街に、ルネッサンス UR都市機構

花咲く団地1 - 若い感性が生み出すまったく新しい部屋

URPRESS 2015 vol.44 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

東京と京都で、女子大生による団地のリノベーションプランを競うコンペが行われ、これまでの団地とは一線を画す新しい部屋が生まれている。

洛西(らくさい)ニュータウン × 京都女子大学

部屋ごとに変わるアクセント壁 「空間を彩るアクセント」リビングとキッチンを仕切るアクセント壁。色にこだわりぬいたこの壁が、リビングルームに温かみを添える。

階段状のブルーの壁がゆるやかに仕切る部屋

京都では京都女子大学家政学部生活造形学科の学生たちが、井上えり子准教授の指導で、平成25年度から「京都女子大学×UR洛西ニュータウン団地リノベーションプロジェクト」に取り組んでいる。

光が丘同様、コンペで施工プランを選考する。25年度は8プランが選ばれて、入居者を募集。うち6プランは汎用性のあるアレンジを加えて、継続して募集している。

そのうちの1戸、洛西竹の里団地(京都市西京区)にある本城正己さん宅を訪ねると、約18畳のリビングルームがブルーに塗られた階段状の壁で仕切られ、片側がお兄ちゃんの部屋兼プレイルームになっていた(右最下部写真)。空間を仕切りつつも、子どもたちの声や気配を感じ取ることができるのが、このプランのポイントだ。奥さまいわく「見学に来たとき、お兄ちゃんがいっぺんでこの壁を気に入って、入居を決めました」。よじ登ったり腰掛けたり、遊具代わりにもなって、遊び心も満載だ。

「京都女子大学×UR 洛西NTリノベーションプロジェクトStyle2015」優秀賞の片山里香子さん(左)と江﨑万里子さん(右)。ともに京都女子大学3回生。

プランを実現するため施工にも関わる

今年度実施された2回目のコンペで選ばれたのは4プラン。どれも住みやすさへのアイディアやオシャレな工夫が盛り込まれている。江﨑万里子さんと片山里香子さんのプラン「空間を彩るアクセント」を見ると、寝室脇に作られたワークスペース、開放感を確保するため上部を開けた仕切り壁、ダウンライトを埋め込んだ梁など、二人のこだわりが満載だ。

このプロジェクトでは、学生は現場に通って施工にも密接に関わる。二人が最も力を入れたリビングの壁は、小さな見本ではわからないからと、色見本を何度もスキャンして1.6×2メートルの大きさにプリントアウトして、現場で色合わせをした。 「プランを提出して終わりではなく、問題が出るたびに施工の人たちやURの担当の方とキャッチボール。たいへんでしたが、やりがいがありました」 と江﨑さん。片山さんも、「社会に出るためのいい勉強になりました」と満足の表情だ。

寝室の奥に作られた書斎にもなる特別な空間(左写真)、梁に埋め込んだダウンライト(右写真)など、飽きのこないオシャレな部屋が生まれた。

初々しさに満ちた部屋 今後の展開に期待

今回話を聞いた日本女子大学と京都女子大学の学生4人に、「自分のプランした部屋に住みたい?」とたずねてみた。弾む声で返ってきた答えは、4人とも「もちろんです!」。若い感性が創る初々しさに満ちた空間。そこではどんな人が、どのような暮らしを紡いでいくのだろう。

東京都西東京市のグリーンハイツ武蔵境通り団地でも、法政大学と日本女子大学の学生によるリフォームコンペが行われ、最優秀作品は春にモデルルームを公開する予定。こちらもお楽しみに!

「リビングルームを仕切るこのブルーの壁を見て、この部屋に決めました」と話す本城さん一家。2人のお子さんも、このスペースが大のお気に入りだ。

「整える暮らし」学長賞

暮らしの導線上に収納スペースを豊富に確保。広い玄関に、たっぷり収納できる大容量シューズクロークを配置。

設計者

黒瀬智奈美さん(4回生)
小倉綾乃さん(4回生)

「光と風がとおる家」優秀賞

室内に小窓を設けることで、光と風が部屋全体を通り抜け、住戸全体が明るい印象に。

設計者

石田夕貴さん(4回生)
杉森みなみさん(4回生)

「up to you」優秀賞

大空間のリビングダイニングの一角に、造りつけのワークスペース。この緑色の壁はマグネットウォールになっている。

設計者

佐藤優香さん(2回生)
山本 奏さん(2回生)

白鷺団地
50年前の檜風呂発見がきっかけ - 昭和レトロな部屋が現代によみがえる

使い込まれて角が丸みを帯びた檜の風呂桶。磨き直したとはいうが、よほど丁寧に使われてきたのだろう、木目も銅製の金具も驚くほどきれいだ。大阪府堺市東区にある白鷺団地。ここには、賃貸が始まった1963(昭和38)年当時の室内を復元した住戸がある。檜の風呂桶をはじめ、ブナの無垢材の床板も、木製の建具も昔のまま。台所に隣接して茶の間がある間取りを巡れば、半世紀前にタイムスリップした心地がする。

復元のきっかけは、団地の大規模な集約事業だった。「白鷺団地では木製建具を全てアルミサッシに改修するところでしたが、今となっては貴重な木製建具をとどめた住戸を4戸だけ残そうということになりました」

URの泉北住まいセンターの田村公一センター長は言う。さらに住棟の整理に伴って住民が退去した部屋から、なんと建設当初の檜の風呂桶が発見された。そこで4戸のうちの1戸にこの風呂桶を設置し、床板やドア、襖などはいくつもの空き部屋から〝いいとこどり〟で移設。当時そのままのレトロな住戸に蘇らせた。壁も、漆喰に似て調湿機能のあるプラスター塗りで仕上げるという徹底ぶりだ。UR都市機構西日本支社では、この部屋を貴重な史料として見学用に保存することを決めた。

残りの3戸に関しては、昭和の香り豊かな建設当時のイメージに改装し、風呂の追い焚きや洗濯機パンなどの機能をプラスして賃貸に供している。名づけて〝AOH(アゲイン・オールド・ホーム)〟。浴槽は新品の檜風呂。見学に来る若い世代に「面白い」と好評だ。

白鷺団地では無印良品とUR都市機構が共同開発した麦わらボードや麻畳なども使い、現代のニーズと嗜好に合った住戸への改装も進めている。古さと新しさが共存した団地を、いろいろな方に見てほしいと意欲を燃やしている。

昭和30年代の流し台を再現し、その横に洗濯機置き場を設けて現代の暮らしに配慮。当時の床材を使用。木製建具は結露がなく、部屋全体を懐かしさで満たしている。
檜風呂を設置し、50年前の住まいを再現した「AOH(Again Old Home)」。
50年前の流し台は髙島屋製。

【西上原三千代 = 文、佐藤慎吾・青木登 = 撮影】

動画

若い感性が生み出すまったく新しい部屋

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