これからのくらしを考える ひと×団地
団地マニア、大山顕さんが語る団地の奧深くておもしろい世界
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世の中には「団地マニア」という団地に夢中な人たちがいます。中でも、20年前から撮影や取材を続ける大山顕さんは、誰よりも団地に熱~い思いを抱いている方です。取材時、ヌーヴェル赤羽台団地への建て替え真っ最中だった赤羽台団地を歩きながら、大山さんの素顔に迫ります。
団地はかわいいとカッコいいにあふれている
大山さんの好きなものは、工場、団地、ジャンクションと、ちょっとマニアック。学生時代から撮影を始め、好きが高じて、現在は仕事として撮影・取材をし、記事を書いたり、イベントを企画したりしています。赤羽台団地も、URの協力のもと、イベントとして団地ツアーを行ったことがあるそうです。
「スターハウス(上から見たときに『Y』字型の住宅のこと)やスキップフロア形式(1階おきにしか通路が通っていないアクセス形式のこと)の住棟など、いろいろなタイプの棟が巧みにレイアウトされているのが赤羽台団地のすてきなところ。ツアーでは実際に部屋に入れてもらえて感動しました!」
団地を巡る旅は海外にも及び、「今年はロンドンの憧れの団地に泊まったんです。カッコよかったなあ」と、どこまでも熱い。この日も、住棟の建て替え途中で、整備が進む公園にあるリアルなライオンの遊具に「いらないなら、ほし~い!」と目を輝かせる大山さんでした。
団地という切り口で映画や小説を斬る
大山さんは「団地団」というグループでの活動もしています。メンバーは大山さんのほか、脚本家の佐藤大さん、評論家の速水健朗さん、作家の山内マリコさん、漫画家の今井哲也さんなど、主に創作活動を行う人たち。全員が団地好きのユニットです。
「団地が登場する映画や小説などを持ち寄って、団地を通しての作品論、社会論をトークイベントとして行っています。団地を見ると、家電、文化、交通など、その時代のことが全部わかるんですね。それがいつまでたってもおもしろい! 社会論の切り口として優れていると思うんです。」
2016年は、是枝裕和監督の『海よりまだ深く』や坂本順次監督の『団地』など、大山さん世代の監督たちが団地を舞台に映画を創っていて、それがとってもおもしろいんだとか。
「少し前までは団地を否定的に描くことが多かったのですが、ようやくニュートラルな描き方になってきています。」
今も継承される団地スピリッツにぐっとくる
大山さんにとって団地の魅力はなんでしょう?
「初めは建物に興味があったんです。ようやく最近わかったのは、団地の魅力は レイアウトにあるってこと。赤羽台団地の場合だったら、台地という地形や、以前、軍服を作る工場だったことなど、団地が建つ前の歴史や地形がレイアウトに生きてるんですよね」と大山さん。団地に残されたさまざまな痕跡から、新たな魅力や歴史を見つけることができて、ちょっと『ブラタモリ』的な面白さがありますね。
団地の敷地内に新たに誕生した「ヌーヴェル赤羽台」にも、これまでの団地のよさが継承されているといいます。
「ある程度敷地面積を増やしつつもむやみに高層化しないというポリシーや、団地は地域に対してオープンであるべきだ、という考え方に共感できますね。」
尽きることのない、団地をめぐるエトセトラ。もっともっと聞きたくなりました。
大山 顕さん
1972年生まれ。写真家/ライター。千葉大学工学部修了。
卒業後、松下電器産業株式会社(現Panasonic)に入社。
シンクタンク部門に10年間勤めた後、現職に。団地・工場・ジャンクションなどの撮影・取材のほか、住宅マニアのためのサイト「住宅都市整理公団」の運営、「団地団」での活動などを行っている。主な著書は『団地の見究』、『工場萌え』『ジャンクション』『楽しいみんなの写真』(共著)など。
ヌーヴェル赤羽台(UR賃貸住宅)
東京都北区赤羽台2-3 ほか
昭和の名作「赤羽台団地」のレイアウトや樹木などを生かしながら、複数の建築家が設計を担当して造り上げた団地。各棟はオートロックで、エントランスの壁面には、昭和37年当時の写真を飾るなど、その記憶を引き継いでいます。
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