街に、ルネッサンス UR都市機構

古くて新しい団地の未来(1970〜)

URPRESS 2015 vol.43 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

古くて新しい団地の未来

1970~ 鉄骨ブレースが個性になる逆転の発想が若者に人気 伝法団地(大阪市此花区)
鉄骨の下をかがんで出入りするユニークな部屋。鉄骨が16畳のワンルームと玄関、水回りを区切る役割を果たしている。

逆転の発想で鉄骨とともに住む

古い団地のリノベーションも盛んに行われている。
建て替えるのではなく、住棟はそのままに、室内を大規模にリノベーションするもので、UR独自のリノベーション企画に加えて、MUJIやイケアといった企業とのコラボレーションや、大学との連携などが進められている。

そんなリノベーション住戸のなかでも、ユニークという点で、ここは別格だろう。
上の写真は、大阪市にある伝法(でんぽう)団地の約44m2のワンルーム。玄関ドアを開けると、目の前に鉄骨が! ここは鉄橋の下か、工事現場か? とわが目を疑った。

この鉄骨ブレースは耐震補強のため。この部屋のある伝法団地の1号棟は廊下を挟んで左右に20戸並ぶ細長い建物で、1階の住戸4部屋にこの鉄骨ブレースを入れることで、建物全体の耐震性能を向上させている。

もとは2DKの典型的な団地の部屋。UR都市機構西日本支社は、この室内を貫く鉄骨ブレースを逆手にとって、強烈な個性を放つワンルームに仕立て直した。現在この部屋に住む永井秀忠さん(26歳)は、「約16畳あるワンルームにひかれて決めました。正直に言えば、もちろん鉄骨はないほうがいいですよ。でも住んでみれば、もう気になりません。酔って帰ってきても、ぶつかることもありませんし(笑)。訪ねてきた男友達にも、秘密基地みたいでおもしろい、と好評です」と満足の様子だ。

玄関の扉から鉄骨までは約2メートル。この間のスペースにトイレ、浴室、洗濯機置き場の水回りが集まっているので、動線も効率的。武骨な鉄骨が、ゆるやかに居室を分けるアクセントになっている。

UR都市機構の担当者によると、他にも耐震補強のために室内に鉄骨を通している団地はあるが、部屋として貸し出しているのは、今のところこの伝法団地の4戸だけだという。ちなみにこの4戸、すべて入居済みだ。

大阪の中心部にも近い立地の伝法団地。子育て世代にも人気がある。
モノを極力減らし、理想のインテリアを完成させた永井さん。

MUSIC COMMON CAVE MORINOMIYA

鉄骨部屋が音楽スタジオに変身

大阪市の森之宮団地にも、室内に耐震補強の鉄骨ブレースが通る部屋がある。
こちらは構造上、ドアを開けると目の前に鉄骨だ。住むには厳しいこの部屋が、音楽スタジオ「MUSIC COMMONCAVE MORINOMIYA」に変身。室内に防音ルームを設け、好きな楽器の練習などに使ってもらえればと考えている。

1976~ 気鋭のデザイナーとコラボ 新しい発想の部屋に注目 鳴海団地(名古屋市緑区)
エイトデザインとのコラボ 斜めに廊下プラン

玄関からベランダまで、斜めに部屋を突っ切る廊下がある部屋。キッチン、リビング、寝室がゆるやかにつながっている。

斜めに廊下?土間のある部屋も

UR都市機構中部支社でも団地リノベーションプロジェクトが進んでいる。名古屋市の鳴海(なるみ)団地にあるこの部屋、玄関を入ると誰もが思わず「アレ~?」と声をあげるだろう。部屋の中を廊下が斜めに延びていて、部屋が無限に広がっているような、不思議な感覚におちいるのだ。

これはUR都市機構中部支社と、名古屋市にあるリノベーションを専門とするエイトデザイン(株)とのコラボレーション。3DKの部屋を1LDKにして、玄関からLDKの部分に斜めに廊下を通してある。

UR都市機構の担当者は「斜めに廊下をとることで、部屋に広がりが出るだけでなく、空間の自由度が上がります。この団地は子育て世代に人気があるので、小さなお子さんのいる夫婦を想定してリノベーションしました」と話す。

鳴海団地にはエイトデザインとのコラボがもう1室、こちらは広い土間と14畳の和室のあるプラン。土間は自転車を置いたり、趣味のスペースにと考えられている。名古屋市の豊成団地でもユニークなリノベーションプランが進行中だ。

こうやって見てくると、つくづく団地のもつ新しさに気づかされる。古くて新しい団地。その未来の可能性に注目したい。

ステンレス製の業務用キッチンを標準装備。床はコンクリートに質感が似ているフレキシブルボードで仕上げた。

【武田ちよこ=文、佐藤慎吾、青木 登=撮影】

都市再生 最前線

東京都心部を中心に、現在進行中の注目プロジェクトを紹介しよう。

数字で見る UR都市機構の60年

これまでに積み上げてきた数値、歩み続けてきた足跡を、さまざまなデータから見てみよう。

古くて新しい 団地の未来

昭和から平成へと時代は移り、団地もその姿を変化させる。
古くて新しい団地の多彩な表情を紹介しよう。

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