空間が通り側にも面することで、北団地の玄関口として人々を迎えられるように考えました。

改修概要

団地のカフェ  団地のライブラリー

団地のカフェ

「洋光台通り」に面した北団地集会所の一角に、「団地のカフェ」がオープンしました。団地や地域にお住まいの皆様に気軽に立ち寄っていただける場所として、また、今後様々なワークショップや広場を活用した各種イベントの実施を通じ、洋光台北エリアの新たなコミュニティ拠点として親しまれることを期待しています。

団地のライブラリー

「団地のカフェ」内に、団地内の豊かな屋外空間の中で本に触れるゆっくりとした時間を過ごしていただく仕掛けとして、本とレジャーシートをバスケットに入れて本棚に並べた「団地のライブラリー」を設置しました。これは、団地全体を図書室化するプロジェクトです。団地の中ならどこでも持ち出し自由。洋光台中央団地の「まちまど」や建替え工事中の北団地高層棟にも展開していきます。

団地のライブラリー 監修 ブックディレクター幅氏コメント

バスケットに入った3冊の本を自由に選び、特製の専用ラグをひろげ、団地内の様々な場所で読んでください。各バスケットについた選書テーマを眺めながら、普段は手に取らないような1冊と偶然出くわして楽しんでもらいたいです。またそれは、即効よりも遅行性の性質を持つ本と過ごす時間を有意義に感じてもらう試みでもあります。

Photo:Kazuhiro Fujita

ブックディレクター / 有限会社 BACH(バッハ)代表

幅 允孝Yoshitaka Haba

人と本の距離を縮めるため、公共図書館や病院、動物園、学校、ホテル、オフィスなど様々な場所でライブラリーの制作をしている。 2020年7月に開館した「こども本の森 中之島」ではクリエイティブ・ディレクションを担当。近年は本をリソースにした企画・編集の仕事も多く手掛ける。

団地の集会所 OPEN RING ができるまで

アイデアコンペ 2015.9 - 2016.6

『建築アイデアコンペティション ‐ 集会所 テーマ「集まって住む未来」 』と題し2015年9月に募集開始。約3か月の募集期間を経て148作品の応募がありました。その後、1次審査を通過した6作品による2次プレゼンテーションを一般公開により開催いたしました。

最優秀案の選定〜実施案検討会の実施 2016.6-

審査の結果、NAAW(長野憲太郎氏・王翠君氏)による「OPEN RING」が最優秀賞に選定されました。
2次審査に進んだ作品には、コンテンツ内容を主な提案とした作品が多い中、本質的な「場所性」をとらえた作品として評価されました。その後、隈研吾氏、佐藤可士和氏のディレクションによる実施案の検討が進められ、既存の集会室を残しながら、一部新築(建替)をする計画としました。

最優秀賞選定者 NAAWより 完成によせて

コンペ提案時では、地形や屋外空間との関係性を表現するために、大きく全体を一新する計画でしたが、隈さんや佐藤さん、様々な関係者の方々の貴重なアイデアや御意見を取り込みながら、既存のものを残しつつ、アイデアを進化していくことができました。こういったプロセスを経験できたのは我々にとって大きな糧となりました。

結果として、新しく住み始めた方や以前から住んでいる方、近隣に住んでいる方、皆さんが、気軽に声をかけ合ったり、何かしらのイベントで交流したり、どんどんと新しいものを取り込んでいけるような「開いたコミュニティ」を象徴する空間に近づけたのではないかと思います。これから居住者の皆さんがどのように活用してくださって、この集会所全体が更なる変化していくのか、本当に楽しみです。また、団地全体で様々なプロジェクトが行われていく中で、団地全体の雰囲気が益々変わっていくのも今から待ち遠しいです。

長野 憲太郎

団地の集会所 OPEN RING デザインアーキテクト / NAAW

長野 憲太郎Kentaro Nagano

1981年東京生まれ。2009年米国ワシントン大学セントルイス M.Arch修了。2015年からNAAW共同主宰。2016〜19年Hong Kong Design Institute 非常勤講師。2020年〜同校専任講師。

王 翠君Alice Wong

1985年香港生まれ。2010年香港中文大学 M.Arch修了。2015年からNAAW共同主宰。

屋外広場・住棟ファサードリニューアル

団地の小枝手すり

改修コンセプト(デザイン監修 SAMURAI)

今回の広場と住棟ファサードの改修に当たってまず心がけたのは、明るく、風通しの良い、普遍的に気持ちの良い場所を住人の方々に提供することでした。なるべく開放的な空間となるよう、既設の古くなってしまった構造物を撤去し植栽の整理を施すことで生まれたオープンスペースに芝を貼り、木製の家具を設置しました。白く再塗装された住戸のファサードには、木調のルーバー状の手すりを設置。シンプルな外壁に広場の家具や緑と調和するアクセントを与えることで、ランドスケープと建物が一体化するようにデザインしています。軽やかな印象に生まれ変わる洋光台団地が、団地の更なる可能性を広げていけるような試みを継続していきたいと考えています。

団地の広場
  • 団地のファニチャー

ディレクターコメント

ディレクターアーキテクト 隈研吾氏より

洋光台のリニューアルは、団地という、日本にしかない特別にユニークで豊かな空間とコミュニティの資産を再発見するプロジェクトでした。コロナ後の、開放的なライフスタイルの一つのモデルが、洋光台に生まれつつあります。

ディレクターアーキテクト / 建築家

隈 研吾Kengo Kuma

Photo (c) J.C. Carbonne

1954年生。東京大学大学院建築学専攻修了。1990年隈研吾建築都市設計事務所設立。東京大学教授を経て、現在、東京大学特別教授・名誉教授。
1964年東京オリンピック時に見た丹下健三の代々木屋内競技場に衝撃を受け、幼少期より建築家を目指す。大学では、原広司、内田祥哉に師事し、大学院時代に、アフリカのサハラ砂漠を横断し、集落の調査を行い、集落の美と力にめざめる。コロンビア大学客員研究員を経て、1990年、隈研吾建築都市設計事務所を設立。
これまで20か国を超す国々で建築を設計し、(日本建築学会賞、フィンランドより国際木の建築賞、イタリアより国際石の建築賞、他)、国内外で様々な賞を受けている。その土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、やわらかなデザインを提案している。また、コンクリートや鉄に代わる新しい素材の探求を通じて、工業化社会の後の建築のあり方を追求している。

プロジェクトディレクター 佐藤可士和氏より

今回の北エリア改修は、プロジェクトのメインコンセプトである「集まって住むパワー」の象徴として、中央エリアに続いて具現化されたものです。集会所を起点に、木と緑の爽やかな空間としてリデザインしました。団地ならではの「集住の価値」を再発見し、皆さんが心地良く一日を過ごせる場所となってほしいと考えています。

プロジェクトディレクター / クリエイティブディレクター

佐藤 可士和Kashiwa Sato

SAMURAI代表。ブランド戦略のトータルプロデューサーとして、コンセプトの構築からコミュニケーション計画の設計、ビジュアル開発まで、強力なクリエイティビティによる一気通貫した仕事は、多方面より高い評価を得ている。グローバル社会に新しい視点を提示する、日本を代表するクリエーター。
主な仕事に、国立新美術館、東京都交響楽団のシンボルマークデザイン、ユニクロ、セブン-イレブン、今治タオルのブランドクリエイティブディレクション、ふじようちえん、カップヌードルミュージアムのトータルプロデュースなど。近年は、武田グローバル本社、日清食品関西工場、FLAT HACHINOHE、GLP ALFALINK相模原など大規模な建築プロジェクトにも従事。文化庁・文化交流使(2016年度)として、日本の優れた文化、産業、コンテンツ、商品などを広くグローバルに発信することにも注力している。著書はベストセラーの「佐藤可士和の超整理術」など。亀倉雄策賞、東京ADCグランプリ、朝日広告賞など受賞多数。慶應義塾大学特別招聘教授(2012-2020)、多摩美術大学客員教授。

今後の展開

1-11号棟 建替完成

洋光台北団地1-11号棟は新築棟に建替えを実施しています。2021年1月下旬より入居者募集を開始する予定です。
この住棟には、洋光台北団地にお住いの方がご利用いただけるコミュニティラウンジが併設される予定です。

洋光台北団地<1-11号棟>

佐藤可士和展開催

2021年2月3日~5月10日 国立新美術館にて団地の未来プロジェクト/プロジェクトディレクター佐藤可士和氏の過去最大規模となる個展、「佐藤可士和展」が開催されます。団地の未来プロジェクトに関しても展示が予定されています。

佐藤可士和展 KASHIWA SATO 国立新美術館 東京六本木 2021 2.3 > 5.10 THE NATIONAL_ART CENTER,TOKYO

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