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賃貸住宅で火災保険に入るべき理由と、補償される内容の種類
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賃貸住宅の契約では、ほとんどのケースで火災保険の加入を求められます。「自分は単なる入居者で建物の所有者ではないのに、なぜ入らなければならないのか」と疑問に思う人もいるのでは。そこで、賃貸マンションやアパートなど賃貸物件で火災保険の加入が求められる理由や、契約時の注意点、賃貸住宅に必要となる補償の内容について解説。加入する火災保険を良く理解し、自分にとって適切な内容で契約しましょう。
賃貸住宅における火災保険に入るべき理由
火事を起こしてしまったり、もらい火に巻き込まれたりすると、大家さんも入居者も大きな損害を被ります。賃貸契約時に加入を求められる火災保険は、こうしたリスクへの備えです。
●賃貸住宅で入居者による火災保険の加入は事実上必須
実は法律上は、賃貸住宅の入居者が火災保険に加入しなければならない義務はありません。しかし、現実には賃貸借契約を結ぶ際に、火災保険の加入を求める賃貸物件が一般的です。
また、賃貸借契約を結ぶ際に火災保険のパンフレットと申込書も手渡されるなど、加入する保険会社やプランを不動産会社や大家さんから指定されることが多いようですが、加入する商品や保険会社は自分で自由に選ぶことができます。
●賃貸住宅で火災保険に入らなければいけない理由
- ・隣室からの火災被害は原則賠償を受けられない
- 民法の特別法である通称「失火責任法」では、隣室や隣家から出火し、もらい火で自分の家財が被害に遭っても、「重大な過失」によるものを除き失火者に賠償請求できないと規定されています。「重大な過失」とは、ほとんど故意に近い注意欠如による落ち度のこと。過去の事例には「寝たばこ」、「天ぷら油の入った鍋を火にかけたまま、長時間その場を離れて出火させた」、「ストーブに火が点火されている状態で給油した」などで重過失と認定されたケースがありますが、状況によりケース・バイ・ケースです。
失火した側に「重大な過失」がなければ、自分の大切な家具や家電品などが破損した場合でも賠償を受けられないため、自分で火災保険に加入する必要があるのです。
- ・貸主(大家さん)に対して原状回復義務を負う
- 賃貸借契約では、賃借人(入居者)が物件を退去するとき、入居期間中に建物に生じた損傷を回復して貸主に明け渡す「原状回復義務」を負うと定められています。よって、万が一火災を起こして建物を損傷させた場合には、火元である入居者が損害賠償責任を負うことになるのです。そのため賃貸住宅に入居するときは、貸主に対する損害賠償責任をまっとうするために、火災保険に借家人賠償責任保険を付帯して加入する必要があります。
賃貸住宅における火災保険の内容
賃貸住宅の入居者が加入する火災保険は、「家財を対象にした火災保険」と「借家人賠償責任保険」、さらに「個人賠償責任保険」を付加した3点セットがスタンダードです。
●家財を対象にした火災保険
家電、家具、衣服など自分の財産(家財)が偶然受けた損害を補償する保険です。補償対象となるのは、火災、落雷、爆発、風水害、水濡れなどの事故による損害です。さらに家財や現預金の盗難トラブルによる損害が対象になる場合もあります。被害を受けて使えなくなった家財を片付ける費用実費など、間接的な損害をカバーできる場合もあります。
●借家人賠償責任保険
入居者が、火災や爆発、漏水などを発生させ借りている部屋に損害を与え、貸主に対する損害賠償責任を負ったとき、建物を原状回復するための費用が補償される保険。貸主への損害賠償責任をまっとうするために加入します。
火災保険の特約となっており、単体で加入することはできません。
●個人賠償責任保険
日常の生活上で、過失により他人を死傷させたり、他人の所有物を破損してしまったりするなど損害を与え、法律上の損害賠償責任を負ったときに補償される保険です。例えば、水漏れを起こして階下の家財に損害を与えた、自転車運転中に通行人にぶつかってけがをさせた場合などが対象で、けがをさせた相手への治療費や慰謝料、他人の所有物の修理費などが補償されます。「借家人賠償責任保険」と同様、火災保険の特約として加入します。
賃貸住宅の火災保険加入時の注意点
賃貸契約時に不動産会社から提示されるままに加入しがちな火災保険。でも、必ずしも補償金額や内容が自分に適切とは限りません。しっかり吟味して納得して加入しましょう。
●補償内容をよく読むことが大切
不動産会社の窓口で賃貸借契約を結ぶとき、同時に火災保険に加入するケースがほとんどでしょう。
しかし、貸主から求められる条件を満たせば、どの火災保険に入るかは個人の自由。紹介された火災保険の保険金額が過大だったりすることもあります。その場ですぐに契約をしないで、いったん持ち帰って、保険金額の設定がご自身に合っているかどうか確認することをおすすめします。
時間に余裕があれば、複数の保険会社の火災保険を見比べて、納得した上で加入するようにしましょう。
●引っ越し時に重複加入しないように要注意
引っ越しをする際に起きてしまいがちなのが火災保険の重複加入。引っ越し前に加入していた火災保険のことを忘れて、引っ越し先で新しい保険に加入してしまうケースです。しかし受け取れる保険金は実際の損害額までなので、二重に加入しても2倍の保険金は得られず、無駄な保険料を支払っていることになります。
賃貸住宅の火災保険は2年間を目安とする場合が多いですが、引っ越し先で新たに火災保険に入るなら、それまでの火災保険は退去時に解約手続きをしましょう。途中で解約した場合には、期間に応じた解約返戻金が支払われます。
●地震を原因とする火災は、火災保険では補償されない
地震保険は地震・津波・噴火による損害を補償する保険です。地震を原因とする火災は火災保険でカバーされないため、補償が必要であれば火災保険とセットで加入します。
賃貸物件の入居者であれば自身の家財が補償されますが、被災後の生活再建を目的とする保険なので、補償対象となるのは家電品や家具類などの生活に必要な生活用品となり、30万円を超える貴金属や絵画、宝石、骨董品などは対象になりません。
UR賃貸住宅と火災保険について知っておきたいこと
耐火性に優れた構造のUR賃貸住宅は、木造住宅に比べ火災保険料が割安になります。大切な家財や借りている住宅の被害を補償できるので、義務はなくても加入がおすすめ。
●UR賃貸住宅では火災保険の加入は求められない
民間の賃貸住宅の場合、入居時に火災保険への加入が求められますが、URでは求められることはありません。ただし、任意での加入がすすめられています。
●URでも火災保険の加入がおすすめの理由
前述したように、URの入居者も民間賃貸住宅と同様、火災を起こして建物に損害を与えれば「原状回復義務」があり、その損害賠償責任を負うことになります。
また、隣室や隣家からのもらい火で自分の家財が被害を受けても、失火者に「重大な過失」がない限り、損害賠償請求もできません。洗濯機のホースが外れるなどして水漏れを起こし、階下の住民に被害を及ぼすかもしれません。
こうした理由から、不測の事態に備え、火災保険の加入を検討することは、どのような人にとっても重要です。
●URだと火災保険料が抑えられるかもしれない
火災保険は建物の構造によって保険料が変わってきます。「耐火構造」や「準耐火構造」の建物は、万が一火災が起きても建物自体の倒壊や周囲への延焼被害が抑えられるよう、法律で建物の構造や用いるべき材料などが決められています。
火災保険は災害時の損害を想定して保険料が決められるため、損害を抑えられる「耐火構造」や「準耐火構造」の建物は保険料が安くなります。URは、発足当初から耐火建築物を建設するための主要な構造として、鉄筋コンクリート造(RC造)などを採用しています。そのため、木造と比べ火災保険料は割安です。
家財は自己責任で守るのが基本。ただし、保険金額は身の丈でOK!
賃貸借契約を結ぶとき、一連の手続きの中で火災保険に加入し、保険料として1万円、2万円といった端数のない金額を支払うことが多いでしょう。きりの良い保険料にするために逆算して保険金額が設定されているので、暮らし方や家族構成によっては家財の保険金額が多すぎたり、少なすぎたりする場合もあるかもしれません。
生命保険と異なり、災害などで生じた家財の損害は、被災時にその損害額を自ら書面で申告して、保険金を請求します。ですから実態からかけ離れた保険金額で契約しても無駄が生じます。まずは保険内容を確認し、自分の状況と照らし合わせて過不足があるようなら、自分にマッチした保険金額に修正して契約しましょう。
また、火災保険期間が賃貸借契約の期間と同一だとしても、契約そのものがリンクしているわけではありません。商品によりますが、今まで住んでいた所での火災保険契約を、転居後の新しい住所に変更して継続・更新することも可能です。
ただし、県をまたいで引っ越して、住まいの構造が木造住宅から鉄筋コンクリート住宅になるなど変わった場合には、保険料も変わることがあります。引っ越しを機に、火災保険を改めて確認して、本当に困ったときに役立つ保険にしておきたいものですね。
監修/清水 香
賃貸住宅で安心して暮らすために、火災保険に加入してリスクに備える
- ・一般的な賃貸住宅では火災保険への加入が事実上義務となっている
- ・もらい火であっても、原則として火元には賠償請求できない。資産を守るには自分で火災保険に加入する必要がある
- ・自分に合った補償内容か、重複して加入していないかなど、賃貸契約時に火災保険を確認する
- ・「耐火構造」や「準耐火構造」の鉄筋コンクリート造(RC造)で造られたUR賃貸住宅なら、木造住宅に比べ火災保険料が安くなる
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