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賃貸物件の壁紙交換で必要になる原状回復の範囲と費用の相場

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賃貸住宅の壁紙は、どんなインテリアにも合いやすい白やベージュが選ばれていることが多いですね。でも自分好みのデザインに替えたり、汚れが気になったりするので、自分で貼り直したい方も多いのでは。ただ、賃貸借契約では原状回復を義務付けられ、勝手に替えると退去時に修繕費用を求められるケースもあります。原状回復が必要になった際の気になる貼り替え費用の相場から、原状回復が簡単にできる壁紙のDIYまで紹介します。

賃貸物件の壁紙の原状回復に関する基礎知識

入居時に交わす賃貸借契約書には、原則として借主(入居者)は退去時に原状回復義務、つまり部屋を入居したときと同じ状態にして返却するという項目が含まれています。

●壁紙に対する原状回復義務

借主が、元からあった壁紙をはがして、自分で選んだものに貼り替えた場合、退去時に以前の壁紙を再利用して、貼り替えることは現実的ではありません。
多くの場合は、壁紙の原状回復にかかる費用を貸主から請求されることになり、これは賃貸借契約書に明記された原状回復義務に該当するため、拒むことはできません。その費用は建物の経過年数や、設備・建材の耐用年数を考慮して、残存価値に相当する部分を負担することになります。つまり経過年数・耐用年数が長いほど、原状回復の負担割合は減少していきます。
ただし壁紙に落書きがあるなど、借主が故意・過失により破損し使用できなくなってしまった場合は、耐用年数を超えて残存価値が0円になったとしても、修繕費用を負担する必要があります。

●壁紙の修繕費用の負担に関するトラブル

壁紙の修繕費用をめぐっては、貸主(大家さんや管理会社など)と借主のどちらが負担するのかで、トラブルになることがよくありました。
このため国土交通省は、『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』(1998年に初版、2011年に再改訂版を公表)を取りまとめて、負担割合を定めました。

このガイドラインでは、原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化し、「賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても、発生すると考えられるもの」についての修繕費用は、貸主負担としています。

一方で、「明らかに通常の使用などによる結果とはいえないもの」、「賃借人の管理が悪く、損耗などが発生または拡大したと考えられるもの」。つまりは借主の故意や過失、善管注意義務違反による損傷については、修繕費用は借主の負担としています。
ここでいう善管注意義務とは、「善良なる管理者の注意義務」の略。借主に対して、部屋の管理者として求められる、一般的・客観的に要求される程度の注意義務のことをいいます。契約書にその内容が明記されていますのでチェックしましょう。

また、賃貸借契約時に、退去する際のハウスクリーニング費用を、借主が負担するといった特約を結んでいる場合があります。どのような契約を結んだのか。賃貸借契約書をしっかり確認しましょう。

【貸主が負担するケース】
自然消耗や、日常生活でどうしても付着してしまう汚れなど。
例)壁紙の日焼けによる色あせ、冷蔵庫やテレビの裏側にできる黒ずみなど
【借主が負担するケース】
日々の手入れを怠って生じた汚れ、故意に付けた傷など。
例)タバコの黄色いヤニ汚れやにおい、結露を放置したことで拡大したカビなど
●改正民法で定められた原状回復義務の内容

2020年4月1日に施行された民法改正により、借主の原状回復義務の範囲や修繕のルールが明文化されました。賃貸借の契約中に生じた「通常損耗」や「経年変化」については、原状回復義務の対象外と定められています。
さらに、借主が修繕の申し出をしてから長期間修繕されないために、借主自身で修繕を行った場合には、貸主に対して修繕費を請求できるようになりました。ただし、任意規定となるので、ハウスクリーニング費用の特約を結んでいる際は、こちらの特約が有効になります。

賃貸物件でもできる壁紙の貼り替え方法

そうはいっても、どうしても壁紙を自分の好きなものに替えたいという場合は、原状回復にかかる費用を払うか、原状回復しやすい材料を使うか、どちらかの方法を考えてはいかがでしょうか。

●原状回復費用を支払う

退去時に、原状回復にかかる費用を支払うと割り切って、壁紙を貼り替える方法です。
ただし、この場合も貸主の了解を得てから行うのが前提。賃貸借契約書でも、貸主の許可なく大がかりな改装を行うことを禁止していることがほとんど。
「どうせお金を払うのだから良いだろう」と勝手に貼り替えるのは、契約違反になる可能性があります。
なお原状回復費用は、入居時に敷金を預けている場合はそこから引かれますが、原状回復の費用が敷金の金額を上回ると、新たに料金を追加請求されることもあります。ちなみに壁紙の貼り替えにかかる費用の相場は、6畳間の壁紙の全面貼り替えで約4~7万円程度といわれます。

●壁紙の上に貼ってはがせる壁紙を使う

最近ではおしゃれな輸入壁紙も手に入れやすく、100円均一のショップにも、リメイクシートとして小さなサイズのものを売っているため、壁紙の選択肢は広がっています。
そうした中で、自分でリフォームをする人向けに、壁紙の上に貼ってはがせる壁紙も販売されています。

例えば、シールのように裏紙をめくって、そのまま既存の壁紙の上に直接貼れる、シールタイプの壁紙などの商品があります。ホームセンターや専門店のほか、ネット販売で手に入るので、手軽に模様替えを楽しめます。
また貼ってはがせるタイプもあるので、原状回復が必要な賃貸の部屋に最適。同じように、画びょうを使わずにポスターなどを貼って、手軽にはがせる商品もあるので、合わせて活用したいですね。
これよりも難易度は高くなりますが、壁紙を直接貼る代わりに、粘着力が弱いタイプのマスキングテープと、両面テープを組み合わせて使う方法もあります。
いずれも従来の壁紙より粘着力が強くないため、その壁紙に飽きたり退去したりする際には、元の壁紙を傷付けずにはがせるのが特色といわれます。こちらの場合も、貸主に許可を得ておきましょう。
物件によっては、賃貸借契約で壁紙のDIYを禁止事項として設けている場合があるので、契約書は事前に確認が必要です。中には、はがした後に、のりの跡で既存の壁紙を汚損してしまう場合や、粘着力が強いために破損してしまう場合もあるので、部屋の隅など目立たない部分で確かめてからの方が良いでしょう。

こうした壁紙の貼り替えは難しいもの。DIYの腕に自信がある人以外は、失敗しないようプロに依頼した方がきれいに仕上がるはず。
自分でやりたい場合は、部屋の壁を全部貼り替えるのではなく、どこか一面だけアクセントになるような模様の壁紙を貼ると、労力も少なくて済み、しかもメリハリが効いてセンス良く見えます。
レンガや木目、タイルなどが柄になった壁紙などもあるので、キッチンならこれ、リビングに貼るならこれと、部屋ごとにイメージしながら選ぶのも楽しいですね。
もう少し簡単に部屋の雰囲気を変える方法としておすすめなのが、ウォールステッカーです。
こちらも貼ってはがせるものが数多く販売されているので、子ども部屋やリビングなどにひと味違う雰囲気を出すのに役立ちます。

壁紙の貼り替え時にかかる原状回復費用の内訳と相場

壁紙を貼り替えるには、壁紙などの材料費だけを考えれば良いわけではありません。ここでは、貼り替えに必要な費用とその相場を解説します。

●壁紙の貼り替え費用の内訳

壁紙などの材料費+工事費用で構成されており、そのすべてを含めて「1平米当たり1000円~」など、平米単価で価格が表示されることが多いです。平米単価とは、 縦横1mの正方形を表す「1平米」の、壁紙の貼り替えにかかる費用となります。

【内訳例】
・壁紙(クロス)代/材料費
・工事費/作業費用
・室内養生費/床や壁を保護するためにビニールなどで保護するための費用
・廃材処理費/既存の前の壁紙を処分するための費用
・荷物移動費/壁紙を貼り替える際に家具を動かすのにかかる費用
●壁紙の貼り替え費用の相場

1平米当たりでいうと、1000~1500円が相場となります。6畳の部屋はおよそ40~45平米のため、総額で4~7万円ほど。おおまかに、量産タイプ、またはそれより少しグレードが高い、色柄が豊富で防汚性、耐久性、消臭、抗菌・防カビ性などの機能性があるタイプなどもあります。部屋の用途に合った壁紙を選ぶように気を付けましょう。

壁紙を貼り替えても原状回復費用が不要なUR賃貸住宅

UR賃貸住宅でも、民間の住宅と同様、退去時の原状回復は条件となっていますが、壁紙の貼り替えなどは、原状回復義務を免除されるケースもある契約になっています。

●「住宅の模様替え願」の承諾で原状回復費用がいらないケースも

UR賃貸住宅で借主が室内の模様替えを行う場合、事前に「住宅の模様替え願」を提出し、承諾を得ることになっています。
ここでいう模様替えとは家具の配置換えではなく、改装や造作といった大がかりなものを指し、基本的には原状回復義務があるものの、所定の条件のもと、「壁紙の貼り替え」、「壁のタイル張り」、「壁の塗装」などは、その義務を免除されるケースもあります。
特に要望の多い模様替えは、あらかじめURが承諾できる工事の仕様(材料や方法など)を決めているので、UR都市機構「住まいのしおり」サイト上 【UR都市機構への「願出」・「届出」】の項目を参考にしてみてください。
そのほか、模様替えについて分からないことがあれば、管理サービス事務所または住まいセンターなどで受け付けてくれるので、問い合わせてみると良いでしょう。

●「UR-DIY」なら原状回復費用が不要

UR賃貸住宅では、DIYの需要に合わせた賃貸住宅「UR-DIY」も提供しています。「UR-DIY」は、退去時の原状回復義務が免除されるもので、DIYができる範囲に応じて三つの種類があります。

・DIY住宅
建物の構造部分以外は、原則としてどんなDIYも可能。また、入居までの3カ月間は家賃が無料になり、その期間を使ってDIYのプランニングや施工を行うことができます(ただし共益費は必要です)。
・Petit DIY住宅
壁面や床など表層部分のDIYが可能。施工前に、プランの申請と承諾が必須条件になっています。初心者でも比較的簡単にでき、見栄えが大きく変わる部分なので、楽しみながらDIYをしたい人に向いています。
・カスタマイズUR
壁面のDIYに特化したフリーウォール付き住宅。現在、該当する物件は首都圏と北海道エリアのみですが、手軽にDIYが楽しめると人気です。
●退去時の負担区分が明確

また、UR賃貸住宅は退去時の負担区分が、あらかじめ明確になっているのも特長です。
例えば、壁紙では以下のような区分になっています。

【借主負担となるもの】
傷や汚れ、クレヨン・フェルトペンなどによる落書き、たばこなどのやにによる黄ばみやにおいなど。
【UR負担となるもの】
テレビの放熱跡(電気焼け)、ポスター跡(日焼け)など。
入居の際には、URが用意したチェックシート(点検確認書)を使って借主が現状を確認し、それを管理サービス事務所などに提出します。これは入居前からあった汚れや傷を借主とURとで共有し、退去時の原状回復の判断にも利用されます。
なお、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、経年変化による損耗などの修繕費用は、賃料に含まれるものと定義され、敷金からそうした費用を差し引くことは減る傾向にあります。

壁紙を貼り替える前に原状回復義務の確認を

壁は室内空間で大きな割合を占めるだけに、部屋のイメージを左右するもの。おしゃれな壁紙に貼り替えることで、家具やグリーンが映える部屋になり、愛着が一層湧くのではないでしょうか。

「賃貸は、退去時に原状回復しなければいけないから」と、自分らしい部屋づくりをあきらめる必要はありません。原状回復しやすい素材を利用したり、一部原状回復が免除される物件を選んだりすれば、内装を自分好みに変更可能です。そのためには、賃貸借契約時に、原状回復義務の契約内容をしっかり確認しましょう。契約の範囲内でDIYできれば、契約終了時の費用を抑えられるはずです。

UR賃貸住宅なら、所定の範囲で壁紙を貼り替えても原状回復義務が免除され、「UR-DIY」なら、壁紙だけでなく思い切ったDIYも可能。世界でただ一つの「自分の住まい」をつくっていくのも良いですね。

監修/井上 恵子

記事のまとめ

賃貸でも壁紙を貼り替える場合は、原状回復条件の確認をしよう

  • ・退去時に、壁紙の修繕費用を借主が負担するか貸主が負担するかの判断は、国土交通省がまとめたガイドラインが参考になる
  • ・自分で好みの壁紙に替えた場合などは、退去時に原状回復の義務があることが多い
  • ・UR賃貸住宅では、壁紙の貼り替えは所定の条件に該当すれば、原状回復の義務を免除されるケースも。また自由にDIYができる(原状回復義務は免除)物件もある

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